けんぷファーt!   作:nick

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第27話 花祭りの娘

しばらくしてミスコンは始まった。

 

結局俺の格好は紅音が持ってきてくれたうちのクラスのメイド服(ロングスカートバージョン)に決まった。接客もこの姿がよかった…

 

その衣装を用意してくれた紅音は、戻ってきてすぐに変身した。今さらながら人前に出るのが怖くなったらしい。彼女にしては持った方だと思おう

 

ちなみに格好はなんかウェスタン風。しかし肌の露出度が異様に高い。アニメのキャラかな

 

というか今の姿で大丈夫なのか?紅音(変身前)で登録したんじゃないの?

…飛び入り参加って考えれば通るかな

 

 

「ナツルさん…」

 

 

舞台裏でミスコンの様子を見てたら沙倉に声をかけられる。

 

さっきのやり取りを思い出すと、嫌な予感しかしない。

 

が、無下にするわけにもいかない

 

「なんでしょうか」

「ここではちょっと…」チラリと他の出場者を見る。

 

なんだ。他に人がいたらマズイことでもするのか?

 

正直行きたくはなかったが、そうすると話が進まない。

なので仕方なく更衣室へ行くと、急に抱きしめられた。

 

 

「わたし…緊張してきちゃいました…」

彼女は潤んだ目で俺を見上げてくる。

 

白々しい。こいつがちょっとウザくなってきた。

 

「はあ…」

「お願いです…わたしに勇気をください」

 

唇に指差しながら…ってことはそういう意味なんだろうか

 

「沙倉さんもう出番じゃ…」

「だから…早く、ください……」そう言って目をつむる。

 

 

闘魂でも注入してやろうか

 

 

「鉛弾でよければくれてやるぜ」

 

不意に不機嫌そうな声がかけられる。

 

来てくんないかとは考えてたけどホントに来たよ

 

突然の第三者の来訪に沙倉が慌てた様子で目を開き、離れる。

少しだけ、ほんの少しだけ残念。現金だね俺も

 

「なかなか帰って来ないから見に来てみればファック寸前たあな、てめえらいい度胸だ」

 

彼女は俺と沙倉を睨みつけつつ、銃口は真っ直ぐ俺を狙っている。

 

おかしくねえ?

 

「あなたはいったい……」

「通りすがりの美少女だよ」

「……………」

「なんだてめえ、なんか言いたそうだな」

「いえ、別に」

 

ただちょっと、いい性格してるなーとは…思ってないですよ?

 

 

「もしかしてあなた、前に路上で銃を突きつけてきた…!」

 

「覚えてたか」銃を構えながらニヤリと口角を吊り上げる。

 

なんか凄い似合う。つーかエロい。

 

「わたしたちに何をするつもりですかっ」

「何を…?見てわかんねえのか」

 

紅音は銃口沙倉へと向けた。

マズい!

 

「おい、止めろっ」とっさに銃身を手で掴む。

危ないから良い子はマネしちゃ駄目だぞっ

 

「ナツルてめえっ!」

「沙倉さん、行ってっ」

「えっ…!?」

 

急に話しを振られたためか、あるいは展開についてけないせいか。彼女は驚いた声を上げた。

 

「コイツは私が…説得するから」

「で…でもっ」

「それでは次はおまちかね、沙倉楓さんでーす!!」

 

反論しようとするが司会役のますみが沙倉の名前を呼んだ。もうそんなに進んでたのか

 

だけどナイスなタイミングだ

 

 

「さあ早くっ、わたしのことはいいから!」

 

ちょっと芝居がかった感じで沙倉を促す。

 

こら紅音暴れるな、この状況で照準を合わされたら銃殺フラグが立つ

 

 

「…分かりました。ナツルさんが助けてくれたからわたし、舞台にでます!」

 

俺の台詞を聞いて感極まったのか、祈るように両手を合わせて握りしめ瞳を潤ませる。

 

 

はよ行け。無駄な演出するな

 

 

決して顔には出さないが、一人で盛り上がる沙倉にそう念を送る。無論紅音に気を払いながら。

 

それが通じたのか、彼女はドレスの裾を軽くつまみ上げ、小走りに去っていった。

 

ちょっとだけホッとする

 

 

「おい馬鹿」

「ギャバンッ!?」

安心したのもつかの間、声をかけられると同時に目の前で火花飛んだ。

 

それに伴い頭に凄い衝撃がオーバードライブ。燃え尽きるぜハート

 

 

「ぐああァッ!? 頭蓋が…後頭部がッ!?」なんか前にもこんなことあった

 

「テメェ…なにすんだゴラ!」

頭を抱え、普段の猫かぶり口調を忘れ素のままに噛み付く。

 

殴ったのはもちろん紅音。銃のグリップでの殴打直後の姿勢でこちらを睨んでいる。

 

注意はしてたつもりだが、知らないうちに掴んでた手が緩んでたようだ。

 

彼女は不機嫌な態度のまま、

 

「てめえ、なんで邪魔したんだ」などと抜かしやがった。

 

 

なに言ってんのこの子

 

 

「止めなきゃ撃ってただろ」

「当たりめえだ。沙倉の脳みそは豚のケツと同じ匂いがするって噂なんだ、本当かどうかあたしが確かめてやる」

 

そうあることが真理だと確信しているような口ぶりで頭がおかしなことを発しやがった。

 

俺も大概アレだがこいつにはちょっと負けるな。どっから聞いたんだその噂…

 

 

「…なあ、なんでそんなに沙倉を目の敵にするんだ。たいして接点があるわけでもないのに…。理由を言え理由を」

「……てめえの胸に手を当てて考えてみろ」

 

ほんのりと頬を赤らめながら、怒りに満ちた顔で一層鋭く睨みつけてくる。

なんでこの場面でそんな表情すんのよ。もっと別な場所でやれ

 

 

仕方なく…本当に胸に手を当てるのは気が引けるので、腕組みして考える。

 

 

 

チッチッチッチッチッチッチッチッ……チンッ!

 

 

 

「…………嫉妬か?」

 

 

答えた瞬間、紅音の顔が髪の毛と同じくらいの色に染まった。

 

えっマジで?当たり?

てかお前大丈夫なの!?赤ランプみたいだよ!?

 

 

「てめぇ……分かっててやってたのか…!」

 

その状態のままワナワナと震える。

 

いかん。この流れはいかんぞ。フラグが立つかどうかの瀬戸際だ

 

この状況を打破するために最適な一手は―――これだ。

 

 

1 2 3

 

 

 

「今の、なし」

「ふざけんなっ!!」

 

紅音の身体から殺気が膨れ上がる。ほとんど無意識に顔を横にずらした。

 

すると今まで頭があった場所…その後ろの壁に穴が空く。

てオイオイ

 

「おい、止めろ!!」コイツマジで俺を殺す気か!?

 

「うるせぇっ!死ねっ!!」

 

紅音は俺(の眉間)に照準を合わせ、容赦無く引き金を引く。

 

 

一発二発三発四発五発―――ホントに容赦無え!!

 

 

シャレんならん!全てかわして無傷ではいるがキリがない。打つべき一手を間違えたかな

 

更衣室に指定されているプレハブ小屋がどんどん穴だらけになっていく。早くなんとかしないと俺がこうなりそうだ

 

こんなときに最適な一手は以下略

 

 

「とんずら!」

紅音に背を向けて走り出す。

 

「っ、待てコラッ!」

ところが犬さんがあとからついてくる。(森のくまさん風)

 

俺どっちかってと猫派だからね

 

 

後ろで騒ぐ狂犬を無視して走り、外へ逃げ出す。

 

あーばよとっつあん

 

 

「ナツルさん!?」

 

 

やべえ、進む先間違えた。こっちはステージ側じゃねえか

 

「沙倉…さん、っ!」

 

舞台上で驚いた表情をする彼女に、勢い余ってぶつかる。

 

そのまま止まるのは無理だったので、ドレスの腕を掴んで半回転。密着した状態で華麗に着地(停止?)した。

 

 

「てめえ…ここでも佐倉か…!」

 

 

バッドな意味でタイミングよく紅音さんが登場。

 

はたから見れば仲良く抱き合っている俺たちを見て、吊り上がった眉を一段険しく吊り上げる。火でも吐きそうな怒りっぷりだ

 

 

「おおーっと!ここで突然飛び入り参加の美少女Aさんが乱入!そしてもう一人は花嫁を守る正義の味方、瀬能ナツルさんでーす!!」

 

 

黙れ司会者煽んな

 

つかてめえ西野ますみじゃねえか。なにバニーコスしてんだ、生意気な

 

「…………」

 

ヤバイマジで怖い。紅音の眼力ハンパない

 

沙倉の方は離れようとしても離してくんないし、おかげで片腕が使えない。

うっとりとした顔で凄い握力だ。タコの吸盤か

 

 

「ナツルさんよー。最後に言っておきたいことはあるか?」

 

死刑囚に話しかける刑務官のような台詞ほざきやがった

 

「被告人は無罪を主張します」

「よし、死ね」

紅音は躊躇いなく銃口を向け発砲する。

 

慌てて沙倉を抱え横に跳んだ。

 

同時に壁に穴が空くが、観客は演出と思ってるようで熱い歓声と声援を上げる。

 

「ナツルさんステキー!!」

「飛び入りのお姉さんも頑張れー!」

「沙倉さんお幸せにー!」

 

好き勝手言いやがって、客席に突っ込んでやろうか

そういえば俺病弱って設定らしいけど、こんなに動き回っていいのかしら

 

「っ!?うわ!」

余計な事に気を取られたせいで沙倉のドレスを踏んずけた。

 

滑ってヘッドスライディングするような形でコケる。ちょっと痛い

 

「もらった!」すかさず狂犬が俺の眉間にロックオン。あとは引き金を引くだけの簡単なお仕事です。

 

 

ってヤバイヤバイヤバイマジでヤバイ!幸い沙倉は離れたけどこのままだと本当に射殺される!

こいつ超本気だもん、眼の中で狂気がサンバ刻んでんもん!

 

長年喧嘩まがいのことをし続けてたせいか、相手が本気かどうかは顔を見ればすぐに分かってしまう。いっそ分からない方が幸せだった

 

そうすればこんな未来はなかったかもだからな!27話目にして主人公交代か物語終わってしまうぞ!?

 

 

とっさにポッケに手を突っ込む。この状況を打破する一発逆転な道具があるとも思えないけど

 

すると指先に固い感触が帰ってくる。

 

一瞬悩んだが、それを素早く引き抜きそのまま投擲!!

 

ヒュッ ガッ!

 

 

「なっ!?」

 

 

紅音の眼に狂気以外の感情が浮かんだ。

同時に周りから歓声があがる。

 

 

ダーツのように飛んでった千枚通しが、銃口に吸い込まれるかのように突き刺さったからだ。

 

家から持ってきた、東田達を脅すのに使った食器類の一部だ。

着替えた時に全て置いてきたはずだが、一本だけポケットに入ってたようだ。なぜだろう

 

俺の肉体と精神はときに所持者の意思を離れて行動するからな。

おかげで命拾いしたからいいけど

 

 

 

「てめえ…やってくれるじゃねえか…!」紅音が千枚通しを抜きにかかる。

 

結構ガッツリ刺さってるのに、ものの数秒で引き抜かれた。

ケンプファーになると力が強くなるってのを差し引いても異常だと思うのは俺だけだろうか

 

「んだぁこの野郎!ぶっ殺ぉす!!」

「激昂状態!?」乙女の使っていい台詞じゃない

 

というかなんでそんなに怒ってんの?

 

心情当てられたから?沙倉とくっついてたから?ただ単に俺が気に入らないから?

 

 

ヤダ全部ありそう

 

 

「…学校で殺人はやめてもらいたいのだけれど」

 

再びシューティングゲー(弾数ゼロ。移動のみ可)が開始されるかと思いきや、それより早く新たな乱入者が文字通り舞い降りた。

 

 

「おぉーっと!ここで我らが生徒会長、三郷雫さんが参上ーー!短剣を持っての登場とはニクイ演出です!!」

 

素敵ー、シビれるー!などと叫びながら、ますみがマイクを持ってるのと逆の腕をブンブンと回し実況する。

 

テンションたけーなオイ。この会場で一番高いんじゃないか?

 

 

「……会長さん。学校で(・・・)と言いましたけど、校外だったらいいんですか?」

「銃を仕舞いなさい、もう終わりよ」

「ふざけんな!てめえも殺す!!」

 

 

無視ですか

 

 

引き抜いた千枚通しを乱暴に投げ捨て、フリーになった銃口を雫に向ける紅音。学院の二大美女の登場にヒートアップする客席。

 

 

なんか俺一人だけ取り残されている気がする

 

 

「しょうがないわね…、少し眠ってもらおうかしら。あなたたち全員に(・・・・・・・・)

「え」

 

 

 

シュッ―――

 

 

 

雫の言葉を理解する前に、何かが閃いた。

直後、

 

 

ドガ!

ドガ!

ギャキィンッ!!

 

 

 

なにか突き刺さるような音と、鋭い金属音が会場に響き渡る。

 

そのあとを追うように沙倉と紅音が倒れた。

 

俺はというと何が起こったのか理解できず、ただ目の前の床に刺さってる短剣を呆然と見つめるばかり。

 

剣がビィィィン…と細かく揺れてるところや、右手首が若干痺れてるところを見るに、多分弾いて防御したんじゃないかな

 

 

「……瀬能君、空気読みなさいよ…」

「え?」

「おーっと早くも二人脱落!ミスコンの最後は星鐵三大美女の一騎打ちになりましたー!!」

「は?」

 

ますみの実況により失神者が出るんじゃないかと思うほどに狂乱の声を上げる観客達。

 

 

……あ、しまった!俺も倒れとけばよかった!

 

そうすりゃ雫の優勝でミスコン終わってたかもしれない。

横からかっさらわれる形になるけど、そもそも俺の目的は雫か沙倉に優勝してもらうことだからそれは別にいい

 

いいんだが…

 

 

「ナツル先輩、がんばってくださーい!」

「雫さまー!!」

 

 

 

どうしようこの状況?




 〜は―――これだ。
  ベストハウスなんとか。知らないうちに終わってたので番組名うろ覚えです。
 んだぁこの野郎!ぶっ殺ぉす!!
  P4のガチムチカンジ君の台詞。激昂状態の没ボイスらしいから実際は使ってないですが


27話です。
スペックが高いがために窮地に立たされどんどんスペースを削り取られていく主人公。はたして今の状況から逃げ出すことはできるのでしょうか。

そしてこの後どのように締めればいいか―――作者の技量が問われます。


あと一話…あと一話投稿したら戦士の方に取り掛かろうと思う
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