「………」
『アカネが怖いホー!』
「紅音ちゃん、どうしたの?お腹痛いの?」
「うるせえ。話しかけんな」
「不機嫌ねぇ、どうしたのかしら?」
「試合始まってナツルさんが一方的にやられてるところまでは楽しそうにしてたんですけど…」
「食らえっ!!」
――氷槍!
「無駄無駄ァッ!」
――リミットグローブ!
鋭く尖った氷を纏い、発射されると同時に一本の長い槍となったボウガンの矢を、
『ケケケッ!』
大きく砕かれ、明後日の方向へ飛んでいった矢が、白い悪魔の力で操られて、再び俺に襲いかかる。
大小様々に向かってくる氷はまるで、数十匹がまとまって動く魚群のようだ。
『やらせぬ!』
傍らにいたヘリオスがすぐに迎撃に入った。
――灼熱発破 + 真空波
『
ゴウッ!!
真っ直ぐに突き出された両の手のひらから炎が上がり、それが渦を巻いて勢いよく放出される。
炎はそのまま氷の群勢を瞬く間に飲み込み、チリも残さず消滅させる。
頼もしいな。
「念力で動かせるのは一つのものだけなのか」
警戒しながらも燃やされ、消えて無くなる氷塊を見る。
考えて見れば
避けながら反撃されたから複数操作できるんだと思ってたわ。
『そうなのか?』
「…まて、お前知ってて遠距離攻撃したんじゃないのか?」
『いや、
オウコラマテや。
「なにしれっと言ってんだ、もし複数操作できてたらどうするつもりだったんだ!!」
『物事の終わりに”もし”はなく、後に残るのは
「引っ叩くぞテメー!?」
黒猫のえり首をつかむ勢いで詰めよって糾弾するが、『終わりよければすべてよし』みたいな感じなこと返された。
自分は無傷で体力満タンだからって迂闊な攻撃しやがって、俺がやられたらお前も負けになるんだぞ?分かってんのか?
所詮は畜生か。
「まあいい、結果的にはこっちの益になったからな。ファインプレーだ」
限定して行えば飛ばす系のスキルが使える。これは嬉しい情報だ。
『…機嫌が良さそうだな、ナツル』
「? なんでそう思うんだ?」
『口角が上がっているぞ』
ヘリオスの台詞を聞いて、思わず口に手を当てた。
すると言葉通り、両端ともまるで引っ張られているかのようにつり上がった形をしているのが手触りで分かった。
全く気づかなかったな。
『ゼンとの体力差は桁違いなのに、何故そんなに笑えるのだ』
「さぁな?俺も分かんねーや」ただ…
「ワクワクが止まんねえんだ、ホント。湧きすぎて溢れ出そうだよ」
笑ってるのを自覚したら、感情が一気に来やがった。
体温も上昇しているのか、身体が熱く感じる。
「お前も楽しめ。なかなか無いぜ、こんな戦い」
少なくとも俺は初めてだ。
十数年生きて、何百何千と殴り合い(※ナツルがほぼ一方的に相手を殴るだけ)をしてきたが、戦闘を楽しんだことは一度としてなかった。楽しいと思ったことも。
ただ競うことでなら……一度だけ、ある。
時間を忘れて本気で張り合った。
結果的に負けはしたが、あのひと時はきっと生涯忘れない。俺の宝だ。
今のこの気持ち。この高揚感は、あの時と
「お宝発見だ、テンション上がるなぁ!」
『…楽しそうで何よりだ』
人間とは奇異なものなのだな…私には理解し難い…と黒猫がドン引きしている。
…冷静に考えれば『お宝発見』はねーだろっては自分でも思う。思うよ?思うけどさ…そんな露骨に引かなくったっていいじゃないか……
「閃雷!」
「おっと」
おしゃべりに夢中になってる内に善くんが仕掛けてきた。
さっきの氷とは違い今度のは
ジャンプして躱すには効果範囲が広いし、上空で狙われたら逃げようも無い。かと言って後ろに下がれば近づくのが困難になる。
防御して耐えたら今の俺の体力だと戦闘不能に追い込まれるだろう。やらしい攻撃してきやがる。
だがな、これはタッグマッチなんだよ!
「ヘリオス!」
『ああ!』
俺の背中におぶさるように陣取ったヘリオスと(ついさっきまで距離があったのにいつの間に移動したんだ…)一緒に手を突き出す。
「『クリスタルウォール!!』」
キィィィンッッ!
掛け声に合わせて、目の前に透き通った光の壁が出現する。
その壁に雷の波がぶち当たった。
バチチチチチチッ!
激しい音と光が発生し、光壁が震える。
が、突破される様子はない。雷は壁に阻まれて徐々に勢いを失っていく。
「くっ、流石は瀬能。一筋縄ではいかないな…だが!」
「!?」
突然、背後から矢が飛んでくる。
今まではなかった矢だ。おそらくクリスタルウォールの壁を大きく迂回するように撃ち込み、そこから操作したのだろう。
真正面にいる相手からの狙撃。普通なら発射した瞬間は分かりそうなものだが、雷の光と音で注意を逸らされていたから気づくのが遅れた。
矢との距離は大体10m程。振り返ってから迎撃するより、鏃が刺さる方が速いだろう。
しかし――
『させない!』
――
ジャキィィィッッ!!
ヘリオスの背中からハリネズミのように鋭い針が飛び出し、飛んできた矢を串刺しにする。
…なんか色々ツッコみ所満載だけど、助かったから無視しよう。悪魔のやる事に一々気にしてたら負けだ多分。
「なっ…馬鹿な…!」
「ひとりでは不可能なことも、複数人集まれば乗り越えていける」
肩ごしに突き出されたヘリオスの腕の手首を二本ともを掴む。
その状態のまま前方に駆け出す。
「やってみて分かったが連携技は発想と”相方と息を合わせられるか”、つまり結束力だ。タッグマッチの勝敗を決めるのは力の強さじゃない、どれだけ絆が強いかだ!」
勢いを殺さず、飛び込み前転をするように地を蹴り、空中で身体を丸める。
「俺たちの”強さ”を喰らえ!」
――マッドアサルト!
ギャギャギャギャギャギャギャギャッ!!
背中にトゲトゲした針を生やしたままのヘリオスを背負い、闘技場の床を傷つけながら前進する。
「何ッ!?」
光の壁が消えた時には、すでに照準を合わせていた善くん。
しかし矢が放たれるより先に、こっちの射程距離内に入りこむ。
「くっ!」
ギィィッ――ギャギャギャギャギャギャギャギャ!!
ヘリオスの棘が善くんの肉体を削り取らんと迫ったが…すんでのところでボウガンに阻まれる。
この世界の武器は非破壊アイテム扱いだから、武器のみをいくら攻撃してもダメージは入らない。
普通なら削りきって腕なりなんなりを ズタズタにしてるはずなんだが…HPも減らせられてねえじゃん。
なら、
「四倍だーーーーーー!」
――ドラゴンフォース!
「ぐぅっ!!」
勢いを増した回転攻撃に、善くんから苦悶の声が漏れる。
防戦一方で反撃してくる気配もない。このまま押し込めるか?
ギャギャギャギャギャギャギャ――――ギャリッ!
「ん?」
急に(ヘリオス越しに伝わる)感触変わった?
ギュルギュルギュル!!
「『うおぉっ!?』」
突然の急上昇感に、思わずヘリオスとシンクロする。
「、っ!守護の杖!!」
進行方向真正面から善くんの焦ったような声が聞こえる。
多分だけど今、ボウガンの上を駆け上がってる?
どこかしらの部品に引っかけたかな。
「――――」
「!!」
ボウガンから善くんの身体へ。
坂道を登る車のように転がり、勢いあまって空中に投げ出される。
その空中で、半身を傷つけられたにもかかわらず、手に持った武器を頭上に向ける彼と目があった。
「焔弾!」
「マイティガード!」
即座に飛んできた炎の散弾を、両の掌を腕ごと廻して、食らわないように身を守る。
…簡単そうに説明したけどタイミングが少しでもずれていたら火だるまにされてたぞ。危なかった……
『隙あり!』
俺の背に長々と居座っていた黒猫が、攻撃を弾いた段階で空へと跳び上がる。…当然のように俺の背中を踏み台にして。
天高く舞い上がったヘリオスは、空中で棘だらけの身体を丸め、真っ直ぐに善くん目掛けてその身を落とす。
『アサルトダイブ!』
バランスボールサイズの黒い塊が、全身を黒色でコーディネートした男に迫る。
『テトラカーン!』
その針が触れる瞬間、突如現れた人間ひとりを隠せるサイズの光の壁が、善くんの代わりに攻撃を受ける。
『ぐあっ!?』
まるではじき返されたように、勢いよくヘリオスが吹っ飛んだ。
「っ、あのマシュマロマン攻撃反射もできんのかよっ」
「…私も今初めて知った」
車にはねられた猫のようにリング上を派手に転がる相方をよそに、衝撃をうまく逃して音もなく着地する。
やだなー、長引けば長引くだけ色々なもんが飛び出てくるジャン。ヤダナーめんどくせーナー。
「
口角がつり上がっていくのを自覚しながら、適当な歌を口ずさむ。
色々なもんが飛び出てくるな。ビックリ箱みたいだ。お次はなんだ?
トロフィー獲得!
(銀):おたから発見!
■氷槍・閃雷・焔弾
ペルソナQで出てくる善くん固有のスキル。効果は話の中で説明した通り。
完全に再現できるとは思ってないけど、多分こんな感じかな?と作者の勝手なイメージです。
■守護の杖
発動すると若干ダメージを軽減する、薄い防護壁を身体全体に纏う事が出来る。対象は術者一人のみ。
ペルソナQの善くん固有スキル。
■灼熱車駕
二つのスキルを合成する事で使える上級スキル。広範囲を炎の渦で焼き払う。
元ネタはペルソナ1のスキル。
■九十九針
ペルソナ1のスキル。全身(又は背中のみ)から針を生やす事が出来る。
本家を知らないからこれも勝手な想像デス。
■ドラゴンフォース
FF敵の技。確かアドバイスだったと思う。
短時間だけステータス(ATK・DEF・SPD)を強化する。対象は術者一人のみ。
■クリスタルウォール
セイントセイヤ。牡羊座の技。
コスモとSPって、おんなじものだと思うんだ!