萩の華、桜の花   作:桜華(おうか)

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第一章 芽吹ク花
第一話 小サナ芽


「これって大型艦建造だったよな?」

「そうね」

頭がぼうっとする。

「俺は大型艦が欲しいって言ったよな?」

「言ったわね」

夢を見ていた。

「け、軽巡洋艦って・・」

「文句言わない」

声が聞こえる。

「消費に見合ってねえじゃねえか!」

「どんな戦力でも大事でしょ!」

目の前で軍服の男と銀髪の少女が喧しく話している。

それをぼんやりと眺めていると、急に男の方がこちらに向き直って言った。

「お前も何とか言ったらどうだ、えーっと、や、や・・?」

「彼女の名前はや・は・ぎよ、読めなかったの?」

「わ、わかってたっての!おい矢矧~?」

その名前で最後に呼ばれたのはいつだっただろうか。ずっと昔のような気もするし、昨日のような気もする。

そこまで考えてから黒髪の彼女はようやく、自分が意見を求められている事に気づいた。

「はっ、はい!」

数瞬遅れただろうか。どれほど間があったかわからない。

「お前、強いのか?」

男が再び問いかける。

今度は速く答えねば。

「アンタまた直球で・・」

「はい!」

銀髪の少女を遮り、速く、はっきりと答えた。だが、答えてから質問の意味をじわりじわりと理解する。やってしまった。軽巡洋艦の立場にありながらこの答えはどうなのだろうか。

しかし、黒髪の彼女の強張った顔とは反対に、恐る恐る覗いた男の顔は満面の笑みであった。

「そうかそうか!いやーだったらいい買い物したな!なあ叢雲!」

そう言いながら男は叢雲と呼ばれた銀髪の少女の肩をぽんぽんっと叩く。

「買い物とか言わない!あと触んな!」

「うぼぁ!」

叢雲の鋭い回し蹴りが腰に炸裂し、男は膝から崩れ落ちる。いいキレだ。彼女から今度習ってみたいと思えるほどに。

男は痛みで転げ回りながらも軽口を叩く。

「くぅ~・・・疲労回復に効くね~・・・」

「言ってろ馬鹿!…えーっと矢矧さん?意識ははっきりしてるのかしら?」

今度は叢雲の方がこちらに向き直って尋ねる。

「ええ、あなたは?」

形式は大事だ。わかってはいるが一応聞いてみる。

「私は叢雲、そっちに転がってる馬鹿が多分この鎮守府の司令官よ」

「多分じゃねえだろ…、そう、俺がここの提督だ、よろしくな」

「寝ながら言うことじゃないわよ・・・」

叢雲が提督と自称する男をたしなめる。

先ほどから若干、この二人の会話に押されているが、自分も自己紹介をせねば。

黒髪の彼女は、思い出しながらゆっくりと話した。

「私は阿賀野型軽巡洋艦三番艦の矢矧よ、よろしくね」

すると男がまた間髪入れずに問いかけてきた。

「ってことはお前みたいな強い奴があと二人は居んのか!?」

「失礼よ!どこまで馬鹿なのアンタは…それでもウチの司令官なの・・・?」

叢雲は突っ込むのを諦め、いよいよ呆れ顔を見せ始めた。

どうやら本当に提督のようだ。

矢矧は愛想笑いを浮かべながら、ゆっくりと提督の問いに答える。

「さあ、どうかしらね?ここはどこなの?」

「ははっ早くも軽くあしらわれたぜ、矢矧は適応能力が高いな」

「ここは鎮守府の工廠よ、あなたは艦娘として建造されたの」

「艦娘?」

初めて聞く名前だ。

「艦娘というのは在りし日の軍艦の記憶と魂を受け継いだ女の子のことよ、あなたにも記憶があるでしょ?」

ようやく少し理解してきた。なるほど、ここに呼び出された訳か。今回で二度目になるのかな。

「あのー物思いにふけってるとこ悪いんだが」

いつの間にか起き上がった提督が、そんな他愛もない思慮にも割り込んでくる。まったく懲りない人だ。

しかし意外に悪くない顔をしている。髪は黒の短髪で頭の横と後ろは刈り上げている。眉は鋭い一文字で、左眉と直角に小さな傷が入っていた。背はやや高く、体は細いが引き締まった感じだ。総じて荒っぽくも見えるが実直、行動的に見える姿をしている。見た目は。

そんな矢矧が受けた印象を他所に、提督は続けた。

「鎮守府近海まで奴らが迫ってる」

真顔ですっぱりと言い放つ。

それを聞くや否や叢雲は激怒した。

「はあ!?何でそれを早く言わないの!こんなことしてる暇無いじゃない!」

「奴らって?」

矢矧が尋ねる。

「悪いけど説明してる暇はないの!急いで出撃準備よ!」

叢雲は矢矧の手首をがしっと掴むと工廠の外へと駆け出す。それから出口の手前で一度立ち止まり、提督の方に顔だけ向けて叫んだ。

「アンタ、あとで説教だから!」

「は、は~い・・いってら・・・」

提督が情けなく、小さな声で返した。さっき受けた印象を返してほしい。

叢雲は再び外に向き直りながら矢矧に言った。

「さあ行くわよ!」

二人は再び駆け出した。

工廠の中から出ると日の光が眩しかった。空は青々としていて、雲は高くどこまでも続いている。少しひんやりとした空気は包み込んでくれるようだった。

そうか、空はこうだった。きっとあの海も同じように待っていてくれるのだろう。

まだわからないことだらけだが、そうだ。

果たせなかった約束を次こそ。

 

またあの海で。

 

矢矧は不思議と笑っていた。




文章に起こすのって難しい・・・
次も頑張ります!

改一 艦娘について追記しました。
改二 脱字を訂正しました。
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