ここは学校の校庭。
東条先輩とかおる先輩が一緒におり、東条先輩が花火の準備をしている。
そんな中小規模だが爆発音がした。
「なんか今、妙な爆発音が……」
「爆発音?まだ火、つけてねーぞ?」
「いや、そっちじゃなくて……」
東条先輩には聞こえなかったようだが、今の爆発音は邦枝先輩の菊一文字だな。
「いやーびびったびびった、こんな時間に花火やるとかいうから来てみたら………なんすか?あの人だかり」
「人だかり?」
「あっ!ちょ!!!花火って……それ本物じゃないすか!!いったいどこで…?」
「ん?あぁ。祭りのバイトでくすねた」
「犯罪っすよ!!屈託ない笑顔で何言ってんすか!!」
花火の玉も打ち上げ用の筒も揃っている。
因みに筒を運んだのは東条先輩だが、花火の玉を運んだのは俺だ。
花火大会行きたかったが行きそびれたしな。
「ははっ、でっけー花火でも見りゃこいつもちょっとは元気出すと思ってよ。なあ」
そう言い東条はベル坊を見る。
依然としてベル坊は何も言わずに東条の背中に引っ付いている。
「ってお前、男鹿のツレの……「古市です」…そうそう古市、お前がなんでいるんだよ。まさか、東条さんに取り入ろうなんて考えてんじゃないだろうな」
相沢先輩がサングラス越しにこちらを睨んでくる。
それにしても、かおるさんといい俺ってそんなに小物に見えるかね。
「そんな事しませんよ。俺はただ見届けに来ただけですよ」
「………」
どの人も無言好きですね。
「それより庄次、人だかりっていうのは…?」
かおる先輩が相沢先輩に話しかける。
「全校生徒?」
「ええ、なんか手柄たてて東条さんの部下になるとか」
「でたらめな話だ。誰が言い出したんだそんな事……」
「あ、それオレオレ」
二人の視線が東条先輩に向けられる。
「ーーーってあんたかいっ!!!」
「いやー手下にしてくれとかうるさいからさ、頑張ったらいいよって。あと花火やるから見においでって」
「しかもテキトー!?」
こういうところが東条先輩が好かれる要因の一つだな。
強さも確かに引かれるが邪気のないひたすら真っ直ぐな心が人を引きつける。
元来の性分なのか憧れの人の影響なのかは分からんがな。
「まあ、いいじゃねえか。どのみちウチはそういう学校だ」
「全員集めて、喧嘩して、最後まで立ってた奴が大将。それでいいだろ?」
東条先輩はマッチに火をつける。
その火を花火の筒に入れ、点火する。
「ハデに行こうじゃねえか。花火も喧嘩も」
花火は天高く登っていく。
「なあ、男鹿辰巳」
花火は夜空で大きく花開いた。