何の冗談か、ISを動かしてしまったことにより、嫌が応にも世間様からの注目を一身に受けてしまったボクは、合否をドキドキしながら待つことなく東東高校の入学を断たれてしまった。これは困る。去年から千冬姉さんに勉強を教えてもらい、仕事で疲れているだろうに家事までやってもらっていたのに、結果は第一志望の高校に入学することができないという裏切り行為。市中引き回しの上獄門打ち首にしたって此度の背信行為は許されないものだ。それでも許されないことだとしても謝るべきだ。
衝撃の出来事からひとまず千冬姉さんと帰宅し、家の中に入り込んでクツを脱いだ瞬間に土下座した。フローリングに額を擦りつけて尻よりも頭を下げて床を突き破る勢いで土下座の限りを尽くす。頭部を踏まれて罵られても仕方がない。普段から迷惑かけっぱなしだというのに恩返しの一つもすることもできずに更に迷惑をかけてしまったのだから。
「ごめんなさい、姉さん」
謝る言葉が見つからない。どんな言い訳もできないまま床に這い蹲る。このまま床と同化しそうになるのを千冬姉さんがひっぱり起こして抱きしめてくれた。怒られないのはボクの不始末ではないと感じたからだろうか。不可抗力であっても千冬姉さんの優しさを無下にしてしまったという事実は変わらないけど。
「謝るな。私にもよく分からないが、お前のせいじゃない」
「でも、せっかく千冬姉さんが家事を代わりにやってくれてたり、勉強を教えてくれたのに」
「それはもっと謝らなくていい。お前の為にやりたいと思って実行しただけだからな」
姉さんがギュッと抱きしめてくれる。背中に回される腕がもたらす安らぎに安心感が溢れ出し、いまだに混乱を引きずっているらしい頭の回転が平常時くらいまでに落ち着いてきた。
毎度のように千冬姉さんには助けられてばかりで、いつもお礼がしたいと申しでても姉に甘えろ、と言われるばかりでお礼を返せたことはほとんどない。恩を少しでも返したい。でもどうすることもできない非力で誇れるところのない身分では千冬姉さんの身体をそっと抱きしめ返すことしかできない。安心させてもらったので、なんとか姉にも安心してもらいたい、とその背中に手を回す。
「これから騒がしくなるかもしれない。だが必ず守ってやる」
肩に顎を乗せてきた千冬姉さんがポツリと呟く。その言葉に込められた決意の中身は窺い知ることはできないけど、きっと無理をさせてしまうことだけは察することができてしまった。
「今日はボクがご飯作るよ」
何もできないボクは無力感に支配されたまま夕食作りを始めた。
翌日からは大変だったと言わざるを得ない。明らかに公的な機関の人間です、と主張した服装の人達がやってきてアレコレと言ってきたり、まさしく科学者です、という人達もやってきてアレコレと言ってきたり。どれもこれも恐ろしい目をしていたことだけは良く覚えている。
しかし、その全ては千冬姉さんが全く笑っていない無表情に近い表情と、病院送りしてやると言わんばかりの眼力を見せつけながらもさざ波一つない湖のような冷静さで相手を追い返していった。
千冬姉さんが相手を追い返して追い返して追い返して、国のそこそこ偉い人たちと交渉して、ボクの人権等を尊重させ、実験には本人の了承なくしては強力してはならない、などの条件を次々と付け加えていき、その結果はIS学園への強制入学という形で一応の終息した。
IS学園への入学に関しては希少な存在へと昇格してしまったボクの安全を守るための処置であると説明を受けた。非人道的な手段を辞さない相手がいないとは限らないというのだ。
なるほど、とその部分に関しては姉弟そろって納得して受け入れた。ボクは過去に誘拐された経験があるので、日常の一幕の中にテレビの向こう側でしか起こっていないじゃないかと錯覚するような事態が紛れ潜んでいることを身を以て十分に理解している。それは身内を攫われた千冬姉さんも同様で「理に適っている。私としても守りやすいな」と言っていた。
千冬姉さんの職場を考えれば、より一層IS学園への入学が適している。
ボクら姉弟の心変わりとごねられては困る、と担当者がすぐさまIS学園への入学用書類と、教材一式を用意してくれた。入学書類云々はその場で書いてすぐさま手渡し、代わりに手渡された六法全書並の厚さを持つ教科書に気分が滅入る。そこまで勉強ができる人間じゃないボクには、入学前に覚えて欲しいと言われた教科書の厚さはまさしく殺人級と言わざるを得ない。
「が、頑張ってみるよ」
弱々しく宣言をするしかなかった。
自己紹介中に思い出したのはほんの数ヶ月前の出来事。ボクがこのような場所にやってきたきっかけであり、人生のターニングポイントというべきか。
あの時に付き添った少女はどたばた騒ぎの中で姿を消してしまったけど、無事に姉に会って一緒に帰宅することができたのだろうか。きっと怒られて呆れられて喜ばれてと様々な感情を受けて帰っていったんだろう。とにかく無事に帰宅していることを今更ながらに願おう。
「ええと……次は織斑さんなんですけど」
申し訳なさそうな声音で名前を呼ばれる。ハッとなって顔を上げるとおそらく担任の女性が本当に申し訳なさそうな顔をしてこちらを見つめていた。思えばあの時ISを触らせてくれた女性だった。全体はよく覚えていないけど、童顔に偽りありと言いたくなるほどの凶器を胸に仕込んでいるという部分的な特徴は覚えていたのだ。
「あ、はい。ごめんなさい」
謝ってから立ち上がる。振り返って自己紹介を始めようとすれば、教室中の視線が一気に向けられて身体中に視線が突き刺さって穴だらけになりそうになる。穴があったら避難したくなるけど、生憎IS学園は最新鋭の学校といった風貌であり、ちょっとしたネズミ穴程度の隙間すら存在しない。よってボクは背水の陣を敷いてはいるけれど敵を撃退もできずにボコボコにされているような錯覚に、敗北の2文字を胸に抱きながら口を開く。
「織斑一夏です。ええと自分でもよく分かりませんがIS学園に入学することになりました。よろしくお願いします」
無難過ぎる挨拶は情報量は名前以外皆無であり、周囲を満足させられるレベルのものではなかった。申し訳ないと思いつつ、小学校時代にも中学校時代にも経験したことのない場面に、緊張がピークに達して普段らしさを出せなかったのだと勝手に推測して納得してくれれば幸いだ。
周りに蔓延する、もっと喋ってよ、的な雰囲気の渦を抜けてなんとか着席する。自己紹介の最低条件が提示されていなかった以上、喋る内容は個人個人に任せられるのでボクはこの程度の自己紹介で終わらせたのだ。というか注目されている事態に耐え切れずすぐさま着席しただけなんだけど。
次の人が自己紹介の為に立ち上がろうとした時に、教室の前扉ががらりと開く。スライド式の扉は遅刻する人間を逃しはしないとガラガラと音を立てるので入室者の有無はすぐさま分かってしまう。
「ふむ。暫く任せてすまない。山田先生、ここは代わろう」
現れたのは千冬姉さんだ。真っ黒なスーツを着こなし、抜き身の刀を思わせる鋭利で美しい姿に、教室中から音という音が消えた。世界から音だけが抜け落ちてしまった。静まり返った生徒達を前にして、千冬姉さんは溜息を吐きだして耳を塞ぐ。チラリとこちらに視線を向けてきた。ああ、分かった。
パッと手を動かして耳を塞ぐと周囲が黄色い声を上げる。30人ほどの教室に様々な声質が飛び交って空気を大きく震わせる。肌の表皮をゾクゾクと振るわせていくのが不愉快で、ギュッと目を閉じて耐え抜く。数十秒が数分にまで引き延ばされていると感じるのは脳が楽しいと判断できないからだろう。昔から楽しい時間はすぐに過ぎ去ると言うのだ。
「静かにしろ」
すぅっと耳に入り込んでくる千冬姉さんの注意。心底うんざりしているようだった。
「これから1年を通してお前たちを教育していく。織斑千冬だ。名前で分かるだろうが、織斑一夏は弟だ。知っての通りの特例でこの学園に入学したわけだが特別扱いはしなくていい。なにせ特別扱いは姉の特権だからな」
千冬姉さんが真顔で言いきってしまった為に教室中が嘘のように静まりかえる。誰もが言葉をなくしてボクと千冬姉さんを交互に凝視して、そんな生徒達を千冬姉さんが釘を刺すように睨みつけていく。言う必要はないけど、千冬姉さんは少々過保護だ。たった1人の家族だし、誘拐された経験があるので過保護になるのは仕方がないと思う。本当に申し訳ない話だ。
「さて、自己紹介でも続けてくれ」
もはや自己紹介など続けられる雰囲気でないことは明白なのだが、千冬姉さんは構わずに再開するように指示して教壇から離れて窓側へと場所を映してしまった。残されたのはこの空気の中で舵取りをしなければならなくなった、担任だと思っていたけどそんな事実はなかった山田先生だ。千冬姉さんは宣言通りに、ここは代わったわけになる。有言実行過ぎる。
突然のバトンタッチを受けてしまった山田先生が泣きそうな顔で必死に空気を元に戻すのには5分ほど時間を要した。
自己紹介が終われば早速授業が始まる。初日の授業は基本的に入学前に予習してきたはずの内容についての復習である。きちんと身に着いているか、分からない場所はないかの確認の為のものであり、これ以降に行われる授業がどういうものかを教えてくれると思えばいいかもしれない。
周囲は真剣な眼差しで巨大ディスプレイの文字を追ってノートに纏めていく。カリカリとノートの上をシャーペンが走る音と、副担任の山田先生の解説の声だけが教室を支配している。ボクもその支配下に入ってノートに文字を書き連ねていく。復習の授業内容なのでまだ置いていかれずに済んでいるけど、それでも他の生徒に比べて1歩も2歩も後ろをついて歩いているような遅れを感じ取っている。抵抗を感じながら入る内容に、理解力が足りていないのではないか、と焦りを感じてしまう。
ぼんやりとしている暇もなくディスプレイとノートと教科書に忙しなく視線を移して一層の内容理解に努める。目が零れ落ちそうなくらいにキョロキョロと動かしていくが、ギリギリ目玉は零れ落ちないで保ってくれている。
そうして休憩することもなく目と手を動かしている間に授業は終了した。なんとか引き離されずに済んだことにホッとして机に突っ伏す。ひんやりとした机がオーバーヒートしそうな頭を冷やしてくれる。
次の授業までの間は脳みその冷却に努めようと心に決めると、正面に誰かが立つ。空気の流れが変わるのを感じ取れた。それと周囲の雰囲気ががらりと変わったのも分かってしまった。
ゆっくりと頭を持ち上げて目の前の人物を確認してみる。真っ黒な染まらないことを信条としているような髪の束がふわりふわりとする中に、キリリと意志の強そうな顔があった。への字に引き締めた口元の上には千冬姉さんには劣るけど鋭い瞳が真っ直ぐにボクを捉えていた。
「少しいいか?」
小学校以来の幼馴染がボクを言葉だけで立ち上がらせた。
場所を数メートルだけ移して改めて向かい合う。教室の中から教室の外、つまりは廊下に移動した。休憩時間は珍しい生き物を一目見ようと生徒が集まっているので廊下には埋め尽くしかねない人の壁が出来上がっていた。幼馴染との再会に水を差されている気分にさせられる。もしくはドラマの撮影を見学する人の群れ。
ボクは教室を背にして、幼馴染の篠ノ之箒は窓側を背にしている。2人の間は広く取られている。今のボク達の距離間を見事に表しているのかもしれない。恋色を敏感に感知する人達なら、ボク達の距離を色々と勘違いして見てしまいそうだ。
「久しぶりだな」
緊張していることがよく分かる声の震え具合だ。視線もあっちへ飛んだりこっちへ飛んだりで忙しない。
「そうだね」
そして周囲の視線の集まりに緊張してしまっているボクも声が若干震えてしまっている。
「そういえば……新聞で読んだよ。優勝惜しかったね」
去年だったかの新聞のスポーツ欄で見た剣道の全国大会の記事。そこに箒が全国2位であることが書いてあった。記事の内容はやはり一位優勝の人へのインタビューくらいしか載っていなかったけど。うん、新聞はもう少し周りの声に耳を傾ける必要があると思った。
「でも写真に写った箒はすごくカッコよかったよ」
「……ふふふ。そうか、それは優勝よりも嬉しいかもしれない」
ちょっと照れくさそうに笑う箒。笑い慣れていないのかぎこちない笑顔だけど、心からの笑顔だってことはよく分かったので置いておく。周囲が「あんまり嬉しくなさそう」と呟いているのが聞こえたけど、それは本人のみぞ知るわけであって他人の批評はそこまで大きくは役に立たない。
「箒が同じクラスなのも嬉しいね。また迷惑をかけちゃうけどよろしくね」
「迷惑かけると思うなら少しは自重しろ……頭痛がな。やはり頭痛は収まらないのか」
「うん。後遺症みたいなものだって聞いてるから、一生の付き合いになっちゃうかもね」
後遺症。6歳の時にどこかの階段から転がり落ちて、ボクは6歳以前の記憶を落っことしてしまい、その代わりに片頭痛という厄介な物が頭の中に入り込んでしまった。医者が言うには後遺症らしい。
「……薬」
「えっ?」
「頭痛を抑える薬持ってるんだろ。少し寄こせ。どこかで倒れられたら困るからな」
ズイッと開ききった手が差し出される。お手でもしなきゃいけないのだろうか、と思ったことには思ったのだが、前後の状況を考えればその手に薬を乗せなきゃいけないことだと分かる。
制服のポケットから錠剤の束を取り出して、そこから少しだけ千切って手のひら置く。そうすれば箒は満足したように薬を見つめ、手のひらを閉じて山田先生と対等に戦えそうな胸の前に持っていく。
「うむむ。久しぶりだな、頭痛薬」
「確かに久しぶり。小学校の頃も薬渡してたもんね」
「そうだ。だから安心しろ。頭痛が来たら遠慮なく言うがよい」
薬をポケットに仕舞い込んで胸を張って言い切る箒。小学校の頃と同じだ。箒が、私が助けてやる、と薬を所持して、宣言通りに頭痛で苦しんでいる時にすぐさま駆けつけてきて薬を飲ませてくれていた。
過去を思い返してみるとこれからの学園生活が少しだけ楽になりそうな気がする。
「もうすぐ時間になるな」
「そうだね」
「戻るぞ」
言うなり、箒がボクの手を引いて歩きだした。
本日2度目の授業もまた荒波に晒されながらもなんとか岸辺までたどり着くように終了した。ノートを見返せば、中学時代ではあり得なかったページの消費量。それもスカスカなものではなく重厚な小説のようにぎっしりと書き記されている。将来は小説家の道もありなのではないかと勘違いしそうになる。弱い筆圧のせいで見え辛いノートをペラペラと読み返せば専門用語の羅列と公文のように堅苦しい言葉の集合体に溢れている。自分の数ヶ月の勉強では、IS学園を本気で目指して努力を重ねてきた人たちには遠く及ばない。よって、これら授業を切り抜ける自信が段々となくなってくる。
再びオーバーヒートしかけた頭を机のひんやりとした感触で抑え込む。マンガの世界なら頭から湯気が出ている。マンガじゃなくて良かったと思う。
頭を冷やす行動が変な誤解を生んでしまったのか、箒が剣道で嗜んだ足運びでこちらへ向かってくる。音もなく忍び寄る様は暗殺者のようだった。これで後遺症の頭痛だけを殺してくれればいいけど、いくら箒でもそれは無理があるので諦める。
「無理はするな。痛みがあるなら言え」
開口一発目がこれなので、勘違いさせてしまったことがよく分かる。これはボクの罪と言えることだ。謝って許してもらうしかない。
「大丈夫。勉強に苦戦七転びしているだけだから」
「苦戦だと。ううん……一夏、お前は勉強も満足にできないのか」
「満足にはできてないかも。なにせ内容理解以前に書き写すのだけで精一杯になっちゃってるから」
「し、仕方がない。幼馴染として……幼馴染としてお前に勉強を教えてやらんこともない。それはその、アレだ。私が教えてあげた……ごほんごほん。うむむ、要はアレだ、アレなんだ、分かるだろ。他の者に迷惑をかけられると幼馴染として困るというわけだ。そう、倒れられて対処できなくなるのが困るのだからな」
「うん、ありがとう。箒の気持ちは胸がいっぱいになるくらいに感じ取ることができたよ」
クールにスタートして段々と顔を赤くしてきて、途中から幸せそうな顔になって、今度は納得したような顔に変貌して、最後は再び顔をクールにしてゴールを迎えていた。百面相だった。実は表情豊かな箒だ。
二人で何をするでもなく見つめ合って候。予鈴が鳴るまではやることのないボク達にできることはこうして他愛もない見つめ合いくらいだ。
しかし、世の中は見つめ合うだけでは満足できない人達も居る。言葉にしなきゃ分かんないよ、と言う人の方が多数派だからこそ、言い争いやディベート、裁判、懺悔などが存在するわけだし。
会話なく世界に会話を持ち込んできたのは1人のご令嬢だった。
「よろしくて?」
優雅な足取りでつかつかと歩み寄ってきたのは金色に輝く髪を長く縦にロールした生まれも育ちも上品と共に育ってきたかのような令嬢令嬢した令嬢さんだった。右手で髪を払う動作が様になっていて羨ましい限りである。ボクがやっても馬鹿っぽいから。
「よろしいわけがあるか」
優雅令嬢に食ってかかるのはボクではなく箒だった。スッと細められた眼差しは敵意が凝縮されて鋭い刃物状の加工を受けて向けられる。視線を受けた令嬢はうっと息を詰まらせて一歩後退してしまうが、すぐにハッとなって一歩前進して元の位置に戻る。
「わたくしは貴女に用はありませんわ。こちらの方に用があるので、邪魔しないでいただけます?」
垂れ目気味な瞳で箒を牽制しようとするが、迫力の差で負けているので睨み返されてまた一歩引いて、それから一歩前に出て持ち直した。
「ちょ、ちょっとよろしくて? お返事は?」
「ええと、何でしょうか?」
「まぁ!? なんですの、そのお返事は」
バラエティー寄りの返事でも返せばよかったのだろうか。それとも彼女の土俵に合わせて貴族みたいな返事を返せばよかったのだろうか。あの手の甲に口づけする奴……は忠誠を誓う時の奴だっけ。
「わたくしに話しかけられただけでも栄光に思うべきですのに、その気の抜けた返事はいただけませんわ。それ相応の対応を見せるのが当然だと思いませんか」
「痛々しいな」
「お黙りなさい、大艦巨砲主義の権化」
箒の一部分を睨みつけながら令嬢が吐き捨てる。何を言われているのかよく分かっていない箒は疑問符を頭上に表現しながら首を傾げている。
ボクもボクで箒のように頭上に疑問符を浮かべている。この令嬢の正体についてだ。本物の令嬢なのか、憧れて形から入っている健気な少女なのか、そもそも名前が分からないのでいい加減判明させたい。
「ええと、失礼を承知で訊ねますけど、どちら様でしょうか?」