セッテの大暴走授業参観が終わった……が、心に言い表せない傷と疲労が残った。
「なのでしばらくミッドチルダで仕事に打ち込みたいので任務ください」
「え、えぇ、分かったわ、分かったから目に光を戻して……」
あっちの後始末をクイントさん達に押し付けて、俺は時空管理局地上本部でオーリスさんから仕事を貰う事にした。
しばらく、出来れば1週間ほど地球に戻りたくない、学校に行きたくない……
「はぁ、重症ね。まぁアレは無理もないけど」
「えっ? 待ってください。まだ何があったか言ってないんですけど、まさかあの授業参観を……」
「えぇ、中継で観たわ。私ととお…レジアス中将とね」
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「そんなに落ち込む事ないわよ。あれくらいは年頃の女の子なら普通だから、ね? ねっ?」
「普通、あれが普通……」
普通ってなんだろうね。
「とにかく、今来てくれたのはありがたいわ。ちょっと厄介な案件あってね、手が足りないからなかなか人員回せなくて」
案件って事は事件や事故ではないので優先度は低いか。
地上本部は、前よりは人員が増えて人手不足は改善されたとはいえ、事件や事故処理やらが多いので万年人手は足りない。
「で、厄介な案件って?」
「実は、最近郊外で暴走族が騒いでてね。大声で高速を走り回ってるだけだし、車通りの少ない時間帯だから特に被害はないのだけど、いつ大事故になってもおかしくないから少なからず不安の声上がっているのよ」
市街地なら兎も角、郊外の人がいない高速を暴走しているので騒音問題にはなってないが、その分優先度が低くなり、人員を割り振れないのだろう。
「最近、危険物質の密売が相次いでて、そっちに手を回さないといけないし」
「なるほど、それなら自分がやりますよ」
さて、どうやって追跡するかな、空からか、シェルブリットのローラーブーツモードで追尾するかな。
「もしもの為にバイクで追跡してもらうわ。彼と一緒にね」
「彼?」
今回、俺の相棒として組む事になったのはティーダだった。
翌日、目撃証言のあるミッドチルダ郊外を走る高速道路の待機エリアで噂の暴走族を待つことにした。
この暴走族、夜中ではなくまだ日の明るい夕方ごろに現れるらしい。
なんかイメージと違うなぁ。
「でも、ティアの所にいなくて良かったんですか、ティーダさん?」
ティーダは、ティアナの授業参観あるからと多めに有休取っていたはずだ。
「大丈夫だよ、申請分は全部休めたしね。ティアナも家でプレシアさんとアルフがティアを見ていてくれるからね。」
「それならいいですけど。あと、ティーダさんバイク変えたんですね」
ティーダのバイクは何度か乗せてもらった事あるけど、今乗っているサイドカー付きのバイクは見た事がない。
「あぁ、これはスカリエッティ博士から貰ったんだよ、ドゥーエさん経由でね」
「なるほど、ドクターからかーそうかー」
道理で、見た目がまんま……サイドバッシャーなわけだ。
せめて色は変えろよ……
「まさか、このバイク、変形したりする?」
「よく分かったね。でも、あまり使い道がないんだよね。山道や悪路走る時には役立つけど、今度ティアナ連れて登山してみようかと思ってさ」
頭の中でエッホエッホしながら登山するサイドバッシャーバトルモードが浮かんだ……シュールすぎる。
他にもサイドバッシャーの機能を色々聞いていると、後ろから爆音と共にバイク集団がやってきた。
「やっときた、って速っ!」
そのバイク集団は制限時速を軽く超える速さで目の前を走り去っていった。
「追いかけるよ! 捕まってて!」
「はいっ!」
向こうがどれだけ改造バイクでもこっちは本家本元(?)の化け物バイク、速度が違う。
あっという間に暴走族に追いついた。
と、ここでバイクに着いているスピーカーから。
「海のバカヤロー!」
「「「海のバカヤロー!」」」
「山のバカヤロー!」
「「「山のバカヤロー!」」」
と、叫び声が聞こえてきた。
いや、ここ山はあるけど海は近くにないから。
「な、何なんだあの珍走団」
「とにかく一旦止めようか。はい、そこの君たち、こちらは時空管理局です! 暴走行為は危険ですから一旦次の停車スペースで停車してください!」
こっちもバイクのスピーカーで停止を呼びかけるが、珍走団は無反応。
「こちらは時空管理局ティーダ・ランスター! これ以上無視するような実力行使して全員逮捕しますよ!」
「ん~? ティーダ?」
ティーダの名前を聞いて、珍走団は一斉に停車した。
そして、リーダーと思われる男がジッとティーダを睨みつけるように見てきた。
「……あぁ~! てめぇ、ドゥーエさんと一緒にいた男!」
えっ? なんでドゥーエの名前が出て来るんだ?
雲行きが怪しくなってきた。
「えっと、あの君は?」
「おい、お前! お前がドゥーエさんの彼氏か!?」
「あ、はい。ドゥーエさんは僕の彼女、です」
それを聞いてリーダーは真っ白になった後、すぐに真っ赤になった。
なんとなーくこれからの展開読めてきた。
「……野郎ども! こいつをぶっ……ん? お前は、確か……お前もぶっ飛ばす」
「なんでさ!?」
なぜか俺にまで飛び火してる。
「おい、お前ら! こいつらぶっ潰すぞ!」
「「「うおぉ~!!」」」
あーあ、何か知らないけど向こうはやる気満々だこりゃ。
「ティーダさん、とっととやっちまいましょう」
「しょうがないね。健人君は射撃任せた」
「了解!」
ティーダも諦めの表情を浮かべて、サイドバッシャーを走らせた。
シェルブリットの手首の装甲が開く精密射撃モードにして、まずは手近なバイクのタイヤに向けた。
「くらえ!」
シェルブリットから放たれた魔弾がバイクに命中すると、赤い塊となってタイヤを固定させた。
「なんだこりゃ!?」
「動かねぇぞ!」
「特性のトリモチ弾だよ!」
サイドバッシャーが高速で珍走団の間を駆け抜ける。
―ドドドッ!
と、同時にシェルブリットからのトリモチ弾が彼らのバイクを次々と走行不能にさせて行った。
今回俺とティーダが組む事になった理由はこのコンビネーションがあったからだ。
ティーダのバイク捌きは地上本部でも随一だ。
そして、俺のシェルブリットは改良されたおかげで攻撃だけじゃなく、相手を拘束させるトリモチ弾まで撃てるようになり、暴走族を相手にするのにはうってつけだった。
こうしてリーダーのバイクもあっという間に拘束したが、あいつらはまだやる気らしい。
「くそっ、たかがバイクを止められたくらいで俺達を止められると思うなよ!」
バイクから降りてなおも抵抗しようとしてきた、無駄な事を。
「じゃあ、今度は僕がやる番だな! 健人君!」
「はい!」
俺がサイドカーから降りてからティーダがスイッチを押すとサイドバッシャーがバイクから変形してロボ、バトルモードへと変形した。
「な、なんだそのバイクは!? てかバイクじゃないだろ!」
「文句は、スカリエッティ博士に言って、ね!」
ロボになったサイドバッシャーから沢山のミサイルが放たれた。
が、このミサイル破壊兵器などではない。
「し、質量兵器だとー!?」
「そんなわけないでしょ」
ミサイルは空中で爆発して、赤い粉を辺り一面に巻き散らかした。
「エホッ、ゲホッ……な、なんだこりゃ」
「か、辛い!」
「喉がいてぇ!」
サイドバッシャーは原作同様にバルカンとミサイルが装備されているが、どちらも麻痺弾や睡眠弾など非殺傷装備だ。
今のミサイルに装填されていたのもただの唐辛子だ。
サイドバッシャー、意外と山道ドライブ以外にも使い道多そうだな。
暴走族を鎮圧したところで、呼んでおいた応援の局員達がやってきた。
「お疲れ様。ティーダ君、健人君、ケガはない?」
「ドゥーエさん!? どうしてここに!?」
「俺が呼んだんですよ、どうやらドゥーエさんを知ってるみたいなんで」
「私を? あ、あぁ~そういえば見た事ある顔がいくつかあるわね」
暴走族を見たドゥーエの額には冷や汗が浮かび、目が泳いでいる。
その時、暴走族のリーダーが手錠されたまま局員を突き飛ばしてこっちに向かってきた。。
すぐに身構えたが、俺達には目もくれずドゥーエに向かっていき目をキラキラさせている
「あ、ドゥーエの姉御! 会いたかったですぜ!」
「「ドゥーエの姉御??」」
「あっちゃぁ~…」
と、ここでリーダーの懐から何か写真のようなものが落ちてきた。
「なんだコレ」
「そ、それは見ちゃダメ!!」
ドゥーエを無視して写真を見ると、そこに映っていたのは昭和の特攻服に身をつづんでバイクにまたがるドゥーエの姿。
「ドゥーエさん??」
「……あなたに出会う前、ドクターの無茶ぶりでストレス溜まった時、よくここら辺走ってたのよ」
ドゥーエによると、俺に出会う前、まだ悪い事をしていた時だったようだ。
本場の暴走族その姿に見惚れた暴走族に声をかけられ、管理局にばれないように山奥とかでレースもやったらしい。
そんなある時、俺に出会って
で、しばらくして暴走族のリーダーが街でティーダとデートする楽しそうなドゥーエを見かけて、嫉妬心を全開にして暴走族を復活させた。
真夜中や住宅街とかで暴走行為をしなかったのは、ドゥーエを教えを少しでも守ろうとした結果だそうだ。
そして、ドゥーエの彼氏であるティーダが現れてプッツンしたそうだ。
「はあぁ~~~……」
話を聞いてため息しかでない。
「ご、ごめんなさいね二人とも。なんだか迷惑かけちゃったみたいで」
「いえ、事情が分かったんで納得しましたよ、あはは」
ティーダも苦笑いしか出ない。
「ティーダさんはまだいいけど、俺はどうして目の敵に?」
「……ドゥーエの姉御の見かけた後で、美女と美少女達に囲まれてイチャイチャしてるお前を観たんだよ……」
ちょうど、クイントさんやギンガ達と買い物していたのを見かけたのかな。
「あぁ、それで嫉妬して……って完全な逆恨みだろうが!!」
それに家の中なら兎も角外ではイチャイチャしていない‥…はず、多分。
その後、暴走族たちは特に犯罪行為をしていたわけじゃないので厳重注意と奉仕活動を命じられたそうだ。
「彼らも健人君に頭突きしてもらった方がいいかしら?」
「絶対に断る!」
それにしても、全然全く気分転換にならなかったなぁ。
続く
珍しくヒロインが全く出ない回でしたー(笑)