まいごのまいごのおおかみさん   作:Aデュオ

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23話 Flandre

 

 

 

 この紅魔館の日常で、物事に何かしらスコールが絡むと本当に面白い。

 いや、厳密に言うなら、面白いだけじゃあないのだけれど。

 何にせよ、プラスの方向へ物事が進むのだけは確かだから、ある意味安心して楽しめるという素晴らしい仕様ですわ。

 

 フラン様とお嬢様の和解に始まり、紅魔館その物の雰囲気が文字通り軽くなって、友人が増えて。

 妖怪の賢者と名高い、かの隙間に潜む大妖、八雲紫さんとも顔見知りになれましたし。

 胡散臭いと評判の彼女でしたが、中々に話の判る素敵な淑女さんといった所で、噂は当てにならないと改めて実感したものです。

 ……ご本人の前でこの事を呟いてしまった所、紫さんは顔を輝かせ、藍さんは信じられない物を見たとばかりに目を剥いておられましたが。

 機会があれば、お二人とお茶会などしたいものです。

 あ、藍さんの式……紫さんの式である藍さんが更に式を持つというのは不思議ですけど、あの可愛らしい黒猫さんも一緒に。

 腕によりをかけて、お茶菓子と紅茶を準備致しましょう。

 

「咲夜さーん、そっちのお菓子できましたぁ?」

「ええ、今最後の飾りつけが終わったところ」

 

 お菓子を作りながらつらつらと頭の中で流していた考え事を終わらせ、できた物を飾り皿へ載せ、準備は万端。

 メインはお客様から頂いたばかりの桃を使用したタルトとレアチーズケーキに、少しばかり時間操作をして作ったリキュール。

 頂いた物をそのままお客様にお出しするのは失礼かとも思いましたが、先ほどスコールの部屋にて手渡された際に頂いたお言葉で使用を決意。

 見ているだけで癒される笑顔を浮かべて『果物を使ったお菓子作りがお上手だと文様からお伺いしましたので、よろしければ!』という善意が凝縮されたような言葉を頂戴してしまったら、もう使うしかないでしょう?

 ある意味、私への挑戦です。

 まずは気合を入れて胃袋を握る所から始めましょう。

 そしてあの可愛らしい笑顔を堪能するんです!!

 心ゆくまで愛でてあげましょう!

 

「……あー……スコールの部屋が近づいてきたからかなぁ……」

「どうかした?」

「いえ、何でもありませんよ。咲夜さんは通常運転だなーって思ってただけです」

「何よそれ?」

 

 

 

 

 

 

 

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「おぉ……おー!」

 

 フランさん!フランさん!

 どうしましょう可愛らしい!!

 こんなにきらっきらした笑顔なんて久々に見ました!

 

「夢中だねぇ」

 

 わ、ちょ、椛さん!?

 そんな気を使って触られると逆にくすぐったいですっ!

 

「え、あ、ごめんなさい!」

 

 ふぉ!?

 ひげぇぇぇ!?おひげを巻き込んで思いっきり引っ張らないでぇぇぇ!

 

「あぁあ!?ご、ごめんなさいごめんなさいいいい!」

「でもどこか嬉しそうなご両名、と。……うん、平和だねぇ」

 

 スコールの部屋へ窓から直接突撃してしばらく。

 椛さんも最初はちょっと緊張しつつもふわふわした笑顔を浮かべてお喋りをしていたのに、気づけばいつもの光景に。

 元々ご機嫌だったのに、お喋りで更にご機嫌になって能力の強度がうなぎのぼりだったし……。

 まぁスコールの能力と毛並みなら仕方がないよね、うん。

 咲夜の溺愛っぷりに磨きがかかってきて、さらさらもふもふいい香り、だし。

 パチュリーが土と金と火の魔法でさくっと拡張したお風呂で、毎日一緒に入っては満足げな顔でいい仕事をしましたわ、なんて呟くだけはある。

 もこもこと巨大な泡玉みたいなスコールが最近のツボらしいし。

 たまに泡が目に入って、こしこしと目を擦る仕草も堪りませんとの事だけど、うん……。

 気持ちはわからないでもないけど、言動が少しずつ変態っぽくなってるのが気になると言えば気になるかなぁ。

 でも咲夜だからなぁ……仕方ないのかなぁ……?

 何にせよ、そんな状況にスコールも最初は居た堪れなかったらしいけど、咲夜の趣味の領域に入ったのを悟ってからは遠慮せずに甘え放題。

 それがさらに咲夜の琴線を刺激する、と。

 見事なループだよね。

 

「ってあぁぁぁ一本抜けちゃいました!?」

 

 ほあぁぁ!?

 

 ……何だろう、この混沌っぷり。

 いつもの光景だと思ってたけど、いつも以上に飛ばしてるね。

 

「どうしましょうこれ!生えますか!?植えますか!?」

「っ!?」

 

 スコールが残していた駄菓子の、チューペットとかいう甘いチープな味わいのジュースをまったりと飲んでいた矢先。

 抜けたヒゲを持ったままおろおろぱたぱたしていた椛さんの、見るからに混乱の極みな状態から繰り出された言葉。

 

 う、植えますか、って……!

 思わず噴出しそうになったよ…………って、あぁ……まずいなぁ。

 努めて冷静に、まったりとを心がけていたのに、こっちの方に大きく傾いちゃった。

 こうなると後はスコールの能力で、加速度的にテンションの青天井までトップスピードで突き抜けるだけ。

 ってこんな思考が出てきた段階でもう無理。

 スコール、恐ろしい子……!

 

「やりました!くっつきましたよ!!」

「植えたの!?」

 

 むしろ植わるの!?

 えっ……ただくっついてるだけじゃないの?

 

 驚愕のままにスコールをじっと見つめてみる。

 スコール自身も信じられないって風だけど、自分でヒゲをちょいちょい触ってみて、確信した模様。

 

 嘘でしょう……?……本当に感触がありますよ!?

 

「ほら!引っ張っても落ちません!」

「……うわぁ、本当にくっついてる」

 

 ちょ、ちょっと何ですかフランさん、その妙なナマモノを見るような目は!

 まさかこんな所でそんな顔をされるなんて夢にも思いませんでしたよ……?

 

「いや、まさか本当に抜けたヒゲが植えなおせるなんて…………そんな所でも規格外なんだね、スコール」

 

 フランさんやレミリアさんだってさらっと自己再生するじゃないですか……。

 何だって私だけそんな目で見られなきゃいけないんです!?

 

「私達はそういう種族だし」

 

 一刀両断……!

 

「戦わなきゃ、現実と!」

 

 既に打ちのめされた気がします……もぅ!

 

「わ、きゃあっ!?」

 

 いつもの如く拗ねて、くいくいとおひげの生え具合をチェックしていた椛さんを抱え込んでゆーらゆら。

 仰向けで抱え込んだまま転がってみたり、揺らしてみたり。

『きゃあっ!』なんて可愛らしい悲鳴を上げながら堪能してる椛さんのおかげでさらっと機嫌をなおして、ぽんと空中に放り出してからまたお腹でキャッチ、なんて真似までし始めたスコール。

 自分に甘えてくる『可愛い子』には、これでもかってくらいにサービス精神旺盛になるよね。

 何を以って可愛いとするかはスコールのみぞ知る、だけど。

 何だかんだで一番スコールの世話をしてるのが咲夜だから、趣味が似てきたのかなぁ。

 っと、ノックの音。

 咲夜たちの準備ができたのかな?

 

「お待たせ致し……まし……た」

「……咲夜さん?咲夜さーん?」

 

 ノックへの私の返事を聞いて、ドアを開けたまま固まった咲夜。

 その後ろでは芸術的な運搬能力を披露する美鈴が、困った声を上げながら中を覗きこんで『あ、いつものですね』とばかりに苦笑を浮かべる。

 両手にお皿、二の腕にお皿、肩に小鉢、頭に蒸篭。

 全部微動だにしないあたり、流石美鈴。

 ……若干現実逃避が入ったけど、あぁ、これは来るね、間違いなく来るよ。

 

 

 

 

 

 ……あぁ、来たね。

 やっぱり時間を止めたみたい。

 元からあった小さな卓袱台の上には、咲夜が作ったらしい綺麗な桃のタルトとレアチーズケーキ。

 その横には壁際に立てかけたままだった別の卓袱台に、美鈴が持っていたお菓子の数々。

 そして、何より。

 ご機嫌にごろごろしているスコールの横で、予備知識無しだったら思わず見惚れてしまうような笑顔でスコールに抱かれた椛さんの頭を撫でている咲夜の姿。

 ちょっと頬を染めながらおろおろしてる椛さんにちょっとキュンとしちゃった。

 よし、まざろう、うん。

 こういう時は端から見てるよりも混じったほうが楽しめるだろうし。

 というわけでとーぅ!

 

「あら、フラン様もですか」

「え、あ……あれ?」

「椛さん、さっきから混乱してばっかりだねぇ」

 

 ぽふんとスコールのお腹に着弾。

 そのまま椛さんを抱きしめて毛並みの海へダイビング。

 いやぁ、いいご身分だね、我ながら!

 

 

 

 

 

 

 

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 結局いつもの如く、騒ぎに反応して起き出して来たお姉さまも巻き込んでの宴会に突入。

 いや、うん、冷静になってみれば最近の宴会率がすごいよね。

 皆お酒好きっていうのもあって、集まればとりあえず『じゃあ飲もうか』といった具合だし。

 咲夜が毎回手を変え品を変え、色んなお酒を出すからまた盛り上がるし。

 しかも今日なんて、どこから聞きつけてきたのか、いつの間にか八雲の三人組までいるし。

 ……あ、また果物を差し入れてくれたからお誘いしたのね。

 でも苦手なんだよね、紫さん。

 あのスキマが開く瞬間の感覚は未だに慣れないし。

 でもあの感覚に慣れるのもどうかと思う。

 恐怖が麻痺してるだけだもんね、それ。

 んー……何とかならないものかなぁ。

 

「ふむ、面白い感性をしていますわね、妹さんは」

「っ!?」

「スキマの中身が気色悪いとは良く言われますけれど、開く瞬間については初めてですわ」

 

 ……ちょっとスコールの気持ちがわかった。

 内面をさらっと読まれるのって怖いね!

 うん、何で?

 今、私は何もしていなかったし、そもそも紫さんの方を向いてすらいないのに、何でわかるの?

 噂に聞くさとり妖怪さんでもないのにっ!!

 

「流石にさとり程上手くは読めませんけれど、まぁ、そこそこは……ね?」

 

 怖い怖い怖い!

 最後の『ね?』の笑顔が怖い!!

 ちょっと現実逃避。

 

 手近な酒瓶……何これ、すぴりたす?……まぁいいや、とりあえずお行儀が悪いけど一気飲み。

 ごっきゅごっきゅと恐怖を押し込むようにラッパ飲みをかまして、一息。

 …………美味しいね、これ。

 もう一本もう一本。

 

 ……ふぅ。

 へるぷみー幽香さん……貴女の笑顔が恋しいです。

 

「ちょっと紫、私の可愛い可愛い大切な妹を苛めないでくれる?」

「苛め……?ちょっとした精神的スキンシップですわ」

「へぇ…………スキンシップねぇ?………らぁん、判定は?」

「苛めですね。500歳そこらの幼子相手に大人気ないですよ紫様。ご自分のお歳を考えてくださいよ、お歳を」

「……言うようになったわね、藍。覚悟はいいのかしら?」

「言うように躾けたのは紫様でしょうに。それを考慮した上で覚悟をしろというなら、しようじゃないですか!」

 

 あ、よかった……藍さんありがとう、今は貴女が幽香さんのように輝いて見えます。

 どうか生き抜いてください……後ろ手でサムズアップ?

 …………いい人すぎるよ藍さん。

 ええい、ままよ!だっけ、こういう時に言うべきなのは。

 旅は道連れ世は情け、やろうじゃないですか。

 というわけで移動移動。

 既に酔いつぶれて尻尾に埋まってる橙の横に陣取り、藍さんの肩越しにじっと紫さんを睨んでみる。

 小悪魔曰く、メンチビームとか言うらしい。

 

「……随分と懐かれたものね」

「いやぁ、人徳ってやつですかねぇ!!」

「太ももに白狼、尾に妖猫、肩に吸血鬼。しかも全員見た目は幼女……この、ロリコン狐め」

「それを言うなら紫様こそ、背に魔女、腕にメイド、お膝の上には吸血鬼、更にはお酌に……あの、美鈴さん、何妖怪でしたっけ?」

「秘密です。とりあえず大陸系とだけは言っておきましょうかねー」

「片手落ちねぇ、らぁん?」

「くっ!」

 

 まずい、藍さんが劣勢……カモンスコール!

 あとついでに紫さんの膝から引っこ抜いたお姉さまも引っ張ってきてそのまま尻尾へ。

 あ、お姉さまったら思わずといった風に抱きついた。

 ……抱き枕にして寝たら確かに気持ち良さそうだよね、この尻尾。

 スコールの毛並みとはまた違った趣が。

 

「あら、更に新しい子を落としたのね……本当に貴女、そういうの得意よね」

「え、あ、今のはちが……」

「昔はやんちゃしてたものねぇ……?文字通り傾国の美女なんて……」

「むむむ、む……!」

 

 ……あれ?

 何か更に劣勢になってる。

 …………そっか、多いからいけないんだ。

 じゃあお姉さまをまた尻尾から引っこ抜いて、スコールに乗って。

 スコール、GO!

 

「て、ちょっと待ちなさい貴女達、何を……」

「多くて負けなら、追加でーす」

「!?」

 

 私とお姉さまを乗せたまま、私の意を受けて軽やかに飛び出したスコールはあやまたず紫さんへ着弾。

 素早く酒器を退けて退避した美鈴とは違い、相当に酔っ払っていた咲夜やパチュリーも巻き込んで、盛大に押し倒してフランちゃん勝利!

 ……あれぇ、何かおかしい?

 まぁいいかぁ。

 

「ー!~!?」

「うわぁ、力技……というかアレ、パチュリーは大丈夫なのかな?」

「大丈夫じゃぁ~ないと思いまぁす」

「……だよねぇ」

「だってぇ、スコールさんが乗った瞬間にぃ、ごきぃって音がしましたよぉ?」

「…………え?」

「私、結構耳は良いんですよぉ!」

「いや、そこじゃない、そこじゃないよ!」

「?」

「何で不思議そうな顔!?」

 

 ふにゃりと笑いながら心底くつろいだ声の椛さんと、それについていけてなさそうな藍さん。

 テンションが噛み合ってないねぇ。

 んー……でも、なんでパチュリー?

 あ、スコールの下からパチュリーの腕が生えてきた。

 なんだ、心配して損した。

 ……飛び込んだ時に零れたトマトジュースへ震える指を伸ばして、畳に?

 

 

 

 はんにん ふ

 

 

 

 あ、腕が落ちた。

 ふ……?

 フリスビー?

 飛んでたっけ?

 

「パチュリィィィィ!?」

「ちーん♪」

「いやアレまずいからね!?そんな楽しそうに言うものでもないからね!?」

 

 んー?

 何で藍さんはあんなに慌ててるんだろう。

 だってパチュリーだよ?

 大丈夫、魔法使いは丈夫丈夫。

 もう、何も怖くないんだよ。

 アリスさんだってこの前あんなにもみくちゃにされたのにピンピンしてたもん!

 強化魔法が無ければ危なかったとか言ってたけど、大丈夫、何も怖くない!

 

「あぁぁもうマトモなの私だけ!?何で?ねぇ何でぇぇぇ!?」

「私もぉ、大丈夫でぇす」

「真っ赤な顔で語尾の怪しい子が何を言いますか!」

「何ですかぁ!そんな人を酔っ払いみたいにぃ!!」

「酔っ払いだよ!」

 

 藍さんがあんなに鋭いツッコミをこなすなんて……見かけによらないなぁ、うん。

 ってあれ、美鈴、どこ行くんだろう?

 何『まずい、見つかった』みたいな顔をしてるの?

 んー……ハンドシグナル?

 

『声を出すな』『戦闘終了』『散開せよ』?

 

 あ、宴会終わりって事かぁ。

 そっか、じゃあ最後は盛大にやらないとね!

 少し前からこっそり勉強してた、夏の風物詩魔法できゅっと締めちゃおう!

 お姉さまも寝てるし、ここは妹の私がやってやりましょう。

 えーっと、魔力に色を持たせて、凝縮してぇ……

 

「……!?ちょっと待ちたまへ、冷静になるんだフランドール君!」

「おぉぉ……凄いですねぇ、妖力だけじゃなくて、魔力もあんなにあるんですねぇ、吸血鬼って」

「だからそこじゃないんだってばぁ!!」

 

 それを障壁で閉じ込めて、更に色をつけた魔力で包み込んで、また障壁で閉じ込めて、また包み込んで。

 何度も何度も、満足の行くまで凝縮した玉を掲げて、一抱えくらいの大きさの玉をためすすがめつ、色の具合をチェック。

 うん、ぐーるぐーると光っていい感じ!

 最後にぃ、障壁と障壁の解除間隔をリンクさせて、完っ成!!

 パチュリーの属性魔法の応用で、魔力に色づけができるようになったおかげで完成したこの魔法。

 フリスビーのせいで力尽きたパチュリーの弔い合戦兼、宴会の締めにはきっとぴったり!

 あとは最初の障壁をきゅっとしたらどかーんだよ!

 

「それでは皆様、宴もたけなわでは御座いますが、不肖、このフランドールが締めの余興をご提供致したいと思いマース!」

「まて、だから待てぇぇぇ!?って紫様、何一人逃げ出そうとしてんですかアンタ!」

「いや、ほら……さっきの、私の負けでいいから。敗者は何も言わずに去るべきですわ。だからスキマを開く邪魔をやめなさい、藍!!」

「逃がしません。なぁに旅は道連れ、痛いのは最初だけですから!」

「は、離し……なさい!!」

「死なば諸共ォォ!!」

「はいドーン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「も……椛……!?」

「あぅぁ……やっぱり……見つかってしまいましたか……そうですよねぇ、文字通り鼻が利きますからねぇ……」

「それゴスロリってやつだよね?え、何?どういう心境の変化!?」

「事情は後でお話しますので、先に家へ帰らせて下さい……早く、そう、早くいつもの服に!」

 

 そう、急いで着替えないといけません!

 出る時に出会った同僚の鼻に捕まったのはまだ想定内です。

 とにかく急いで帰らないと……こんな格好で居るところを文様に見られたら……!

 

「あらぁ、そんなに急がなくたっていいじゃない……カ・ワ・イ・イ格好なんだからっ!」

 

 ……ええ、わかってました。

 何となく、そうなるんだろうなぁとは思っていましたよ。

 

「全体的に白い椛に、黒と赤のゴシックロリータファッション。素晴らしい、いい仕事をしてくれましたよ、あのメイドさんは!」

「何で咲夜さんに着せられたのまで知ってるんですか……」

「だって私が頼んだんだもの。特徴と性格を伝えて『ゴスロリ服一丁お願いしますね!』って」

「は、嵌められました……!!」

「あやややややや、そんな人聞きの悪い!でも良くお似合いですし、これは写真の一枚や二枚や百枚や千枚は撮らないと勿体無いですよね!」

 

 桁……桁が途中からおかしいです文様。

 それにフィルムや印紙だってタダじゃないんですから、それこそ勿体ないですよ……。

 

「何?その『私なんか撮っても勿体無いです』って顔。勿体なくなんてないですよねー?」

「ねー?」

 

 同僚にも売られました!?

 にっこり笑って首を傾げあうなんて、いつからそんなに仲良くなったんですか二人とも!

 同士よ!なんて拳をぶつけ合って満面の笑みとかやめてください、唐突すぎて怖いです。

 

「ほらほら、つべこべ言わずに被写体になりなさい!貴女も手伝って!」

「あい、まむ!」

 

 二人がかりは卑怯ですよ…………!?

 ……はぁ、空が青いですね。

 雲ひとつ無くって、まるで吸い込まれそうな空です。

 こういう時は天井の染みを数えてればいいらしいですけど、その代わりになりそうな雲すらないなんて、ついてませんよぅ……。

 

「って、スカートはめくるものじゃありませんよ!?」

「めくられないスカートに、スカートとしての価値なんて……無いっ!!」

「あやや、中々に良い事を言いますねぇ!」

「というわけで文様、刷り上ったら何枚か下さい」

「貴女になら、特別にタダでお譲りしましょう!」

 

 拡散……されるんですね、やっぱり。

 わふぅ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみに元の服はどうしたの?いつもの服よりちょっと上物のやつだったよね?」

「焦げました」

「えっ」

「焦げて、袴がミニに……」

「じゃあ後でそれも着る事。いやぁ、楽しみが増えましたねぇ!」

「えっ!?」

 

 

 

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