気分がいいから二日連続投稿。
ただし明日は無理だ!
いろいろあるから
「で、要件はそれで終いか?」
マコトが泣きながら外に出ていったのを見届けた後、雫に話しかける。
奴は無遠慮に冷蔵庫の中身を食い漁ったのを反省してか、代わりのものを買ってくるらしい。中々見上げた心意気だ。
「自分から言わせたくせに…」
「マコトちゃん、本気で泣いてましたよ?」
知らんな。
ちなみにマコトは水琴と同い年だそうだ。つまり俺と紅音の一つ下。
まあどうでもいいな。
「実は今日来た理由はまだあるのよ」
雫はソファに置いてあったカバンに手を突っ込む。
見たことないから私物だろう。普通のトートバッグだ。つまらん。
程なくしてバッグからなんか…全身をくまなくローストされたライオンのぬいぐるみが出てきた。
なんだろう。なんかどっかで見たことある。
そんなに昔じゃなくて…確か、つい最近……
「…それ沙倉が大切にしてるっつってたやつじゃねえの?」
俺の記憶が正しければ、マンションのコレクションルームに飾ってあったはず。
名前は忘れたが、絶対あげないとか言ってなかったっけ。
「楓にもらったの」
絶対嘘だ。どうせ隙をみてバクったんだろ。
「あの
「ついでにハラキリに聞きに来たのか」
「ええ」
「…前から思ってたんだが、なんでいつもあいつを疑ってるんだ?あんた沙倉の親友なんだろ?」
むしろ擁護するだろ、普通。
「なに言ってるの、親友だからじゃない」
迷い一つなく、雫は俺を見返す。
「そうあってほしくないとは私も願ってるけど、僅かでも関わっているかもしれないのなら徹底的に調べて疑いを晴らす。当然でしょ?」
「子供の頃からの知り合いが悪事に手を染めてる可能性があるの。見て見ぬ振りをするのが友情じゃないわ。たとえ恨まれてでも正してあげるのが、本当の友情よ」
「…………」
なにも言えなかった。
いや、なにか言う資格はないのかもしれない。少なくとも、俺には。
「もういいかしら?自分の家で他人に長居されるとあなたも迷惑でしょ」
「……そーね」
まっすぐな眼差しで見続けられ、ツイっ…と目を逸らす。
それを悟られたくなくて顔ごと視線を動かし、リビングまで持っていく。
視線の先には足の短いテーブル。
の上にちょこんと座り込んでいるハラキリトラ。
紅音たちを起こすのに使い、なんとなく持ってきて置いといたんだ。
「あの子ね」
ハラキリはあきらかにビクッとした。
雫はライオンのぬいぐるみを手に、ハラキリに近づいてく。
俺たちもそれに続く。
「こんにちは。それともおはようかしら」
「こ……こんにちわ…」
ハラキリがしずかちゃん声で返す。かなりビビッてるようだ。
そういえばまだ朝だったっけ。アニメ見ていい?
「あなた、部屋に入ったとき黙っていたわね。家の前に来たときも二階から覗いていたようだし、監視でもしてたのかしら?」
「ちがいますちがいます」
可動範囲の短い首を必死に振り、無実をアピールする。
動くぬいぐるみとそれを冷めた目で見つめる女子高生。シュールな図だな。
雫は「まあいいわ」と言って手に持ってたぬいぐるみをハラキリに近づけた。
「このぬいぐるみのことは知ってるかしら」
ハラキリはそれを手(前足?)に取るとしげしげと眺めて、
「これ、ヒアブリライオンですね。臓物アニマルより前のシリーズでしょ」
「博識ね」
「べつにこれといって……むっ」
「どうした」
「これ、生きてますよ」
「ええっ!」
「生きてるって?」
「わたしと同じメッセンジャーのようです」
水琴の問いに分かりやすく返す。
メッセンジャー…てことはこいつにも専属のケンプファーがいるってことか?でもこれって沙倉の私物なんだよな。
てことはあいつもケンプファー?だが…
「この子もあんたみたいに喋るの?」
「はい、ただ途中で寝ちゃうかも知れませんけど。人間で言えば八十過ぎのお爺さんみたいなものですから」
「お爺さんねー…ナツルのお爺さんって今いくつだっけ?」
「なんだ藪から棒に」
そんな質問がくるなんて、少し考えごとしてる間になにがあったんだ。
俺の爺さんは…今
まっったくそんな様子がないのに、里帰りする度に「わしゃもうムリじゃ」とか「お前たちだけでいくんじゃ」といった瀕死や死亡フラグネタをちょいちょい入れてくる。
『お前は祖父の血を色濃く受け継いでいる』、残念だけど否定はできないんだろうか。ガキのころからその存在を間近で見てる身としては意地でも否定しいんだけど。
閑話休題
ハラキリは持っていたライオンをテーブルの上に座らせ、その背をポンポンとたたく。
するといきなりライオンが「ゴッホん!!」と大きく咳込んだ。
突然の反応に紅音が「ひいっ」と情けない声を上げる。
「…あ……あー……えー………ここは……」
喋り始めると途端に辺りをキョロキョロしだす。
なにやらずいぶんと渋い声だな。年寄りってのも頷ける。
「細かい説明は抜きよ。自分が誰だか分かる?」
雫がいきなり質問する。
長年追い求めてた答を知ってるかもしれん奴がいるんだから当然か。
「分かります……」
「私が誰か分かるかしら」
「赤いケンプファー……」
「よくできました。喋らなかっただけで、ただ寝ていたわけでもないのね」
彼女はライオンの答えに満足げな微笑を浮かべると――
ジャキンッ!
「それで?あなたはいったいどういう役割なのかしら?」
――真顔に戻って
「ケンプファーを作る目的は?それに戦わせる理由も訊きたいわね。素直に教えてくれる?」
「…………」
「まずは腕からいこうかしら」
「話します話します、だから押し当てるのはやめてください!!」
布地が切れて僅かに中身(わた)が零れ、雫が本気なのを察したのかライオンが必死に懇願する。
若干コミカルな姿だが全く笑えない。紅音はもとより物怖じしない性格の水琴までドン引きしてるぞ。
「…ちょっと強引すぎじゃあないですかい…?」
「あなたに影響を受けたのかもしれないわね」
まさかの俺のせいにされた。
責任転嫁って知ってる?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それはとても遠い遠い、ここではない別の世界のお話。
そこではある二つの勢力が、気の遠くなるほど昔から争いを続けてきた。
勝っては負け、負けてはまた勝ち返す。そんな終わりの見えない戦いを…
被害ばかりが増え、このままでは共倒れすると考えた両勢力は共同で一つの存在を作り上げた。
それが
モデレーターは戦争を手っ取り早く、かつ公平に終わらせるために別世界の人間に力を与え、それぞれの勢力にみたてて決闘させることを提案した。
そして現在、地球の高校生が
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ヒアブリライオンの話をざっくりまとめるとこういうことである。
つまり俺たちはよそ様の代理戦争をさせられてるわけだね!うーん、わっかりやすーい☆
「"鳳仙"!!」
バゴゥッ!
俺は迷うことなくライオンの腹を打ち抜いた。
技の衝撃のせいでソファが勢いよくひっくり返ったが、気にしないことにする。
「ゴブッ!! いっ…いきなり…なにを……?」
「やかましい!」
ある朝起きたらすぐ(というかすでに)おかしな存在にさせられ、どんな訳があるかと思えばくっそくだらねぇ理由。
これが怒らずにいられるか!
「自分ちのいざこざなら内内で完結せえや!わざわざ次元超えてまで他に迷惑かけよってからに、世界ごと滅べそんな種族!!つーかなんでそれで俺は女になるんだよ!?」
「それはですねぇ、戦うのは女の仕事だからです。男は銃後を守るので―――」
「知るかんなの!!」
いい迷惑だ!
「うぅっ……いきなり起こされた上に脅されてこんな仕打ちまで…わたしが悪いわけでもないのに…」
「恨むなら親を恨め」
「ナツル、それまるっきり悪役の台詞」
知らんな。事実を的確に言ったまでだ。
「あの、もう寝てもいいですか…?」
「駄目よ。まだいくつか質問したいことがあるわ」
ふらふらするライオンに雫が待ったをかける。
「結局のところあなたはなんなの?モデレーター?」
「ちがいます…」
「じゃあメッセンジャー?」
「そのようなものです…」
なんかライオンの声が小さくなってきたな。電波の悪い携帯電話みたいだ。
「なぜ高校生をケンプファーにする対象に選ぶの?代理で戦わせるなら他にももっと適任者がいるじゃない」
「…………」
? なんだ、急に反応しなくなったぞ?
「おい、どうした」
「寝ちゃったんでしょうか…?」
なに!?
オイオイ嘘だろオイ、ここまできて『待て、次回!』展開かよ。
水琴が興味深げにぬいぐるみの頭をつつくが、ライオンはうんともすんとも言わない。
それを見て周りも諦めムードになりだした。
「…完全に寝ちゃったみたいね。まあいいわ、今日はこの辺で「起きろ!!」」
――栓抜きプレス!
両肘と右膝を使い、強打と共にライオンの身体を挟み潰す。
ゴギャリ、と鈍い感触がした。
「…瀬能君、子供じゃないんだから癇癪を起こしちゃ駄目よ。第一そんなことで目覚める訳――」
「ぎゃああああっ!!肩…肩が外れました!」
「え、あるの関節?」
「硬い感触はしたけど…」
金属のジョイントでも内臓してるんだろうか。ハラキリにはないっぽいけど。
「さて、目ぇ覚ましたところでさっきの質問に答えてもらおうか。吐かないとまたプレスかますぞ」
「う…ぅう……そのくらいが一番都合がいいんですよ…強すぎず弱すぎない…から力を与えるにあたって公平だし、警戒心も薄く…て……」
ライオンはそれだけ喋るとガクッと崩れ落ちた。
念のため頭を掴んで持ち上げ、二・三揺すってみたが完全に無反応だった。
たぶんもうしばらくは動くことないだろう。
しかし意外にまともな理由だったな。
確かにこんな不思議パワーいきなりもらったら、「わたしは選ばれた人間だ!」とか勘違いするバカは結構いそうだよな。
それなら中坊の方が…とも思うが、そこまでいくと突っ走りすぎて手綱が引きづらいんだろう。
常識と妄想が混在して体力的にも問題ないのが高校生ってやつだからな。
「……? どしたの会長」
気づいたら雫がじっとこっちを見てた。
その表情は…いつもの無表情なんだがなんか…心なしか「納得いかねー」的な雰囲気を醸し出していた。
「…別に、なんでもないわよ。それより今の話をどう思う?」
「どうって?」
雫の問いに水琴が疑問で返す。
「あんな
「さっきのは嘘だっていいたいのか?」
だとしたらずいぶん大掛かりだな。
「話に楓が出てこないじゃない。絶対になにかしら関係はしてるはずよ、ヒアブリライオンは楓のものなんだから」
むぅ…たしかに…
それに俺のハラキリもそうだが、ここにいる奴らは皆、臓物アニマルは沙倉から受け取った。
これで無関係ってのは、流石にムシがよすぎる。
ライオンに関係を訊いておいた方がよかったか?
その質問するの無意識に避けてたのかもな…メッセンジャーの持つ情報には限りがあるみたいだし、知らなかったってことにしとこう。
「沙倉さんもケンプファーなんでしょうか……?」
「それは違うわね。むしろ、モデレーターかしら」
「ぅえ、それ本当?」
「もちろん、今ちょっと考えただけよ。でも楓が絡んでいるのは間違いないでしょう。案外昔に考えたマンガのストーリーが、あんな世界を生み出したのかもね」
「妄想が生み出したパラレルワールドか…話が一気に胡散臭くなってきたな」
"ありえないなんてことはありえない"
とはいえ、見て殴れるものだけを信じる派の俺としてはビミョーとしか言えないんだがな。その辺のことは頭脳明晰な生徒会長様にお任せしよう。
「しっかしあの沙倉がねぇ」今一ピンとこない。
沙倉楓。清純で清らかな美少女。
争いを好まない平和主義者で、花を愛でるのが趣味。
乙女チックな夢見がちだが、妄想はしない。
読むものは文学。休みの日などは詩集をひらいて優雅に過ごす……
「なにそれ」
「男子部での沙倉楓像」
「本気で信じてるんですか?」
「まあ一つぐらい当たってんだろ」
紅音の問いに軽く答える。美少女研究会での結論だそうだが、妄想で決まったことだからな。
しかし雫はため息をついて、
「楓が夢見てるのは臓物アニマルだけよ。レズっ気があるのは体験したでしょう。グロいのも結構好みで、よく読むマンガは少年ジャンプ。あれでホモの妄想もしてるの。文学には程遠いわね。小学生のころ、朝顔を一週間で枯らして泣きついてきたわよ」
「うわああぁあああぁああ!!」
雫の無慈悲な台詞に思わず崩れ落ち、絶叫した。
「最近はその妄想が現実にまで飛び火して、知人を使ったカップリングをよく考えてるわ」
「やめろぉぉぉぉっっ!!もう訊きたくねぇぇぇぇぇっ!!」
「…そういえば昔あなたと忌塚君を見てどっちが受けかと「頼むからマジでやめろ!!」」
知りたくなかった…知りたくなかった!!今日ほど現実が嫌な日はない。
俺と大地はアレだ。河原で夕陽をバックに殴り合い友情を確かめるタイプの仲で、決して
なによりも
「たっだいまー!いやー新発売の商品が出ててどれにしようか悩んでたら時間かかっちゃったよー」
なんの脈絡もなくマコトが室内に入ってきた。
しかもショートカットして窓から直接。ドアぐらい開けて入れ。
「…え、なにこの状況。どうしてナチーはorzの姿勢で皆に囲まれてるの」
そこだけ聞くと俺がイジメにあってるみたいだな。
「知り合いが腐女子だったのが相当ショックだったんだって」水琴、説明はしょりすぎ。核心はついてるが。
「ふうん…?えっと、泣かないでチー、お肉は腐りかけが美味しいんだよ?」
「…腐り"かけ"じゃねぇんだよ腐ってんだよ」
そして呼び名に面影がまったく無くなったな。
つーか泣いてたのか俺。言われて気づいた。
「希望だけは持っていたかった…!」
「いまどきそんな幻想、小学生でも抱かないわよ」
雫が追い打ちをかけてくる。
やめて、もう俺のライフはゼロよ!
本筋からかなり外れ、かなりの犠牲(主に俺の精神力)を払ったがそれなりに話が進んだ……はず。
目下の不安は沙倉の前に立つときどんな顔をすればいいかってことかな…
ネタバラシ
栓抜きプレス
トリコ。そんな気はまったく無かったけどネタまで続いてしまった。まあいいや
ありえないなんてことはありえない
ハガレン。グリードさんがマジ男前なのは世界共通。
あれぐらいを理想(の一部)に主人公動かしてます。
Q.忌塚大地誕生の主な理由
①ナツル意外に男のケンプファーがいるという前例が欲しかった
②プロトタイプ時代に考えていたけどかなり話が進んでいたため出せず、今回日の目を見た。
③今回のネタを使いたいがために産まれた。
A.…③
東田だと使うにはキャラが薄いし、いなくならないからあとあと面倒かなーって…
ごめんよ大地ーーー!!最期のシーン書くときは思わず涙ぐんだのに作った理由がこんなので!
もちろん作者にそんな趣味はありませんので悪しからず。
若干罪悪感出てきた…早く明日にならないかな