ティアナ襲来と言うイベントをなんとか残り越えて数日後、俺は新しいイベントを乗り越えなければいけなかった。
「「「せーの、じゃんけんぽん!」」」
「ねぇ、この光景もう見慣れちゃったのだけど、毎回何をやっているのよ……」
アリシアが呆れ顔で言うのも無理はない。
今、テスタロッサ+ナカジマ家にはじゃんけんを繰り広げているオーリス親子とナンバーズ、その様子を苦笑いを浮かべて見守るティーダという大人数が詰めかけている。
いや、なんでレジアス中将とオーリスさんもいるんだよ!
スカさんやウーノさん達までいるのは、もう諦めている。
「授業参観があると毎回こうだからなぁ」
そう。なんで集まったかと言うと、来週私立聖祥大学付属小学校で行われるとある学校イベント、授業参観の為だ。
私立聖祥大学付属小学校と中学校は、授業参観は親以外でも関係者なら誰が来てもいい事にはなっている。
だけどせっかくなら親に来てもらいたいと思うのが子心。
俺らが小学生だった頃、なのはは両親が交互に参加。
フェイトとアリシアは、プレシアとリンディさんが交互に参加。
はやての時は、シグナムとシャマル、アインスが交互に参加した。
で、俺の時はクイントさん、ゲンヤさん、になぜか、ゼストさん、レジアスさん、スカさん達まで大勢で来ようとしていた。
流石に普段はクイントさんかゲンヤさんに来てもらい、2人が来れない時だけゼストさん達に来てもらう事にしていた。
その度にこうやってじゃんけんやくじ引きで決めていたのだが・・・今回は色々と別だ。
なにせ授業参観の対象にギンガ、スバル、ノーヴェ、ウェンディ、セッテの5人が増えた。
しかも、全員クラスはバラバラなので、クイントさんとゲンヤさんでは手が足りない。
で、お約束と言うか案の定と言うか助っ人希望としてみんな大集合してしまったというわけだ。
ちなみにティアナはティーダが授業参観に来ることになっている。
「ところでクイントさんとゲンヤさんはどっちに行くの?」
「あぁ、俺がギンガ、クイントはスバルの方に行くさ。セッテが俺達は長くいるお姉ちゃん達の方に行った方がいいってノーヴェとウェンディを説得してくれたんだよ」
「ホント、一番幼いのにしっかりしてるわね」
セッテは一番年下なのに、結構こういう所はしっかり出来てていい子だ。
その話題のセッテは意を決した表情を浮かべて俺を見上げてきた。
「ん? どうしたセッテ?」
「お兄ちゃん、お願いがあるの」
「うん。俺で出来る事ならいいぞ」
そう言うとセッテは満面の笑みでこんな爆弾を投下してきた。
「私の授業参観、お兄ちゃんに来て欲しいの」
授業参観当日。
セッテのクラスには見知らぬ男性が親族の代わりと言う事で参加している。
この男性の正体は、何を隠そう俺である。
確かにさ、うちの学校は授業参観誰が来てもいいって言ったさ。
俺が出来る事なら何でもするって言ったさ。
でも、これは流石に限度ってもんがあるんじゃないかな?
セッテに上目遣いで頼まれたら断れないけどさぁ……
私立聖祥大学付属小学校の授業参観は普通の授業参観と違って、保護者も参加してお祭りみたいな事する丸一日使った一大イベントなので、中学校は休みになる。
とはいえ、俺がそのまま授業参観に参加するのはどうかと思ったので、この変装である。
ちなみに変装に魔法は一切使っていない。
元々俺は、中学に入って背が高くガタイも良くなったので大人の男性に見えなくもない。
で、後はプレシアに化粧を施してもらえれば、どこにでもいそうなモブキャラっぽい大人の男性キャラの完成!
変装時の俺を観たフェイト達は、似合っていると褒めてくれたが、アリシアとアルフは笑いを堪えてるのバレバレだった
フェイトだけは純粋に褒めてくれる、だけど素直に喜べないんだよなぁ。
ちなみにじゃんけんの結果、ノーヴェの所にはゼストさん、ウェンディの所にはスカさんが行くことになった。
なんだろう、物凄く不安な組み合わせだ。
「さて、まずは今日来てくれたお母さんやお父さん達の似顔絵を描いてみましょうか」
午前のレクレーションは、美術室での保護者の似顔絵お絵かきとなった。
ギンガのクラスは親子球技大会で、スバルのクラスは自由工作、ノーヴェは料理教室、ウェンディは実験、などなどクラスによって様々だ。
よくこんなに特別教室あるよなうちの学校……
「で、このポーズの意味は?」
俺がセッテに頼まれてポーズをとってはいるが、それは腰を低くして右腕を突き出し左手をかるく添えるポーズ。
ってこれスクライドのカズマじゃん!
「前見た時カッコよかったから、お兄ちゃんにピッタリ」
そりゃシェルブリットを使う時によくこのポーズになるけどさ、今は勿論シェルブリットを装着してないし別人に変装しているので気恥ずかしさがすごい。
と、思ったけど、他の保護者を見れば、ギア2のポーズしてたり、ジョジョ立ちしてたり、どっかの聖闘士の技真似したりと、とにかく多種多様なポーズをしているので気にする事はないか。
流石に数人は顔を赤くして恥ずかしそうだけどね。
サービスマンのポーズを頼まれた母親がいたが、流石に全力全開で拒否していた。
とにかく、セッテと同じクラスのヴィータが今日は仕事で不参加で良かった。
「お兄ちゃん、いつものようにもう少し左手の位置を引いてくれる?」
「結構細かく見てるんだな!」
こうして、描き上がった絵を皆で見ていく事になったんだが。
「セッテちゃん、これ。上手に描けているけど、中学校にいる草薙健人君よね? どうして折角今日遠くから来てくれたお兄ちゃんを描いてあげなかったの? しかも妙にカッコいいわね」
「あっ、間違えた」
セッテは変装した今の俺の姿じゃなく、素の俺の姿を描いていた。
シェルブリットを描いてないのは最低限いいけどさ。
<どうせなら俺も描いてくれれば良かったのによ>
<お前まで描いたらまんまカズマになっちまうよ!>
シェルブリットは不服そうだ。
そして、昼食の時間。
各々が親と作ったお弁当を持参しているが、セッテは1人で作ると言いだした。。
しかも、わざわざ地球での家ではなく、ミッドチルダの家のキッチンでギンガ達と作るという徹底ぶりだ。
まぁ、ノーヴェは昼食は午前の調理実習でゼストさんと作るので用意はしていない。
「セッテは一体何を作ってきたんだ?」
「私はね。これ、おそば」
「おそば!?」
セッテがカバンから取り出したのは確かに大きなパックに入った蕎麦だ。
他にもそばつゆが入った瓶やら大根おろしや納豆やら具材が色々入った容器を次々と取り出して机に並べいく。
いやいやいや、そのカバンって四次元ポケットか何かか?
「はい。納豆蕎麦どうぞー」
「うん。ありがとう、とても美味しそうだけど。あれ? これを昨日からずっと作ってたの?」
確かに色々な具材はあるけど、随分と長い時間かけて用意していた食事にしては、少し違和感があった。
「うん。蕎麦は割と早く出来たけど、納豆に時間かかっちゃった」
「ん? んん? 納豆に時間かかった? あれ、もしかして……」
「蕎麦も納豆もイチから作った。あとそばつゆも色々なつゆ研究して自作でブレンドした。」
そこからかーい!
蕎麦粉から蕎麦打つのはまだ分かるけど、納豆は発酵からやってたのかよ。
しかもそばつゆの研究までしたのかよ。そりゃ時間かかるな。
「ギンガお姉ちゃんとスバルお姉ちゃんは、前にピザをピザ窯から作ってたって言ってたから、私なんかまだまだ」
「いや、あの二人を基準にするのはおかしいから……」
俺がここで初めて体験した運動会の時、ギンガ達は大量に料理作ってきたのには驚いたけど、後で聞いたらピザはオーブンじゃ満足に焼けずにピザ窯を一から作り出したって言ってたのには更に驚いたなぁ。
「みんな蕎麦は作った事なさそうだから、頑張った」
「セッテ、ギンガ達の真似をしなくていいんだよ? 市販の麺を使うとか、そこまで手が込み過ぎない程度でいいんだよ?」
セッテって意外とギンガやスバルへの対抗心あるんだよな。
2人を嫌っているわけじゃない。むしろ物凄く好きだ。
けど、時折対抗心を燃やす事がある。
「お兄ちゃん、うどん派だった?」
「そういう問題じゃない」
どちらかと言えば蕎麦派だ。
なのでセッテが色々な意味で手作りした納豆蕎麦はとてもおいしくて大好物になった。
「ちなみに蕎麦粉はウーノお姉ちゃんの自家製」
「何やってんのアノ人!?」
午後は、みんなが書いた作文を発表する授業で、題材は「家族」もしくは「将来の夢」だ。
こういう所は小学校らしいな、俺の時も作文書かされたけど、なぜか読書感想文だったな。
みんな、お花屋さんとか小学生らしい夢や、家族の自慢話書いたんだろう。
「私の将来の夢は、冬虫夏草の専門店です!」
「僕のお父さんは、毎日血まみれで帰ってきます。でも、全部返り血だと豪快に笑っています」
……訂正、どこが小学生らしい作文だ。
先生も冷や汗ダラダラじゃないか、なんで他の保護者の方々は動揺せずに微笑ましそうな顔してるんだよ
「そ、それじゃあ次はセッテちゃんの番ね」
何だろう、物凄く嫌な予感がしてきた。
「はい。私は家族は皆好きだけど、健人お兄ちゃんが一番大好きです」
やっぱりそう来たかー!
ま、まぁ、この程度なら想定内……
「私と健人お兄ちゃんとは、血が繋がっていないので結婚出来ます。でも、それは他のお姉ちゃん達も一緒です」
ん~生々しくなってきたぞー?
「健人お兄ちゃんとは一緒の家に住んでいます。なので将来の為に既成事実を作ろうと日々頑張っています」
おーい、先生。ここらへんで止めてくれ!
「毎日の食事や掃除をお姉ちゃん達と交代で行っています」
ここだけならまだのほほんとしてるんだよなぁ……周りの保護者の皆さんも今までで一番微笑ましい表情。
「毎晩一緒に風呂に入ろうとしますが、いつもお姉ちゃんやお母さんがいるのでなかなか二人きりで入れません。夜中にこっそり健人お兄ちゃんの部屋に入ろうとしても結界があって入れません」
おいおいおい、そろそろ力づくでも止めないと……でも手遅れだよなー!
その後も口に出せない色々激しい事を書いていていた。
ちなみに担任の先生はとっくの昔に固まっていた。
あぁ、本当に変装してきてよかった。
<なぁ、マスター。今更だけどさ>
<……どうしたシェルブリット>
<今日の授業参観、作文の時間はリアルタイムでウーノたちに音声付きの映像を送っているが良かったのか? あと保存もしてるぞ>
<・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・>
ワスレテタ~!
午後の作文の授業だけはウーノ達がアジトで見てるんだった―!
しかも、クイントさんやスカさんには記録しておいてと頼まれたんだった!
「最後に、私の夢は、健人お兄ちゃんの沢山のお嫁さんの1人になる事です」
せめてそこはただのお嫁さんにしてくれー! なんだよ沢山のお嫁さんって!!
周りは最初は微笑ましく見守ってくれていたが、途中から困惑や同情が混ざった視線を向けられていた。
俺は、羞恥心が臨海突破して、顔が真紅よりも赤くなっていたが化粧のおかげでどうにか真顔で乗り切れた。
兎も角、やっと授業参観は終わりだ。
長かったなぁ……
「これで今日の授業参観は終わります。あ、セッテちゃんの保護者の方、少し残ってくださいね」
あ、はい。
なんか、先生の笑顔が怖いが、これが普通の反応だと思う。
その後、俺自身には特に何も言われなかった。
ただ、心の底からお疲れさまでした。と労われた。
いやいや、先生こそお疲れさまでしただよ。
後、クイントさんとゲンヤさんはそれぞれ呼び出されていた。
帰宅してからのアリシアとアルフの同情するような目線に耐え切れず、俺はすぐに自室に籠った。
フェイトですら物凄くぎこちない苦笑いを浮かべるのが、やっと言った感じだった。
スカさんは動画を見て、笑いすぎてお腹を壊したらしい。
「ゼスト隊長……俺、しばらく管理局の仕事に集中します……」
「あ、あぁ、わかったから、ハイライトを消すのをやめろ……」
数日間、学校に行かずに仕事に打ち込んだ。
周りの反応がどうなっているか怖かった
そして、嫌々ながらも学校に通ったのだが、周りの反応が全く何も変わっていたなかった。
その事を疑問に思っていると。
「今更何を言ってるんだ?」
「セッテさんの担任は、今年先生になったばかりだから免疫がなかったんだね」
と楯宮や俺のクラスの担任に真顔で言われた……俺の学校での評判ってどーなっているんだよ。
ちなみにセッテが今回の件で蕎麦打ちや納豆造りにのめりこんで、街中の蕎麦屋や納豆屋に弟子入り志願するようになったのは、また別の話。
「私、和食専門店を開くのがもう一つの夢」
「なら最初からその夢だけを作文にしてくれぇ~!!」
続く
1年以上もほっといたあげく、俺は一体何を書いてるんだろうな……(超トオイメ)