けんぷファーt!   作:nick

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前回(番外話⑦)とは別の日にナツルが見た夢。

本編の流れ的に、モンスター闊歩する世界で野宿中に見てる事になる。大変だなこの主人公…


番外話⑧ 6/17 全ての人の魂の詩【前】

初夏の兆しを感じさせる暖かな日差し。

それを遮るように重なり合い影を作る青々とした葉や木々たち。

都会の薄汚れたそれと違う清涼な空気は身も心もリフレッシュさせてくれるだろう―――

 

 

「鳴上君、鳴上君は美味しいって、言ってくれるよね?」

「いや止めた方がいいぜ…冗談じゃなくてマジで」

 

 

本来なら。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

またペルソナ世界(このゆめ)か…

 

木でできたベンチに座った体勢のまま、内心で大きくため息をつく。これで何度目だ?

里中、天城、そして俺の隣の席に腰掛けているのは花村陽介。格好は俺(鳴上)含めて全員ジャージ。

 

今回は林間学校か。

 

前と違って戦闘場面じゃないだけまだマシだが、こう何度も続くと不安になってくるな。何故こんな頻繁に同じ夢を見るんだろう。

俺になにかをやらせようと何者かの意思があるんじゃなかろうか。

 

「鳴上君、早く食べてよ」

「うん。冷めちゃうよ?」

 

天城と里中の女子二人が急かしてくる。

……現実逃避も限界か。

 

目の前の卓には丸く大きな平皿があり、その中には白米と…闇を纏った " ナニカ " がなみなみと注がれている。

 

そして自分の右手にはスプーン。しかもちょうど皿の中に先端を向け、中身をすくい上げようとしている途中の体勢で止まっている。

 

…………………最悪のタイミングで来ちゃったんじゃないかな。俺。

まだボス戦で入れ替わった方がマシだったわ。

 

まぁ…とはいえカレー……カレー…?だよな?多分。…コレを食ったところで死にゃあしないだろ。

昔食い過ぎで中毒起こして精神病棟入ったが、身体が違うんだ。大丈夫、イケるイケる!

 

多少の恐怖心を感じながらも、なんとか自分を奮い立たせてスプーンを進める。

丸い部分がカレーの中に埋まり――若干の抵抗を感じるた――意を決して持ち上げる。

 

 

 

  ロォォォォド…

 

 

 

…………………

 

「花村、変な腹話術やめろよ」

「はぁ?いや、やってねーけど」

 

嘘だ!そんなの嘘だ!!

先生、今花村君が嘘付きました!

 

ていうか嘘だって言ってくれ!じゃないと怖いだろ!

目の前には自分で掬った物体が入ったスプーン。…音はここから聞こえた。

 

なんだよ今の鳴き声!?リゾットのメタリカみたいだったぞ!

 

「鳴上君食べないの?」

「いや…」

マジか?

 

明らかにおかしな異音がしたんだぞ?気にならないの?

 

いや、もしかしたら俺の気のせいなのかもしれない。そうだ、空耳だったんだよ!

なーんだ。ビビって損したぜ。ハハッ!

 

 

 

  ぁ"お"イぇ"ェェェェェェェ…

 

 

 

「気のせいじゃない!気のせいじゃないよ!!」

 

この子生きてる!生きてる絶対!

きっとこんな姿にされたこと恨んでるんだ!

 

「あははっ、鳴上君面白い」

「冗談はいいから、早く食べて感想聞かせて?」

「食うまでもねーだろこんなの!」

 

てか体内に入れたくない!!

 

一刻も早くこの異常な空間から逃げようと、スプーンを捨ててテーブルごと皿をひっくり返す―――いやしようとしたら身体が動かなかった。

 

何故に!?

まるで金縛りにあったかのようにピクリともしない。カレー?をすくい上げた姿勢から次の行動へ移れない。

 

いったいなにが!?

 

困惑する俺の脳内に、突如として二つの文章が出現する。

 

 

>恐る恐る口に運ぶ

 強気で口に運ぶ

 

 

意味わかんない。

 

なにこれ。なにこの選択肢。誰が用意した。

システムメッセージを飛ばしてまで俺にコレの処分をさせたいのか?悪魔め!

それともこれノルンチョイス?絶望しかない二択とか誰得だよ。

 

 

>勇気で食べる

 根気で食べる

 

 

増やせって言ってるわけじゃないんだよ。

食わないという選択肢はないのか。

 

どんな戦場や地獄から生還した者であってもコレはあかんやろ。勇気や根性云々の問題じゃない、本能がムリだと言っている。これはダメだ。

 

 

 

  ぐギャらえぶボぉぉぉぉぉ…

 

 

 

スプーンの中の物体が悲鳴を上げながらひときわ強い瘴気を発する。

酷い刺激臭が…!目も痛いし肌がヒリヒリする。

 

 

もう一度言う。コレはあかんやろ。

 

 

「グッ!?」

 

メッセージを前に動かずにいたら、頭が締め付けられるように痛みだした。

まるでさっさと選べと言わんばかりに…しかもだんだんと強くなっていく。

 

進む先は未知の物体X(カレー?)、止まれば頭痛。進退窮まるとはこの事か。…僕の脳内選択肢が全力で生存フラグを妨害している!

 

「(ざけんな!!)」

 

もはや声も出せなくなったようだ。叫ぼうとしたが口が開かない。

 

ふざけんなよオイ、ふざけんなよ!なんで他人の代わりに死ななきゃなんねーんだよ!!

認めねえぞ俺は、諦めてたまるか!このふざけた現実をぶっ壊す!!

 

強く念じ、脳内のカーソルをがむしゃらに動かし回す。

今こそ究極に高まれ、俺のパトス!!

 

体感時間で十分ほど(実際は数秒)格闘を続けていると、根負けしたのか新しい選択肢が出た。

 

『スプーンを置く』の文言が見えたので、迷わずカーソルを合わせて決定入力。

ふは…フハハハハ!やった。勝ったぞ!!第三部完!

 

 

 

 恐る恐る口に運ぶ

 強気で口に運ぶ

 勇気で食べる

 根気で食べる

>スプーンを置く。皿を掴んで一気に口に流し込む

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 おとーさん おとーさん、魔王がくるよー

 

 息子よ、あれはただの霧だよ

 

 子の言う事ぐらい信じろや、ボケ!

 

 

 息子は冷たくなっちゃいましたとさ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

「ウボンラチャタニーー!!」バタンッッ

「鳴上くーん!?」

「なに今の悲鳴!?」

「一気っておまっ、無茶しやがって…!」

 

 

>鳴上は気を失って倒れた。

 

>勇気 ががっつり上がった!

>根気 ががっつり上がった!

>漢気 ががっつり上がった!

 

>ペルソナ:ダークオルフェウス のステータスが変動した!

 




■リゾットのメタリカ
 ジョジョの第五部に出てくる敵とそのスタンド。よく見ると愛嬌がある
 ………気がする。


ナツルといったら外せない鉄板ネタ。という事で林間学校のアレと絡めてみました。割と楽しく書けたよ。

あと二話くらい続けてから本編に戻ります。
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