男鹿が家でゲームをやるといっていたので暇つぶしにちょっと先輩方のお見舞いに行くことにした。
「たしか、401号室。神崎一、姫川竜也…ここか」
部屋の中から先輩方二人の声がする。
「邦枝?」
「戻ってきたのか、あの女」
へえ、いい情報だな。
東邦神姫の紅一点、烈努帝瑠3代目総長。
【邦枝 葵】
いやー美人なんだろうな。
「ええ、昨日北関東制圧を終えて」
「また、勢力増えてるらしーっすよー」
あれ、二人以外にも声がする。
この声は夏目先輩と城山先輩だな。
「実際、邦枝はやりづれーっすよ?強ーし、人望はあついし。なんせ一年にして石矢魔女子をまとめ上げたカリスマだ」
それを聞いて神崎、姫川が話して喧嘩を売り合う。
怪我してるのによくやるなー。
病院なんだから暴れないようにしないと。
「ーーーま、それはともかく。そこに隠れてるの出てきなよ」
夏目先輩から声がかかる。
まあ、バレてるよな。
気配全く隠してないし。
「どうも先輩方お見舞の品です」
「お前は男鹿のツレの…」
「顔を覚えてもらいありがとうございます。城山先輩」
「何しに来た。神崎さんの首でも取りに来たのか」
城山先輩が臨戦態勢に入る。
「別にそれでもいいんっすけど、今回は普通にお見舞ですよ。神崎先輩にも姫川先輩にもお世話になりましたし。ああこれ甘い物です」
そういって俺は家で作った手作りのお菓子を渡す。
「敵の塩なんかいるかよ」
「その通り、俺はタダほど信用無いもんはねえんだよ」
「そうですか……あ!じゃあ、夏目先輩食べますか?」
「いいの?ありがとう…ってうまっ!なにこれ城ちゃんも食べてみなよ」
「毒が入っているかもしれん」
「神崎先輩の毒味役ということで最初に城山先輩が食べるとおもってたんっすけど」
「そうだな」
速っ。
速攻で食べたぞ。
本当にこの人は忠臣だな。
「本当に上手い!これはどこで売っているっ!?」
「手作りっす」
「お前菓子作りの天才か!?」
ここまで褒められると流石に照れるな。
あれ、先輩方2人がこっちを見ている。
すると、姫川先輩が
「いくらだ?」
「はい?」
「その菓子いくらだって聞いてんだよ。俺はタダが嫌いなだけだ。いくら払えば渡す?」
「お見舞の品なんで特別価格5000円で」
「買った!」
5000円を貰い残り全てのお菓子を譲る。
「てめー!!姫川!独り占めしてんじゃねえ!」
「これは俺が買った菓子だ。お前には渡さん」
「さっきバナナやったじゃねぇか!」
「バナナはタダだがこれは見舞いの品じゃなく、俺の金で買ったんだよ諦めな。…ほう中身は羊羹か」
「右から順にこし餡、粒餡、胡麻餡、芋餡、芋羊羹、栗羊羹になっております」
「それも元々は見舞いの品じゃねーか!一年坊もなに普通に説明してんだ!」
「お前これ、俺が買ってる和菓子店より上手いぞ!俺が雇ってやろうか」
「俺の名前は古市です。学生のうちは無しで、将来仕事に困ったら姫川財閥に就職しに行きますんで。あ、あと」
俺は部屋の外に一旦出る。
そして廊下に置いてあるものを取ってくる。
「病院食は味薄いと思ってお弁当持ってきましたけど食べます?」
俺が取ってきたのは和食が入った重箱と洋食が入った開けるまで中が見えない【クロッシュ】を詰んだ台車を運び込む。
「タダが怖いのであればどちらも10000円からの値段です」
「買った!」
「姫川てめー何また買おうとしてんだ!」
結局神崎先輩が重箱を姫川先輩がクロッシュの方を買った。
普通のお弁当サイズの方も二つ持ってきたので城山先輩と夏目先輩に渡した。
ここでお昼タイムとなり、各々食事をしてまたもや俺の料理が美味しかったらしく。
「お前卒業したらうちの会社でシェフやらねえか。特別待遇で雇ってやるよ」
「こんな髪型の奴じゃなく俺の家の板前やれよ言い値で働かせてやる」
父さん、母さん。
俺、もう就職の心配がなくなったよ。
「これ食って学校に早く戻ってきてくださいよ。お二人がいなくなった事で統率がきかなくなってんすから」
「学校の統率をして俺達になんの利益がある」
姫川が睨んでくる。
「報酬に毎日昼の弁当届けます」
「引き受けた!よし、3日で治す!」
「ざっけんな!俺が先だ」
「じゃあ、俺帰りますんで。先輩方お大事に」
「城ちゃん俺達も帰ろう」
「お、おう。神崎さん、失礼します」
部屋から退室すると同時に看護師が入ってくる。
「ちょっと、アンタたちまたケンカっ!?いい加減にしなさい!」
「「たーのしーなー」」
「夏目、古市……お前ら…」
さて、学校が楽しみだな。