年内最後のギリギリ投下。
来年もnickの作品をよろしくお願いしゃす!
「ナツルくん…?え…なんで…、本当に…?」
驚愕の表情のまま、しばらく狼狽する少女。
しかしすぐにいそいそと鳥から降りて、俺に近づいてくる。
「えと…や、やー!」
「やー!」
両手を突き出してきたので、高さを合わせてハイタッチ。
「…!善、善!ナツルくんだよ!ナツルくん!」
「ああ、そうだな」
少女は茶髪の少年に向かって笑いかけ、なぜかそのまま小走りで少年の周りを回りだす。
なんだろう、アホの子の匂いがする。
「うふふっ!」
「あははははは」
本当に嬉しそうに笑う少女に思わず微笑む。
笑顔のまま少女たちに指を差し、隣に立つ紅音に顔を向けて
「で、誰?」
「おめぇの知り合いだろ!?」
あいにくさっぱり。
「ハイタッチしてたじゃないですか!」
「バカ野郎、『やー』は世界共通語だろうが!!」
実際水琴はこれでひとつの部族と仲良くなったらしい。ホンマかいな。
「え…?覚えて…ないの……?」
俺の言葉に、少女は立ち止まり悲しげに眉をひそめる。
覚えてる覚えてない以前に初対面の筈なんだが…流石にいたいけな少女にそんな顔されると良心が痛む。
「玲、無理を言ってはいけない。出会えたことが奇跡なのだ」
「善……そう…だよね……」
…なんかごめん。
「瀬能、君はどうしてここに?」
ちょっと暗い空気になったが、気を取り直して茶髪…善か?が話しかけてくる。
「デスゲームクリアのために色々と準備をな。今は街の施設を十全に使うために入所手続きをしに正門へ向かうところだ」
「そうか。…一部の店で買い物ができなかったのはそういうことか?」
どうやらこいつらもついさっき街に入ったばかりのようだ。
「どうせだから一緒に行くか?」
「いいの!?」
「…それは正門までという意味か?」
まあそれでもいいんだが。
「
「ナツル!?」
紅音が驚愕の声を上げる。
「おめえいったいなにを…!ちょっとこっちこい!」
そのまま、先ほどとは一転して嬉しそうな表情を浮かべる少女―――こっちは玲か?―――と、無表情ながらも少し驚いたようにこちらを見てくる善。ついでに袋を置いて、三人から少し離れた場所に移動させられる。
「…あの、カツアゲされても出せるようなものがないんですけど…」
「ぶち殺すぞ。そうじゃなくておめえ、なに考えてんだっ」
「と 申しますと?」
「あんな得体のしれない奴らを仲間にするなんて、いつものおめえらしくないぞ」
ちらっと離れたところにいる三人を盗み見る。
なにをするでもなくじっと玲ちゃんを見ている善。一心不乱にどこからか取り出した食い物を食う玲ちゃん。どうしていいか分からずオロオロしている袋。
「自分で言うのもなんだが得体のしれなさでは俺らも負けてねえんじゃねえか?」
「あたしをてめえみたいな似非サイヤ人と一緒にすんな!」
ざけんな、得体のしれない度で言ったらお前がトップだろうが。主人格押しのけてこの世界来たケンプファーさんよ。
「茶髪に奇跡とか言われて運命でも感じたか?マンガの読みすぎだ。乙女かてめえは」
「そんなつもりは…」なきにしもあらずだが。
「街に入ってすぐだぞ?狙ったみてえなタイミングの出会いだ。ここぞって時に裏切る黒幕かその手下に決まってんだろ」
「お前こそマンガの読みすぎじゃないか」
もしくはゲームのやり過ぎだ。
「現実的な話、二人でゲームクリアは無理だぞ。ある程度人数は欲しい」
これはついさっきの、街の前にたむろしてたPK集団を見たときから考えてたことだ。
10人そこらならなんとかなるだろうが、20・30と徒党を組んで襲いかかられたらひとたまりもない。背中を任せられる戦友は必要不可欠だ。
袋?あれは所有品枠だ。奴隷に近い。
「だからってなんであいつらなんだよ。使えんのか?」
「戦闘能力の方は分からんが、度胸はあるな」
迷わず頭を狙ってくる奴と、空を飛ばされてもあっけらかんとしてる奴。
とくに善の方は結構場数を踏んでると見た。まあカンだがな。
「それに…玲ちゃんは嘘かもしれんが、善は俺のことよく知ってるみたいだしな」
あいつは俺を
この世界でのプレイヤーネームはナツルだ。本名を知っているのは紅音以外は(多分)いないはず。
現実で会った記憶はないが、玲ちゃんが覚えてないのとか言ってたし、単純に俺があいつらのこと忘れてるだけなんだろう。よくあることだ。
「…信用できるのか?」
紅音は尚も訝しげな表情で睨みつけてくる。
確かに、俺を知ってるからって友好的とは限らない。昔返り討ちにした奴らの身内という可能性だってある。
だが、それでもきっと…
「…悪い奴らじゃあないさ」
楽しそうにダチョウのような体格の鳥にアメリカンドッグを上げている少女たちを見てつぶやく。
根拠はなくただのカンだが、なんとなく、大丈夫な気がする。
信頼に値する者たちだと。
「…そーかよ。ちっ、勝手にしろ。なんかあったら責任取って殺されろよ」
「俺が死ぬのかよ!?」
普通そこは自分でカタをつけろだろ。
☆ ★ ☆
「さて、パーティ登録も済んだし今度こそ正門に行くか」
開いていたウインドウを閉じて、改めて宣言する。
二人とも一度もウインドウを開いたことなかったらしく、それを表示させるのにえらい時間かかった。
まあよく考えたら初めから開ける方がおかしいんだよな、とくに疑問に思わなかったけど。…これがジェネレーションギャップか。(違う)
「パーティのリーダーは決めなくていいんですか?」
「あん?そんなのナツルでいいだろ」
ちょっとまってください。
「あ、やっぱりそうなんですね」
「待てやコラ。なんだやっぱりって」初耳だぞ。
「だって今まで、ナツルさんが意見を言ってそれを元に行動してたじゃないですか。だからそうなんだなーって」
「それは他に言う奴がいなかったからだ」
指針を立ててくれるのが他にいたらそいつの意見に従ってたわい。
面倒だからな!
「紅音でいいじゃんリーダー。ほら、赤だし」
「ざけんな、なんだそのてめえルール」
戦隊ものの理屈です。
ということは俺福リーダー?
「
「
・浅才:浅はかな知恵・才能。浅知恵。
「それじゃあしょうがないな」
「おいてめえ、今なんて脳内変換しやがった」
「善くん興味ない?リーダー」
「無視すんな!」
しつこく噛みついてくる紅音から目を背けて、側にいる善に話しかける。
……おい物理に訴えるのヤメろ。女の子がはしたないでしょ。
「すまないが、私には人を導く才能はない」
「そこまで深く考えんでもいいんだが…」
「探索は一つ間違えれば命に関わる。いざという時、素早く的確な指示を出すことができるのは、いつでも冷静に物事を見極められる者。その点では瀬能、君はリーダーにふさわしい」
「やめい恥ずかしい!」
軽い気持ちで勧めてみれば、思った以上に重く考えられて返された。
背中がとてもむず痒い…なんでこいつ俺にこんな高評価つけてんの?
「あー…じゃあ玲ちゃんは?」
「ふえっ?…なに?」
さっきから静かだと思ったら君、たこ焼き食べてたんですね。
世界観ぶち壊し以前にどうやって手に入れたそれ。
「いや、リーダーは誰がいいかって…玲ちゃんどう?最近の流行りらしいよ、かわいい
「あたしはかわいくねえってのか」
紅音がまた噛みついてきた。
自分から辞退したくせになに言ってんでしょうねこの狂犬ちゃんは。
つーかヤンキー張りにメンチきってくる奴にかわいさがあると思ってんの?
「かわいい…(///)」
見ろよ玲ちゃんを、普通に照れてる。これが『かわいさ』だ。ちったあ見習え。
「どう?やってみる気ない?」
「…あの…うれしいけど、わたしもリーダーはナツルくんがいいと、おもいますっ」
「…………」
力強い意思を感じさせる眼差しで推薦された。
自意識過剰な子じゃなかったことを喜ぶべきか、思い通りにいかなかったことを悔やむべきか。
「あの、えっと。だっ、大丈夫だよっ、ナツルくんならきっと…かわいくなれるよっ!」
「それは心配してないし嬉しくもない」
なにを勘違いしとるんだ君は。
駄目だ。この子にパーティの全権を押しつけるのは不安がつきまとう。他の奴にしよう。
「さて、それじゃあ次は誰にするかな」
「…………」
「つってももう一人しかいないが」
「……………………」
「つーわけでひとつ頼むわ、鳥」
クルルッ?
「「って鳥かよ!!」」
紅音と袋が同時にツッコんだ。
しょうがないジャン。他にいないんだもん。
「ていうかこいつ、ついてくんのか?さっきからずっといるから変だとは思ってたけどよ」
「どうなん?」
クルル…クル…クルルルルルッポ!
ふむふむなるほど…
「危なっかしくて見てられないから玲ちゃんの足になるそうだ」
「言ってる意味が分かるの!?」
話題に出たせいか、玲ちゃんがどこか興奮したような目で会話に混じってくる。
「すごいナツルくん!アイちゃんみたい!」
誰だよアイちゃんって。
「理解してるわけじゃないよ。なんとなくニュアンスでそう感じてるだけだ」
「要は当てずっぽうだろ」
「黙れ」否定する動作をしないから間違ってはないはずだ。
「どうする玲ちゃん?俺としてはいいと思うんだが。こいつなら戦闘を任せても大丈夫そうだし」
この鋭い嘴や身体を支えてる足を食らったら、そこらの奴はひとたまりもないぞ。
「乗ってる獣魔に攻撃させるって、他のゲームにありましたよね」
「あるねえ」
むしろそこからパク…インスピレーションを得たんだろ。(メタなことを考えるのはヤメろ)
「えと…善、どうしよう?」
「玲の好きにするといい。もうあの頃とは違うのだから」
「善…うん、分かった!」
玲は改めて鳥と向き直り、深々と頭を下げた。
「守られてばっかりだけど…わたしもみんなと一緒に戦いたいの!力を貸してください!お願いしゃす!」
クルルァッ!!
まかせろ!とでも言いたげに翼を広げて大きく鳴き声を上げる鳥。
なんで若干体育会系なんだよ、とか思うところはあるが、新たに一組のコンビが誕生した瞬間である―――
☆ ★ ☆
「というわけで、このパーティのリーダーは鳥に決定しました」
「まだ続いてたのかよその話…」
紅音が呆れたような眼差しをする。
「もういい加減諦めろよ。不安はあるがリーダーは
「やーだー!やだやだやだやだやだメーンードーイー!!」
「駄々こねんな鬱陶しい!!」
地面に寝っ転がって思いっきりジタバタする。
その際紅音と玲ちゃんのスカートの中が見えたが、ただ暗闇があるだけだった。
強姦がよくてパンチラが駄目とか運営側のこだわりがよく分かんねえ。
「ナツルくん…そんなにリーダーをやるのがいや、なの?」
「いや真面目な話するとさ。決定権を持つってことは、同時に責任を背負うって意味じゃん」それが嫌なんだよね。
起き上がって服をはたく。
「無責任を謳う俺としては、そんな重しはなるべく背負いたくないわけよ」
「ならばそこにいる彼に任せたらどうだ?」
そう言って善くんが指し示す先にいるのは袋。
ははっ、ご冗談を。
「先ほどからやりたそうに見ていたが」
「道具袋に決定権はない。それ以前にパーティに入ってないのにパーティリーダーっておかしいだろ」
「えっウソ!?」袋が驚きの声を上げる。
気づいてなかったのかこいつ。
すぐさまウインドウを開いて、今の状態を確認する。
「うわっ、マジでパーティ登録されてねえ!!」
『>他プレイヤーからパーティ申請が届いています。許可しますか? Yes/No』
突然目の前にシステムウインドウが開かれる。
当然"No"っと…
『パーティ申請が却下されました』
「なんで!?」
「ごめんこのパーティ四人用なんだ」
「そんな縛りねえよ!!」
ぶっちゃけ必要性を感じないし。
経験値共有するわけでもないのに、する意味あんの?
「と・に・か・く、リーダーは鳥だ!はいけってーい!」
しつこくやってくる申請通知に連続して"No"を叩きつけながら、少し大げさに騒ぐ。
「鳥がリーダーってどんなパーティだよ…たく。分かったよめんどくせえ、その代わりそいつの補佐はきちんとてめえがするんだぞ」
まあそれくらいなら…いいか。
「それじゃあ、ナツルくんサブリーダーだね!」
「ん?ああ、そうなる…のか?」
玲ちゃんの言葉に若干の引っかかりを覚える。
「(それって実際リーダーと変わらないんじゃ…)」
「(黙ってりゃばれねえよ)」
なんでだろ。なんか妙に引っかかる気がする。
「これからよろしくねっ、サブリーダー!」
そのわだかまりも差し出された小さな手によって霧散する。
「ああ、よろしくな」
クルルルルルルッ
その手と、同時に差し出された翼を握手するように固く握る。
何週間、何ヶ月。あるいは何年続くかは知らんが、これが俺の初めてのパーティ。
不謹慎かもしれないが…どんな日々になるか、少し楽しみだ。
「じゃあ次はパーティ名を決めましょうか」『>他プレイヤーからパーティ申請が届いています。許可しますか? Yes/No』
「まだあんのかよ!もういいだろ。そんなんなくても困りゃしねーよ!」『"No"』
「ナツルくん、
「あーもーめんどくせえ!読者募集だ読者募集!ついでパーティ名も!」
みなさんのご応募お待ちしてます!
■アイちゃん
アイギス
■乗ってる獣魔に攻撃させる他のゲーム
うたわれるもの。CMにも出てるからわりと有名かな?
思った以上に長くなったので分割。果たして街への入所手続きはいつになったらできるのやら。
それではみなさん、よいお年を!