無事昼食が終わり、午後からまたもう一仕事をするために移動する。
なんか現実以上に働いてる気がするな。本来俺学生なんだけど。
「で、ここが依頼人のいるところか」
やって来たのは一軒の建物。ドアの上部分には交差する剣の看板が取り付けてある。
どうやらここは武器屋みたいだな。
「瀬能、ルナはどうするのだ?」
早速入ろうと取手に手を伸ばしたら、善くんが口を開いた。
「え?ああ…そうか、入れないな」体格的に。
なにせ入り口の扉、2mそこらの標準サイズしかない。くぐり抜けることは無理だろう。
壊していいなら行けないことはないが…いやダメだな。流石にダメだ。
「しょうがないから外で待機だな。悪いけど…善くん、付き添っててもらっていいか?」
一羽だけ残していくと撤去される可能性があるからな(車か)。
そうなると誰かが一緒にいた方がいいだろう。
このメンツで一番頼りになって、尚且つ俺の言うこと聞いてくれそうなのは彼しかいない。
これで断られたら俺が残ることになる。
「分かった。待っていよう」
クルルっ
「悪いな」
なるべく早く戻るよ。
仲間はずれにしてるみたいな嫌な罪悪感を抱きながら、武器屋の扉を開く。
「すいませーん。依頼解決に来ましたー」
「おおっ、待ってたよ。入っとくれ」
中に入るなり、店主と思われるおっさんにカウンターの内側に通される。
来たばっかの得体の知れない人間をそんな簡単に店の奥に招いていいのか?
「頼みってのは他でもない。コレのことなんだが…」
そう言って店主が指し示す先には、年代モノと思われる大きな金庫。
「実は、この金庫の鍵をどこかに落としちまってね。近々処分しようと思ってるんだが、中身の確認をしないことには動かせないんだよ」
《クエスト:ウチの金庫、開けてくれ!》
・昔っからある金庫なんだが、うっかり鍵を無くしちまったんだ!もし開けてくれたら、中身は全部やるよ!
参加人数:制限無し
=報酬=
900円
一定期間武器割引
開けるだけなら壊した方が早いんじゃないか?
「無理矢理こじ開けりゃいいだろ。武器屋なんだから、道具はあんだろ?」
紅音が店主に訊ねる。同じこと考えてたみたいだな。
「この金庫を?ムリムリ、こいつはワイナを囲う大岩を材料にしてんだ。外からじゃなにしても傷一つつかねえよ」
「ようは非破壊アイテム扱いだから正規の方法でしか開けられないんですよ」
袋が補正を入れてくる。
のはいいんだけど、非破壊アイテムとかメタなこと言うのやめろよ。店主に変に思われるだろ。
とりあえず他人のふりして金庫に近づく。ふむ…ダイヤルとかは無しで、鍵穴だけのシンプルな構造だな。
「さっきナツルさんがやった倉庫整理もそうですけど、このクエストもβテストの時にあったクエストなんですよ」
「そうなのか?」
「はい。今回のは…少ないヒントを頼りに街の色々なところを巡り、アイテムを集めていくクエストですね」
「ええっ!少ないヒントを頼りに街の色々なところの名物の粗挽きいくらでも食えるぜパーティー!?」
『パーティーは何処から出てきたのだ?』
「冒頭部分しか合ってねえじゃねえか、黙ってろ白ガキ。袋、内容知ってるなら鍵の場所も分かるだろ」
「いえ、証言聞かないと見つけられないんですよね。店主、鍵の場所に心当たりは?」
「つい先日まではあったんだけどなぁ。確か……二軒隣の雑貨屋の主人と飲みに行った時は、まだ持ってたと思うんだが…」
「なるほど…じゃあそこらへんで聞き込み始めるか。行きましょう、皆さん」
「ちょっと待て」
今ピッキングの真っ最中だから。
「…なにしてんだ、おめえ」紅音が訊いてくる。
完全に背中を向けてるからどんな表情かは分からないなー。
「鍵開け」
「どこで手に入れたんだ。その針金」
「さっき倉庫で見つけた」
持ち主に内緒で持って来ちゃったけど大丈夫かな。
「あのな、ナツル。確かにおめえは生まれついてのコソ泥かもしれねえが、マンガじゃあるまいし針金で錠が開くわけねえだろ!!遊んでんじゃねえよ!」
「ナツルくん開けられるの?」
「水琴に習った」
「…………………」
「え、なんですかアカネさん。なにそのちょっと納得みたいな苦々しげな表情」
多分俺も、逆の立場だったらおんなじリアクションしたわ。
「いやいや、その水琴さん?てのがどんな人か知らないですけど、手順踏まないと無理ですよ。まして針金でなんて…そんなので解錠出来たら苦労しませんって。おつかいクエスト面倒なのは分かりますけど諦めて「(ガチャ!)開いたぞ」うそぉ!?」
本当だよ。こんなことで嘘とかつかねえよ。いや俺もビックリだけど。
やっといてなんだが開いちゃっていいの?
「ナツルくんすごーい!」
「盗賊の鍵とかいらねえな」
『よく分からないが人間は凄いな』
「この人は人間じゃねえ!」
「失礼だなお前」
人じゃなかったらなんなんだよ。超人か?
トロフィー獲得!
(金):ルールブレイカー
そろそろゲームマスターはこの男に干渉すべきじゃなかろうか。