まいごのまいごのおおかみさん   作:Aデュオ

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42話 Skoll

 

 

 

 秋の息吹を感じさせる、色づいた山々の佇まい。

 赤々と燃えるような色を見せ、生に満ち溢れた季節の終わりを高らかに歌い上げるかのような山々。

 その美しさは見る者を魅了し、同時に終わりを感じさせるもの悲しさをも齎している。

 するりと視線を流せば、そこにあるのは人々の営みの証。

 今にも朽ち果てそうな廃屋、無機質なビルに、光沢を放つ新築。

 過去と、現在と、未来とが混然一体となって、人々の証としてそこにあった。

 

 あぁ、まさしく人のための世界じゃないか。

 一瞬の輝きのように生まれ、老いて、消えていく。

 つい先日のように思っていた日々が、遠い過去の、もうこの世のどこにもないひと時だったなんてもう数え切れないほど経験してきた。

 

 

 

 あの日、私へ必死の願いを捧げた者たちは、もう居ない。

 どうか、どうか、どうか、と。

 生きたいとただそれだけを願い、手を合わせ、地へ首を垂れながら、消えていった。

 

 あの日、私と共に笑い合った者たちも、もう居ない。

 なんだ、意外に話せるじゃないか、なんて。

 げらげら笑いながら、されど敬いの心は忘れず、私と共に在った者たちは、あっけなく時代の流れの中へと消えていった。

 

 あの日、私に求婚してきた者に、私はなんと返しただろうか。

 畏れなぞ彼方に忘れてきたと言わんばかりのあの若者。

 ただただその目に浮かぶ熱に、私は絆されたように思う。

 

 

 

 あの日、あの日、あの日。

 今にも薄れてしまいそうな手を見て、思う。

 そうだ、あの日。

 

 

 

 あの日、私の血脈として生まれ出でた子を、私は愛した。

 小さな小さな紅葉のような手を、私の指を全力で握りしめて花のように笑うあの手を、私は覚えている。

 燦々と輝く太陽のような笑みを、私は覚えている。

 枯れ木のように細くなった手を、私は覚えている。

 

 

 

 あの日、私の血脈として続いていく子らを、私は愛した。

 ある者は私をまるで実の親のように敬い、愛してくれた。

 ある者は私を直視するなど恐れ多いと、恐れ敬うものだと、地に頭を擦り付けるかのようにして震えていた。

 ある者はただ、私をそういうモノなのだと、その事実にしか興味がないようだった。

 

 

 

 ある日、そんな私の血脈なんてもう残っていない事に気が付いた。

 ある者は目の前に私が居るというのに、私なんて居るはずが無いとばかりに振る舞い、然るべき時にだけ、それらしい言霊を高らかに謳い上げた。

 人の目が無い所で、私と共にあった者たちが作ってくれた神体を暴き、こんな物は金にもならぬと勝手に落胆していた。

 ただ己が生のためにだけ、金品のためにだけ、私の社に居座っているだけだった。

 

 然れど、人の営みだ。

 どこかで少しでもずれてしまうだけで、そういう事も起こるだろう。

 神のみぞ知る、なんて事はない。

 神ですら知りえぬ事なんて腐るほどある。

 

 

 

 ある代で、そんな者たちの間で子が生まれなかった。

 子を成せるかどうかなんて、そんなもの人が知りえるようなものではない。

 そして、私という存在を祀ったこの社の守り人としての体面もあり、他の神へ希う事もできなかったらしい。

 ただ純粋だった娘が気になって、気にするなと肩を叩いてやれば、見えもしないはずのそれを感じたのか、ただただ泣き暮らしてしまうばかりだった。

 そもそもが元を辿れば私の血なのだから、そろそろ呪われ始めたのだろうか。

 それでも血だけは途絶えさせぬと、傍流から子を迎えたようだ。

 そういう事もあるだろう。

 

 

 

 

 

 ある代で、養子を貰った。

 元より細い血脈だったのだ、前例もあるのだし、仕方がない。

 今回は何代か前に分れた血脈の中の子らしい。

 分れたと言っても、弟妹が嫁いだ先の血脈。

 それでも血は血だ、これで血だけは途絶えぬ、と安堵しているようだった。

 そういう事もあるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 ある代で、養子が重なった。

 養子たちの生家は、やはりかつての私の血脈だった。

 養子たち曰く、最早文字としてしか残っていないような、そんな血脈らしい。

 しかしこれで血は繋がった、と面倒事が片付いたような顔をしていた。

 そういう事もあるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう、外の様子を眺めるだけというのにも飽いた。

 社の中で日がな一日眠るだけで良い。

 私もいつかは消えていくのだろう。

 音に聞こえた数多の猛き神々のように。

 私の呪を受け泣き叫んでいた神々のように。

 そして、私のように血脈を亡くして薄れていった神々のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある代で、ついに子も養子のあても無くなったらしい。

 半ば諦めていたようだったが、遅くに子を成して安堵していたようだった。

 今になって思えば、この代の者は変わっていたような気がする。

 いや、帰っていたと言うべきか。

 社の中でただじっと座っているだけだった私の事が見えたような素振りをしていたように思う。

 しかし、それだけだった。

 数える事も億劫になる程に続いた形だけの血脈は、やはり細くなりすぎていたらしい。

 先祖返りと言うべき濃さで息吹いた血脈でさえ、最早おぼろげに居るとしかわからぬようだった。

 

 

 

 ある代で、懐かしい声が聞こえた。

 かすれた記憶の中で、私と笑い合った者たちの声だったようにも思うし、私の愛した者の声だったようにも思う。

 その声は、あなたはだぁれ、と問う。

 社の扉の隙間から私を見つけたらしい。

 社の外に感じるのは、小さくも鮮烈な魂だった。

 

「うーん、あれ、足だよね?」

 

 ただし、小さな隙間から暗がりの社の中を覗いているだけあって、見えているのは祭壇から投げだした私の足だけのようだった。

 

「もしかしてたおれてるのかな!? だ、だれかよんでこなくちゃ!」

 

 そう言って駆け出して行く子を感じて、久々に起きていようと思った。

 

 

 

 子は、連れてきた親に怒られていた。

 嘘をつくんじゃない、と。

 …………少なくとも、嘘ではないのだけどね。

 

「でも、いるもん! あそこに、ほら、あしがみえるもん!」

 

 あまりにも必死で言うものだから、大人は気味悪く思ったらしい。

 ここには必要な時以外近づくな、と言い含めながら子を連れて行った。

 何やら隣の社で古い知り合いが騒いでいるのが聞こえる。

 やかましい。

 やっぱり眠っている方が楽だ。

 

 

 

 

 

 大きくはなっていたものの子はまだ幼かった。

 ふと、幼き日の事を思い出したらしく、社の外からこちらを伺っていた。

 もう止めるお父さん達も居ないんだから、なんて呟きながら。

 …………あの、止めていた『まっとうな』親は、死んだのかね。

 

「……やっぱり、居る」

 

 鍵を持ち出せるようになったのだろう。

 がちゃがちゃと大きな南京錠が騒ぎ立てる中、ようやく外せたようで歓声が聞こえる。

 建てつけが悪くなって開かない扉に苦戦しているようだ。

 

「……建てつけ、悪し! 傷み具合、酷し! どうせ修理するなら壊しても、問題ありませんよね!?」

 

 道理ではあるけども、中々に思い切りがいいらしい。

 仮にも神の社だよ、ここは。

 祟られても、文句は言えない所業だ。

 

「構わんよ、どうせただふて腐れて寝ているだけの阿呆の社だ。蹴破ってしまいなさい」

「やった、ちょっとこういうのやってみたかったんですよね! こう、扉をがしゃーって蹴破って『大人しくしろ!』っていうの!」

「テレビの見過ぎだよ……」

 

 ああ、何やら懐かしい声がする。

 そして扉の壊れる音が。

 

「あっはっはっはミッションコンプリート!!!」

「本当にやったよこの子は……ま、いいさ。ほらとっとと起きなさい」

 

 ぶわりと埃が舞い散るその先に見えるのは、どこか懐かしさを感じる少女と、腐れ縁にも程がある古い知り合いの姿。

 あぁ、いつ以来だろう、体を動かし、声を出すのは。

 季節が何度巡ったのだろう。

 嗚呼、嗚呼、ただただ億劫だ。

 

「喧しい。祟られたい者から前へ出よ」

 

 とりあえずそう呟いて、ひたすらに億劫ながらも立ち上がったのだった。

 

 

 

 

 

 

 なーんて!

 いやぁ、私も若かった。

 いや今でも若いけど。

 

「ごはんですよー! 全員集合ー!!」

 

 おや、お夕飯の時間かね。

 消えかけの体とは言え、お供え物があればそれなりにはもつだろう。

 いつになるやら、いや、これが最後かもしれないんだ、精々舌鼓を打つとしよう。

 

「ふむ、今日のお夕飯は?」

「三色団子です!!」

「……いや、お夕飯は?」

「三色団子ですって。いやぁ、バイト先で大量に貰っちゃいまして!」

「…………お夕飯」

「お団子、ですっ」

 

 

 

 解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はい、あ~ん」

 

 あ~ん!

 

「私がもぐっとな」

 

 ひどいっ!?

 

「あ~これも美味しいわぁ。お嬢さん、このみたらし団子はまだあるかしら?」

「ええ、それはもう! ご希望とあらば大皿で出せますとも!」

「じゃあそれで。あと、さっきの長命寺と、かすていらと、わらび餅も大皿でお願いね」

「ふぁっ!?」

「それからお抹茶も~」

 

 うわ、甘味屋さんが素で衝撃を受けてる所なんて初めて見ましたわ。

 というかユユさん、大皿は食べ過ぎです。

 こういうのは色んな種類を少しづつ食べてこそですよ?

 私らがお腹一杯まで甘味屋さんの所で食べるとか、そもそも食べ方としてどうかと思います。

 

「……それもそうね。じゃあお嬢さん、全部小皿でいいわ」

「あー良かった、流石に今からじゃ材料足りませんでしたからねー」

「なら『大皿でも』なんて煽っちゃだめよぉ?」

「てへぺろ!」

「あら可愛らしい」

「ドヤァ……!!」

「あら……ちょっと冥界に来てみる……?」

「すいませんでした。どうかこちらのみたらしでご勘弁くだせぇお姫様……」

「うむうむ、許してやろうではないか……」

 

 なに小芝居やってるんですかお二方。

 あ、私は冷やし善哉をどんぶりで。

 あとかき氷の抹茶味とかすていらの抹茶味!

 

「いやぁ、このお姫様ったら中々ノリがいいもんでついつい。で、悪いけど抹茶味は今日できないのよね」

 

 おや、それはそれは……さては、お茶屋さんがまたサボりましたか?

 今度のおサボリ理由は何です?

 前は『石の上にも三年は厳しいから、畳の上で三日くらい寝る』とか『命短し鯉食え乙女。鯉こく食べたくなった。という訳で釣りに行ってくる』とかでしたよね。

 

「奴め、言うに事欠いて『月に叢雲、花に風、私に草紙。読書の邪魔すんな帰れ阿呆』何て文句で断りやがったのよ」

 

 それで商売人を名乗るとは、流石お茶屋さん。

 そして流石のご同期でございますね甘味屋さん。

 一味も二味もなんて言葉がちっぽけに聞こえるくらいに素敵な面々です事!

 

「あははははははスコールさんには抹茶の代わりにドロリ濃厚野菜と甘味の融合汁ぶっかけてあげますね。サービスです!」

 

 それケイネさんの味覚をヤっちゃったヤツでしょう!?

 冗談じゃありませんよそんな劇物!

 

「あ、私それ食べてみたいわ。作ってくれる?」

「ぶっ!?」

 

 そして更に上を行ったユユさんという。

 まさか求められるとは思ってなかったんですね、甘味屋さん……ユユさんを舐めているからそうなるんです。

 でもユユさん、それ半分とは言え人外をぶっ倒したらしいとんでもないブツですよ?

 流石のユユさんでもそこはかとなく不安なんですが。

 

「大丈夫よ、私に毒物なんて効かないから。むしろこの手の物で私をどうにかできたなら褒めてあげるわ」

「ほほう……それは私に対する挑戦と受け取りますよ?」

「ふふん、かかってらっしゃいなお嬢さん?」

 

 何という無駄に恐ろしい争いでしょう。

 そんなんだからお嫁さんに行けないんですよ甘味屋さんったら。

 

「ふん、私が本気を出せば村の若衆なんてイチコロよイチコロ」

「ん~……確かに可愛らしい顔はしてるものねぇ、貴女」

 

 ユユさん、それ多分違いますよ?

 イチコロっていうのは劇物で一殺(イチコロ)ですよきっと。

 一口でコロっと落とすんですよ、ナニかを!

 いやー、やっぱり恐ろしい所ですねぇ人里。

 人外魔境、修羅の国です!

 

「よーし決めた、お姉さんスコールさんにはサービスでどろ濃汁がけ善哉を出してあげる!」

 

 ふっふん……別に構いませんよ?

 善哉だろうが何だろうが好きなように作ればいいんですよ。

 

「……ほぉう? 言ったわね?」

 

 ええ、ええ。

 私をいつもの私だと思わない事ですね。

 食べ物を扱う者としての誇りを捨て去ってでも作りたいと言うなら止めはしません。

 

「その強気…………どういうつもり?」

 

 いひ。

 いやー、簡単な事ですよ?

 その時はそっとユユさんにばとんたっちするってだけですもの!

 あの自身に満ちたユユさんの一言と、冷静になって考えてみた所のユユさんの暴飲暴食っぷり。

 ええ、ええ、半端なものではありません。

 食べられる物で作られている物ならばきっと一息で飲み干して下さいますとも!

 ねぇ、ユユさん!?

 

「まかせなさい。でも美味しい物をわざと不味くするのは感心しないけどね~」

「くっ…………二人とも吠え面をかかせてやりますよ!」

 

 ほほう?

 ほーう?

 ほうほうほう!

 吠え面、と仰いましたか?

 

「ん?」

 

 いひひ!

 吠え面がお好みならかいて差し上げましょう!

 じゃあ…………せーのっ!

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 オォ――――――――――――――ォン!

 

 

 

 

 

 

 

「お、おうふ…………おふっ…………み、みぃ……!?」

「こぉら、いくら興が乗ったからってそんな大きな遠吠えをしないの」

 

 いやいや、これくらいだったら人里の皆さんは慣れっこですって。

 精々『まーた何か面白い事をやらかすのかね?』って暢気にやって来る程度ですよ。

 あ、ほら見て下さいよ、外の様子。

 普通お店の中に妖獣と亡霊と気絶してる人が居れば騒ぎになりますけど、ほら!

 

 

 

「何だぁ? また甘味屋が何かしでかしたのか?」

「久しぶりですねぇ狼さん、今日はこちらでしたか。今度ウチにも食べに来てくださいよー?」

「うっわ何だよあの甘味屋のぶっ倒れ方。いい歳した女が大の字で白目向いて倒れてんなよ……」

「もうちょいマトモに女子をやってくれれば嫁の貰い手もあろうになぁ」

 

 

 

 あっはっはっはっは!

 ほらユユさん聞きました!?

 さっき私が言ったのと似たような事言われてますよ甘味屋さんったら!

 

「信用されてるのね?」

 

 人里の信仰らしき何かでカミサマになりかける程度には?

 とりあえず私が居れば大抵の事は笑い話で済む、って事で引っ張りだこなんですよ。

 やれ井戸を掘ってくれだの、山仕事手伝ってくれだの、求婚手伝ってくれだの。

 

「へぇ、求婚。ちなみにそれ成功したの?」

 

 いやいや、笑い話って言ったじゃないですか。

 私が物陰からその場の空気を思いっきり軽くした上での求婚だったんですけどね?

 その空気に当てられて、頼んだ当人がいつもと比べるまでも無いくらいにべらべら喋ってたら、ばっさりですよばっさり。

 その時の振られ文句が『軽い男は嫌い』だったもんですから、もう!

 策士策に溺れましたねぇ!

 

「それ笑い話にしていいのかしら……」

 

 かるーい空気の中でだったものですから、本人がその場で納得しちゃったみたいで。

『ちくしょうめヤケ酒じゃぁ! おら野次馬ども、酒飲もうぜ!』ってヤケ酒飲み大会の末、飲み屋の娘さんとばっちり意気投合して結ばれました。

 

「あー、あったあった!!」

「気持ちのよすぎるくらいの振られっぷりだったなぁありゃあ!」

 

 ですよねぇ、もう見事なまでの振られっぷりに思わず物陰で噴きだしちゃいましたもの!

 

「この人たちの反応で何となく察したけど……人の縁は異なもの味なもの。そういうのも良いのかもしれないわね~」

 

 結果良ければ全て良し! とは言いませんけど……これに関しては言いたくなりましたね。

 もうとんとん拍子に話が進んで、さくっと祝言あげちゃいましたから。

 飲み屋の大将もヤケ酒飲みに加わってましたから、反対意見なんてありませんでしたもの。

 

「へぇ、上手く行ってるのね?」

 

 これがまたお酒の勢い抜きにしても相性が良かったらしくて、今じゃおしどり夫婦なんて呼ばれてる程度には。

 これ、私が本当にカミサマだったらご利益に『縁結び』とか入るんじゃないですかね!?

 

「それ割とどこの神もやってるでしょう? 縁結び、商売繁盛、家内安全。とりあえず掲げとけって売り文句じゃない」

 

 デスヨネー。

 それはそうと甘味屋さんが珍しくも面白くぶっ倒れてるせいで追加注文が来ませんし、お店変えますか。

 そろそろ日も暮れ始める頃ですし、軽くお蕎麦とか食べて、その後にお酒なんてどうです?

 

「ふむ、お蕎麦。今夜は良い月が出そうだし、先取りして月見蕎麦なんていうのもいいかしら」

 

 なら決まりという事で!

 しかし月見蕎麦とはまたいい所を突いてきますね。

 私もそれにするとしましょう。

 

「二人で一足先にお月見ね~」

 

 あ、お蕎麦屋さんと言えば、これがまた良い人でして。

 私が店に行くと食べやすいようにって専用の浅くて広いどんぶりで出してくれるんですよ。

『美味いか? 美味いか?』ってすっごい嬉しそうに笑いながら撫でてくれるもんですから、ついつい足を運んじゃうんですよねぇ。

 薬味だとか付け合わせだとか結構な種類を選べますから色々と試すのも楽しいですし。

 お味は絶品、お代も良心的ですし、ユユさんも気に入ると思いますよ?

 

「それは決まりね、決まり! さぁ行きましょう、お蕎麦が私たちを待ってるわ!」

 

 ちなみにお蕎麦屋さんには……よく味の染みたおでんもありまして……。

 大根に牛スジに玉子!!

 それを井戸水でよく冷やした日本酒と一緒にきゅーっと!!!

 

「良いわねぇ! あぁでも私は熱燗でお願いしようかしら?」

 

 飲み比べちゃいます?

 

「飲み比べちゃいます。楽しみねぇ、お蕎麦屋さん!」

 

 よし、それではご期待に沿うと致しましょう!

 背中へどうぞ、お姫様?

 このスコールめがお蕎麦屋さんまで送り狼して差し上げます!

 

「くるしゅうないぞ~。……うむ、いいモフみ具合じゃ」

 

 へへぇ、ありがたきお言葉にごぜぇまする。

 ではでは行くとしましょうか。

 いやぁ、こういう時に先払いのお店って良いですよねぇ。

 も一つ言うなら甘味屋さんの所っていうのも更に良い。

 とりあえず事態を放り出して逃げるのに良心の呵責がありませんもの!

 それでは、スコールいっきまーす!!

 ひゃっほいおっそばー!!!

 

「おっそば~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「納得できちまう辺りが救えねぇなぁ」

「甘味屋だからなぁ」

「とりあえず縁台に寝せといてやろう……せめてもの情けだ」

「ならついでにいつもの悪戯の意趣返しもしておこう。誰か墨と筆持ってねぇか?」

「あるぞ、ほれ。何すんだ?」

「こないだスコールが言ってたんだよ、こういう時は額に肉、頬に猫の髭を描いてやるもんだってな」

「ほー……ほぉ!? いや、肉はいいけど猫の髭は……それ違うんじゃねぇの? 何で漢字で『猫』と『髭』を書いてんだ」

「心配するな、わざとだ。こいつの頬っぺた柔らけぇから無駄に難しかったわ……」

「あー……いい仕事したなぁ、無駄に。んじゃ俺たちも蕎麦食いに行くか。さっきの話を聞いてたら食いたくなっちまった」

「おー、そうすっか。……周りの人の流れを見るに、今日の蕎麦屋は大賑わいになるんじゃねぇの?」

「ちげぇねぇ。商売繁盛も成し遂げたなぁスコールのヤツ」

「いやはや、神様らしくなってきたじゃねぇか。よきかなよきかな!」

 

 

 

 

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