けんぷファーt!   作:nick

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第34話 武乱入

 

「見つけたわよ、女ナツル!この諸悪の根元め!!」

 

登場早々、水琴は俺を親の敵を見るような目で睨んでくる。

つーか

 

「堂々と自販機切り捨ててくる奴に諸悪とか言われたくねーよ」

「うっさい!人の揚げ足ばかり取って!!」

 

叫びながら「私、怒ってます」と刀を構える。

 

「腕輪がピコピコ光るから探してみたら、あんたがいたとはね」軍用犬かお前は。

「ケンプファーのくせにお風呂に入るなんて、覚悟!!」

 

再び切り掛かってくる。横にかわすが、いくつか並んでた自販機が巻き添えで真っ二つにされた。

 

てかケンプファーのくせにって、どんな理由だよ。兵士だって風呂にゃ入るだろ。

 

「避けるな!」

「無理ゆーな」

 

死んじゃうじゃない、普通に。

日本刀の鋭さは世界に誇れるんですよ?そりゃ(軌道が)見えてりゃ除けるさ。

 

水琴は俺の台詞を無視して連続で刀を振るう。

太刀筋は無茶苦茶だがスピードとパワーがハンパねぇ。

 

「もー、ちょこまかと!もう怒った!!絶対にあたしがこの三池典太で八つ裂きにしてやるんだから!」

 

全然当たらないからってすぐにヒステリックになりやがる。なんだよ三池典太って、前と刀の名前変わってんじゃねーか。

 

 

『なんだなんだ』

『特撮?』

『アトラクションかな…』

『おかあさーん』

『しっ!見ちゃいけません』

 

 

最後のは軽く傷ついた。

 

しかしこう人が多いと魔法(ツァウバー)を使いづらいな、同じ学校の奴がいるかもしれないし、火事になっても困る。

 

しょうがねえな

一度、大きく深呼吸する。

 

 

「みなさーん!通り魔です!!逃げてー!!」

「ちょっ!?」水琴が慌てた声をあげた。

しかし無視

 

「通り魔は刀を持ってます!殺されるー!!」

 

俺の大声でその場はパニックに陥った。出口に人が殺到する。

ふはは、まるでアリのようだ。

 

 

「あんた、なんてこと言うのよ!」

「事実を的確に伝えただけだがなにか問題でも?」

「誰が通り魔よ!!」

また刀を振りかぶって突っ込んでくる。

 

自覚があるんなら文句言うなや。

 

初撃を躱して踵を返す。

 

「なっ…あんた、なんてとこに逃げ込むのよ!」

 

後ろから慌てたような怒鳴り声がかけられる。

男湯の暖簾くぐって脱衣所に走った程度で大袈裟な…

 

 

「た…助けてください!頭のおかしな人に刃物を持って追いかけ回されてるんです!!」

騒がれる前に怯えたような表情で叫ぶ。

 

追ってくんのは知人なんだけどね。

 

もちろん止めてくれるなんて期待は一切してない。少しでも時間稼ぎができりゃ十分だ。

 

いいとこを見せようとでも考えているのか、ほとんどの人間が脱衣所の入り口付近に集まっていく。

その間にさらに奥へ移動。

 

「みなさん逃げて!火事です!!」

 

入浴場に入ったら再び大声で叫ぶ。

嘘は言ってないよ、嘘は。多分これからなるだろうから。

 

中にいた奴らは、いきなり女が乱入してきたのに驚いていた。が、俺の台詞を理解すると慌てて避難を開始する。

 

タオルや桶など、様々なもので股間を隠し入口へ殺到していく。

それを扉の横に移動して眺める。

 

 

そうやって人気が無くなったのを見計らい、風呂場の中央に移動する。

 

一服してえな…吸っちゃおうかな。

欲求に逆らわずいつもブツを入れているポケットに手を伸ばす。

 

あ、ダメだ。沙倉の家からの帰りだから、タバコどころかライター一つ持ってない。

しまった…見つかったら面倒だから、タスポも家に置いてきた。脱衣所に客の置き忘れとかないかな?

 

 

「よ…よくも……」

 

 

探してみようかと考えていると、一人の人間が俯いた状態で入ってきた。

当然水琴だ。

 

「よくもあんな恥ずかしい目にあわせてくれたわね……!」

よく見ると微かに震えている。

 

「なにがおかしい」

「笑ってるわけないでしょ!?」ガバッと頭をあげ真っ赤な顔で叫ぶ。

 

「あんた、なんてことさしてくれんのよ!ケンプファーの風上にも置けないわね!!」

「ケンプファー関係ねーじゃん」

「なんでそんなに平然としてられんのよ!なに、見馴れてるとでも言うの!?馬鹿、色魔、淫売!!」

「あぁ"ん?てめえもういっぺん言ってみろ」

 

ドスの効いた一言に、水琴が若干たじろぐ。

 

「なっ…なによいきなり…違うとでもいいたいの?」

「当然だ」

「じゃ…じゃあなんだって言うのよっ!」

「俺は紳士だ。変態という名の紳士なのだよ!」

「全世界中の紳士に死んで詫びろー!!」

 

叫びながらも今までより一層早く突撃してくる。

 

それを真横にジャンプ、彼女は闘牛のようにそのまま通り過ぎ―――

 

壁の一部を破壊した。

 

っておおい!?なにあの威力!シャレになってねーぞ!

当たったら痛いどころの騒ぎじゃねぇ!

 

水琴はしばらく壁中に留まっていたが、やがてゆっくりとした動作で振り返って、青い瞳でこちらを睨みつけながら刀を構える。

なんか顔付きが貞子っぽく見える、やってることはターミネーターだけど。

 

「前からあんたは気にいらなかったのよ……」

 

水琴が怖い目のままで語りだす。てっきり魔道に堕ちて口がきけないんだと思った。

 

「謎の美少女とか言って男の子に人気あるみたいだし、聞いてたのと違って性格悪いし、男のナツルが好きとか言って気を引いてるし!」

「言ってねーよ」

「あーもう、あったまにきた!!」

 

それは最初からだろ。

 

「だからなます切りにするの。これ決定」

「キャラ変わってねー?そんなんだったっけお前」

「問答無用!どりゃああ!」

 

またしても刀を上段に振り上げての突撃。それも剣道の構えとかじゃなくて山賊のそれだ。

他に振り方知らんのか。

 

進行方向に火球を飛ばす。

 

 

「こんなもの!」

 

刀の一降りで霧散させられた。

その隙に本命を放つ。避けれるかな。

 

「カイザーフェニックス!」

「んなっ!?」

 

俺の掌から乗用車サイズの火の鳥が飛び出し、水琴に襲いかかる。

 

流石に斬って破壊するのは無理だったらしく、水琴は横に跳んで除けた。

火の鳥はそのまま直線的に飛んでいき、壁を爆砕して消えた。

 

ふむ、初めてにしてはなかなかの威力。問題はスピードかな

 

 

「なによ今の…メラゾーマ?」

「今のはメラゾーマではない…メラだ」

「ウソでしょ。使う台詞は考えなさい」

 

よくご存知で。こんなのってくれる性格だったか?

 

まあメラ・メラゾーマ云々は置いといて、あまり無理をしてないのは確かだ。まったく消耗してないし。

 

…前も思ったかもしれんが、俺のコレ(魔法(ツァウバー))は一体なにを燃料に発動してるんだろうか。

体力や精神力に近いなにかを代償にしてるとは思うんだが…謎だ。

 

 

それはともかく、

 

なりたてのころに比べたら結構な大技を簡単に使えるようになってきた。

 

さっきのカイザーフェニックスも、MPでいったら2ぐらい程度の感覚だし。

まさに下級呪文(メラ)。大魔王もビックリだ。

 

問題があるとしたら炎しか使えないことかな。

こんな風に

 

「きゃっ―――」

 

急に発生した熱風に、水琴が小さく悲鳴を上げた。

 

吹き荒れる風の発生源は真っ直ぐに挙げられた俺の片腕、その先にある巨大な炎の球からだ。

 

「ちょっ、なによそれ!?」

「バーニング・クリメイション」

 

荒れ狂う業火を遠慮せずに投げつけた。

 

「きゃあああぁっ!!?」

 

水琴は余裕ゼロな様子で全力で横に飛んだ。

ふはは、逃げろ逃げろ。

 

「ぷわっ!?」

 

悦に浸ってると大量の水がぶっかかった。どうやら威力が強すぎて水道管を破壊したようだ。あっという間に濡れねずみ。

ここまで結構距離あるのに凄え勢いだ。

 

「し…死んじゃうかと思った……ちょっとあんた!もう少し手加減ってのを―――なにそれ、水も滴るいい女ってわけ?」

 

え、なに?なんなのいきなり

 

「ボディラインそんなに強調して…。胸もそんなに大きいし、全国の貧乳の子に謝れ!」

 

ビシッ!と鋭く指差してくる。

なんだろう、コンプレックスでも持ってたのかな。

 

「なんかゴメン」

「あたしじゃなあぁい!!」

 

そこで鋭い突きが飛んできた。

体をねじって避けるが、服の一部を掠って軽く裂かれた。

 

あー!これ結構気にいってたのに!ヒデぇ!

 

しかしめげない。追撃がくる前に距離を取る。

 

剣はその間合いより外のものを斬ることはできない。斬撃でも飛ばせるんなら話は別だが。

 

なので図書館の時と似たような戦法でいこうと思う。

卑怯?勝ちゃいいんだよ勝ちゃぁ。

 

「コノハナサクヤ!!」

 

カッ!

 

 

…え?カットインはない?…がっかりだよ

 

 

「ちょっと!またこれ!?」

 

突っ込んでくる直前、軌道上にサクヤを配置し、無理矢理対峙させる。

 

「こんなもの(ボムッ!)キャむっ!?」

 

注意が逸れた隙に炎の錬金術。

 

卑怯?勝てばよかろうなのだよ。

 

 

「あっ…あんたまた…!正々堂々とやろうって気はないわけ!?」

「卑怯汚い敗者の戯言」

 

便利なのがあったら普通使いますよね?

 

「同じ女として乙女の顔を攻撃してなにも思わないの!?」

 

誰が女だ…てこの状態(ケンプファー)だとそうだったっけ。ややこしいな。

 

「負け惜しみにしか聞こえんな。悔しかったらお前もなんかやってみろ」

「う〜!」

 

軽く挑発してやったら、頬を膨らませて唸ってきた。魔女を信じる幼女か。

 

 

すると突然、こっちを睨みながら無言で、左腕を右手で支えるようにして構えて刀を横方向に大きく振りかぶる。

 

なんだあの構えは…いやまさか…っ

 

「眼・耳・鼻・舌・身・意…、人の六根に好・悪・平!! 」

 

 

煩悩砲!?

 

え、なに、撃てるの!?

 

慌ててサクヤを防御させた状態で正面に配置。俺自身も身構える。

 

 

「とおっ!…りゃっ!」

 

 

そのまま刀を振り下ろす―――直前で逆手に持ち替え、タイルに突き立ててそれを足場に大ジャンプした。

 

 

…あれ、斬撃は?

 

 

「できるわけないじゃないバーカ!!」

 

…………うん。そうだよね。

 

普通無理だよね。そりゃそうだ。

 

 

いやね、俺もね?できないとは思ってたわけよ。…嘘じゃないよ?

 

でもさ、知り合いにさ、リアルで海震とかやって大津波破壊しちゃう奴がいるのよ。俺の祖父なんだけどね。

 

実際にその光景を見てしまった身としては、咄嗟に反応してもしょうがないじゃないか。

 

とはいえそれとこれとは話は別だ、思わず大袈裟に身構えてしまったのは事実。騙されてしまったのも事実。ふつふつと怒りが湧き上がってきているのも事実。

 

しかしそれ以上に腹立たしいのは―――たったあれだけの隙を好機と見てイケると思われたことだ。

 

 

「食らええぇぇっ!!」

 

両膝を揃えて、ニードロップの態勢で勢いよく落ちてくる。

 

ギリギリまで引きつけ、当たる瞬間に素早く両膝を掴み、そのまま自重で落ちてくる相手の外側のラインを滑らすようにして手を移動。

横に足がくるように頭をずらし、肩に脛を乗せ、両手を相手の腹の上で組む。

そして力を込めて―――

 

「パワーボォム!!」

「きゃぶっ!!」

 

床に後頭部を叩きつける。

変な悲鳴をあげたが、まだ終わらせない。

 

そのまま腕を移動させ手を相手の腰の辺りに組み、足をわきの下で固定し勢いよくぶん回す。

 

「ジャイアントスイング!」

「きゃああぁああぁああああぁあああぁぁ!!」

 

 

回る〜、ま〜わるよ時代〜は回る〜。よろ〜こびー悲しみこえてーゆ〜く。

 

 

「しゃオラァ!!」

「っ"!いったぁ!!?」

 

勢いのままに、おもいっきり投げ飛ばす。

頭から壁にぶつかって痛そうに後頭部を押さえる。まだ意識があるとか、タフだな。

 

「クソおもてぇ上、目が回る!」

「ぶっ飛ばすわよあんた!!」

 

 

率直な感想なんだが。

 

もう少し痩せろよトレジャーハンター

 

 

「よーてめえら。楽しそうじゃねえか」

 

いきなり第三者の声が風呂場にに響く。

 

「あたしもまぜな」

 

言葉と共に、銃を構えた紅音がゆっくりと男湯に足を踏み入れてきた。

 





カイザーフェニックス、バーニング・クリメイションはダイの大冒険。コノハナサクヤはペルソナ4。炎の錬金術は鋼の錬金術師。煩悩砲はワンピースをそれぞれ調べればどんなものか詳しく知ることができます。作者は全部大好きです。

しかし炎系オンリーとはいえ再現できるってナツルのツァウバーって応用効きすぎじゃね?と作者は呆れます。一個人にこんなの持たせていいのか、そうさせてるのは自分なんですけどね

ちなみに三池典太は鬼武者です。あれ新作でるのかな?
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