一夏との出会いは両親の都合で日本にやってきてすぐだった。新しく過ごすことになった日本の学校で、中国人だからとアルアル言えとかふざけたことを強要されてそろそろ久しぶりにキレちまいになったときだ。あと一言でも発したら飛び膝蹴りで顎を破砕してやろうと思い至った時に急に呻き声が聞こえてきた。
その時はクラスメイトその22くらいだった一夏が頭を抱えて椅子から転げ落ちたのだ。正直に言うとすごく引いた。怒りとか波の引き際と共に簡単に引いてしまった。
人が目の前で倒れたのだ。怒ってる場合じゃない。焦って駆けよったのはアタシ1人だけで、クラスメイトたちは厄介者を見るように遠巻きに見下ろすだけ。何もしようとしない。全くのアウェイなアタシが駆けよって、ホームグラウンドなはずの奴らが見捨てる。このクラスの駄目さ加減と、倒れて蹲る一夏の孤独感に、アタシは自己投影をして仲間意識みたいなものを感じた。傷の舐め合いと言えばそれまでだけど、この状況下で我関せずな情の欠片もない化け物みたいな連中と同じ括りに入らないで済むのなら誹りだって受けられる。
倒れた一夏をなんとか立たせて保健室まで連れて行き、そこで色々と知っている保健の先生に事情を聞いた。前は一夏を気にしてくれる友達がいたけど、ソイツは転校していなくなってしまったことも。
事情を聞けば放っておけなくなった。仲間意識みたいなのもあるし、幼心にちょっと一夏を気にいっていたこともあり、状態の安定した一夏に友達宣言みたいなことをしてみた。
それから、学校生活に関しては一夏と一緒に過ごすようになった。というか、一夏もアタシもハブられ組だったから必然的に2人で固まる以外の選択なかった。でも、それは外部干渉を遮断できるために、アタシとしては願ったり叶ったりだった。だって、一緒に過ごす内に一夏のことが好きになっていったんだから、そりゃあ最高の時を邪魔されない状況は素晴らしき素晴らしきだ。ありがとネー。感謝するアル。ほら、言ってやったよ、感謝しろ。
少しすると中学生になる。由々しき事態だ。学校変わればクラスも変わる。これで教師の采配が駄目だとアタシと一夏は離れ離れになってしまう。ふざけんな、って話じゃない。
しかし、杞憂に終わるのがお約束。アタシと一夏は晴れて同じクラスで満足。これでまた周囲が不干渉を貫いてくれればアタシと一夏だけの素敵空間が出来上がるという。アタシのケータイだってアドレスは両親と一夏のしかない。科学の力ってスゲー。
2人だけの時になるはずだったんだけど余計なのが入り込んできた。五反田弾。大衆料理屋の息子で、小学校も一緒だったらしい。知らないッつうの。
弾の接近を許してしまったのは、これまた一夏が頭痛で苦しみ出した時。マズい、預かっている薬を飲ませなきゃ、と縮地しようとしたところを弾がびっくりしながらも一夏を抱き上げて保健室へと連行してしまったのだ。慌てて追いかければ、野郎は何故かさらに速度を上げて、道行く生徒や教師共を撥ね飛ばして保健室へと飛び込んでしまった。廊下を走るなと言いたかったけど、言ってるアタシが走ってしまってりゃあ説得力は皆無だ。
「死ねぇ!!」
弾を始末してしまおうと保健室に飛び込めば、恰幅の良い保健の先生に「生きなさい!!」と出会い頭にヘッドロックされて壁に叩きつけられてしまった。痛すぎて死んでしまう。保健の先生に殺されてしまう。おかげで弾殺人事件は未遂に終わって、代わりに鈴殺人事件が完遂されてしまうところだった。
それがきっかけになってアタシと一夏の世界に弾が入り込んできた。弾の奴はけっこうできた奴で、バカだけど一夏に対して気遣いだけはできていた。どうしても男女別々の授業で別れなきゃいけないときは任せることができる程度には信用しようと思う。信頼はしていないんだけどね。
男同士だからこその友情があって、女のアタシには立ち入ることのできない部分があることは事実であり、変えられない真実ではあるけど、その分だけ女だからこその動きで一夏との関係を築く。それと弾が悪い方向に目覚めないように監視しておく必要もあるわけ。男色に覚醒されては色々と困る。そうなる兆候が見えた時には、一夏には悪いけど弾を消さなきゃいけない。消す、もう決めたのよ。
それよりもまず目の前に出てきた鬱陶しいのは弾の妹だった。弾の家で遊ぶことになって一夏と一緒に訪ねれば、弾の妹の蘭が部屋から飛び出してきた。なんか、弾をリスペクトしている部分のある妹だってことだけは分かった。そして、惚れっぽいのか一夏に一目惚れしちまいやがった。兄妹揃ってふざけんな。
蘭の奴はアタシを見るなり敵意をぶつけてくるけど、あんなのはそよ風程度の影響しかない。つまり取るに足らない相手だということ。一夏の反応が妙に味気ないのもアタシが脅威を感じない理由でもある。一夏は人を選ぶみたいで受け入れる相手とそうでない相手では対応が違うところがある。蘭は受け入れない相手でしかないんだけど、その蘭本人は自分の立ち位置を把握できていないみたいで、無駄なアピールで気を引こうとしている。見ていて滑稽じゃない。弾の奴も妹が受け入れられていないと察しているようで、さっさと妹を部屋から追い出してしまった。うん、こういう時は役に立つ奴だ。
で、一夏がトイレで席を外せば、アタシと弾は睨み合うのだ。互いは親友でもありライバルでもあるのだ。一夏の前ではさざ波のような争いしかしないけど、いなくなれば荒波の戦いを繰り広げるのだ。男女の垣根なんてものはない。
中学時代は3人でテキトーに過ごすのが日常だった。時にはテストに向けて勉強をしたり、暇を持て余して町をぶらついたり、一夏の家で千冬さんに意識を刈り取られたりと幸せな日々だった。
ああ、一夏と一緒に居ると幸せだ。一緒に嫌な目にあっても耐えられてしまう。一夏はアタシに幸せを運んでくれる。土地の違いや才能や接客の問題で青息吐息に、パパやママが喧嘩をする中であっても、アタシだけは幸せの中にどっぷりと浸かっていられる。でも長くは続かない。一夏が遊びに来ると必死に仲が良いように装うけど無理なのは一目瞭然だ。このまま進展がなければ、パパとママは離婚する。それも帰国してからだ。さすがに日本で離婚して第2の人生を歩もうとは2人共考えちゃいない。
帰国は秒読み。一夏との楽しい日々は終わりを告げる。だからこそアタシは勝負に出る。勉強に勉強を重ねて、帰国時には国家代表候補生になって自分の力で日本にやってきてやる。IS学園がどこまで自由に振る舞えるのか分からないけど、きっとチケットを手にして日本に戻って来てやろうじゃない。
泣く泣く中国に帰国すると時を置かずとして両親が別れた。予想通りの事態に飽きれてものが言えなくなる。多感な娘がいるんですけど相談1つなしでしょうか。
とにかく親権はママが掻っ攫っていった。まぁ、昨今の情勢を考えれば当然の結果かもしれない。
アタシはママに連れられながら勉強を頑張った。時間がない。国家代表候補生になるためにはどんなに頑張っても時間が足りなさすぎる。自分では飲み込みは早い方だと思うけど、それでも目の前の飲み込むべきものが多すぎる。だけど、一夏のことを思えば頑張れる。最初は孤独感からの同族意識で、時を重ねるごとに一夏と居ることが好きになって、段々と一夏が居ればずっと幸せな気持ちになっていられるようになって、もう一夏を基準にしか物事を考えられなくなりつつある。大事な判断も一夏のことを考えてから決めてしまう。それも直接一夏の関係なことまでもだ。消しゴム一つとっても一夏のことしか考えられない駄目人間になってしまった。
だけど、それはアタシにとって強い原動力でもある。爆発的な推進力を与えて突き進むことを可能にしてくれる。これはアタシが一夏を想うからこそ。他の誰にも真似できない力と心のハイブリット・ブースター。
躍進の一言で代表候補生への道を突き進む。代表候補生を見出す試験の学力検査では受検者10000人以上の中でなんとか上位に喰い込んで次の段階へと進むことができた。
体力試験ではトップクラスだ。昔から身体能力には自信があるのだ。組手なんて全員叩きのめしてやった。伊達に弾と争っていたわけじゃない。この程度の相手なら木端と変わらない。そう考えると弾は意外にも強かったことが分かった。
学力も体力も圧倒的な成績を残したアタシが代表候補生になるのは自然の摂理で、アタシは文句なしで代表候補生になった。これでいますぐにでもIS学園に向かえる、もっと言えば日本に行ける。さらにもっと言えば一夏に会いに行ける。
と思って見れば新型ISの開発がちょっと遅れてるぅ?
もう少し待ってくれぇ?
ちょっと日本が長すぎて中国語が理解できないんだけど。それはつまり何。アタシがこうまで頑張ってきたのに、アンタらは頑張りが足らないでアタシの足を引っ張ってるってこと。アンタらが言ったんでしょ、世界で初めて男性のIS操縦者が現れた。すぐにでも我が国の代表候補生を送り込んでデータを手に入れなければって。その結果が間に合ってないとか冗談にしても笑えない。これでISの性能もダメダメだったらどうしてくれようかしら。
4月の入学を楽しみにしていたのに、入学が転入に変わってしまった。これじゃあ一夏に悪い虫が引っ付いてしまう。それで一夏が惚れちゃったらどうしてくれんだっつうの。国内で新型ISの性能実験でもしてあげようじゃない。
新型ISの完成は4月の終わりで取り付くろうことのできない結果に、アタシは苛立ちを隠せないままに日本行きの飛行機に乗った。ISならひとっ飛びなのに飛行機でノロノロと行くなんて耐えるのに苦労した。アタシもそこまで馬鹿じゃない。過激な真似すれば一夏との幸せがなくなってしまうのだから、我慢して飛行機でじっとしていた。
日本に辿り着けば、今度は地上の交通機関を駆使してIS学園を目指さなきゃいけない。交通費はもらっているからいいけど、時間がかかることには納得いかない。
ようやくIS学園に辿り 着いた時には辺りはすっかり暗くなっていた。ご飯も食べずに急いでもこれだからIS学園へのアクセスの不便さは並大抵のことじゃない。改善を要求するわ。
そして問題なのは敷地内地図。超重要なのは分かるけど分かりやすい地図くらいは用意しておきなさいよ。受付が分かんないじゃない。ごちゃごちゃと細部まで記載した地図じゃあ目がちかちかしてくる。どうせなら目が一夏一夏したい。
暫くリビングデッドしていると、前方に不審人物を発見した。男のくせに女の園でうろうろと。女トイレに入り込むのとおんなじだ。一夏は大丈夫。アタシが大丈夫だって言ってんだから大丈夫なのよ。
「ちょっとそこの不審者!!」
急速接近してからの口撃。いくらアタシだっていきなり延髄切りとかはしない。そこはきちんと分別つけている。
アタシの言葉を受けた暫定変質者が振り向けば、その男子の顔立ちはどこか一夏に似ている奴だった。
驚きで思わず頭を撫でてしまいそうになったけど、顔だけ似ている奴になびくほど尻軽女じゃないから、ぎりぎりで実行せずにすんだ。くそ、一夏に会いたいがために幻覚でも見ているのか。長旅の辛さを思い知った次第だ。どうしてくれよう。
しかし、幻覚ではなく存在しているソイツは肩に大きなバッグをかけていることから、この学園に用があってやってきたんだろう。
それにしても一夏に似ている。兄弟どころかほぼ同一人物。似ているでは済まされないレベルだ。火と水のどちらの冥王計画用ロボを動かすのか気になる。もしかして見た目に合わせてIS動かせるからきたとか。でもニュースで騒がれたのを聞いたことないけど。
だけど興味はそこまで。一夏以外に優先することのないアタシにとってはその他1とか2とか知ったことじゃあない。
翌日のアタシは長旅の疲れで多少起床時間が遅くなってしまったけど、無事に一夏と再会することができた。隣にアタシに喧嘩売ってんじゃないかってくらいの胸をした女がいるけど、そんなのは無視だ。今は一夏との再会を甘受するべきだ。
「中国国家代表、凰鈴音。アンタに会いに留学成功!!」
机から机に飛び移って一夏の机に無事着地しての決め台詞。一夏が嬉しそうに笑ってくれるからアタシはさらなる幸せを頭から被って幸せ塗れになった。
しかし、そこで邪魔してくるのは一夏の隣で睨みを利かせてくる女だ。アタシ達が懐かし話で意気投合している中で、手刀で割って引き裂きやがった。一夏を隠す様に立ち塞がるのは、あからさまな邪魔者。
「貴様、何奴だ。名を名乗れ!!」
「名乗れと言われて、素直に名乗るバカはいないっつうの」
そもそも最初に名乗ったので何奴も何もない。
「貴様の名前などどうでもいい。一夏の机に座るんじゃない」
「名乗れって言ったのはそっちじゃないの。我が儘すぎやしない?」
こんなのが一夏も近くに跋扈しているのが許せない。人の恋路を邪魔する奴は美少女に紛れて地獄に落ちろってね。もちろんアタシが美少女ですけど……文句あんの。
「教卓にも座るな。この教室の担任は織斑千冬義姉さんだぞ」
「マジで!? すぐ降りなきゃ駄目じゃない。千冬義姉が担任だったなんて聞いてなんだけど」
なんでそんな大事なこと言わないのよコイツは。千冬義姉さんに喧嘩売りたいわけじゃないっていうのに。
「1組の所属じゃないのか?」
「したかったけど、残念なことに2組。アンタ、誰だか知らないけど交換してくんない」
「死んでも断る!!」
「気安く断ってんじゃないわよ!!」
怒りに任せて教卓を叩いてみれば、織斑千冬と目が合ってしまった。マズいと思った時には既に遅く、逃げる間もなく拳骨3連発を3ダース喰らった。超痛いんだけど。
やはり、一夏と一緒に居たい気持ちが強い。アタシにとっての幸せは一夏が常に運んでくれているのだ。麻薬の快楽を疑似体験できているのではないかって思っちゃう。だからこそ、一夏と一緒に居たいと熱望してしまう。
すぐさま行動に移すところがアタシの強みだ。一夏の同室を語るきょぬー女に部屋交換を持ちかけてみたんだけど、頭の悪いきょぬー女は脳みその70パーセントが憎き胸の肥しになっているような後先考えない答えをくれやがる。
愛でてるとか羨ましさ100パーセントなこと言ってくるだけなら、まだギリギリ我慢できたけど、このきょぬー女はアタシっが気にしていることを言っちゃってくれるもんだから、我慢も限界で一夏を攫ってやることにした。そして、千冬義姉さんへ提案しにいくことにした。内容は簡単だ。一夏を守れる実力のある方が同室になった方がいいのではないか、という至極単純でありながら、一夏を溺愛する千冬義姉さんの弱点をめった刺しにする提案。それをうまく利用して、このきょぬー女をぶっつぶしてやる。アタシよりも身長も胸も小さくつぶしてやるんだから。
タイミングが悪くて管理人室に千冬義姉さんがいない。何をやってるんだ、あのお義姉さんは。扉を叩いて必死に魔人召喚を続けてみるけど、召喚に応じない千冬義姉さんにはガッカリしてくる。心読まれたら殺される気がしないでもないけど、ガッカリしてくる。
チラッと隣にインターホンを見つけてしまったけど、今更インターホンなんて押せるわけないじゃない。それじゃあ、アタシがインターホンの存在も考えられなかったアホみたいじゃない。きょぬー女が情けでインターホンを押してくれたけど、怠惰なブラコン魔人の召喚は失敗してしまった。アタシの気力が無駄に消費されてしまった。一夏を愛でまくって回復したい。
一夏ときょぬー女とで顔を突き合わせて行動指針を決めようとしたとき、なんていうか廊下から、この前見た一夏そのものの顔をした男子が余計な女子たちを連れて駆け込んできた。嫌がらせじゃないのかしら。場の雰囲気とか諸々をぶち壊す嫌がらせ。
まぁ、その篠ノ之一夏が一夏とおんなじ名前をしているから、アタシはコイツを篠ノ之と呼ぶことにするのだ。だって、アタシの中では一夏は織斑一夏1人しかいないんだ。絶対に他の奴に反応してもらいたくない。一夏を穢された気になってしまうのだ。
そんなアタシの一夏は篠ノ之を好意的には思っていないみたいだ。呼び方で分かる。一夏はけっこう分かりやすい部分があるし、アタシなら一夏のことなんてほとんど分かってしまうのだ。
一夏は本当に親しい人間を名前で呼ぶ。そこそこ親しい人間は苗字にさん付けをする。全く好んでいない相手には苗字を呼び捨てする。うん、一夏人間の好き嫌いがはっきりとしている。そのおかげで余計なライバルがいなくて助かる。アタシにとってライバルは篠ノ之箒と五反田弾の2人だけだ。千冬義姉さんはラスボスなのでライバル違う。アレは倒すべき目標なのだ。
「待ってなさいよ、一夏。アタシが貰ってあげるんだから。もしくは貰われてあげるんだから!!」
人気のないところで宣言してみれば、隠密行動中の千冬義姉さんに聞かれてしまい、空き教室に連れ込まれて修正されかけたのは記憶に新しいとだけ言っておこうと思う。
一夏との日々は楽しい嬉しい幸せのハッピータイムだ。一緒の空間を共有する箒が鬱陶しい時もあるけれど、アイツはたまに共感できるから心の底からは鬱陶しいとは思わない。それよりも目下気をつけなければならないのは千冬義姉さんだ。最近のアタシは幸せと欲望が駄々漏れなのか、千冬義姉さんの折檻を受けてしまうのだ。すっげー痛いんだけど、共にしばかれる箒なんて泡吹いてるし。というか、アンタがアピールしてる防御力はどこ行った。
しかも、千冬義姉さんの折檻が原因でアタシや箒は大事な場面で居ることができない。
ラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツの代表候補生だ。軍人でもあるらしく、教官教官と五月蠅いことから千冬義姉さん関係の人間でもあるみたいだ。パッと見はあからさまな色物キャラね。困ったネー、色物受け付けないアルよ~。この程度の個性でじゅーぶんよ。
最近はずーーーーーーーーっと嫌な予感がしてる。アタシの第六感が激しく鳴り響いているのだ。ぱぴぷぺぽぴぷぱと五月蠅いほどに。原因なんて言わずとも知れる。ボーデヴィッヒだ。アイツが嫌な予感の原因だ。それも一夏に害を為す。聞けば出会い頭に一夏を殴りつけたと聞くし、この前はアッパーで一夏を傷つけてくれちゃって。一夏が怯えて何も言えずに目を逸らすのが、どれくらいの傷を負ったのか教えてくれるんだから。
だからこそ、できるだけ一夏を独りにはしたくなかった。でも残念。アタシは2組の担任に捕まってアレコレとおんなじ内容の説教を4ループほど喰らっている。説教の言葉を持ってないからって同じ内容はやめてほしい。無駄な時間だ。アタシは一夏の元に急ぎたいのに。
「あ!? UFO!!」
窓を指さして叫ぶ。教師が振り返れば、アタシは急いで逃げ出して、一夏の元へと向かってみれば、第3アリーナを塞ぐ人の波があるものだから、ソイツ等の肩を足場に踏み越えていく。苦情は一切受け付けておりません。
そして、アリーナへと転がり込めば、アタシの居嫌な予感が見事に的中していた。