私の世界は硬く冷たい   作:へっくすん165e83

5 / 51
今回で「賢者の石」編は完結です。書き溜めていないので不定期投稿になってしまっていますが続きものんびりと待っていただけたらと思います。誤字脱字などありましたらご報告して頂けると助かります。


鏡とか、勇気とか、賢者の石とか

 クリスマス休暇が終わり、ホグワーツに戻った次の日には授業が始まった。

 ハリーたちは授業の合間を縫って図書室に通いつめ、ニコラス・フラメルについて調べているらしい。

 隠されている……いや、隠されていた石に関しては私はその正体を知っている。

 隠されていたものは賢者の石と呼ばれる魔法具だ。

 賢者の石は卑金属を黄金に変え、不老不死をもたらす命の水を作り出すことができる。

 もっとも、現在ホグワーツにて大切に守られている石は私が作った外見だけはそっくりな偽物だが。

 賢者の石には特殊な性質はあるが、石自体が力を発しているわけではない。

 なので実際に誰かが使用してみるまでは石が偽物であるとバレないだろう。

 ……バレないと信じたい。

 今のところハリーたちに石のことは話していない。

 先生たちにバレれば退学になる恐れもある。

 それは困るのだ。

 

「咲夜、何か見つかった? こっちはさっぱりよ」

 

 そして何故か私もハリーたちと一緒になって図書室でニコラス・フラメルのことを調べていた。

 完全に流れでである。

 

「いえ、最近の魔法使いに関しては少し勉強したんだけど、さっぱりね」

 

 私はポケットからカエルチョコを取り出すと、素早く開封してカエルが逃げないうちに口に含んだ。

 

「咲夜、図書館での飲食は行儀が悪いわよ。マダム・ピンスに怒られるわ」

 

「頭使うときは糖分が欲しいのよ。閲覧禁止の棚を詳しく調べられればいいんだけど。そういえば、ハリーが休暇中に侵入したらしいじゃない。何か面白いことはわかった?」

 

 ハーマイオニーはやれやれと言った感じで頭を抱えた。

 

「ホント、三日も続けてベッドを抜け出すなんてどうかしてるわ。閲覧禁止の棚にも入れたみたいだけど、一冊二冊の本を調べるのがやっとだったみたい」

 

 ハリーは今回のクリスマスにプレゼントとして透明マントを貰ったらしい。

 なんでも、元はハリーの父親の持ち物だったようだ。

 ハリーはそれを用いて深夜に閲覧禁止の棚に侵入した。

 結局何も分からなかったという話だが、私としては透明マントを手に入れたという情報のほうが大きい気がする。

 もしかしたら私が思っている以上に透明マントは魔法界では一般的な道具なのかもしれない。

 

「あら、このチョコのカードってダンブルドア校長先生のもあるのね。確かロンが集めていると言っていたっけ」

 

 私はカードをハリーとロンのいる方向に放り投げると、再び本を広げる。

 次の瞬間、ハリーの大声が図書室にこだました。

 

「見つけたぞ!」

 

「ポッターッ!! 図書室で大声出すんじゃありません!」

 

 間髪入れずにマダム・ピンスがハリーよりも大きな声を上げ、私たちを追い出しに掛かる。

 結局私たちはマダム・ピンスの勢いに押され、ハリーの発見を聞く前に図書室を追い出されてしまった。

 図書室前の廊下でハーマイオニーがハリーに問う。

 

「ハリー! 何を見つけたの?」

 

「これだ! フラメルを見つけた!」

 

 ハリーは喜々として先ほど私が投げたダンブルドア校長先生のカードを見せてくる。

 そこにはパートナーであるニコラス・フラメルとの錬金術の共同研究で有名との記載があった。

 それを見たハーマイオニーがあっと声を上げると、図書室の中に戻っていく。

 そしてマダム・ピンスと格闘しながら一冊の本を持って帰ってきた。

 

「この本で探そうなんて考えつきもしなかったわ」

 

 一旦談話室に戻りましょうと言い、ハーマイオニーはページをめくりながら廊下を歩きだす。

 私たちもそれを追って談話室へと歩きだした。

 

 

 

 

 

「これだわ! これ!」

 

 談話室に帰ってきて十五分が経過しただろうか。

 談話室のソファーの上で分厚い本をめくっていたハーマイオニーが飛び上がった。

 その声を聞いてハリーとロンもハーマイオニーのところにすっ飛んでくる。

 

「ニコラス・フラメルは我々の知る限り、賢者の石の創造に成功した唯一の者!」

 

 その言葉を聞いて私含め三人の顔が固まる。

 時間の問題だとは思っていたが、ついに三人が賢者の石に辿り着いてしまった。

 ハリーとロンはハーマイオニーの言葉に首を傾げる。

 

「なにそれ?」

 

 ハリーとロンは石に関する知識がないらしい。

 ハーマイオニーは呆れたと言わんばかりにため息を吐く。

 

「もう、貴方たち本読まないの? ここ読んでみて」

 

 ハーマイオニーはハリーのほうに本を突き出した。

 ハリーはハーマイオニーが指差した場所を読み、目を丸くする。

 

「金を作る石、決して死なないようにする石! スネイプが狙うのも無理はないよ! 誰だって欲しいもの」

 

「スネイプ先生よ、ハリー。先生」

 

 訂正を求めるが、ハリーは私の言葉にピクリと反応しただけだった。

 誰だって欲しい、賢者の石が。

 私はポケットの中に手を入れるとその中にある懐中時計を握り締める。

 パチュリー様は価値のない物だと言っていたが、やはり貴重な物なのだ。

 そしてこの本の記述を見る限り、景品感覚で持っていっていいような物でもない。

 私は失敗したと感じ、どさっとソファーに腰かける。

 そのまま体の位置を正確に記憶した。

 この状態で時間を止め、ソファーから立ち上がる。

 

「返してこよう。バレないうちに。バレた場合のリスクが多すぎるわ」

 

 ハイリスクローリターンは馬鹿のやることだ。

 私は急いで談話室と飛び出すと、四階の廊下までの最短ルートを飛行する。

 勿論、時間が止まっている為、その行為にあまり意味はない。

 ただ単純に、焦っているだけだ。

 

「アロホモラ」

 

 私は扉の鍵を開け、四階の廊下に入る。

 隠し扉は完全にフラッフィーが踏みつけてしまっていた。

 

「ウィンガーディアムレヴィオーサ」

 

 私はフラッフィーを浮かし少しずらすと、隠し扉を開け中に飛び込む。

 変な植物(パチュリー様に聞いたところによると悪魔の罠)を素通りすると鍵鳥の部屋の扉をピッキングする。

 チェス盤、トロール、瓶の部屋を抜け、石の置いてあった部屋へと突入した。

 

「はぁ……はぁ……。まったく。焦りすぎよ私。しっかりしなさい」

 

 私は自分の顔を軽く叩き気持ちを切り替える。

 そして改めて部屋を見まわした。

 

「机がない!」

 

 そして絶望した。

 賢者の石が置いてあった机がなくなっており、大きな姿見に変わっている。

 大事な物の割には無造作に置いてあるとあの時は感じたが、どうやらあれは中途半端な処置だったらしい。

 この鏡が最後の罠なのだろう。

 鏡の上の枠には奇妙な文字が彫ってある。

 

『すつうを みぞの のろここ のたなあ くなはで おか のたなあ はしたわ』

 

「私は貴方の顔ではなく貴方の心の望みを映す。なんで反対なのかしら?」

 

 私は慎重に鏡の時間停止を解く。

 先ほどまで私の姿を映していた鏡は、少し違う様子を映し出した。

 私の他にお嬢様が映っている。

 吸血鬼であるお嬢様が鏡に映っているということは、やはり普通の鏡ではないのだろう。

 私はその横で紅茶をお出ししていた。

 いつもの紅魔館の光景だ。

 こんな普通のことが私の望みということなのだろうか。

 

「それで一体賢者の石は何処に……」

 

 私は鏡に映っているお嬢様の部屋を隅々まで見回す。

 中々それらしいものはない。

 だが私はお嬢様の部屋にある、あるものを発見し、その場に座り込んでしまった。

 それはカレンダーだった。

 一月の日付が記載された、なんの変哲もない紅魔館のカレンダーだ。

 

 そこに書かれている西暦以外は。

 

「……二九八四年。今から千年近く未来だ」

 

 鏡に映る私は、千年後も変わらずお嬢様に仕えている。

 これが示すことはつまり、そういうことなのだろう。

 死にたくない、いつまでもいつまでもお嬢様に仕えていたい。

 いずれ来る自分の死を直感的に感じ、私の体が震え出す。

 そう、このままでは私はあと百年もせずに死ぬのだ。

 私はポケットの中をまさぐり、懐中時計を取り出す。

 この中には賢者の石が入っている。

 石を使えば永遠の命が手に入る。

 不老不死の体を手に入れることが出来る。

 鏡の映す内容が変わる。

 私がコップに入った水の中に賢者の石を入れ、命の水を作り飲んでいる。

 そう、それこそが私の望み──

 

「い、いや……違う! それは違う!!」

 

 私は鏡に頭を打ち付ける。

 割れることはなかったが、鏡がたわみその光景が少し揺らいだ。

 

「私は永遠の命が欲しいわけじゃない。私は……私は……」

 

 懐中時計をポケットに仕舞い直し、鏡と向かい合った。

 

「私は十六夜咲夜。お嬢様の手となり足となる存在。いずれ永遠の命を手に入れるかも知れないけど、それはお嬢様ご自身がそれを望んだ時だ」

 

 私はメイドであり道具である。

 勝手な行動はしてはいけない。

 もし私が必要であるのなら、お嬢様のほうからその提案をしてくるだろう。

 それまでは自分勝手なことは控えるべきだ。

 私は部屋を後にする。

 賢者の石を元の場所に戻すことは出来なかったが、この場合仕方がないだろう。

 私は談話室に戻ると先ほどのソファーに腰かけ、時間停止を解除する。

 

「それに『魔法界における最近の進歩に関する研究』に載ってなかったわけだ。だって六百六十五歳じゃ厳密には最近とは言えないよなぁ」

 

 ちょうどロンがハリーに対して話をしているところだった。

 私は鏡のことを記憶の奥底に仕舞うと、会話に交ざった。

 

 

 

 数日後、クィディッチの試合が行われた。

 審判がスネイプ先生だということでハリーたちはギリギリまで試合に出るべきか悩んでいたようだったが、結果を見れば出て正解だっただろう。

 ハリーは試合開始から五分も経たないうちにスニッチを見つけ、スネイプ先生が妨害を加える暇もなく試合を自分のチームの勝利という形で終わらせたのだ。

 もっとも、スネイプ先生がそのような妨害を加えるとは私は思っていなかったが。

 そんな試合があってすぐのこと。

 ハリーは浮かれているものかと思ったが、何か緊急のことがあるらしく神妙な面持ちをしている。

 ハリーは私たちを空き教室に引っ張っていくと、誰もいないことを確認して話し始めた。

 

「僕らは正しかった。賢者の石だったんだ。それを手に入れるのを手伝えってスネイプがクィレルを脅していた」

 

「ハリー、スネイプ先生よ。それにクィレル先生」

 

「……スネイプ先生がクィレル先生を脅していた。スネイプ先生はフラッフィーを出し抜く方法を知っているかって聞いてた……。それと、クィレルの──」

 

「先生」

 

「……クィレル先生の怪しげなまやかしのことも何か話してた……フラッフィー以外にも何か特別なものが石を守っているんだと思う。きっと人を惑わすような魔法がいっぱい掛けてあるんだよ。クィレ……クィレル先生が闇の魔術に対抗する呪文をかけて、スネイプがそ──」

 

「ハリー、先生よ」

 

「大事な話をしてるんだッ! 少し黙っててくれ!」

 

「礼節は大切よ?」

 

 私がそういうとハリーは頭を抱えるようにため息をつく。

 代わりにハーマイオニーが話し出した。

 

「つまり、賢者の石が安全なのはクィレル先生がスネイプ先生に抵抗している間だけということになるわね」

 

 その言葉を聞いてロンが何かを想像したのか、苦笑いしながら呟く。

 

「それじゃあ、三日と保たないな。石はすぐに失くなっちまうよ」

 

 私はその件に関しては安全だとみんなに伝えようか迷った。

 石は私が持っている。多分まだ誰にも気が付かれていないと。

 だが、私にはそのようなリスクを犯す勇気はなかった。

 

 

 

 私はその日以降、鍵鳥の部屋でくつろぐことが多くなった。

 今日も就寝時間が過ぎてから私はこの部屋に来ていた。

 綺麗な羽を羽ばたかせ、自由に室内を飛ぶ何百羽の鍵鳥は見ているだけで私の心に安らぎを与えてくれる。

 少し進めばあの鏡があるが、覗きに行こうとは思えない。

 本来なら学年末テストも近いので勉強しなければならないのかも知れない。

 だが時間という概念が人とは違う私は、どうにも勉強する気にはなれなかった。

 第一、勉強しろと一番五月蠅いのはハーマイオニーなのだが、その本人ですら違うことに現を抜かしている。

 ハグリッドと一緒にドラゴンを育てていたかと思えば、夜間出歩いているところをハリーやロングボトムと共にマクゴナガル先生に見つかり三人合計で百五十点もの減点を食らったり、それが原因で禁じられた森で罰則をこなさなければならなくなったりと。

 そういえば罰則は今夜だったかと懐中時計を見て確認する。

 どんな罰則を受けているかは分からないが、何とも阿呆らしいと感じた。

 ぼんやりと鍵鳥を眺めながら私は色々と考え事をする。

 賢者の石は私が手にしているので守りは盤石だ。

 情報面でも物理的な面でも。

 私が賢者の石を持っていることを知っているのはお嬢様とパチュリー様以外誰もいない。

 私はお二人を信用している。

 お嬢様方から情報が漏れることはないと断言できる。

 次に物理的な面だが、賢者の石は私の懐中時計の中に空間操作の術を用いて仕込んである。

 故に時間操作の能力をを扱うことが出来ない人間には取り出すことすらできないわけだ。

 だがそのことをハリーたちは知らない。

 石を守ろうと必死になって動いている。

 まあそのわりには寄り道が多い気がするが。

 今日の件とか。

 

「もしスネイプ先生がクィレル先生を問い詰めているとして、クィレル先生はよく保っているほうね。腐っても闇の魔術に対する防衛術の担当教師なだけはあるのかしら」

 

 まあ、スネイプ先生がそのようなことをする人だとは思えないが、ハリーたちから言わせてみればスネイプ先生は私利私欲のために石を狙っている、ということにしたいらしい。

 まあそう仮定できるだけの判断材料が手元に集まってしまったからというのもあるだろうが。

 この部屋に来て数時間が経ち、そろそろいい時間ではあるので私は時間を停止させて談話室に戻る。

 談話室の中ではロンがソファーに座って眠っていた。

 時間停止を解除し、毛布をロンに掛けると私も近くのソファーに腰掛ける。

 ハリーたちを待っていたのだろうか。

 まあ状況から察するにそうだろう。

 ロンもハリーたちと共にドラゴンの世話をしていた。

 自分だけが罰則を受けなかったのに引け目を感じているらしい。

 私はロンを起こさないよう静かにソファーを立つと、もう寝ようと女子寮へと続く扉に手をかける。

 だが、次の瞬間ハリーとハーマイオニーが慌てた様子で談話室の中に転がり込んできた。

 ハリーはソファーに座っているロンを見つけると、力強く揺すり起こし始める。

 

「ハリー、寝ている人を起こすときはその人に殺されるかも知れないというぐらいの覚悟を持って起こした方がいいわよ?」

 

 私がそう窘めるが、ハリーは全く私の話を聞いていなかった。

 

「大事な話があるんだ! ロン起きてくれ! 咲夜も聞いてくれ」

 

 ハリーに叩き起こされロンは少し不機嫌だったが、ハリーはそんなことは気にも留めずに話し始める。

 ハリーの支離滅裂な説明を簡単にまとめるとこうだった。

 罰則中、禁じられた森で何者かに襲われ、ケンタウロスに助けられた。

 その何者かというのはユニコーンの血を吸って生きながらえているヴォルデモートだ。

 その簡単なことを説明するのに20分も話し続けている。

 その長さ故か事態の深刻さ故か、ロンもすっかり目を覚ました。

 ハリーはまだ落ち着かないのか、暖炉の前を行ったり来たりしていた。

 

「スネイプ……先生はヴォルデモートの為にあの石が欲しかったんだ。……ヴォルデモートは森の中で待ってるんだ。僕たち今までずっとスネイプはお金のためにあの石が欲しいんだと思ってたのに」

 

「その名前を言うのはやめてくれ!」

 

 ヴォルデモート卿の名前を聞いてか、ロンが恐々と囁く。

 だがハリーの耳には入っていない。

 

「フィレンツェは僕を助けてくれた。だけどそれはいけないことだったんだ。ベインが物凄く怒ってた」

 

 誰とも知らない名前を連呼しながらハリーは誰に言うでもなくブツブツと呟き続ける。

 

「惑星はヴォルデモートが戻ってくると予言しているんだ。ヴォルデモートが僕を殺すならそれをフィレンツェが止めるのはいけないって、ベインはそう思ったんだ。僕が殺されることも星が予言していたんだ」

 

「頼むからその名前を言わないで!」

 

 ロンが人差し指でも立てるかのようにハリーに忠告する。

 要するにどちらも怖いのだ。

 ヴォルデモート卿が。

 

「ハリー、落ち着いて。大丈夫よ。ロンも」

 

 私は今にも取っ組み合いを始めそうなほど距離を詰めている両者の頭を一緒に抱きしめた。

 二人は一瞬なにが起こったか分からないような顔をしていたが、状況を理解すると同時に固まる。

 

「この場には例のあの人はいないし、ホグワーツにはダンブルドア校長先生もいるのよ? ダンブルドア先生がいる限りあの人も手出しは出来ないわ」

 

 私はそのままゆっくり二人の頭を撫でる。

 昔よくこうやって美鈴さんに慰められたが、とても落ち着いたものだ。

 

「あの、咲夜? わかったから手を放して欲しいんだけど」

 

「同感」

 

 ハリーとロンが意識を取り戻したかのように少しジタバタするが、すぐに顔を赤くして動かなくなる。

 その様子を後ろで見ていたハーマイオニーが呆れたように肩を竦めた。

 

「それ天然でやっているのだとしたら大したものね」

 

 私は何のことだか分からず固まった二人の頭を撫で続けるしかなかった。

 

 

 

 数日が経ち、学期末テストが行われた。

 お嬢様から言いつけられたということもあり、休み明けからは授業を真面目に聞くようにはしていたし、パチュリー様に言われたように復習やテスト対策もしている。

 どうもハリーは例あの人のことが気になるようで全く集中できていなかったが、ハーマイオニーは命でも懸かっているかのような気合の入りようだった。

 筆記テストが終わると実技の試験に入る。

 呪文学では一人ずつ教室に入り、パイナップルを机の端から端までタップダンスさせられるかどうかを試験した。

 私は元々物質を操る呪文は得意だったので見事なタップダンスをパイナップルに躍らせることが出来た。

 変身術ではネズミを嗅ぎたばこ入れに変えることが試験だった。

 美しい箱は点数が高く、逆に髭でも生えているようだったら減点を貰う。

 装飾はお手の物だ。

 魔法薬学では忘れ薬の調合が試験だった。

 みんなが必死になって頭を抱えている中、私とハーマイオニーだけ異様な速度で調合を進めていったのでそれはそれは異様な光景だっただろう。

 もっとも、私は時間を止めて手順を短縮していたが。

 筆記と実技のテストが終わり、生徒たちはようやく解放される。

 テストの時の緊張した顔を緩め、各々が自由な時間を満喫していた。

 天気が良かったので私も芝の上で横になり、青い空を眺める。

 今思えば不思議な光景だ。

 一年前までは普段青空を眺める機会も少なかったというのに、今では昼間に行動するのが普通になっている。

 今日は一日ここで昼寝でもして過ごそうかと、そんな呑気なことを考えていると私の目の前にハリーの顔があった。

 

「咲夜! 大変なことが分かったんだ! 一緒に来て!」

 

 ハリーは私の上で大声で叫ぶ。

 そのまま顔でも蹴っ飛ばしてやろうかとも考えたが、後ろにいる二人も焦ったような顔をしている。

 私はゆっくり立ち上がると、背中についた芝を軽く手で払った。

 

「こんな天気のいい日に一体どうしたのよ」

 

 私はハリーの後ろついて歩き出す。

 ハリーは早足で歩き出しながら口を開いた。

 

「ハグリッドが怪しい奴にフラッフィーの手懐け方を教えてしまった。ドラゴンの卵をハグリッドにあげたのは変装したスネイプかヴォルデモートだったんだ! 村のパブでハグリッドを酔わせてしまえばあとは簡単だったに違いない。早くこのことをダンブルドア先生に伝えないと!」

 

「でもそれって随分と前の話じゃない。今更な感じがあるけど……」

 

 私がそう反論するがハリーは聞く耳持たずだ。

 ハリーたちは校長室を探しているようだが、一向に見つからない。

 私自身、校長室が何処にあるか知らないし、そもそもダンブルドア先生が何処に住んでいるのかすら知らなかった。

 

「こうなったら僕たちとしては──」

 

 ハリーがそう言いかけた時、急に反対側から声を掛けられる。

 

「そこの四人、こんなところで一体何をしているんですか?」

 

 マクゴナガル先生だ。

 何かの授業の準備なのか、両腕に山のように本を抱えている。

 

「ダンブルドア先生にお目にかかりたいんです」

 

「ダンブルドア先生にお目にかかる?」

 

 マクゴナガル先生は生徒がどうしてそのようなことを望むのか怪しいとでもいうように、ハーマイオニーの言葉をオウム返しに聞き返した。

 

「理由は?」

 

 マクゴナガルの問いにハリーが少し悩むような顔をする。

 

「……すみません。言えません」

 

 そんなハリーの返答を聞いて私は失敗したと思う。

 緊急なのだとしたら誰であれ事情を話すべきだ。

 

「ダンブルドア先生は十分ほど前にお出かけになりました。魔法省から緊急のふくろう便が来て、先ほどロンドンに飛び発たれました」

 

 私は一瞬先生が嘘をついていると考えたが、一年生四人を追い返すのにそこまで大層な嘘はつかないだろうと考え直す。

 

「先生がいらっしゃらない? この肝心な時に!?」

 

 ハリーが慌てたように叫ぶ。

 

「ポッター。ダンブルドア先生は偉大な魔法使いですから、大変多忙でいらっしゃいます」

 

 マクゴナガル先生の声色は完全に癇癪を起した子供を宥めるそれだった。

 

「でも重要なことなんです」

 

「魔法省の件よりもですか?」

 

 マクゴナガル先生の眼鏡が光る。

 これ以上は石のことを秘密にして話すの限界だ。

 ハリーも同じ考えだったらしく、意を決して真実を告げる。

 

「実は……賢者の石のことなんです」

 

 賢者の石という単語は完全にマクゴナガル先生の予想の外にあったものらしい。

 先生の手からバラバラと本が落ちたが先生は拾おうともしなかった。

 仕方がないので私が拾う。

 その間にも私の上で話は進んでいた。

 

「どうしてそれを?」

 

 もう既に先生はしどろもどろだ。

 

「誰かが石を盗もうとしています。どうしてもダンブルドア先生にお話ししなくてはならないんです」

 

「ダンブルドア先生は明日お帰りになります。どうやって石のことを知ったのか分かりませんが安心なさい。石の守りは盤石です。誰にも盗むことは出来ません」

 

「ふふ……」

 

 私はマクゴナガル先生の余りにも自信たっぷりな言い分に途端に噴き出してしまった。

 誰にも盗むことが出来ない?

 今私の手元にあるのだけれどと。

 

「何が可笑しいのですかミス・十六夜。ポッター、大丈夫です。さあ、折角の良い天気なのですから外に行きなさい」

 

 マクゴナガル先生はそういうと散らばった本を拾おうとしたのか下を見て屈む。

 だが本は私が全て拾っていたので一冊も地面には落ちていなかった。

 

「あ、ああ十六夜、ありがとう。貴方も外へ行きなさい。折角テストも終わったのですから」

 

「先生、本を運ぶのを手伝います。ハリー、ちょっと行ってくるわね」

 

 私は先生の落とした本をトレーを持つかのように胸の位置で片手で持つと、先生の後をついてハリーたちと離れる。

 そしてハリーたちの声の届かないところまで歩くと、私はマクゴナガル先生に質問をした。

 

「先生、本当に本気で石の守りは盤石だと思いますか? あの様子じゃ今にも隠し扉の奥へと突っ込んでいって石を自らの手で保護しようとしますよ、彼ら」

 

「勿論、石の守りにはホグワーツに勤めている多くの魔法使いが協力しています。新入生が突破できるようなものではありません」

 

 マクゴナガル先生はまだ少し気が動転しているようだ。

 私は分かりやすいように付け足す。

 

「だったら尚更、ハリーたちが突っ込んでいったら危ないのでは?」

 

 マクゴナガル先生の顔色が赤から青に変わる。

 私の言いたいことを理解したらしい。

 

「この本は図書室に返しておきますので、急いで四階の廊下に向かった方がいいと思います。私も自分の通う学校から死者を出したくないので」

 

 その言葉を聞いてマクゴナガル先生はすっ飛んでいった。

 方向的にフラッフィーのいる扉の前に急いでいるのだろう。

 これで今すぐハリーたちが部屋に入るのを防ぐことが出来る。

 今止められても多分また夜に忍び込もうとするだろうが、それまで時間の猶予が生まれるというのはこちらの精神的にも楽だ。

 私は図書室に先生の本を届けると、談話室に向かった。

 

 

 

 談話室に戻るとハーマイオニーとハリーが何やら口論をしていた。

 まあ石に関することだとは容易に想像できるが。

 

「僕は今夜ここを抜け出す。『石』を何とか先に手に入れる」

 

「気は確かか!?」

 

「ダメよ! マクゴナガル先生にもスネイプにも言われたでしょ! 退学になっちゃうわ!」

 

「だからなんだっていうんだ! わからないのかい? もしスネイプが石を手に入れたらヴォルデモートが戻ってくるんだ。減点なんて問題じゃない。今晩、僕は石を手に入れる。君たちがなんと言おうと僕は行く。いいかい? 僕の両親はヴォルデモートに殺されたんだ!!」

 

 ハリーは完全に熱くなってしまっていた。

 こうなった人間は中々止まるものじゃない。

 

「……その通りだわハリー」

 

 その時、耳を疑うような言葉が聞こえてくる。

 ハーマイオニーの声だ。

 まさかハーマイオニーがハリーの滅茶苦茶な案に乗っかるとは思ってもみなかった。

 

「三人もマントに入れるかな? いや、四人か」

 

 ロンが私の方を見て言った。

 いやいや、冗談じゃない。

 

「私は行かないわよ。冗談じゃない」

 

 少し薄情かも知れないが、私が肯定してしまったらこの暴走を止める人間が居なくなる。

 

「そうかい。ハリー、今から作戦を考えよう」

 

「そうね、準備はしすぎるに越したことはないわ」

 

「だからどうかしていると言っているのよ。新入生三人が教員の仕掛けた罠に突っ込んで生きて帰れると思うの?」

 

 私は一番確率的に高い死の予想をハリーに突き付ける。

 だが、すぐにそれは無意味だと悟った。

 

「ヴォルデモートの復活を食い止めなきゃどちらにしろ僕は殺されるんだ! だったら僕は確率が低くても生きる道を選ぶ!」

 

 私はもう何を言っても無駄だと悟り、それ以上の口出しはしなかった。

 

 

 

 

 

 夕食後、ハリーたちは談話室でじっと機会を待っていた。

 私はそんな三人を前に肩を竦める。

 もっとも私が石を持っていると話してしまえばそれで済む話なのだろう。

 だがそれは同時に私の能力についても話すということだ。

 それは出来ない。

 しばらくして、私たち以外の全員が寝室に上がっていくと、ロンが静かに口を開いた。

 

「ここで着てみた方がいいな。三人で隠れられるかどうか確かめよう。咲夜、完全に隠れられているかい?」

 

 ハリーたちは一塊になるとマントを上から羽織る。

 

「ええ、完全に見えないわ。足音にさえ注意したら私にだって分からないぐらいね」

 

「君たち、何しているの?」

 

 マントの確認が終わると同時に部屋の隅からひょっこりとロングボトムが顔を出す。

 その手にはネビルのペットのヒキガエルであるトレバーがしっかりと握られていた。

 どうやら先ほどまで寝室内を探し回っていたようだ。

 

「なんでもないよ、ネビル。なんでもない」

 

 ハリーが急いでマントを隠し、誤魔化す。

 

「また外に出るんだろ」

 

 ロングボトムが決めつけるように言い切った。

 

「ううん、違うわよ。何処にもいかないわ。ネビル、もう寝たら?」

 

 ハーマイオニーがロングボトムに提案するが、ロングボトムは聞く耳を持たない。

 案外ロングボトムとハリーは同じような性格なのかもしれなかった。

 

「君たちが見つかったらグリフィンドールはまた減点されてしまう。い、いかせるもんか! 僕、僕……君たちと戦うッ!!」

 

「ネビル、大切なことなんだ。僕たちは行かなくちゃならない。例え君を気絶させてでも」

 

「やるならやってみろ! 殴れよ! いつでも掛かってこい!」

 

 とうとうロングボトムは拳を振り上げ言い切った。

 ハリーはその様子に心底困ったかのような顔をする。

 それを見かねたハーマイオニーが申し訳なさそうに一歩進み出た。

 

「ネビル、本当にごめんなさい。ペトリフィカス・トタルス、石になれ!」

 

 ロングボトムは頭の先からつま先まで一直線に硬直すると、そのままうつ伏せに倒れ込んでしまった。

 私は咄嗟にそれを受け止めて仰向けにしてソファーに寝かせる。

 

「全身金縛りの呪文をかけたわ。まだ意識はあると思うけど……」

 

「ネビル、ごめん。今は理由を話している時間はないんだ」

 

 ハリーたちはそう言い残し、透明マントを被って談話室を出ていく。

 私はロングボトム、いやネビルの頭を優しく撫でると、彼に話しかけた。

 

「自分の寮を守る為に仲間に立ち向かう。中々出来ることではないわ。少し見直したわよ」

 

 私は杖を取り出しネビルに向けて振るう。

 

「ステューピファイ」

 

 私はネビルに失神呪文をかけた。

 これから起きることを彼が認知しないように。

 彼がこのまま恐怖に身を震わせながら朝まで談話室で転がっていなくともいいように。

 ネビルの意識が落ちると私は時間を止めた。

 

「さて、盗人と馬鹿三人が鏡の前にたどり着く前に、私が先回りしないとね」

 

 談話室を出て目指すは隠し扉の奥。

 例の鏡が置いてある部屋へと私は向かった。

 

 

 

 

 

 隠し扉を通り鏡の前まで来たが、誰ともすれ違いはしなかった。

 ハリーたちは透明マントを着て廊下を歩いているから元々見えないだろう。

 だがハリーたちが言うところの石を狙う何者かの姿も見えない。

 先回りする形になったのだろう。

 私は時間停止を解除すると鏡と向き合った。

 鏡の中にはやはりお嬢様と私が映っている。

 お嬢様に仕えている私はとても幸せそうな表情を浮かべていた。

 カレンダーの年号は一九九一年十二月。

 この前のクリスマス休暇のひと時と酷似していた。

 

「何者だ!」

 

 突然後ろから怒鳴り声が聞こえている。

 私はその場で優雅に振り返ると、その何者かと対面した。

 

「こんばんわ。いい夜ですわね。『クィレル』先生」

 

 私の目の前にはいつものオドオドした表情ではなく、非常に凛々しい表情をしたクィレル先生が立っていた。

 クィレル先生はこちらを油断なく睨みつけている。

 

「授業ではお世話になっております。十六夜咲夜です」

 

「十六夜か、そこをどけ。私はその鏡に用がある」

 

「賢者の石ですか?」

 

 クィレル先生がジロリと私を睨む。

 

「どうやら君は事情を知っているようだ。私は我が主の為に賢者の石を手に入れないとならない。そこをどけ」

 

 私は素直に鏡の前を空ける。

 その様子を見てクィレル先生は不審そうな顔をした。

 

「……まあいい。この鏡からどうにかして石を取り出さなければ。一体どうなっているんだ? 鏡を割ってみるか?」

 

 クィレル先生はブツブツと呟きながら鏡を叩いたり裏に回ったりしている。

 私はその様子を手を前に組んだまま見守った。

 

「この鏡はどういう仕組みなんだ? どういう使い方をするのだろう……」

 

 クィレル先生は顎に手を当てて考え込む。

 私はクィレル先生の方に歩み寄る。

 その様子にクィレル先生は一瞬警戒したが、何もできないだろうと結論付けたのか攻撃はしてこなかった。

 

「この鏡は貴方の望みを映します。貴方の望みが賢者の石を使うことならその場面が映り、賢者の石を見つけることならその場面が映るでしょう」

 

 私も鏡を見る。

 お嬢様と私が映し出される。

 すると鏡の中に映る私が、私に微笑みかけた。

 鏡に映る私はメイド服のポケットに手を突っ込むと、賢者の石を取り出す。

 そしてそれを戻すように石をポケットに入れなおした。

 途端にポケットにズシリとした重みを感じる。

 私は目を見開いた。

 

「あ」

 

 私はクィレル先生の前でポケットから賢者の石を取り出した。

 

「え? こういう? 手に入っちゃった」

 

 私はクィレル先生の方を向く。

 クィレル先生も驚いたように私の方を見ていた。

 

「それを渡──」

 

「はい、差し上げます」

 

 私はクィレル先生の言葉を遮るように言葉を重ねる。

 その言葉にクィレル先生は警戒心を強めた。

 

「何故だ? お前の行動には謎しかない。一年生であるお前があのような罠を私より早く突破し、ここで待ち構えていた。私が石を入手するのを阻止するものかと思ったが、それもしない。いや、むしろ今こうして差し出している」

 

「だって先生貧乏そうなんですもの。最近体調も悪そうですし……。この賢者の石があれば富も健康も手に入りますわ。それに、仕える者同士、理解し合えるものもあるでしょうし」

 

 私はクィレル先生に笑顔で半年以上前に私が作った『偽物』の石を差し出した。

 クィレル先生は事情をよく分かっていないような顔をしていたが、目的を果たすために私が差し出した石に手を重ねる。

 

「まさか、二人が!」

 

 その瞬間、いきなり通路の方から大声が聞こえてきた。

 私とクィレル先生は手を重ねたまま固まってしまい、首だけを動かして声のしたほうを見る。

 ハリーだ。

 ハリーが信じられないものでも見るような目で私たちを見ていた。

 

「僕は……てっきりスネイプだとばかり……。それに咲夜、君まで!」

 

 クィレル先生は私の手から賢者の石を受け取り大切そうに仕舞うと、ハリーの方に体ごと振り向く。

 私は一歩下がりクィレル先生の右斜め後ろに立ってハリーの方を向いた。

 いつもの癖でそうしてしまったが、この立ち位置では本当に私とクィレル先生が仲間のようではないか。

 

「セブルスか。あのお邪魔虫さえいなければ私は我が主の宿敵を殺すことができていたはずなのに。あやつさえいなければ」

 

「スネイプが僕を助けたってことか!?」

 

「先生よ。ハリー」

 

「それだけじゃない。私がハロウィンの日にトロールをホグワーツ内に入れ混乱を起こした時でさえ、セブルスは真っ先に私の前に立ちはだかった。ポッター、君はここで死ぬのだ。ここには君のことを助けてくれる優しいスネイプ先生はいないぞ?」

 

「ほら、クィレル先生ですらスネイプ『先生』というじゃない。ハリー、礼節は大事よ」

 

「君は何の話をしているんだ!!」

 

 ハリーは私の方を見て怒鳴る。

 

「君もヴォルデモートの仲間なのか? この一年間僕たちを騙していたのか?」

 

 ハリーが私に怒鳴る。

 この質問の答えはクィレル先生も興味があるのか、私のほうを見ていた。

 

「私は闇の支配者に仕える身。仲間など恐れ多いわ。私は我が主の手であり、足であり、道具だから」

 

 そこまでノリノリで答えて、これでは更に誤解されてしまうと思い至る。

 フォローを入れようと口を開く前にハリーが聞いた。

 

「そんな! 友達だと思っていたのに……」

 

「え? 貴方と私は友達じゃないわ」

 

 ハリーは私に向けて杖を構える。

 まずい、咄嗟に本音が出てしまった。

 

「ふっ、まさかこんなところに同志がいたとは。これは好都合だ。十六夜よ。ここでハリー・ポッターを足止めしなさい。私は我が主と共に一足早く安全な場所へと逃げることにする」

 

 クィレル先生が杖を振るうと、クィレル先生の横に小さなゴブリンのようなものが現れる。

 そして瞬間移動でもするように何処かに消えてしまった。

 

「あ! クソ。君のせいで……ッ!」

 

 ハリーが杖を振るう。

 デタラメな振り方だ。

 呪文も何もあったものじゃないが、純粋な魔力が杖からは放たれていた。

 

「プロテゴ。守れ!」

 

 私は魔法の障壁を張ると、ハリーの攻撃を受け流した。

 

「争う理由なんてないはずだけど」

 

 私はハリーの撃ち出す魔力をはじきながらハリーに問いかける。

 だがハリーはやはり人の話を聞いていなかった。

 

「君のせいで! 君のせいで闇の帝王が復活してしまう! ヴォルデモートが魔法界で何をしたか知らないわけじゃないだろうッ!」

 

「知らないわ。だって私魔法界にいなかったもの。それは貴方もでしょう?」

 

「そういう意味じゃない! 君はいつもそうやって話をはぐらかす……僕は殺されるんだ! 復活したヴォルデモートに!」

 

「そう言えばどうしてクィレル先生はあんなに急いでいたのかしら。脱兎のごとく逃げてしまったけれど」

 

 私はハリーの攻撃を受け流しながら考えた。

 ハリーは怒りに身を任せているためか、魔法らしい魔法は飛んでこない。

 

「貴方はどう思う?」

 

「知ったことか!!」

 

「わしじゃよ」

 

 通路の方から声が聞こえる。

 ハリーはその声を聞いて凄い勢いで振り返った。

 ハリーからの攻撃が止むのと同時に私も声がした方向を見る。

 

「ダンブルドア先生! 帰ってきたのですね!」

 

 声の主はダンブルドア校長先生だった。

 ダンブルドア先生は優しく微笑むと、私たちの無事を確認する。

 

「二人とも無事で何よりじゃ。ハーマイオニーが顔を真っ青にして飛び出してきた時は流石のわしでも遅かったかと思ったほどじゃよ」

 

「先生! 咲夜が、クィレルに石を渡してしまいました! 咲夜はヴォルデモートの手下だったんです!」

 

 ハリーは物凄い勢いでダンブルドア先生に捲し立てる。

 ダンブルドア先生はそれを聞き、私の瞳をじっと見つめた。

 

「服従の魔法は掛かってないようじゃの。咲夜よ、ハリーの言っていることは本当かね?」

 

 私はいつもの調子でダンブルドア先生に微笑むと、言葉を紡ぐ。

 

「ええ、本当です。鏡から石を取り出し、クィレル先生に渡しました」

 

 ダンブルドア先生の目が厳しいものに変わる。

 

「脅されたのかね?」

 

「いいえ。自分の意思で」

 

「それは何故じゃ。まさかヴォルデモートに忠誠を誓っておるわけではあるまいな?」

 

 私は静かに首を振る。

 

「それも『いいえ』です。私が仕えるのはレミリア・スカーレットただ一人」

 

「でもさっき闇の支配者に仕えるってっ!」

 

 ハリーが私の言った言葉を復唱するように怒鳴った。

 ダンブルドア先生は今度はハリーの方に振り向く。

 その前に私に目配せを飛ばしてきた。

 お嬢様のことを知っているのだろうか。

 私はこくりと頷いた。

 

「ハリー、本人から聞いておるかも知れんが、咲夜はあるお方に仕えておる。それはわしも、学校の先生たちも良く知っていることじゃ。レミリア・スカーレット。彼女の主は数百年を生きる吸血鬼なのじゃよ」

 

 ハリーは信じられないといった顔で私のほうを見た。

 私は不敵な笑みを浮かべる。

 

「あら? 言ってなかったかしら」

 

 そう、お嬢様は凄いんだ。

 

「でもそれとこれとは別じゃ。咲夜よ。何故石をクィレルに? 返答によっては君を退学処分にせねばならん」

 

「先生、それはハリーを守るためです」

 

 ダンブルドア先生の目が少し優しいものへと変わる。

 ハリーも唖然といった表情を浮かべていた。

 

「クィレル先生……あ、もう先生じゃないのか。クィレルはハリーを殺そうとしていました。それは先生もよく知っていることだと思います。あのまま二人きりで対面させてしまっていたら、ハリーが石を手に入れていたことでしょう。当然の流れでクィレルがそれを奪おうとしますが、ハリーが素直に渡すとも思えません」

 

 私はハリーの顔を見る。

 

「ハリーの性格なら、意地でも石を守ろうとするはずです。命に代えてでも。なので私は先にクィレルに石を渡しました。彼が急いで逃げたところを見るにダンブルドア先生が帰ってきたことが分かっていたようです。クィレルはこう思ったことでしょう。「石は手に入れた。ハリーも殺していきたいところだが、時間がない。ここは一旦撤退して我が主を復活させ、再度ハリーを殺そう」と。一つ目的を達成したことによる妥協を狙ったのです」

 

「それって結局僕が死ぬことになるじゃないか!!」

 

 ハリーは激怒して杖を構えるが、ダンブルドアが制した。

 

「咲夜、咲夜よ。君の行動は実に理に適っておる。じゃが、クィレルに石を渡すことは避けた方がよかったじゃろう。わしらが作った守りが弱かったのも原因じゃが、石は守り通すべきじゃった。だが終わったことをいくら言っても仕方がない。私は急いでクィレルを追うとしようかの」

 

 ダンブルドアは急ぎ足で来た道を帰ろうとする。

 私はそんな先生に言った。

 

「だとしたらパーフェクトです。先生。ハリーは生きていますし、クィレルも死んでいない。そしてヴォルデモートは『復活しない』」

 

 ダンブルドア先生の足が止まる。

 

「どういうことかね」

 

 先生が振り向き、私に尋ねてきた。

 私はハリーが魔力で砕いた壁の一部を拾うと、魔法をかける。

 壁の一部はみるみるうちに賢者の石のような外見へと変化した。

 私はその偽物をダンブルドア先生に投げ渡す。

 

「クィレルさんには偽物を渡しておきました。本物はこちらに」

 

 私はポケットの中で器用に懐中時計から石を取り出すと、あたかも石がポケットに入っていたかのように手渡した。

 

「先生、これが正真正銘の賢者の石です。ご確認ください」

 

 ダンブルドア先生は私が渡した偽物と本物を見比べると、今度こそ満面の笑みを私に向けた。

 

「ああ、パーフェクトじゃよ。咲夜」

 

「つまり、君は僕を助けるために一芝居うったってことかい? こんな完璧な変身術を使って」

 

 ハリーが驚いたような声を上げる。

 そして途端に申し訳なさそうな顔になった。

 

「あら、引け目を感じているの? 真に謝る相手はほかにいるんじゃない? ほら、散々疑ったけど結局無罪だった──」

 

「それってスネイプのことかい?」

 

「「ハリー、スネイプ先生じゃろう(でしょう)?」」

 

 私とダンブルドア先生の声が重なる。

 ハリーはうんざりしたかのように顔をしかめた。

 

 

 

 

 

 ダンブルドア先生は私の話を信用してくれたようで、私とハリーは簡単な質疑の後解放された。

 ハリーはしきりに私に謝っていたが、私はそもそも怒ってはいない。

 それに、私はハリーを助ける為だけにクィレルに偽物の石を渡したわけじゃない。

 クィレルには私が石を偽物に入れ替えたのか、ダンブルドア先生が石を偽物に入れ替えたのか判断が付かない。

 つまり、ヴォルデモートからしたら、私は敵なのか味方なのか分からないのだ。

 あそこで下手に反抗するとヴォルデモートは私のことを敵だと判断するだろう。

 それでは私はヴォルデモートの敵という重荷を背負うことになってしまう。

 お嬢様に迷惑を掛けないためにも中立でなくてはならないのだ。

 これは予想だが、クィレルはダンブルドア先生が初めから石を入れ替えていたと判断するだろう。

 外出をする前に入れ替え、本物は自分で所持し出かけたものだと思うはずだ。

 

「本当にごめん! 咲夜。僕、君の話も聞かないで」

 

「ハリー、しつこいわよ。怒ってないって言っているし、許すとも言っているじゃない。それともハリー、貴方は私に殴られでもしたら満足するのかしら?」

 

「そうじゃないけど……」

 

 ハリーは困ったように頭を掻く。

 

「そうね、ハリー。それならこうしましょう。お嬢様のことは秘密にしてもらえると助かるわ。吸血鬼の従者だってことが知れ渡ると色々とやりにくそうだし」

 

「勿論! 口が裂けても言わないよ!」

 

 これも一つの落としどころだろうか。

 私はハリーを連れてみんなの待つ談話室へ続く廊下を歩いた。

 

 

 

 

 あの夜から三日が経った。

 今日は学年末パーティーが大広間で行われる。

 大広間はグリーンとシルバーで装飾されており、スリザリンの蛇を描いた大きな横断幕が壁を覆っていた。

 私は隣に座っているハーマイオニーに聞く。

 

「随分とスリザリン寄りの装飾ね。何か理由があるのかしら」

 

 そんな私の問いにハーマイオニーは呆れたように頭を抱える。

 

「スリザリンが七年連続で寮対抗杯を獲得したのよ。貴方、賢者の石の件ではあんなに頭が切れていたのに、興味ないことに関しては本当に……」

 

 そう、ハーマイオニーとロンにはあの日の夜に談話室で事の顛末を教えたのだ。

 その結果ハーマイオニーには抱きつかれるぐらい褒め讃えられ、ロンは信じられないといった顔で感謝の言葉を言われた。

 

「へえ、スリザリンが。ドラコ、結構頑張ったのね」

 

 私はちらりとマルフォイのいる方を見る。

 マルフォイはいかにも誇らしげに取り巻き達と話し込んでいた。

 

「また一年が過ぎた!」

 

 その時、ダンブルドア先生の大声が大広間に響く。

 どうやらダンブルドア先生の一年の締めの大演説が始まるようだ。

 

「ごちそうにかぶりつく前に寮対抗杯の表彰を行うことになっておる。点数は次の通りじゃ。四位、グリフィンドール三百十二点。三位、ハッフルパフ三百五十二点。二位のレイブンクローは四百二十六点。そして一位、スリザリン、四百七十二点」

 

 次の瞬間、スリザリンから嵐のような歓声が上がった。

 マルフォイなんてゴブレットでテーブルを叩いて喜んでいる。

 

「よしよしスリザリン。よくやった。しかし、つい最近の事も勘定に入れなくてはなるまいて」

 

 ダンブルドア先生の言葉に、スリザリンのテーブルが静まり返る。

 何か不穏な空気を感じ取ったのだろう、皆緊張した面持ちでダンブルドア先生を見つめていた。

 

「駆け込みの点数をいくつか与えよう。まず最初はロナルド・ウィーズリー。この何年間かホグワーツで見ることがなかったほどの、最高のチェス・ゲームを見せてくれたことを称え、グリフィンドールに五十点を与える」

 

 グリフィンドールのテーブルから窓が割れんばかりの歓声が沸き起こる。

 なるほど、あのチェスを破ったのはロンなのか。

 

「僕の一番下の弟さ! マクゴナガルの巨大チェスを破ったんだ!」

 

 パーシーが他の監督生にそう言っているのが聞こえてきた。

 マクゴナガル先生……石を守るトラップのはずなのに遊び心がありすぎるのでは?

 

「次にハーマイオニー・グレンジャー。火に囲まれながらも、冷静な論理を用いて対処したことを称え、グリフィンドールに五十点を与える」

 

 その言葉を聞いて隣にいるハーマイオニーが腕に顔を埋めた。

 私はハーマイオニーの背中を優しく撫でる。

 これで一気にグリフィンドールの点が百点も増えたことになる。

 

「三番目はハリー・ポッター。その強靭な精神力と並外れた勇気を称え、グリフィンドールに六十点を与える」

 

 耳を割くような大歓声に私は咄嗟に耳を塞いだ。

 まあそれも仕方がないだろう。

 これでグリフィンドールはスリザリンと並んだのだ。

 ダンブルドアが手を上げた。

 その様子をみて大広間が少しずつ静かになる。

 

「勇気にも色々ある。敵に立ち向かっていくのにも大いなる勇気がいる。しかし味方の友人に立ち向かっていくのにも同じぐらい勇気が必要じゃ。そこでわしは、ネビル・ロングボトムに十点を与えたい」

 

 私は急いで耳を塞ぐが、意味はなかった。

 近くで大爆発でも起こったのではないかのような大歓声が上がる。

 先ほどまでうれし泣きしていたハーマイオニーでさえ興奮したような顔でネビルの肩を叩いていた。

 次の瞬間本当に爆発音が大広間に響いた。

 ダンブルドア先生が杖の先から爆竹を打ち上げたのだ。

 

「最後に十六夜咲夜。敵味方全てを翻弄するほどの見事な心理戦、たった一人で全ての関門を突破した勇気と知識と技術、冷静な論理的思考、完璧なまでの変身術。そしてなにより友の命を救う為にその友と敵対することもいとわない精神力を称え、グリフィンドールにさらに百七十点を与えたい」

 

 歓声は起こらなかった。

 全員が顔を見合わせたのち、私の方を向いていた。

 私は苦々しげに顔をゆがめる。

 二位、スリザリン四百七十二点。

 一位、グリフィンドール六百五十二点。

 明らかなオーバーキルだ。

 ダンブルドア先生は私に駆け込み四人の総合点数をそっくりそのまま与えたのだ。

 シンと静まり返った大広間に一つの拍手の音が響く。

 ダンブルドア先生のものだ。

 それを境に先ほどとは比べ物にならないほどの拍手と大歓声が沸き起こった。

 グリフィンドール生はかつてない点数に狂喜乱舞し、スリザリンを除く他の寮生もスリザリンの七年連続寮対抗杯の獲得を阻止した為か拍手喝采を私に送っている。

 

「したがって、飾りつけをちょいと変えねばならんのう」

 

 ダンブルドア先生が手を叩くとスリザリン一色だった大広間はグリフィンドールのカラーである赤と金に変わり、蛇もそびえ立つようなライオンへと変化した。

 そのライオンの上には一匹のコウモリが描かれている。

 多分そのコウモリの意味を理解できるのは私とハリーだけだろう。

 

 

 

 

 

 学年末パーティーの翌日、試験の結果が発表された。

 驚いたことにハリーとロンはそこまで成績が悪くなかった。

 私と本人たちの予想では、もう少し悪いものだと思ったのだが。

 そして更に驚いたことにハーマイオニーは私よりも成績が悪く、学年で二位だった。

 ハーマイオニーはそれがとてつもなくショックだったようで、「筆記は満点なのに……」と呟いている。

 それが終われば夏季休暇だ。

 散らかっていた女子寮もすっかり物がなくなり、落ちていたものは全て持ち主の旅行鞄に入っている。

 私は全ての荷物が入ったみんなよりも小さい鞄を持つと、ホグワーツ特急に乗り込む。

 途中でハリーたちとはぐれてしまったので、マルフォイのいるコンパートメントに入った。

 

「ドラコ、ここ空いてるかしら?」

 

 マルフォイは不機嫌そうな顔をしてこちらを振り向いたが、私の顔を見た瞬間焦ったように表情を取り繕うと不自然に笑った。

 

「あ、ああ。咲夜か。空いているとも」

 

 私はマルフォイの前に腰かけ、荷物を床に置いた。

 マルフォイは私が席についたのを確認すると、少し重そうに口を開く。

 

「まずは対抗杯の獲得おめでとう。百七十点って一体何をしたらそんなに点が貰えるんだい?」

 

「そうね、ハリーたちが四人でやったことを一人でこなしたからかしら?」

 

「やっぱり咲夜は凄い。ポッターたちなんて足元にも及ばないんだろうな。成績も学年トップだっただろう?」

 

 マルフォイが羨ましげに呟いた。

 

「そういうドラコだって十位以内に入っていたじゃない。十分凄いわ」

 

「僕としては穢れた血がトップを取らなかっただけで大満足さ。本当によくやってくれたよ」

 

 お菓子食べるかい? とゴイルが百味ビーンズを勧めてくる。

 私はヤバそうなのを一つ抓むと、ゴイルの口に突っ込んだ。

 ゴイルが悶絶した。

 

「夏休み、よかったら僕の屋敷に遊びに来なよ。一緒に新学期の買い出しに行こう」

 

「お嬢様の許可が下りたらね」

 

 私はそのあともマルフォイに隠し部屋の話をしたりと、今年一年のことを語り合った。

 しばらくそのように時間を潰していると、コンパートメントの扉がノックされる。

 クラッブが扉を開けると、ハリー含め数人のグリフィンドール生がそこに立っていた。

 

「グリフィンドールの英雄を返してもらおうか。マルフォイ」

 

 ハリーがマルフォイに言い放つ。

 その挑発を聞いてゴイルが立ち上がり指を鳴らすが、多勢に無勢といえるほどの相手の人数に少々たじろいでいた。

 

「返すも何も、咲夜は自分でこのコンパートメント内に入ってきたんだ。人を盗人扱いするな」

 

 マルフォイがハリーに言い返した。

 マルフォイは尻込みしているクラッブとゴイルを押しのけると、一人でハリーの前に立ちはだかる。

 

「帰ってもらおうか、ポッターと愉快な仲間たちの諸君」

 

 クラッブとゴイルは驚いたようにマルフォイを見ている。

 私もそのマルフォイの行動に驚いていた。

 彼にこんな勇敢な一面があったとは知らなかった。

 ハリーたちもマルフォイの行動に面食らっているようだ。

 私はマルフォイのそんな勇気に応えるためにハリーに言う。

 

「あら、私はもうグリフィンドールの談話室でこれでもかというほどチヤホヤされたし、十分よ。ハリー、また新学期に会いましょう」

 

 その言葉を聞いてドラコが目を見開き自信満々といった表情で不敵な笑みを浮かべた。

 ハリーたちも渋々といった顔で退散していく。

 それを見届けるとドラコはピシャリと扉を閉め、ドカっと席に座って先ほどと変わらない調子で話し始めた。

 私はそんなマルフォイの話を聞きながら、ふと館のことを思い出す。

 学生気分は一旦終わりだ。

 私は、紅魔館のメイドであり、レミリア・スカーレットの従者なのだから。




用語解説


カエルチョコ
その名の通りカエルの形をしたチョコ。カエルは生きているように動く。おまけで有名な魔法使いのカードが入っている。

みぞの鏡
物語の重要な要素。咲夜が最初に忍び込んだ時点ではまだ別の場所にありました。クリスマス休暇中にダンブルドアが隠し扉の一番奥の部屋に設置し、咲夜が作った偽物の石を鏡の中に仕舞い込みます。この時ダンブルドアは侵入された形跡もなかったので石が入れ替わっているとは欠片も思っていません。

咲夜ののぞみ
死なずにレミリアに奉仕したい。賢者の石でこの望みを叶えようとしていたら最終局面の展開が変わったかもしれません。

鍵鳥の部屋
あそこ幻想的ですよね。しばらくの間咲夜が私物化してました。

天然でしでかす咲夜ちゃん
周りに異性が殆どいなかった為、異性へのスキンシップに抵抗がありません。

ついに動き出す咲夜ちゃん
最後まで色々と迷っていた為か、論理的に最善の手を打てたとは咲夜自身思っていません。その辺の未熟さはまだ11歳の証拠。

ネビルに失神呪文
夜の談話室に一人動けぬまま取り残されるとか怖すぎるでしょ……という咲夜の配慮。

みぞの鏡の映す咲夜の望み
クィレルが来たときには純粋にお嬢様に仕えたいという望みになっている。

賢者の石を入手できた咲夜
これは咲夜自身よく分かっていない。自分が偽物の石を入手することが一番の望みではないと自覚しているから。でもこれは無意識のうちにハリーを救うことを咲夜が望んでいたいうことを示す微笑ましい描写。

ダンブルドアに打ち明ける咲夜
この時咲夜は嘘を混ぜながら会話をしています。ダンブルドアは咲夜がこの日のうちに賢者の石を入手し、偽物をその場で作ったと思っています。自分が鏡に隠した石が偽物であったと気が付いていません。


「「ハリー、スネイプ先生じゃろう(でしょう)?」」
これに被せたくて今まで先生発言させていたのはここだけの話。

170点
ダンブルドアは咲夜が全ての罠を自分の力で突破したと思っています。ですのでチェスに勝った分の50点、論理パズルを解いた分の50点、友人を救う為単身乗り込んだ勇気と見事な変身術に60点。味方すら敵に回してでも友を守るその勇気と姿勢に10点です。

ライオンの肩にコウモリ
吸血鬼を象徴するコウモリを描くダンブルドアの茶目っ気だが、お前の行動はどっちつかずでコウモリのようだという皮肉と忠告も含んでいる。

学年トップ
流石に独学で勉強しているハーマイオニーは、チート級の魔法使いから指導を受けた咲夜には敵いませんでした。筆記テストだけで見ればハーマイオニーのほうが点数が高いです。

ドラコ
どう見ても咲夜に惚れています。本当にありがとうございました。

Twitter始めました。
https://twitter.com/hexen165e83
活動報告や裏設定など、作品に関することや、興味のある事柄を適当に呟きます

2023/08/01 加筆修正

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。