「準備はできた?」
叢雲は矢矧に問いかけた。
二人は母港に待機したまま出撃命令を待っていた。
「ええ、多分・・・」
「私が言った通りにできていれば大丈夫よ」
その言葉は余計に不安にさせるのでは?という疑問を飲み込んで、矢矧は素直な質問を叢雲にぶつける。
「この鎮守府には提督の他には私達二人だけなの?」
叢雲は艤装の最終確認をしながら言った。
「他にも四人、居るわ」
予想よりも多く答えが返ってきた。
「そうなの?なら六人で・・」
その矢矧の言葉は叢雲によって遮られた。
「残念だけど、他の四人は輸送の護衛任務、つまりは遠征に出ているわ」
矢矧は困った顔をしながら言う。
「何てタイミングの悪い」
「本当よねまったく、指令を出した馬鹿司令官には呆れるわ」
「いつ帰ってくるのかしら」
「さあ、司令官しか知らないわよ、神通さんが居ないのが痛いわね・・・」
神通。その名前を知らないわけがない。
「あの人もここに?」
「ええ、私よりも後にね!練度は彼女の方が高いけど…ごにょごにょ」
突然語尾が弱くなる。どうやら叢雲はプライドはそれなりに高いらしい。だが、誇りを持つことは良いことだ。
「ふふっ、でも私にとってはあなたは間違いなく先輩よ、頼りにしてるわ」
「!」
叢雲が俯いた顔をばっと上げる。それからえっへんといった調子で上体を反らすと、あからさまに上から目線で言った。
「し、仕方ないわね!この叢雲!この鎮守府に一番に着任した先輩として、きっちり指示出すわよ!練度は二番ごにょごにょ・・だけど!」
やはりそこには自信が無いらしい。しかし頼りがいはありそうだ。
『そうだぞ矢矧』
「「きゃっ!」」
突然鎮守府内に鳴り響いた大音量の男の声に、二人は短く悲鳴を上げる。
『ああ、音がでかかったか、すまんすまん』
「何やってんのよ馬鹿!ああもうびっくりしたじゃない!こっちはとっくに出撃準備終わってんのよ!?」
提督の声だ。どうやら放送設備か何かを使っているらしい。
『悪いが説教は後回し、さっきの追加で頼む、作戦を説明したい』
先ほどの工廠での提督とは打って変わって、真剣な声色だ。
「ああ、それなら二人で挟み込んで、一体一体倒していこうと思うんだけど」
叢雲が考えていたのであろう作戦を述べる。
『いや、それじゃダメだ、敵の数もわからないし挟み込んだところをさらに挟撃される恐れもある』
頑張れ小さな先輩!矢矧は心の中で小さく応援する。
「じゃあどうするのよ?」
ふくれっ面で叢雲がスピーカーに向かって聞く。
『二人には敵全てを一度に相手にして、集団から浮いた敵から攻撃してもらいたい」
「それって耐久戦ですよね?ジリ貧になるのではないでしょうか、それとも何か手があるんですか?」
『さあ?』
途端に工廠の時の提督に戻る。矢矧は拍子抜けしてしまった。
「さあって・・・」
「アンタねえ・・・」
『いやいや冗談だ、作戦の性質上、二人が知ってるとマズイんだ、それから一応海域に出ても無線でこっちから指示はできるが、大まかにしかできないと思ってくれ、判断は現場に任せる、矢矧は叢雲の指示に従ってくれ』
「了解」
まったくもってよくわからない提督だ。飄飄としているのにしっかりともしている。
その提督が二人が待っていた命令を下す。
『では武運を祈る、頼んだぞ』
「「了解!」」
叢雲は手を矢矧に差し出しながら言った。
「出撃よ!」
二人はすぐさま抜錨すると、全速力で大海原へ進む。
そういえば敵とは何かを聞くのを忘れていた。だが、それはいずれわかることだ。それよりも、今はまた海へ身を置けることを嬉しく思おう。
今はただ生きれば良い。生きるために戦おう。
矢矧は決意を胸に母港を後にした。
なかなか戦闘に持って行けませんでした。orz
次こそ。
改一 誤字を訂正しました。