でも近日中にもう一話UPする予定です。
“未来視”
実際の光景と、それの先を示すように薄っすらと透けた光景を見れるようになるスキル。
見れる先の光景は消費するMPによって変化する。
初めに1消費すれば1秒先、2消費すれば2秒先を覗き見て、そこから先は使用毎秒1づつMPが減っていく。
私が未熟なのか、それとも元々そういう仕様なのかは分からないが、最大で5秒先の光景から開始するのが限界だ。
5秒先。
街の外で敵悪魔を相手に使った時は、たとえ最大限にスキルを使っても、相手の身体と未来の動きが重なっている事が多かった。しかし、
「ふッ!」
「っ、ぶねぇっ!!」
元々瀬能がいた場所から数m離れたところ。私の真横の地点に、素早く矢を放つ。
しかし彼はそれを身をよじって躱した。
未来は絶対ではない。
私が見ているのはあくまでも『一番確率の高い未来』なのだと、彼と戦っていて分かった。
そうでなかったら今頃は私とポルターガイストが勝者となり、次の試合に臨んでいただろう。
あるいは瀬能も未来視に準ずるスキルを持っているのか?
『ナツル、無事か!?』
「当たりゃしねえよこんなヒョロヒョロ弾!!」
弧を描いて再び向かってきた矢を、手のひらに風の玉を作りそれをぶつけて破壊する。
…それならに悩み抜いて選んだものが簡単に粉々にされると少し…複雑な気分になる。
『ナツル、作戦を変えよう!ゼンは強すぎる!』
ヘリオスが慌てた様子で瀬能に話しかける。
『あのようなスキルなら使うのにそれなりの代償を支払うはずだ!』
「なるほどそれで?」
『おそらくMPを使用するタイプのスキルのはず、ならば連続で使用させればその内底をつく!そこを狙おう!』
持久戦か。いい作戦だ。
ヘリオスの読み通り、そして私自身で確認した通り、未来視はMPを対価に発動するスキルだ。
ここ(第4試合)までなるべく使わず、今もONとOFFを小まめに切り替えて節約してはいるが、それも限界に近い。
このままのペースで行けば、早々にMPを使い切るだろう。
「逃げながら戦うか…」
『思う所があるだろうがここは耐えてくれ!勝つ為にはこれが最善の手なのだ!』
憂鬱気な瀬能にヘリオスが叫ぶ。
ヘリオスが言うことは正しい。私も彼の立場なら同じ作戦を行っただろう。
これから彼らは全力で私を消耗させようとしにくるだろう。思わずボウガンを握る手に力が入る。
今以上の実力を発揮しなくては…目の前にいるのは、かつて仲間たちがこぞって挑み、しかしその全てに勝利した男。
当時は何も思わなかった。しかし今は違う。
私は、瀬能に勝ちたい!
「最善か…じゃあしょうがないな…」
『分かってくれたか!』
「だが断る」
『な!?』
何?
今瀬能はなんと言った?
「持久戦はしない。むしろ短期で決める」
『なっ、何故だ!?』
「人間ってのは熱々で肉汁滴る焼肉を食うのをやめられないんだよ」
本当に何を言っているんだ彼は?
「誰だってそうする。俺だってそうする。冷めた焼肉なんてクソ喰らえだ」
『な…ナツル?何を――』
「一級品と向き合ってんだよ俺はァ!どんなに口ん中火傷しようと、熱々の内に齧り付く!」
瀬能はそう言い切ると、薄っすらと口角を上げる笑みを浮かべながら再び私たちに向き直り。
「安心しろよ善くん、お前とは最後まで真っ向から
「……!」
何気ない台詞。真っ直ぐにこちらを見つめてくる瞳。
彼自身、意識はしていないだろう。しかし、
純粋に私という一個人と真剣に向き合おうとする彼の気持ちが、闘志とともに伝わってくるようだ。
「皆が戦いたがる訳だ…」
この満たされる感覚は癖になりそうだ。
「あ?なんか言ったか?」
「私は肉なのか?」
今の状況で言ったのだから、多分そうなのだろうとは思うが。
「あー、例えだよ例え。みんな好きだろ?」
「怜はよく食べている」
「バーチャルの世界じゃなかったら心配になる食生活だな…」
ははは…と瀬能が軽く笑い声を上げた後、しばしの間誰も口を開かない無言の時間が出来上がった。
「手加減はしないぞ」
「たりめーだ。したら殺す」
戦士の方で初めてナッチと対戦した時のモモさんは、きっとこんな風に思ってたはず。
どうでもいいけどいまいちシリアスになりきれないな…