けんぷファーt!   作:nick

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第64話 見参! ~introduction~

 

「なあ、それ中身はなんだ?」

 

店主が話しかけてきた。

 

「知らないんすか?」

「いや実はな、最後にその金庫使ったのが俺の親父なんだが、仕舞ったすぐ後に死んじまってな。そのゴタゴタで鍵を無くて、一度も開けたことがないんだ」

「なるほど」

 

開かずの金庫か…それはなんか、ワクワクするな。

この扉を引いた瞬間中から白い煙が出てお爺さんになったりして。

 

なんてね。浦島太郎かよ。

どうでもいいことを考えながら金庫の取手を掴んで手前に引く。

 

ギギッ…と若干の抵抗を感じたが、構わず力を込めて一気に開ける!

 

バッカッ

「ぶぁっ!?」

 

中から白い煙が吹き出てきた。

まさか本当に玉手箱!?ヤバい!

 

「うおっ!なんだ!?」

「さむっ!?」

 

近くにいた紅音たちも影響が――って寒い?

 

『ホッホー!!』

 

突然奇妙な声(?)が目の前から発せられる。

 

警戒しながらも、煙で反射的に閉じたら瞼を開いて発生源を見る。そこには…

 

『やっと出られたホー!もう少しで死んじゃうところだったホー!』

 

頭頂部が角のように二股に分かれた青い帽子を被った、掌サイズ…よりちょっと大きめな雪だるま。

の形したなにかだった。

 

「なんだお前」

『ホ?オイラはジャックフロストだホー』

 

ジャックフロスト?イングランドの民間伝承に伝わる霜の妖精?

 

「そのジャックフロストがなんで武器屋の金庫の中にいるんだ」

『捕まっちゃったんだホー』

 

妖精って捕まえて閉じ込められるもんなのか?

 

『下位の悪魔なら特別な処置をしなくても捕らえる事はできる。壁抜けなどが出来るのは生身が無いか高位の悪魔だけだ』

 

ヘリオスがジャストタイミングで疑問に答えてくれた。

 

なるほど…捕獲できることは分かったが、なぜここにいるかの経緯はさっぱりだな。

 

この雪だるまもどきを中心に冷気が流れてくる。さっきの白い煙も冷気だったみたいだな。紛らわしい。

冷蔵庫にでも使ってたのか?

 

「そういや親父が死ぬ何日か前、属性武器を作るとか年甲斐もなくはしゃいでたな」

 

今度は武器屋の店主が答える。

 

属性武器…捕まる…まさかこいつ素材だったのか?ファンタジーマジぱねぇな。

 

「ああー、なるほど。そういうことか」

「ん?知っているのか雷電袋」

「うむ、聞いたことが――って雷電袋!?余計なのついてません!?」

 

いいから早よ知ってることを話せ。

 

「えっと…βテストの時、このクエストをクリアしたら正規の報酬以外にも貰える物があるんですよ。それが『フリーズエッジ』っていう氷属性の短剣で…」

「ああ…なるほど」

 

つまりアレか。本来はあちこち時間かけることによってこのホー君はお亡くなりになり、その特性を受け継いだ武器がここで手に入ると。

でも俺はその流れをぶった切って速攻開けたから、妖精は生きてて武器も普通のしか無い、と…

 

 

……………………うん。

 

 

「つまりいいことしたんだな俺は」

「いい方に回りましたねナツルさん」

 

いや、だってそうだろ。

 

人命(人じゃないけど)と貴重品とならどっちが大事か悩む必要ないだろ。人間だもの。

 

『ホーは命の恩人ホー。なにかお礼がしたいホー』

「えー?ホーんなこと急に言われてもなー」

 

 

しーん…

 

 

………………

 

 

『ホーは命の恩人ホー。なにかお礼がしたいホー』

 

やり直された…こいつは意外といい奴なのかもしれない。

 

「気持ちだけ受け取るから帰れ」

『そんな冷たいこと言わないでほしいホー』

「冷たい冷たい!」

 

頬に密着するな!物理的に冷たいわ!

 

「恩返ししたいっつーけど、お前なにができるんだよ」

『ホー。オイラはキングフロスト様の眷属、そんじょそこらのヤツには負けないホー!』

 

こいつついてくる気満々だ!

つーかそんじょそこらのヤツには負けないって、今の今まで捕らえられてたのによく言えるな!説得力まるでないわ!

 

と言ったところで、また密着されて冷たい思いをさせられるだけで引き下がる気はないんだろうな。

 

正直要らないんだが…断り続けて冷凍保存されたら嫌だしな…

ああでも、玲ちゃんの戦力向上になると思えばそこまでデメリットもないか。枯れ木も山の賑わいっていうし。

 

 

 

※枯れ木も山の賑わい:どんなにしょぼいものでも、ないよりはましだ。という意味。

 

※酷すぎるだろオイ。

 

 

 

「そういやお前名前は?」

 

早速玲ちゃんに話を振ろうとした時、ふと気になってフロストに尋ねる。

 

『オイラはジャックフロストだホー』

「いやそれ種族名だろ?俺が訊いてるのは名前だ、名前」

『オイラはジャックフロストだホー』

「いやだから…」

『オイラはジャックフロストだホー』

 

あれ?台詞ループ?

 

なんでこんなときにゲームのNPCみたいな反応を…

まさか、名前ないのか?

 

あっても○○A、○○B、○○Cみたいな一時的な名前ともいえない個別名…

 

「……………」

『どうしたナツル。いきなり上を見上げて』

「いや…なんでも…」

 

おかしいな、つい視界がぼやけて…

 

…そういえば今俺を心配してくれたこいつ(ヘリオス)も、それっぽくなかったから気づかなかったけど、もしかしなくても種族名なのか?

俺がそう呼んだから、ヘリオスが名前になっちゃったのか?

……猫に猫って、名付けちゃったのか?

 

「………………」

『どうしたホー?顔を押さえて俯いたりして。気分でも悪いホー?』

「ちゃんとした名前付けてやるからな…!」

『ホ?』

 

覗き込むようにして近づいてきたジャックフロストの肩を掴んで、正面から真っ直ぐに顔を見つめる。

 

こう淀みなく、自然で滑らかなアクションを取れる奴が名無しってのはあまりにも可哀想だ。せめて違和感のない呼び名をつけてやろう。

えーっと、ジャックフロストジャックフロスト…ジャック、フロスト………

 

「よし、決めた。お前の名前はジェフだ」

 

うん、種族名の特徴を残しつつ、覚えられやすい。我ながら中々悪くない名前を付けれたんじゃないかな?

 

『ジェフ?ジェフ、ジェフ!オイラはジェフ!!』

 

付けられた本人も両手を上げて飛び回る。

喜んで貰えてなによりだ。

 

(ジャック)(フロスト)だからジェフってのは安直すぎじゃねーか」

 

だまれ紅音。何事も安直ぐらいがちょうどいいんだよ。

 




トロフィー獲得!
(銀):にゃんだホー、

ナツル「おっ、お前もきちんとした名前…いる?」
ヘリオス『要らん』


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