原作Stsで回想シーンでちらっと出たうついべんと回前編です。
『け、健人くん。すまないが、大至急救援に来てもらえないかな。できれば……ゼスト隊のみんなと一緒だと、助かる、な……』
というメッセージが地図付きでスカさんから届き、俺はゼスト隊と複数のモブ局員、それからアドバイザーとしてドゥーエ、ドゥーエの護衛としてティーダも同行する事になった。
ドゥーエは最初はスカさん側のスパイとして入局したけど、最近では地上本部とスカさん達ナンバーズの公式交渉役として活動している。
それでいいのか管理局。
で、そんな彼女がアドバイザーとして同行するのは当然かと思った。
けど、スカさんから示された今回のアジトは最近作られたものでドゥーエもまだ行った事がないのでこれを機会にティーダを連れて行ってみたいと、要はティーダとデート名目で付いてきたというわけだ。
「親元がピンチだって言うのにラブラブねぇ、お2人さん」
「ははっ、ティアもドゥーエさんに懐いていますしね」
「頑張ってティアちゃんにお姉ちゃんで呼ばせるのが最近の目標ですよ!」
メガーヌさんが言う皮肉にも惚気で返す2人。
一応スカさんからのSOSは今までにないほどシリアスな感じだったからもっとまじめにやってもいいと……あっ、ひょっとしてこれがゼスト隊全滅イベントか!?
具体的な時期は相変わらず不明だけど、確かなのは達が小学生の頃秘密任務で、のはず。
なんでかは知らないけど、今回の一件がそれに該当する気がする。気がする……んだけど、スカさんが関わってるとシリアスイベントとは思えないんだよなぁ。
ともかく、行ってみればわかるか。
スカさんのアジトは、色々な世界にあるが、今回のはとある管理世界の郊外にある山脈の中にある。
人も獣も寄り付かない険しい山脈と、立地的に秘密基地要素が満載なのでちょっとワクワクしていた。
が、やはりそこはスカさんのアジト。
『この先、200メートル右折で秘密基地だよ★』
『ここら辺雪崩発生注意!』
『飛行魔法は覚えてた方が便利だよ♪』
などなどと描かれた看板があちこちに設置されていた。
しかも、文字はネオンで描かれていて昼間なのに目立つほど激しく点滅している。
「これ、景観を損ねてると思うんだけど、ぶっ壊していいかしら?」
「ごめんなさいすみません! ドクターに代って謝りますから壊さないであげてください!」
たまらずクイントさんが拳を握ってぶち壊そうとしたが、その度にドゥーエが必死に止めていた。
そうしてやっとたどり着いたスカさんのアジト。
やっぱりと言うかそこには今までよりも数倍デカい看板が置かれていた。
しかも、今度はスカさん(殺生丸変装)の顔つき
『歓迎! ようこそ! ナンバーズ秘密☆基地へ』
――バキッ!
「あらぁ~ごめんなさいね。うっかり拳が当たってしまったわ♪」
「いえ、今のは破壊してくれて構いません……」
流石にドゥーエもアレは許容できなかったようだ。
念のため入口をモブ局員たちに任せて、俺達だけで投入した。
アジト内は電気が止まっているのか、電灯はあれどついてはいない。
非常灯らしきランプがあちこちにあるので、かろうじて通路が見える程度の明るさだ。
「おかしいわね。アジトがこんなに暗いわけないのだけど」
「外の看板に電気使いすぎて停電しちゃった、のかしら?」
クイントさんの言う通り、看板のネオン結構ビカビカ光ってたからなぁ、電気代も馬鹿にならなさそう。
でも、それなら外の看板も消えているはずだけど。
「ドクターの事だから、外の看板は外の看板で別に電源を確保しているはずよ。ちなみに発電は地熱や水力などだから環境には配慮しているわ」
「無駄に考えているのだな」
ゼスト隊長が感心したように、いや、あれは感心半分、呆れ半分だな。
道中の看板をなるべく直視しないようにしていたっけ。
「ドクターやナンバーズはどこにいるんだろ?」
「私達が入ったのは分かっているはずだから迎えが来てもいいと思うんだけど」
しかし、しばらく待っても誰かが来ることも通信が入ることもなかった。
仕方ないので、先に進む事にした。
うす暗い通路を慎重に進んでいくと、やがて分かれ道が現れた。
「仕方ない。俺と二乃、ティーダは右を行く。クイント、メガーヌは健人と共に左を調べてくれ。何かあったらすぐに連絡するように」
「「「了解!」」」
こうしてゼスト隊長達と別れ、クイントさんとメガーヌさんと共に調査をつづけた。
その時、ドゥーエは少し渋ったがティーダに宥められるとあっさりと指示に従った。
ドゥーエ、ティーダとイイ感じになったから俺への興味薄れただろうなと思ったのに、まだたまにナニカを狙ってくるんだよな。
「それにしても、ブライトさん達どうしたのかしらね。通信もつながらないなんて」
「ここまでなんの痕跡もないわね。みんな無事だといいけど」
メガーヌさんの言う通り、ここまでの道筋で何かがあった痕跡はなかった。
何かに襲われたのなら戦闘の跡はあるはず。
でも、停電しているって事は何かが起きたのは間違いない。
<マスター! 前方から何か複数の生命体が接近中だ!>
シェルブリットが警告した通り、前方から複数の足音と声のようなものが聞こえてきた。
俺達は、即座に戦闘態勢を整えた。
「数が、尋常じゃないわよ! 2人とも警戒して!」
「メガーヌ、援護をお願い! 健人、無理しちゃだめよ!」
「うん。クイントさんとメガーヌさんも無理しないで!」
何か得体のしれないものが尋常ではない数で接近している。
今まで何度か危ない任務を経験しているけど、今回はスカさん達が恐らく原作ゼスト隊が全滅した事に関わる事件。
自然と冷や汗が流れ、握った拳に力が入る。
まさかエイリアンなんて事はないよな。
「距離100……80……」
メガーヌさんがカウントしてくれているが、少し緊張しているようで声が強張っている。
――…ぁ!
――……~ぃ!
段々と声がハッキリと聞こえてくるようになったが、何かおかしい。
通路の奥から沢山の人影がこちらに向かってくるのが見えた。
「この足音、子供!?」
真っ先にそのことに気付いたのは、幼いギンガとスバルを子にもつクイントさんだった。
こちらに向かってくる人影はどうやら子供のようだ。
「わぁーい!」「やぁ~!」「キャハハッ!」
「「「えぇ~~!?」」」
なんとこちらに迫る数十体もの人影は全て子供だった。
しかも、その子供、全員が全く同じ姿と声をしていた。
「あれ? だれかいるよ?」「だれ?」「だれだろ?」
「きれいなひと」「だれー?」
その子供たちはみんな赤毛のショートカットをした、どこかスバルを連想させる子供たちだった。
「ちょっ、どういう事!? この子達誰!?」
「わぁ~みんな可愛いわねぇ。あら? うちの子達にちょっと似てる気がするわね?」
確かにこの子は可愛い。
が、いくら可愛くても同じ姿をした子供が数十体以上もワラワラと俺達を取り囲む図は、ちょっとしたホラーだ。
アレ? 待てよ? この子達見覚えあるぞ?
確かイノセントで、って事はまさか……
「ノーヴェ!?」
「「「「「「「「「はーい?」」」」」」」」」
思わず叫んでしまったら、ノーヴェっぽい幼女数十体が一斉に俺の方を向いた。
いや、普通に怖いから!
「あたしをよんだー?」「おにいちゃんだーれ?」「うーん?」
「なんでなまえをしってるのー?」
まずい。不用意に名前を呼んじゃったから、ノーヴェ?達が俺に詰め寄ってきた。
クイントさんとメガーヌさんはノーヴェ?達の波にもまれて、身動きが取れていない。
そこまで広くない通路がすし詰め状態だ!
「ねぇねぇ、なんでなんで?」「なんであたしをしってるの?」「だれ? だれ?」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」
ノーヴェ?達は目をキラキラさせて俺を取り囲んで、質問攻めをしてきた。
俺がその手の性癖の持ち主なら狂喜乱舞する絵面だけど……あ、これはこれで天国かも。
「はっ!? いかんいかん、これは孔明の罠だ」
「わけのわからない事言ってないで、健人君、この子達の事知ってるの? あ、髪を引っ張らないでー!」
さっきからメガーヌさんはノーヴェ?達に文字通り髪とか振り回されている。
「わぁ、可愛いわねぇ。ほーらたかいたかーい!」
「きゃはっ! たかいたかい!」「あぁ~あたしもだっこ、だっこぉ~!」「つぎあたしー!」
対照的に、クイントさんは抱きかかえたりおぶったりと高速でノーヴェ?達をあやしている。
「ねぇねぇ、おにいちゃんだーれ?」「あそぼっ、あそぼっ!」「おなかすいてきちゃった」
「うーん、カオスすぎる」
俺も、ノーヴェ?達に纏わりつかれて身動きが取れない。
確かノーヴェは、俺がスカさんのアジトに初めて迷い込んだ時に姿をみている。
けど、あの時は今みたいな幼女ではなくViVidで見たような大人の女性体だったはず……あの時は全裸だったな。
恐らくスカさんの仕業なのだろうけど、どうしてこうなったのか……
『こちらティーダ! クイントさん、メガーヌさん、健人君、聞こえますか!?』
その時、ティーダから緊急通信が入った。
「こちら健人です。どうしましたか? こっち今ちょっと立て込んでて……」
『こっちも緊急事態なんだよ。ゼスト隊長が……』
ティーダと繋がった通信ウインドウが開くと、そこに映し出されていたのは、口元が血まみれでぐったりしてるゼスト隊長の姿だった。
続く
はい、うついべんとです。
ノーヴェ?達のイメージはまんまリリカルなのはINNOCENTに出てきた、中島ノーヴェです。
本当はもっと後に出て来る予定だったんだけど、ネタが浮かんだので早めに登場しました。
さてはて、ゼスト隊長に一体なにがあったのでしょーか?(笑)