けんぷファーt!   作:nick

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第4話 CHE.R.RY

結局、放課後はますみを連れて三人で買い物に行くことになった。

 

 

「わたし、西乃(にしの)ますみって言います」他にも色々言っていたが興味ないので無視した。

 

 

「あの……、すいません……」

 

紅音が小さくなって謝罪してくる。確かにこいつのせいだが…

 

「気にしないでいいよ」流石に普段の口調だとまずい気がするので、少しやさしめに話しかける。過ぎたことをぐちぐち言ってもしょうがないからな

 

それに多分、見つかった時点でもうアウトだったような気がする。きっとしつこく探し回って結局ついてきてただろう。間違いない

 

 

「ナツルさんの声しぶくていい声。男の人みたい」

 

男だよ。変身しても声だけは変わらないのは不便だな

ていうかいつの間にか先輩から名前になっとる。出会って数時間なのになんて図々しい

 

 

「ナツルさん、買うのは洋服だけですか?」

「今日のおかずも…」

 

俺は一応、簡単な料理なら作れる。一人暮しそこそこ長いから。

 

「ナツルさん自炊できるんですか。すごーい。今度わたしにも教えてくださいよ」

 

断固拒否する

 

「おかずなら、商店街のスーパーが安いですよ」

 

行きましょう。と言ってますみは歩きはじめた。そのままひとりでどっか行ってくれないかなー

 

 

……どうでもいいけど周囲の目がウザい…

 

 

どうにかならんものかと紅音に話しかけたら

 

「ナツルさんは美人ですから……」

 

とはにかみながら。

見た目が女でも中身は男だぞ、嬉しくないっちゅーねん

 

彼女に文句言ったところでどうしようもないので、仕方なく視線に耐えながら歩く。すると。

 

「ねえ」

 

突然声をかけられた。

めんどいから無視して歩き続ける。

 

「待ってよ」

 

今度はいきなり肩を掴まれた。ウザッ

 

誰か気になったので顔ぐらいは見てやろうと振り返ると、相手はうちの学校の生徒だった。

 

というか知り合いだった。

 

東田だった。

 

 

「君何組?かわいいね」

 

ナンパだろうか。奴はキモい顔をにへらにへらともっとキモくして俺を眺めてくる。

 

不快感を隠さず顔に出してるのにまるで気にした様子がない。ある意味すげえ

 

 

「ねえねえ、君同じ学校だろ。名前教えハゴッ!?」

 

あまりのキモさに肋骨の隙間から貫手を差し込みわりと本気で肺を強打。

 

 

ついカッとなってやった、後悔は微塵もしていない。

 

 

「あれ?どうしたんですかその人?」

 

東田が急に倒れたのでますみが声をかけてきた。

 

今の一連の流れは見ていなかったようだ。角度も悪かったし、素早くやったからまあ当然だろう。

 

「ああ、多分眠り病でしょう。突然睡魔に襲われるんだ」

 

俺はサラっと嘘を吐く。

『なんですかそれ』的な突っこみがくると思ったが、ますみからは「へー」と気のない返事が返ってきただけ。

どうやらすぐに興味を無くしたようだ。

 

周りの通行人もとくに気にした様子はない。

 

 

それでいいの?

 

まあいいや、めんどくさいし。 俺たちは気絶した東田を残してその場を立ち去ることにした。

 

 

「あ…あの……大丈夫なんですか?」

 

紅音は貫手シーンが見えていたようで、何度も東田をチラ見して心配そうに声をかけてくる。

 

「ああ…大丈夫。証拠は残してないから」

「いえ…そうではなくて……」

「二人してなに話してるんですか〜」先を歩いてたますみが声をかけてきた。

 

「スーパーは後にして、先に洋服を買おうかって」

「あ〜、じゃあそうしましょう」

「………」

 

紅音は引き攣った笑みをうかべる。どうかしたのかな?

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

その後は、デパートに入っている服屋で二人に服を選んでもらったのだが。…今は後悔している。

 

「ナツルさ〜ん、次はこれ、これ着てみて下さい」お前が選んだ服一度も着てねーだろ

 

「……あの…これなんてどうでしょうか」可愛く言ってもダメッ

 

 

この二人センスが独特すぎてついていけない…。何で臓器がプリントされたTシャツとかあんだ?

 

 

残念だがこいつらはあてにできないな……服は適当に男女どっちが着ても違和感がないものを●ニクロあたりで探そう

 

 

かわるがわる持ってこられる衣服を見てるだけでHPが削られたので、近くの柱に寄りかかる。

疲れた………ベンチくらい置いといてくれよ

 

 

「よ、彼女。可愛いねぇ」

「よかったら俺たちとお茶しない?」

「結構ですぅ」

 

おまけに軽薄そうな野郎二人に使い古された台詞でナンパされるし。もうやだ帰りたい

 

 

「そんなこと言わないでさ~」

「そっちの二人も一緒にどっか行こうよ。カラオケとかさ」

「結構ですっつてんだろーが」やべ、地が出ちった

 

「んだと、お高くとまりやがって」

「いいから来いよ!」

 

そのまま手首を掴まれた。

普通の女ならここで「やめて下さい!」とか言うんだろうが生憎俺は普通じゃない(つーか女じゃない)

 

男の手を素早く振りほどき、相手の指関節を逆方向にひねり上げる。

 

「いてててててててっ!!」

「このアマッ!」

 

もう一人の男が殴りかかって来たので、関節をきめていた方の男をぶつけてやった。

 

「「ぎゃっ!?」」

 

二人して潰れた蛙のような声をあげる。聞いたことないけど多分そんな感じ。

 

「元気なのはいいけどさ~…」わざとらしく手をはたき少々タメを作る。若干地が入っているけどまあいいや

 

「他人にメーワクかけんじゃねーよ。五体分解(ばら)して野犬のエサにすんぞ?」

 

 

まるっきりヤクザだな

 

 

二人組は顔を青くして逃げ腰で去っていった。雑魚が

 

それからしばらくして、店中のあちこちから拍手が上がった。どうやらかなりの注目をあびていたようだ。

 

「ナツルさん格好いい〜、口の悪さがたまんな〜い」褒めてんのかそれ? 

 

 

今だに続いている拍手に照れ臭くなったので適当に手を振る。

 

そこで気がついた。

 

 

「あれ?手首が光ってる」

 

ますみが指摘してくる。正確にはこれ腕輪が光っているんです

 

 

「(紅音ちゃんこれって…)」

「(も…元に戻る合図です……)」

 

 

やっぱり、今の俺は非常にピンチで危険だ。

もしますみの前で男に戻ったら………

 

 

 

「女なのに男…、不思議です!研究所に売りとばしましょう!!」

 

 

 

無いと言い切れない…むしろそう言う可能性のが高そうだ……!

 

 

「ご…ごめん。私、行かないと」

「えー。どこにですかぁ?」

「エム七十八星雲…」

 

いくら焦ってるからってこの言い訳はどーよ

 

「(紅音ちゃん、あと適当に言い訳よろしく!)」

「(えっ?えっ?えっ?!)」

 

返事を待たずに走り出す。

 

階段を駆け下り地下の駐車場の柱の陰に入るとほぼ同時に光に包まれ男に戻る。

 

あっぶねーギリギリセーフ!

 

 

(しっかし…)

 

デパートに入ったあたりから視線を感じた……ような気がしたんだけど。何だったのかな

 

「…気にしてもしょーがねーか」

きっと女の三人組だったから注目を集めてたんだろう。

 

それより買い物に行かないと、たしか冷蔵庫の中ほとんど空だったハズ

 

 

今夜なに食おう

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

ナツルが走って行ったすぐ後のデパートで…。

 

「…………………」

 

佐倉楓はうっすらと頬を赤らめていた。

そして何かを決心したような顔ですぐそばにいた女の子―――女性と言っていいほど大人びた―――に向かい口を開く。

 

「雫ちゃん…。ちょっと協力してほしいんだけど」

 

楓の言葉に一緒にいた女の子。三郷(さんごう)(しずく)は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み、答える。

 

 

「ええ、いいわよ」

 

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