放課後、普通の学生なら家路に着く時間。
しかし、実力が家の地位と権威に関わるセラモール学園では殆どの生徒が学業や魔術の練習に勤しんでいた。
その光景をアレクは横目で見ながらクラスを出て行く。
それを見たルナが歩み寄ってくる。
「ちょっとアレク!明日からチームに入るのに訓練はしないの?」
「俺がそんな人間に見えるか?」
「うう・・・・見えないかも」
「じゃあ帰らせろよ。俺は眠くて仕方が無いんだ。」
「もう、なんでそんなやる気がないのにこの学園に入ったの?」
「・・・・さてね。」
その言葉に大きなため息をつくルナを無視して、やる気の無い表情のままアレクは立ち去っていった。
そのまま向かうのは学校指定の寮・・・ではなく少し寂れたビル。
中に入った瞬間アレクの表情が真面目なものに変わる。
そして、慣れた手つきで近くに人が来なくなる人払いの術を建物全体にかける。
それもルナや他の生徒とは段違いの速さで、だ。
そのままアレクは中に進んでいく。
「・・・・ぐっ!」
と、ふいにアレクの体に激痛が走る。
それと同時にアレクの目が黄色に染まり、頬に紋章が浮かび上がる。
原因はアレクの身体に潜む悪魔、
月歌が、アレクの身体に介入してきていた。
アレクは普段月歌を身体の中で封じているのだが、封印にも体力が必要であった。
そのため、アレクは誰もいないこの時間に少しだけ封印を緩めることで精神を維持していた。
《いや~今日は面白かったね。ルアンだっけ?あいつサイコーだよ》
月歌の声が脳内に響き渡る。
「別に面白くねえよ。ただ、ルアンが危険な存在になるのは確かだ。警戒しておく」
《警戒?そんなことしなくても人間ごとき簡単だよ?ほら》
月歌がアレクの体に少し力を与える。
それだけで、アレクは自分の身体能力が上昇し意識が朦朧となるのを感じた。
悪魔の力が流れ込んでいるのだ。
それは、人間が持つべきではない禁忌の力。
アレクはそれを無理やり消し去る。
「俺はお前に乗っ取られるつもりはない。」
《またまた~。僕の力を使えば君の姉を助け出すのも簡単だよ?》
「黙れ、俺はお前の力を借りなくても姉ちゃんを助け出してみせる。」
《ふーん。まあいいや。きっともうすぐ僕の力が必要になるときがくるさ。》
そう言ったきり、月歌は干渉を止めた。
それと同時に目の色も戻り、紋章も消えていく。
「はぁ・・・・」
アレクは思わずその場にしゃがみこむ。
まだ、少しクラクラして頭痛も治まらない。
だが、
「・・・・立ち止まるな。俺は必ず、姉ちゃんを助け出す」
と言って立ち上がる。
そのまま部屋の隅にあった剣を握り、力をこめる。
その剣は、アレクが孤児院から盗み出した持ち主の魔力を付加できる魔刀。
アレクは剣を、上に掲げる。
まだ見ぬ未来に向かって。
思い出の中に浮かぶ、亜麻色の髪の少女に向かって。