まいごのまいごのおおかみさん   作:Aデュオ

42 / 48
41話 Skoll

 

 ぴんと張り詰めるような静けさの中に響くのは、真っ白な細い指先がページをめくる音。

 時折ランプの炎が揺らぐ音を伴っては規則的に繰り返されるその音に、息を潜め、耳を澄ませ、目を閉じる。

 

 音の世界へ割って入るのは、ふわりと香る紅茶の香り。

 その揺らぐような香りを追おうとすれば、紙の海がもたらす知識の香りが割って入り、またそこへ紅茶が侵食して。

 ゆらゆらと幸せの中に浸りながら、音と香りへと身を委ねる。

 

 あぁ、何と幸せな事だろう。

 抗いがたい、抗う事すら馬鹿らしいと思うこの安息の時を噛みしめながらも、私は思うのだ。

 いや、思わねばならないのだ。

 

 いけない、このままではいけない。

 このままでは、いけないのだ。

 

 私はその思考を以ってして、この現状を破らねばならない。

 それが使命であり、義務であるのだから。

 例えそれが主の機嫌を損ねる行為であっても、為さねばならぬ。

 ならぬ、のだ。

 私は全身全霊を以って、言わねばならぬ、為さねばならぬ。

 

 

 

 そう――――

 

 

 

「パチュリー様、表に出て下さい」

「!?」

 

 

 

-------------------------------------------------------------

 

 

 

「すわ反乱かと思ったわ、あの時は」

「まぁ貴女の青白さを見ればそう言いたくなる小悪魔の気持ちも分からなくはないわね」

「…………別に外に出たって日に焼けるわけでもないのに」

「反論するなら小悪魔本人になさいな。私に拗ねたって仕方ないでしょう」

 

 それはそうだけれど、つれないわねアリス。

 ええ、確かに、そう、確かに。

 にっこりと良い笑顔を浮かべながら私の前に仁王立ちして、びしすっ!っと扉を指さした、そんな小悪魔の姿に動揺したのは認めるわ。

 抗いがたい何かを感じ取って、素直に読みかけの本を抱えて図書室の扉を開いたのは間違いじゃなかったように思う。

 でも扉を開け、館外へ一歩踏み出した瞬間にあの一言はどうかと思う。

 

『たまにはお外のご友人と過ごされては如何です? 何ヵ月引き籠るおつもりですか?』

 

 私だってその言葉を聞いた瞬間、反論をしようとした。

 でも、できなかった。

 彼女の目はまるで口ほどにものを言っていたのだから。

 

『出ないならば私は私らしく、私の存在というものを知らしめて差し上げます。当然、お体に』と。

 

 忘れてはいけない。

 

 彼女は誰が何と言おうと、どう取り繕おうと、サキュバスである。

 例えどれだけ私と同じビブリオマニアであろうと、サキュバスである。

 まごう事なき、サキュバスであるのだ!

 色欲こそが本領の、サキュバス!

 

 忘れてはいけない。

 

 彼女の部屋に誂えられた大きな大きな飾り棚に、ファンシーなぬいぐるみや置物が鎮座しているのは、それこそ紅魔館では周知の事実である。

 あぁ、彼女の普段の雰囲気には良く似合う、とてもとても可愛らしい物の数々………………だというのに、その、後ろ。

 まるで彼女の奥底、本性をそのまま現したかのような配置で、ひっそりと、だが鮮烈に記憶に残る物の数々。

 

 忘れられない。

 

 飲んだら女性として終わりそうな気配をむんむんと醸し出すピンク色の水薬瓶。

 用途を考えたくない真っ赤な太い蝋燭に、荒縄。

 男性のとある部分を模した…………その…………いや、これ以上はいけない。

 

 あぁ、忘れられるはずもない。

 

 それらに私が気づいた瞬間を、その事実に気づいたあの時の彼女の顔を。

 まるで蕩けるような、上気したあの顔を。

 悶えるかのように頬へと手をやり、私を真っすぐに見つめる、微笑みを!

 思わず赤面して目を逸らしてしまったあの時の恥辱を!!

 

 ……でも、出来る事なら忘れたい。

 

 いや、忘れた方が幸せだと思うの、切実に。

 これについては前にアリスへ警告した覚えがある。

 でもあの時はさらりと流す程度に…………無意識に避けていたのだろうけれど…………だから、記憶からのダメージは無かったと言っていい。

 だけど、今回のは駄目。

 これだけ強烈に記憶を掘り返されてしまったら、どうやったって意識がそちらへ向いてしまう。

 

「ちょっとパチュリー? 大丈夫? …………いや、本当に大丈夫!? 顔が真っ赤よ!?」

「大丈夫じゃないわ、大問題よ」

 

 まるで咲夜に角砂糖のつまみ食いがバレた時のレミィの様に、両手で帽子をぎゅっと握りしめて顔を隠しながら、思う。

 そう、彼我の実力で言うならば、私に軍配が上がるだろう。

 だが、それがどうしたと言うのか。

 彼女はそういう次元で勝負をしないのだから。

 こうだと決めれば、そこでしか勝負しない。

 

『ここで勝負をしないのならば、逃げたのは、敗者は、お前だ』と。

 

 言ってしまえばただの自己満足、自己中心的思考。

 それで実力差が埋まるわけがない。

 しかし、それを無視して打ち負かしたとしても、彼女は間違いなく折れない。

 それを為した誰かをただひたすらに嘲笑いながら倒れるのだろう。

 

『何だ、私に屈するのが怖かったのか!? この臆病者!!』と!

 

 嗚呼、嗚呼!

 

「どげんかせんといかん! …………でも、どげぇもしたくない。手を出したら食われるわ」

「パチュリー!? パチュリ―――!?」

「何であの子、アレな所に致命的な落とし穴があるのよ!? ……そこに触れなければ凄くいい子なのに!!」

 

 本当に、何でああなった。

 召喚した時はサキュバスだなんて信じられなかった程だったのに。

 だって、ただひたすら純粋に、あの輝かしい英知の蔵、大図書館に心奪われる様を見せてくれたのだから。

 でもいつの間にか、ひっそりと草花を濡らす夜露の如く静かに、だがはっきりと。

 彼女はサキュバスとして在った。

 その結果があの棚よ!

 

「アリス、悪い事は言わないわ。小悪魔をその気にさせちゃ駄目よ」

「どの気よ」

「ヤる気」

「…………はい?」

「サキュバスよ、彼女は」

 

 …………あぁ、理解してくれたようで何よりだわ。

 珍しくきょとんとした無防備な顔が、段々と色づいていく様は……その、グっと来るわね。

 なによこの美人、普段の残念っぷりはどこに忘れてきたって言うの?

 あたふたしながらスコールに弄ばれて、その後に一緒に遊んでその事実を忘れてはさらに後から思い出して悶えるあの残念っぷりは!?

 ちょっと横を向いてうつむき加減、頬を染めてちらりとこちらを伺う?

 なにその仕草……狙ってやってるなら小悪魔の対抗馬になれるわよ。

 なられたら困るけど、ひたすらに困るけど。

 具体的には私がオチそうで怖い。

 これだけ整った顔で、至近距離から微笑まれてみなさい。

 特殊な趣味を持った者でもなければ確実に落ちるわ。

 

「アリス……貴女本当に残念だけど、同時に掛け値なしで本当に美人よね」

「それ喧嘩売ってるの? それとも褒めてるの?」

「褒めてるに決まってるじゃない」

「……ワー、アリガトウ」

「とってもわかりやすい反応をありがとう。私貴女のそういう所も好きよ?」

「嬉しくない告白です事」

 

 拗ねた様にふいっっとそっぽを向くのはいいんだけれどね、アリス?

 いちいち可愛いのはどうしたらいいのかしら。

 後でスコールからカメラを借りて魔法で念写をしておきましょう。

 

「あ、そういえば一人で来たみたいだったけど大丈夫? 喘息で倒れたりしたら大変よ?」

「ん、ここの直前までスコールに乗せてきてもらったから」

「そのスコールは?」

「人里に呼ばれてるらしくってね、私を降ろしたらそのままそちらに向かったわ」

「今更だけど、違和感なく人里に呼ばれる妖怪って何なのかしら、一体……」

「何でも『里はずれに井戸が一つ欲しいんだが、何とかならんか?』って言われたらしいわ」

「またアバウトな」

「まぁ何とかするわよ、スコールなら。水の匂いだとか気配だとかその辺で」

「違いないわ」

 

 紅茶を飲んで一息。

 ああ、スコール。

 一時はどうなるかと思ったけれど、結局はアリスの母親のおかげもあって何事もなく……は、ないか。

 妖怪から神へと変質しようとしてるものね。

 いえ、変質というよりは上塗りかしら?

 話を聞いている限り、妖獣としてのスコールに神としての力が備わり始めた、って所らしいし。

 

「はてさて、今頃人里で何をやらかしているやら。探し始めてからすぐに掘り当てたりしてそうな気がするわ」

「あり得るわね。『何か出ちゃいました!』とか、ね?」

「じゃあ私それに賭けるわ」

「なら、私は賭けに勝つアリスに賭けるわ」

「…………それ、結果は一緒じゃない」

「お揃いよ、アリス?」

「っ!?」

 

 ついっとアリスの細い顎に指を添わせて、微笑んで見せると、あら不思議。

 私が普段あまり笑わないからかしらね?

 珍しい物を見た、とばかりに目を見開いてから、仕方ないわねと言わんばかりの苦笑を返された。

 

「なら掛け金代わりのお菓子でも用意しましょうか」

「私、スコーンがいいわ」

「なら私はワッフルがいいわ」

「…………は?」

 

 ワッフル?

 え、何?

 咲夜から貰って来いとでも言う気?

 

「珍しく察しが悪いわね、パチュリー? …………一緒に作りましょう、ってお誘いよ」

「…………」

「そんな『えー私がー?』みたいな顔やめてよ。それとも何? 咲夜みたいにちょっと変わったお誘いじゃないと嫌、なんて言う気?」

「咲夜みたいに?」

「ええ。咲夜みたいに」

 

 …………どんなのよ。

 

「んー……うんっ。それじゃあ……」

 

 咳払いを一つ。

 気合を入れていきますか、とばかりに意気込んだ表情をするのはいいけどね、アリス。

 咲夜にする『ちょっと変わったお誘い』って何よ?

 

『お手をどうぞ、お嬢さん。微力ながら私もお手伝いを致します』

「!?」

『なぁに、初めては誰しも失敗するものです。失敗は成功の母であると同時に、貴女の可憐さを彩る華の一つとなりましょう!』

「は、はい!」

 

 

 

 

 

 突然飛び出してきたまるっきり紳士の振る舞いに、思わず素で返事を返してしまった、この恥辱。

 顔が真っ赤になってるのがわかるわ。

 あぁもう、咲夜と幽香のじゃれ合いがこんな所にまで感染してるなんて思わないじゃない。

 もう。

 もう!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 えっさーほいっさーよっこいしょー!

 えーんやこーらぁどっこいしょー!!

 すーなもどーろもなんのそのー!!!

 ってほあああああ何か可愛らしい場面を見逃したような悪寒が!?

 

「ええいやかましいわ! 静かに掘れ!! 上から土おっかぶせて埋めてやろうか!?」

 

 善意で井戸掘りを手伝ってるっていうのに酷い!?

 ちょっとくらい鼻歌……じゃないですけど、気分良く掘ったってバチは当たりません!

 もー!!

 

「てか何でそんな早いんだよオォォォイ岩ァァァァ!?」

 

 あっ……わ、わざとじゃないですよ?

 うん、まぁここから飛んでった岩なら当たっても大した事はないですよ、うんうん。

 まともに当たった所で、悪くてたんこぶができるかどうかですよ?

 この辺りは思いっきり色々と軽くしてますからねぇ。

 一尺や二尺程度の岩なんて小石みたいなもんですよ、重さ的には。

 

「心臓に悪いわボケェ!?」

 

 きこえなーいきこえなーい!

 さぁさぁもっと行きましょうどんどん行きましょう!

 お水はどこかいなー?

 へっへっへ、ここにあるのは分ってるんですよ……諦めて湧き出て来るが良い!

 

「……更にスピードが上がるのかよ、おい」

 

 ここ掘れわんわんここ掘れわんわんおーう!

 わっほーいたぁーのしーい!!

 

「まんま犬じゃねぇか」

 

 犬科一同の穴掘りすぴりっつを舐めちゃいけませんよ?

 でもそんなすぴりっつがあったって、私みたいなのが全力で掘っていい機会なんて殆どありませんしねー。

 前に紅魔館のお庭で暇つぶしのお遊びでやったら大穴こさえちゃって、それはもう大目玉でしたもの。

 

「当たり前だ馬鹿たれ」

 

 もこたんったら相変わらず辛口です事。

 ……おやおやおや? 水の匂いが濃くなってきましたね?

 そうらもう一息!

 わーんおーわんわんおー!!

 そいやっそいやっ!

 

「なんか違う……」

 

 あ、出た。

 出ましたよーいお水ぅー!!

 お、お、お?

 おお、結構当たりっぽい手応えですねコレ。

 中々の勢いで滲み出しましたわ。

 

「あー、確かにいい感じだな。おし、上がっていいぞ」

 

 へいさー!

 後は人里の石工さんやらの出番ですねぇ。

 立派な井戸にして欲しいもんですわぁ、掘った身としては。

 

「しっかし…………井戸掘るのにかかった時間、場所を探すのも含めてたった一刻程度ってなんだよオイ」

 

 水の匂い探して、そこの地面掘るだけじゃないですか。

 岩を掘り進むわけでもなし、この程度なら軽いもんですよ?

 まぁ今なら多少岩盤があっても結合を軽くして掘るなり斧でカチ割るなりできますからねぇ。

 うむ、何の問題もありませんとも。

 もこたんだってなりふり構わないならバ火力で地面くらい融解させられるでしょうに。

 

「できるけどやったら暫く動けんなそれ。お前んちの炉も何も無しで開けた場所の岩だの何だのを溶かすのは手間だわ」

 

 そんなもんですかねぇ。

 てかうちの炉、そんな高性能だったんです?

 

「あれ炉の内側に熱関係の魔方陣敷き詰めた特別製だって話だったろ。何で使用者が知らないんだよ」

 

 何か色々説明されてましたけど、鍛冶屋さんが聞いてくれてましたからねぇ。

 ちなみに鍛冶屋さんの最終結論は『よこせこれ。ほしい。これほしい』でしたよ?

 まぁどう使うのかとかは聞きましたけど、性能だの何だのは知りません!!

 

「胸張ってんなよ……」

 

 紆余曲折ありましたけど、あんな物が出来ましたし結果おーらいってヤツでしょう。

 いやはや、まさかまさかの副産物………………んむ?

 

「あん?」

 

 …………あっ。

 

「な、何だよ?」

 

 いひ。

 うふふふふふふへへへへへっへっへっへ。

 そーでしたねぇ、そういえばそーでしたねぇ?

 

「!?」

 

 いや、いやいやいやお気になさらず!

 ささ、穴掘りでだいぶ汚れちゃったので水浴びした後にお風呂でも入りますかぁ!

 

「またろくでもねぇ下らん事しようとしてんなこいつ……」

 

 否定はしませんけども!

 さささ、とりあえず私近くの川で泥落としてから向かいますので、ケイネさんちのお風呂でも借りましょう。

 井戸掘りを手伝ったんですから、洗うの手伝ってくださいよ?

 

「いやまぁ、それくらい構わんけど」

 

 んではいきまっしょい!

 …………って、その前にもこたん石工の兄さんに知らせた方がよくないですか?

 あと大工のおっちゃんにも。

 これそのままにしてると早晩崩れますよ多分。

 

「あぁそれもそうか。んじゃ先行ってろ、知らせてくらぁ」

 

 はいさー。

 んじゃあお先にー。

 

「おー、風呂の準備も慧音に頼んでおけよ?」

 

 了解でありますー!

 では早速。

 まーたあーとでー!

 

 

 

 

 

「…………何企んでるか知らんけど、まぁアイツなら実害のあるような事はしないだろうし?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃー、いーいゆーだなーっと………」

 

 んむ。

 私のお口の具合もいい感じです。

 人型に化けた後の練習を頑張った甲斐あって、ようやくもごもごした喋りから脱却できましたねぇ。

 まだ早口言葉とか難しい言葉とかは噛み噛みですけども。

 

「にゃまむぎなまご……うひぃのっけからぁん!」

 

 噛み噛みでした。

 良く皆さんぺらぺらと口が回るもんですよ。

 アヤさんとかその気になれば『いつ口を閉じるんです?』ってくらいに止まりませんし。

 

『けーねー? スコールどこいんのー?』

『お風呂ですよー!』

『へーい』

 

「お?」

 

 お、ようやくもこたんがやってきましたね?

 とすとすとすと軽いけれど無遠慮な足音がしたかと思えば、そのままばっさばっさとお風呂の脱衣所で服を脱ぎ散らかす音が。

 何か微妙に遅くって計画倒れを心配したんですけど、うむうむ、良きかな良きかな。

 お風呂は好きですけど、ケイネさんったら熱々にしてくれちゃったもんですから茹るかと思いましたもの。

 寒いのはどうってことないんですけど、熱いのは弱いんですよ……!

 

「おー、入るぞー」

「…………」

「ん?」

 

 ようやく、待ちに待ったもこたいむ。

 ちゃっぷちゃぷとお湯をかき分けて、そっと湯船の端っこへ移動。

 そんで、頭に手ぬぐいを巻いてー耳隠してー?

 魅惑のケイネさんふぇいすでー?

 上目遣いで、鼻から上だけを湯船のふちから出すような感じでー?

 ちょっと恥ずかしそうなー顔をしてー?

 ばっちこいもっこたーん!

 

「あぁそうか、風呂だからスカーフ外してんのか」

 

 ある意味正解で、ある意味不正解。

 残念ながら普段はお風呂でもスカーフをしてますけどね、今回は鞄の中へご退場頂きましたのよ。

 ちなみにパッチェさんとアリスさんの力作スカーフは速乾性!

 冬暖かく夏冷たい、胸元の必需品でございます。

 

「それにしても返事の一つくらいしてもバチは当たらんぞー」

 

 またとすとすと小さな足音が近づいて来て、がらりとお風呂の戸が開いた、その瞬間。

 さぁ行きますよもっこたーん!

 小悪魔さん直伝のてくにっくをとくと味わうがいい!!

 

「…………もこーの、えっち」

「ぶふぉっ!!!??」

「…………えっち」

「え、え? いや、あれ、スコールが、あれ?」

 

 うへへへへへへだーいせーいこーう!

 ぶふぉっ、ですってよ奥さん!!

 もこたんったらちょっと考えればおかしい所だらけなんだから分かるでしょうに、そんなにケイネさんふぇいすが衝撃的でしたか。

 いやー相変わらず妙な所で可愛らしいですよねぇやっぱり!

 ではでは燃料を追加?

 追加しちゃいます!?

 しちゃいましょう!

 

 ちょっとだけ顔を俯けてー? 逸らして―?

 でもちらちらもこたんに視線投げながら―?

 口をもごもごさせてー?

 

「そんな……みつめないでください」

「あああああごめんけぇねええええええええええ!!?」

「でも……もこーになら……わたし……」

「わぁぁぁぁ待って待って、立たないで!?」

 

 両手でお胸を隠しながらそっと立ち上がろうとしただけでこの慌てよう。

 何て言うんでしたっけこれ……小悪魔さんの講座で教わった……て、てぶら?

 何で荷物を持っていない状態を指すのかは知りませんけど。

 ある意味持ってますよねこれ。

 しっかしまぁ、あれですね、あれ。

 あれあれ。

 

 

 

 わーいもっこたーんの反応たーのすぃー!!!

 

 

 

 やー、ここまで慌てるとは思いませんでした。

 紅魔館の皆とか一緒にお風呂入ったりするんで、ちょっと追加さーびすまでしたんですけど……もしかして必要ありませんでした?

 折角表情とか動きとか頑張ったのに!!

 

 

 

 …………って、この慌ただしい足音は何ぞや。

 ケイネさんですよね多分。

 あのケイネさんがこんなどたばた走るなんて珍し……あ、さっきのもこたんの叫び声のせいですか。

 

 ふむん?

 むむむ?

 

 これは……所謂一つの……ちゃんす、ってやつですね?

 やっちゃえって事ですね!?

 んむ! たいみんぐはもこたんの視線がそれた瞬間!!

 あー……でも今度は誰に変化しましょう?

 私の変化で髪の色が似るって言ったら後は……サクヤさんにモミジさん?

 ぬー、このお二人の姿をここで使っても効果が無さそうですよねぇ。

 仕方ない、素直にもこたんにしときますか。

 

「妹紅!? 何があったんですか!?」

「へっ? あれ、けーね?」

「はい?」

 

 

 

 いひ。

 ちぇーんじもっこたーん!

 そいっ!!

 

 

 

 ……あぁ無常、ケイネさんのめりはりぼでーからすとんぺたん。

 ふかふかお胸に当てていた手のひらが虚しく空をきって再びお胸にぺちん。

 スコール知ってます、こういうのつるぺたって言うんだって。

 一部の特殊な大きなお友達にしかウケないんだって、スコール、知ってます。

 もこたん……くぅっ!!

 

「え? え? あれ、え?…………今お風呂にけーねが……あ…………ぅえ!?」

「ふわぁ!?」

 

 あ、ケイネさん可愛い。

 すっごい可愛い『ふわぁ!?』ときっちり指を閉じた目隠しがすっごい可愛らしい。

 それはそうと、同時にとある感想が私の中を駆け巡ってるんですよ。

 サクヤさんとかメイリンさんと一緒にお風呂に入った時にメイリンさんが踏んでた地雷から学んだんです。

 

「…………すっごく、おむねが、かくしやすい、です…………」

 

 両手から零れんばかりだったケイネさんぼでーから一転。

 余裕で手のひらに収まるこんぱくとさいず。

 あぁ無常ですねぇ。

 無常無常諸行無常、もこぺったん。

 ってあぁあああ無常無常って頭ふりふりしてたら手ぬぐい落ちた!!

 

「…………おい、お前、その耳。てか見えてなかったけど尻尾も。も一つ言うならその目……」

「いやーしっぱいしっぱい」

「おいおいおい何とんでもない事を軽く流してるんだよ!?」

「んじゃあつぎはあれですね、もこたんぼでーでちょいとざんねんなことになるかもしれませんが」

「は?」

 

 もこたんがあの反応だったなら、ケイネさんももしかして、もしかしちゃいます?

 私だって分ってから、迂闊にも目隠しをやめちゃったケイネさん、小悪魔さんてくにっくをとくと御覧じろ!

 

 

 

 ちょいと後ろ向いて、尻尾が見えない程度までお湯につかってから?

 肩越しにちらっと流し目でー?

 仕方ないなぁ、全く……みたいな風の?

 

 

 

「けーね、のぞくならもうちょっとしずかにしなよ……はずかしいだろ」

「…………」

「…………」

 

 あー、スベっちゃいましたかね?

 見事にお二人とも固まっちゃいました。

 んむ、それもこれも全部もこたんぼでーが残念なのがいけません。

 せめてサクヤさんみたいにちょっとだけすれんだー風味でもマシマシな色気がある感じだったら救いがあったのに!!

 

「けいねさん、あれですか、もこたんぼでーだとおむねがちっちゃくてみごたえがありませんか」

「…………」

「…………」

 

 あれ、燃料注いだのにもこたん動かない。

 いつもだったら燃料注げば即座に爆発してくれるのに……。

 もっこたーんもっこたーん?

 ぬぅ……!?

 

「やっぱりここはきんだんのらんさんぼでーですかね……でもおこられるとこわいので、ありすさんでどうでしょう?」

「…………」

「…………」

 

 にゅるりと変化!

 おー、流石アリスさんぼでー。

 お二人とも真っ赤な顔のまま目を逸らしましたね?

 あと手のひらに再びふかふかな手応えが。

 やぁ、今は自分についてるものだとは言え、この手触り気持ちいいですよねぇ。

 ふっかふかですもの。

 今度人型になってからアリスさんのお胸を枕にしてみましょう。

 何かすっごく気持ちよくお昼寝できそうな気がします!

 まぁそれはそうと、お二人とも何で動かないんでしょうね?

 

「おふたりともどうしました? ありすさんぼでーにめろめろですかぁ?」

「…………ぁぁ」

「うわぁけぇぇぇぇねえええええ!?」

「なんかすっごいさとったかおでぶったおれましたねぇ」

「てめぇのせいだろうがこのボケ狼がぁ!?」

「ひどい!?」

 

 照れ隠しに風呂桶投げつけて来るとか野蛮ですねぇもこたんったら。

 壊れちゃったらどうするんですか全くもう!

 

「うっせぇ!」

「それはそれとして、けいねさんったらたおれちゃいましたか、そうですかぁ」

「!?」

 

 ふむふむふむ。

 お風呂場で倒れちゃったのもあって、お洋服がびっしょびしょ、と。

 そしてお風呂に入ろうとしていたもこたんは当然すっぱ。

 お風呂に入っていた私もまた当然の如くすっぱ。

 いやはやいやはや、これは仕方がありませんねぇ?

 ケイネさんをこのままにしちゃったら風邪ひいちゃうかもしれませんしねぇ?

 

「というわけでほいっさー!」

「わぁぁぁ馬鹿!? お前何やってんだよ!!」

 

 んむ、いつものお洋服で助かりました。

 すぽーんと引っこ抜いてとりあえず脱衣所へぽいっとな。

 

「んー……さらしどこでとめてるんでしょうねぇ……あ、とれたとれた」

「ああああああ馬鹿馬鹿やめろ馬鹿!?」

「それじゃあしたもしつれいしてー」

「!???」

「おぎょうぎわるいですけどまるめてぽーい!」

 

 脱衣所へ放っていた服と一緒に丸めて、隅っこに置いてあった竹かごへぽいっとな。

 そのまま戸を閉めて、真っ赤なお顔のままぐったりしてるケイネさんを抱えてお風呂にいん!

 ふふん……こうやってケイネさんを抱えている限りはもこたんも手は出せないでしょう!!

 即座に手を出してでも止めなかったもこたんの負けです!

 

「おー……しかしけいねさんったらふわっふわですねぇ」

「!?」

「へんげしたじぶんのをさわるのもそれなりにたのしかったですけど、これは……」

「??!?!」

「あーずっとさわっていたくなるこのふかふかん、まさにみわくのぼでー!」

 

 それはそうと、もこたん何で顔芸なんてやってるんですかね?

 あわあわ口を動かしたと思ったら、手で顔を覆ってみたり、ちらちら覗いてみたり。

 やぁ、これは噂に聞く……

 

「やぁん、もこたんったらむっつりですねぇ」

「!!!!????」

「そんなに、きになります? なっちゃいます?」

 

 けいねさんをそーっと湯船のふちにもたれさせて湯船に滑り落ちないのを確認。

 そのままにじにじともこたんの所へ……もこたん、何で後ずさるんです?

 ほうら見た目はちょっとばかり私の自己主張が入ってますけど、アリスさんですよー?

 怖くないですよー?

 ほうら、どこか残念な気配がして安心でしょう?

 

「はいつかまえたぁ」

「やっ……!?」

「いちめいさまごあんなーい! はーいよろこんでー!!」

「やめ、やめろ馬鹿、ばかぁ!?」

 

 見た目はアリスさんでも、中身はスコールさんですのよ?

 振りほどくおつもりならスイカさんくらいの力は出して貰わないと。

 というわけで左腕にもこたんほーるど、そして戻った先の湯船で、右腕にケイネさんをほーるど。

 

 

 

 

 うへへへへへ……おだいみょうさまぷれいである!

 

 

 

 

 

 って前に小悪魔さんに教わったんですけど、何か違う。

 方や真っ赤になってわたわたし続けてるもこたん。

 方や真っ赤なまま気を失ってぐったりしてるケイネさん。

 んー………何か、違う!!

 ていうかもこたん慌て過ぎです。

 まったくもう!

 また止めなきゃいけないんですか?

 ていうか何度もやって耐性できてたりしませんよね?

 

「もこた…………もこぉ、あんまり、あばれないで……?」

「うへぁ!?」

 

 あ、何か親近感を感じる妙な声が。

 でも『こうか は ばつぐん だ!』って所ですか。

 ぴたりと固まってくれちゃいましたもの。

 私だと頭では分っていても、不意打ちには弱いまま、と。

 うひひ、たーのーしーい!

 さっすがアリスさんふぇいす!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリス」

「ええ、お見事ね」

「焦げたわ」

「まさか私がちょっと目を離した隙に焦がすなんて……」

「違うわ……焦げたのよ、勝手に」

「貴女が焦がしたんでしょうが!?」

「………………ふふっ…………わ、私を彩る華が増えたわ、ね?」

「なら自分で食べなさいね、それ」

「!?」

 

 

 

「……って言おうかと思ったけど、何か今イラっときたからスコールにあげましょう」

「異議なし」

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。