ViVidかと思ったら無印でした……   作:カガヤ

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お待たせしました!
ティアナとギンガのターンは続く!


第41話「To loveる? いえ、トラブルです」

シューティングランドをこれでもかってくらい遊びつくした俺達の一日目は終了した。

ホテルに戻って夕食のバイキングを食べつくして、部屋に戻ると俺達は全員ベッドに倒れこんだ。

元気が走り回っているようなスバルも、今日は流石に疲れたようだ。

それから大浴場とかで色々あったが……忘れよう。

 

「お兄ちゃん、明日もみんなで入ろうね!」

「あ、うん……ソウダネー」

 

いや、女の子と一緒にお風呂って、何度か経験あるけどさ。

この前、スカさんアジトでシグナムとかリインとかお姉さん方とも入ったけど、みんな水着着てたもん。

シュテル達は、最初素っ裸で入るつもりだったようだけど、クアットロやトーレに半ば無理やり水着着させられてたっけな。

でも、今回はクイントさんもギンガもスバルもティアナもみんな素っ裸だった。

いくらなんでもこれは慣れない。慣れるわけない。

ギンガ達はまだいいとしても、クイントさんってまだ20代前半で若いしスタイルもいいし……うん、忘れよう。

てか、ゲンヤさんとティーダは、ドナドナされる俺を笑顔で見送ってくれたっけな、薄情者!

あれ? そういえば、スカさんのアジトでみんなで温泉入った時って、もっと人いなかったっけかな? うーん??

ま、いっか。

 

 

そして、翌日。

今日は、乗り物系を中心に回る事になった。

定番の観覧車は3時間待ちという長打の列ができていたので、まずはジェットコースターに乗る事にした。

見た目としては地球にもある一般的なジェットコースターに見えるけど、俺の知ってるものよりもかなり長いように見える。

こういう定番の絶叫系どころか遊園地自体生まれて初めてなので、見るものすべてが新鮮で興奮しっぱなしだけどな。

で、このコースターは2人乗りなので俺とティアナ、その後ろにギンガとゲンヤさん、クイントさんとスバルが乗り、ティーダは荷物番となった。

地球のコースターは年齢制限とか身長制限があるけど、こっちのはそういうのはない。

なんでも、子供に合わせて対G制御がかかるようにしてたり、安全対策はばっちりしてるからだそうだ。

無駄に最先端な気がする。

 

「で、大丈夫かティア?」

「だ、だだだだだいじょうぶ!」

「嫌だったらお兄さんと下で待っててもいいのよ?」

「ダイジョウブデス、クイントサン!」

「全く大丈夫に見えないよ、ティア」

 

後ろの席にいるクイントさんとギンガが心配に言ってくるが、2人の言う通り今のティアナは、顔色が恐怖に染まっている。

元々このコースターはギンガとスバルが乗りたがっていて、俺もかなり興味があった。

いざ乗ろうとすると、ティアナが固まってしまった

コースターに乗るのが嫌なら待っていていいと言ったのだけど、俺やギンガ達が乗るなら私も乗る!

と、半ば強引に俺の隣に乗り込んでしまった。

ティーダも止めようとしたが、泣き出しかけたので仕方なくティアナも一緒にとなった。

ゾンビはよくてこういう絶叫系はダメなのか。ギンガと正反対だな。

 

「では、出発しまーす!」

 

係員のお兄さんの号令と共に、コースターは音もなく発車した。

どうやらこのコースターはリニアモーターカーみたいなものらしく、静かに動くようだ。

静かに動くから、それはそれで怖い気もする。

 

――ギュっ

 

「ん?」

 

いつの間にかナチュラルにティアナが手を握ってきた。

ほとんど無意識なようで、ティアナ自身はしきりに。

 

「にげちゃだめだにげちゃだめだにげちゃだめだにげちゃだめだ」

 

などと、虚ろな瞳をしてぶつぶつと危ないセリフを呟いている。

下で待っていた方が良かったと思うんだけどなー

てか、今更だけど5歳児がジェットコースターってどうなんだろ。

と考えていると、コースターが頂上に差し掛かってきた。

頂上に近づくにつれて握ってくる手の力が段々と増してきてるけど、まだまだ幼女の力じゃ痛くない。

いつぞやスバルに思いっきり抱き着かれて骨が砕けると思った時に比べたら、どうってことないない。

そう、思っていたんだ……

 

――ギュンッ!

 

「きゃあああぁぁぁぁーーーー!!」

 

コースターが急降下どころか、レールから外れて自由落下しました。

それに伴い、ティアナの握力が100倍くらい増しました。

 

「ぎゃあああぁぁぁぁーーーー!?」

 

いたいいたいいたい!

自由落下したコースターなんて気にならなくなったのは幸か不幸かだけど、とにかく痛い。

ティアナって戦闘機人だったのか!? というくらい強く握りしめられた。

コースターは自由落下からの錐もみ回転、また急上昇してからの急降下などなど盛りだくさんに動き回ってる。

けど、俺にそんなの楽しむ余裕はなかった。

 

「ひゃっほーーー!」

「わーい! たーのしー!」

 

後ろからはこの惨劇に気づいていないのか、楽しそうな絶叫が聞こえてくるけど俺はそれどころじゃない。

 

「シェ、シェルブリット! って置いてきたんだった―!!」

 

シェルブリットに身体強化頼もうと思ったけど、ティーダに預けているんだった!

 

「わぁー!? まえまえまえ!」

「ふえっ? なにぃーー!?」

 

前を見てみるとなんとレールが空中で無くなっていた。

 

「おちっ……ない!?」

 

コースターはレールが消えてもそのまま走り続けた。

どうやら、レールを視えないようにしているだけのようだ。

これは普段なら迫力満点と興奮するんだろうけど、今の俺にそんな余裕はない。

 

「ふにゃーー!?」

「いてててててっ!!」

 

握った手の力がさらに増した。

俺の左手、最後まで持つかなぁ。

 

「お、おかえり。お疲れ様」

 

長かったコースターもやっと終わり、疲労困憊状態な俺とティアナをティーダが苦笑いを浮かべながら労ってくれた。

ティアナは単にコースターが思った以上に怖かっただけだが、俺はティアナにずっと握りつぶされかけていたせいなのだけどな。

 

「もう、もうコースターは乗らない……」

「俺、手、まだついてる?」

「あ、あははは……」

 

流石のギンガもかける言葉が見つからないようだ。

 

「楽しかった! また乗りたい!」

「そうだな。また来た時に乗ろうな、スバル。ありゃ、どうしたんだ2人共?」

 

俺達の惨劇を知らないスバルが、?マークを浮かべて話しかけてくるけど、俺もティアナもそれに応える気力はない。

 

「あらら、少し休んだら今度はもっとゆっくり出来るアトラクションにしよっか?」

「う、うん。今度はティアの行きたい所に行こう! ティアはどこに行きたいの?」

「じゃあ……あそこ」

「どれどれ……え“っ!?」

 

まだ顔色が悪いティアナが弱弱しく指をさした先にあったのは、お化け屋敷の看板。

今度は、それを見たギンガの顔が真っ白になった。

 

 

こうして少し休んだ俺達がやってきたのはお化け屋敷だが、ここは魔法技術の発達したミッドチルダ。

さっきのコースターもそうだけど、地球よりも技術が発達しているのでそんじょそこらのお化け屋敷とは比べ物にならない。

立体映像でリアルな幽霊が出たり、ポルターガイスト現象も当たり前のように起こせる。

それに何より、お化け屋敷全体がすごくデカい。

学校と病院とホテルが1つになったような廃墟をモチーフにしているようで、真っ昼間で人だかりの中にあるにも関わらず見ているだけで怖い。

 

「大丈夫、ギンガ? 無理しなくていいんだよ?」

「ダイジョウブダYO、ファーザー」

「今度はギンガがかよ」

 

先ほどのコースターの時と同じく、今回はギンガがお化け屋敷を前に固まってしまった。

そんなギンガを尻目に、ティアナとスバルは目をキラキラさせている。

スバルって苦手なアトラクションはないのかな。

さて、ここもコースター同様に2人1組で入るようもので、ゲンヤさんとギンガは外で待っていて、ティーダとスバルとなった。

クイントさんは、お化け屋敷は1人でスリルを楽しみたいという事だ。

どこまで姐さん気質だなぁ。

 

「じゃ俺はギンガとここで待ってるからお前たちだけで 「行く!!」 お、おぅ? 大丈夫なのかギンガ?」

「うん、行く! 私も行きたい! だからいこっ、お兄ちゃん!」

「えっ? お、おい、ギンガ? そんなに引っ張るなよ。いててっ、また左手がぁー!?」

 

お化けが大の苦手なギンガはゲンヤさんと待っているはずだったのだが、ティアナとスバルが楽しそうなので触発されたのか、意気揚々と俺を引き摺りながらお化け屋敷に突入していった。

今回はシェルブリットを持っているので、念のため身体強化をしてもらったから左手がつぶれることはない。

ティアナよりも握力が強いギンガに握られたら粉砕されそうだ。

 

「で、意気揚々と入ってきたというのにさ、ギンガさんや」

「な、なななにかな、お兄ちゃん?」

「どうして目をつぶったまま俺の背中に張り付いているのかな?」

 

薄暗い屋敷に突入した途端、俺を引っ張っていたギンガが、目にも留まらぬ速さで俺の背中にがっしりとしがみついてきた。

しかも、両目もがっつりと閉じている。

 

「いや、いやいやいや、ナンデモナイヨー? ただせっかくお兄ちゃんと2人きりだから、ム、ムードをね?」

「………そういうセリフはあと10年くらいたってから言おうな」

 

セミのように背中に張り付かれてムードも何もあったもんじゃないんだが、しかもお化け屋敷で。

このままここにいても、他のお客さんに迷惑かかるので仕方なく先に進むことにした。

建物内は薄暗いとはいえ、足元はしっかり照らしだされていて、最低限の明かりはついている。

お化け屋敷としてのムードは満点だ。

 

「ひゃぁああ~!!? い、いま何か背中に~~!!」

 

ギンガの首に何か冷たい水でも落ちたのか、大暴れしだした。

で、当然その被害はギンガが張り付いている俺にくるわけで。

 

「いだだだっ! ギ、ギンガ、痛いから! つねるなぁ!」

 

身体強化魔法がなかったら背中の皮が引きちぎられてたかもなぁ……

 

「うぎゃぁ! だ、だれかいるの~!?」

 

どこからか生暖かい風が、まるで人が吐いた息のようにギンガの首筋を撫でるように吹いたら。

 

「ぐぐぐっ……ぎ、ぎぶぎぶ……」

 

パニクったギンガが俺の首をギュウギュウに締め付けてくる。

お化けよりも身内が怖いってどうなのよ……

 

「ぎゃーー! がいこつー!!」

「はぶっ!?」

 

目を瞑っている方が怖いと思ったギンガが恐る恐る目を開けると、そこにタイミングよく(悪く?)目の前に骸骨が大勢現れた。

俺は思いっきりギンガに突き飛ばされて、壁に激突した。

 

「あの、ぼく大丈夫?」

「お兄ちゃんは大変だね」

「あ、あははは……」

 

骸骨達に慰められたよ。

 

それからも……

 

「きゃー!? 化け猫―!?」

「今期の猫姉さん、綺麗でかっこいいよなー」

 

魔法で化けたのか、被り物ではなく首から上だけリアルな猫になった猫娘に追いかけられたり。

 

「く、くびが……」

「あぁ、首ならほら、ここにあるよ、お嬢ちゃん」

 

自分の生首を脇に抱えた騎士が立ちふさがったり。

 

「いちまいたりない……」

「わ、私の愛用の皿あげるからこないでぇ~!」

 

井戸の中から顔が半分ないお姉さんが現れたりしたが、そのたびになぜかギンガに突き飛ばされたりした。

 

「か、からだじゅうが、いたい……」

「ひくっ、っく……ごめんなさい、おにいちゃん」

 

もうギンガは限界で、半泣き状態だ。

 

「ほらぁ、もうすぐ出口につくはずだから、もう少しの辛抱だぞギンガ」

「う、うん」

 

お化けも段々でなくなってきて、もうすぐ出口かと思ったその時だった。

 

――バチバチッ

 

「えっ、な、なに? まっくら?」

「これは、停電かな」

 

突然何の前触れもなく建物内の明かりが全て消えてしまった。

足元を照らしていた明かりすらも消えている所を見ると、これは仕掛けではなく本当に停電したようだ。

動かずじっとしているのが良いと思うけど、こう真っ暗じゃギンガも怖いよな。

よしっ、俺が魔法で灯りをつけるか

 

「お兄ちゃん、こわいよぉ……」

「大丈夫だ、ギンガ。今灯りをつけるから。ちょっと待ってろよ」

 

こういう暗い所を明るくするときはどうするかは、教わっている。

魔力で小さな球を出してそれを灯りにするやり方や、全身を発光させるやり方など色々ある。

俺は人より魔力が多いから、全身を発光させた方が明るくなる。

まずは集中させて、魔力を全身から少しずつ出していくイメージ。

すると、すぐに俺の全身から赤い魔力がじわじわ浮かび上がってきて、段々と辺りを照らし始めた。

 

「どうだ、ギンガ、これで少しは明るく……」

「きゃーー! おばけーーー!」

 

――メキョリッ

 

「なんでさーーー!?」

 

なぜか知らないけど、突然ギンガに殴り飛ばされてしまった。

あまりに突然の事だったので、受け身も取れず俺はそのまま気を失った。

 

後で聞いた話では、赤い光を出す俺の姿がギンガには、人魂を連れた幽霊が現れたように見えて怖かったんだそうだ。

 

今日の俺、全身ボロボロ。

 

 

続く

 




はい、ティアナとギンガのターンでした(笑)
今までは精神的な女難でしたが、今回は物理的な女難が多い気が……

がんばれ健人(ォイ)

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