けんぷファーt!   作:nick

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三郷雫。登場。

一応前回出てますが、初顔合わせという意味で


第5話 小さな恋のうた

俺はセールが好きだ。もっとも嫌いな奴はまずいないだろう。

 

なのでスーパーも閉店間際のタイムセールを狙ったり、特売日にまとめて買いに行ったりすることが多い。

その際主婦のオバちゃんや弁当狙いの学生たちとバトルになったりもするが―――まぁそれは置いておこう。話が進まん

 

どうしようもないときは非常食に頼るが、基本は自炊だ。その方が安く済むしな

 

そして昨夜の俺の晩飯はカップ麺だ。

 

 

………イヤ、けしてタイムセールで買えなかったとかそういう訳じゃないんだ。ただ行った時すでに店は閉まっていたワケで

 

つまりそう、俺は断じて負けた訳ではない。断じてだ

 

「そういう問題じゃないと思いますが」

 

今喋ったのはハラキリトラ。昨日帰宅後に天井から逆さ吊りにして知ってることを洗いざらい白状(はか)せた。知ってる情報ばかりだったけど。

 

途中からパンチングボールのように殴ってやったのにまだ足りなかったかな

 

「いいかげん降ろしてくださいよ」

 

ちなみに昨日吊るして今朝までそのままにしてある。

 

俺はその言葉を無視して身支度をして学校に行くことにした。

出る前に自分の部屋を見たが…ちょっと恐怖を感じた。

 

一人暮しの男の部屋に逆さ吊りの臓物アニマル……、不気味だけで片付けられんな

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

「ナツルさん、わたしと契約して魔法少女(ケンプファー)になってくださいよ。 ちなみに拒否権はありませんから」

 

 

「……なんつー夢見てんだよ…」

 

学校で午前中の授業を真面目に受け(たフリをして眠り)、昼休み。人生で最悪の目覚め方をした。

 

思わず椅子から転げ落ちそうになったぞ。しかもある意味現実だからタチがわりい

 

 

気を取り直して飯を食いにいこう。と席を立ち上がったら、ちょうど近づいて来る人影が

 

 

「なあなあナツル。ちょっと聞いてくれよ」

 

東田だった。ぶっちゃけ今の今まで忘れていたけど、あの後どうしたんだこいつ?

 

 

「何だよ。とうとううちのクラスから逮捕者が出たのか?」

「出てねーよ。たとえ出たとしてもそれはお前だろ」

 

テメーだけにゃ言われたくねーよ盗撮魔が

 

「そうじゃなくて昨日スゲー可愛い子見かけてさぁ」

聞いてもいないのにデレっ、という擬音が出現しそうなほど気持ち悪い顔をして語ってくる。

 

ちッ、記憶はあったか…忘れてりゃいいものを

 

「声をかけたあと、カミナリに打たれたみたいに頭が真っ白になったんだ」

 

それは酸欠で気を失っただけだ

 

「うちの学校の生徒みたいなんだけど―――」

「ハイハイ、続きは食いながらにしようぜ」

 

ほっとくと昼休み中ずっとしゃべってそうなので、適当にきりあげさせてて教室から出る。

 

しかし教室から出たところでまた声をかけられた。

 

 

「あ…ナツルさんっ…」

 

紅音だった。何で男子部にいんだ?

 

「紅音ちゃん?えっ、なに、なんかあったの?」

「いえ…、ナツルさんに会いたいって人が………」

 

? この俺に会いたいだなんて……、告白だろうか?

 

「ナツルさん」

またしても名前を呼ばれた。声がした方を向いたらそこに

 

「沙倉?」

「なにぃ?!」

 

沙倉の名前をだした途端に後ろから押しのけられた。東田ウザい…

 

「俺にようがあるってのは沙倉なのか?」とりあえず邪魔な東田を押しのけ返す。パワーなら負けんよこんなのに

 

「沙倉さんだけじゃないわ」

 

もう一人女の声が。うちの学校の生徒なら一度は聞いたことのある声だ。

 

「生徒会長……」

 

三郷雫。私立星鐵学院高等学校生徒会長。

 

成績は全教科オール満点。運動神経も抜群。モデルのような体型と美貌、さらには洗練された物腰と、一分の隙もないまさに完璧(パーフェクト)女子高生。なぜこの学校に入学してきたのかは七不思議の一つだ。(そんなの七不思議にするなよ。三郷が卒業したらどうすんだ?)

カリスマもあり、なおかつ容赦もないので男子部の大多数が「三郷雫様に罵ってもらう会」なるものに所属しているほどの人気っぷり(むしろ異常)。男女共に憧れと畏敬の念を持って接している。

 

俺を除いて

 

 

「連れてくんなよ〜俺アイツ嫌いなんだからさぁ」

「なっ、ナツルさん!?」

 

突然の暴言に紅音が素っ頓狂な声を上げる。

 

「……本人を前にしてよくそんなこと言えるわね。瀬能ナツル君」

「話しかけないでください。あなたのことがキライです」

「ちょっ、ナツルてめぇっ!!」なぜか東田が食ってかかってきた。

 

「話しかけないでください。あなたのことがキモイです」

「ニュアンスは同じなのに一文字違う!?」

「失礼、かみまみた」「嘘つけ!」

 

今のはホントに噛んだんだけど

 

 

「ここは騒がしいから場所を変えて話しましょう」

 

東田とのやり取りを完全に無視して、三郷は言うことだけを言ってさっさと背を向けて歩きだす。

その後ろを沙倉が戸惑いがちに、紅音が慌ててついて行く。

 

こういう人の冗談を完全に殺すところがキライなんだ俺は!

 

 

無視してもよかったんだが、学生の長にムダに逆らってもいいことはないので仕方なく紅音たちに続く。

 

が、

 

「ナツル~!お前生徒会長に何をしたぁ!?」

 

東田が涙を流しながら俺の肩を掴み進行を妨害しだした。

 

なにもしてねぇよ……、してたとしてもこれから聞きに行くんだろ。

つーか指が肩に食い込んでいてえ。コイツこんなに握力あったのか?

 

 

「答えろぉ!!答えねえとぷあっ!!」

 

とりあえず東田の眉間に肘鉄を食らわした。ねじり込むように。

 

ついでに脛にローを入れ、倒れたところで(念のため)ボディに蹴りを食らわす。

しばらく待って立ち上がる気配がないのを確認してから、あらためて沙倉たちを追いかけた。

 

 

よい子は絶対にマネしちゃだめだぞ!

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

その後、使われてない空き教室でパイプ椅子を引っ張り出し全員が座った。

 

……のはいいんだけど、何で三対一で向かい合わせに座ってんの?男女分けだとしてもイジメに近いよ?

 

 

「昨日、昼休みに図書室で騒ぎがあったのは知ってるわね」

 

しかも単刀直入にきたよ

 

 

「……………………」

「なにか言いたいことがあるみたいね」

「僕はキラなんかじゃない信じてくれ!!」

「あなた何言ってるの?」

 

凍りつきそうなほど冷ややかな目で見られた。俺ほんまコイツ嫌い

 

「あなた。図書館にいたわね?」

 

生徒会長の情けを感じさせない物言いに紅音がチラチラと心配そうに見てくる。見てんじゃねーよ

 

「いや、図書館には行ってないが」

「そう、いたのね」

 

意見は無視か?いや、その通りなんだけどさ

 

「あの…、騒いでいたのは女子でナツルさんに関係は……」

「あなたもいたのね」

 

ここで俺をかばうような発言をしたんだからそうなるだろうな。

 

「暴れたのは女子。そんなことはわかっているわ」

 

三郷は一旦言葉を切ってから

 

「でもそれで名乗り出なくていいと言う訳ではないの。私は誰がどこにいて、なにがどうなったかを報告しなきゃならないの。少しは生徒会の作業量を減らすのを手伝ってくれてもいいんじゃないかしら?」

 

俺も学園の生徒だからその理屈はわからんでもない。ないんだが

 

 

「悪かったな。個人的な事情で言いに行くのを忘れてたんだ」

女になってたとは言えんので適当にごまかす

 

「………………」

 

三郷は俺の心中を見透かすような目を向ける。

なんとなくここで目を逸らしたら負けな気がするので睨むように視線を返す。プロにも勝った一級品です

 

沙倉と紅音の緊張が伝わってきて室内に不穏な空気が漂いだす。

 

そんな雰囲気が数十秒ほど続いたが、やがて

 

 

「……そう。ならいいわ」

 

不意に三郷は席を立ち上がる。

 

「私の用件は以上よ、女子部に戻るわ……。女子の二人も男子部にあまり長居しないで、風紀が乱れる元だから」

 

そう言い残して、彼女は教室から出て行った。

 

 

「ナツルさん、凄いですね」

 

生徒会長が出ていってからしばらくして、紅音が口を開く。

 

「生徒会長にあんなに堂々と…本当にすごい」

尊敬の眼差しを向けてくる。こんなことで褒められてもなんか複雑だ。

 

攻撃的にこられると反撃したくなるんだよ…、そういうことあるだろ?

 

 

「ごめんなさい…図書館のこと、わたしが話したんです。ナツルさんがいたかもって言ったら、男子部に行くって。雫ちゃんが……」

 

情報元はコイツらしい。あの時逃げてった奴らの中にいたのか?

別に言わなくてもいずれ来たんじゃないかな

 

「気にすんな、それより沙倉はなんか用事あんのか?」

「ええっと………」

 

沙倉は顔を赤らめながら、自分の膝らへんと紅音をチラチラと交互に見る。他に人がいたら言いにくいことなのか?

 

「あの……あたし、ちょっと出てます……」

 

紅音はそう言って気まずそうに出て行った。

 

 

「…ナツルさん」

 

沙倉はうつむきながらも口を開く。

 

今までで一番真剣な顔と声だ。

 

な…何だ…?何を言われんだ……?

 

「わたし…気になる人が、いるんです」

 

こ…これは……?

 

「昨日もその人にあって…なんか……忘れなく、なっちゃって…」

 

まさか……!

 

「それで、ですね…」

 

とうとう俺にも春が…!

 

「ナツルさん知らないかなって…」

 

んっ?

 

「あの女の人」

彼女はそこで下に向けていた顔をガバッと上げ

 

「ナツルさんと同じ髪の色をした、わたしを助けてくれた格好いい女の人、知りませんか!?」

 

顔を赤くしたまま俺に詰め寄ってくる。

 

「知ってたら紹介して!!」

 

 

ある意味告白だったが、どうやら俺に春はまだ来ないらしい。

 

 

………なんでやねん

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

「って訳で頼むぞ紅音」

「なにが、って訳かわかんねぇんだがな」

 

結構その後、沙倉に圧倒された俺は女の俺を(ややこしいな…)次の日紹介することになった。

 

その約束の日、紅音には俺が途中で男に戻んないようについて来てもらった。騒ぎを起こさないか少々心配だ。

 

「ところでナツル。その傷はどうしたんだ?」

「ちょっと限界を超えて見た」

 

~~~回想~~~

 

 

まだ次の授業まで時間があるが、飯を食ってる時間はない。仕方ねえが空きっ腹で授業を受けることにするか

普通に扉を開けて中に入ってもつまらないな……よし、ちょっと大げさに行こう

(ガララッ!)「瀬能ナツル!長年の戦いを終え無事帰還しました!!」

「瀬能が帰ってきたぞ!」『殺せぇっ!!』←クラス一同

えぇっ!何事!?

「お・お前ら一体何を!?」

「やかましいっ!」「コロス!!」「いや,生け捕りにしろっ!」「逃がすなっ!」「捕らえろ!」「磔だっ!」「コロス!!!」「一斉にかかれっ!!」

なにこの一体感。もっと他のことに使えよその団結力。

訳は分からんが、とりあえず捕まるわけにいかないので(身の危険を感じるから)襲いかかってくる奴らに容赦なく拳や蹴りを入れる。

「「「「効くかぁっ!!!」」」」「なにぃっ!?」

どいつもこいつも、一時的には倒れてもまた起き上がってくる。

馬鹿な…急所だぞ?っていうかお前ら人間?

「ぐっ!!」さすがに何度倒しても起き上がってくる奴らになすすべもなく、俺は廊下にうつ伏せの状態で捉えられる。

「年貢の納めどきだな瀬能ぉ」まるっきり悪役といった口調でリーダー格と思われる男が俺の前に現れた。

「俺が何をしたって言うんだよ」

「黙れ!雫様のお手を煩わせた罪…忘れたとは言わさんぞ!」

どうやら俺が生徒会長に呼ばれたからこんな暴挙のに出たらしい。踏んだり蹴ったりだ。

そしてそのままクラスメートたちの手によって俺は十字架に磔にされる。

抵抗したが、恐ろしいほどの怪力で振りほどくことが出来なかった。

この十字架はどこから持ってきたんだろう?今まで見たことないんだけど

「これより、死刑を執り行う」おいこら

「ちょっと待て!弁論も裁決もなしか!?」

「どうする?」「やはり定番の斬首か?」「いやしかし…」

「聞けぇっ!!」

クソッ。縄は固いし十字架も頑丈で脱出できん。

「待てお前ら!」

『?』

東田!!眉間を絆創膏を貼るほどの一撃を入れたのに…俺をかばってくれるのか!?

「やるのなら全員の恨みがはれるように徹底的にやるべきだ!」

少しでもコイツを信じた俺が馬鹿だった。

東田が発言してから「串刺し」やら「火あぶりしながら百叩き」などシャレにならん単語が出はじめた。

やばい……こいつらマジだ………はやく脱出しないと殺される……………

俺が今以上に力を込めたそのとき。

「授業だぞー、みんな席に着けー」

先生が入ってきた。助かった!俺は神に感謝した。

「ど・どうしたお前ら…、瀬能はなぜ磔にされてるんだ?」

全くだ

「先生……。うちのクラスから犯罪者が出てしまったんです………」

「冤罪だっ!!」俺は力いっぱい叫んだが全員に無視された。

「残念ですが罪人は裁かなければなりなせん。分かってください」

「そ…そうか……。先生は忘れ物をしたから30分ほど席を外す。それまで自習してなさい」

「あんたそれでも教師か!!」

見捨てやがった。社会科の先生は気が小さいからこういう事態で説得を期待するのは無理だったか?

しょせん頼れるのは己のみということか……!

「火事場の…クソ力ーーー!!」

 

~~~回想終了~~~

 

 

その後俺は拘束を破りクラスメートだった奴らをぶちのめして勝利の雄叫びををあげた。

 

しかしなぜか厳重注意を受けたのは俺一人だった。被害者なのに…被害者なのにっ

いつか学校中の窓ガラスを割りまくってやる

 

 

「まあいい…、それよりさっから男どもの視線がウザッたくてしょうがねえ」

 

まあ黙ってたら美人だからなコイツ

 

「あームシャクシャする、なあナツルあの女撃っていいか」

 

紅音は沙倉に銃口を向けて引き金に指をかける。コラコラ!

 

「駄目に決まってんだろーが、頼むから大人しくしててくれ」

「チッ…しょうがねぇな…」紅音は渋々といった感じで銃を下ろした。

 

 

どうしよう、不安で胸がいっぱいです。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

その後女になった俺は沙倉の前に現れた。

 

「あっ…」どことなく緊張した赴きで、しかし嬉しそうに笑顔で俺をみる。

 

「初めてまして、沙倉さん…ですよね?」

 

なるべく優しげな口調を心がける。何で普通な対応が出来るんだろう…?

 

「あ、はい!沙倉楓と言います!」

 

沙倉は顔を真っ赤にしながら頭を下げた。くっ…可愛いじゃねぇか……

 

「あの…お名前は……?」

「ナツル…」

 

って俺の馬鹿ぁ!!本名言ってど〜すんだ!

 

「瀬能さんと同じお名前なんですね…?」

「そっ…そうなんですよ。ある意味それが知り合うきっかけで……」

 

「へ〜」と沙倉は納得したような返事をする。うまくごまかせたようだ。

 

 

歩道で立ち止まってるのもなんなので、俺たちは適当に雑談しながら歩くことにした。

 

「ナツルさん、二年生なんですね」

「まあ…はい」男子部のだけど

 

「わたしも二年生なんですよ。でもナツルさんみたいな素敵な人がいるなんて知りませんでした」だろうね

 

さっきからギリギリな話題ばかりだ。いつ突っ込んだこと聞かれるかとヒヤヒヤする

 

「ところで…なぜケガをなさっているんですか?」ギクリ

 

この質問はちょっとマズイ。ケンプファーに変身しても怪我なんかは消えなかったからな

 

「少々。鍛練を……」

もちろんこれは嘘だ。真実を話す訳にはいかない

 

「そうですか…」佐倉は何故か顔を赤くして下を向きだす。

 

何なんだ

 

「……?」

 

前方から騒ぎが聞こえてきた。

 

見ると紅音が先日の二人組にからまれていた。何やってんだか…

 

一人が殴りかかったが、余裕でかわされて勢いそのままにこちらにやって来る。

 

俺は沙倉を下がらせて、こちらにやって来たナンパ男の服の袖を思い切り引っ張り地面に転がした。

 

「ぐあっ!」

「よー、またあったなぁ…」

 

俺は俯せになった相手の腕を逆に決め、ドスのきいた声で話しかける。

 

「俺が言った言葉を聞いてなかったみたいだな…」

「ひいっ!」情けない声が下からした。コイツ指を決めてやった方か?まあいいや

 

「いい感じにざらついたアスファルトだな…、すりおろすか?」

 

 

実行する前に気絶した。他愛もない。

 

そういえば沙倉の前なのに地で対応しちまったな。まあいい、嫌われるつもりだったし、

 

「………やっぱり格好いい…」あ?

 

彼女は俺の手をとった上、顔がくっつくぐらい近づいて来た。お…おい…?

 

「お願いします!わたしと、デートしてください!」

 

 

……なんでやねんな………!

 

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