銀色の契約者   作:飛翔するシカバネ

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二十四将 友人と帰還

「なんだ、てめぇ」

 

俺の背後に現れ仕込刀を振るった謎の男に男鹿は話しかける。

 

ここで説明しておくがこの謎の男はアスラン。

蝿の王、つまりベル坊の親に制圧された国の密偵だったはずだ。

 

国の名前?そんなとこまで覚えてねえよ。

そこは勝手にWikipediaさんで調べてください。

 

「アンジェリカ!逃げるぞ!!とんでもねえ化け物が来やがる。……む」

 

そうこうしていると盗賊団の親玉がやってくる。

 

地鳴りはさっきからしているがかなり遠い。

よくこいつ気づいたな。

 

「フンっ……例の王族の契約者とかいう人間か……残念だったな。オマエら、回り込んで殺せ!こちらには先生が居られる。逃げられない様に回り込め!!」

 

アスランいるから俺達は逃げらんないけどそれは言わなくていいか。

 

それよりヴラドの主がちょっと見えた。

でっか……ありゃ無理だわ。

 

あっという間に囲まれた俺達。

俺はアスランに気を配ってるから動けないし。

 

男鹿に任せるか……

 

「男鹿。そっちの人めり込ませ………ベル坊?」

 

俺がチラリと後ろを見るとベル坊の頭部だけ巨大化していた。

 

「ア”ーーーーッ!!!!!」

 

ベル坊の頭部だけでなく身体も徐々に大きくなっていく。

ついにはヴラドの主と同等のサイズまで大きくなってしまった。

 

「ダーーーーーっ!!!」

 

男鹿はなんとかベル坊の髪の毛にしがみつき、乗っている。

 

そしてベル坊とヴラドの主が睨み合う。

 

かなり声が小さく聞こえたが男鹿の「やれ!」が聞こえた。

それを開戦の合図として2人?が動き出した。

怪獣大決戦の始まりだ。

 

向かって来たヴラドの主(次からは〈主〉と表記)に向かってキックをかます。

技名は男鹿の声が何言ってんのか聞こえないので割愛。

 

顔を蹴られ、吹き飛ばされた主はすぐさま立ち上がる。

しかしベル坊はその隙を逃さずラリアットを食らわす。

その衝撃によろけた主に追い討ちをとエルボーを食らわす。

 

最後に転んだ主に止めをと主を一旦うつ伏せにさせ、逆エビ固めをかける。

 

主は抵抗しているかのように地面をたたいていたがついには動かなくなってしまった。

 

「ダーーーーーっ!!!」

 

ベル坊が勝鬨を上げる。

 

 

 

ナレーションしといてなんだが……なんだ、これ?

 

まあ、いいやこっちも終わらせよう。

 

 

 

アスランは転移玉使って早々に転移していないし、逃げられたら盗賊の頭とアンジェリカさんを追うか。

 

 

たしか、こっちの方に………いた。

 

「うぬぅ……ワシの街が…っ」

 

「おっと、そこまでだ。その子を離してもらおうか。それとも俺と踊るかい?」

 

「古市様!!」

 

「ちぃっ、小僧…っ」

 

言ってみたかった事。

ぶっちゃけこんなキザったらしいセリフ今後言う機会なんて恵まれないしね。

後ろでラミアが呆れているが放っておく。

 

頭はナイフを取り出し、こちらを牽制する。

 

「刃物か……そんなもの止めときな。ケガするぜ?」

 

「なんだと!?何故だ!!」

 

俺がここでしなければならないのはあくまでも時間稼ぎ。

 

「何故って……それはあれだ」

 

「どれだ!?」

 

「つまり、そんなものだしてもお前の負け以外もう有り得ないからだ」

 

「負け?何を言ってっ……」

 

 

ズンっ!!! プチッ

 

 

そんな話をしていると空からベル坊の足が落ちてきて、頭を潰してしまった。

ギャグ描写で良かったな。

リアルだったらいきなりこの話をR18にしなければならなくなる所だった。

 

俺は指の隙間になり、潰されなかった。

 

何気に古市は悪運が強かったな。

戦争があっても生き続けられると思うぞ。

 

「つまり………こうなるって事さ!!」

 

「ムリヤリ、キメた!!」

 

無理矢理じゃない。

割と決まったじゃないか。

 

さてと男鹿にこの状況を怒るか。

 

「おーい、男鹿!!」

 

「おっす」

 

「てっ何故か前にいたっ!!」

 

ボロボロになり頭から血を流している。

男鹿が目の前にいた。

 

「振り落とされました」

 

「よく生きてたなっ!!」

 

え?この会話があるということは。

 

俺はベル坊の方を見る。

そして、今まさにベル坊の足が落ちてきている。

 

「ぎゃあああああああああっ!!!」

 

「ふっ古市様!?」

 

「ちょっ!離しなさいよ!」

 

「今離したら死ぬぞぉぉおおお!!!」

 

俺はとっさに女子2人を抱え走り出した。

 

男鹿もなんとか走ってきている。

 

「興奮してるんだわ。どうにかして止めないと……」

 

「ベルゼ様!!落ち着いてください!!」

 

「男鹿!なんとかして、ベル坊落ち着かせろ!!」

 

「なんとかってなんだ!」

 

「なんとかだ!」

 

やばいかなりパニックになってる。

しかも俺なんでラミアを小脇に抱え、アンジェリカさんを肩に担いでるんだ。

 

「アンタも離しなさいよ!私ひとりで走れるわよ」

 

「バカっ今離したら……!」

 

当然そのままラミアが地面に落ちてしまう。

それでも尚ベル坊は突き進んでくる。

 

「ちぃっ」

 

男鹿がラミアを庇うように前に出る。

 

「止まれっ!!ベル坊!!!」

 

ベル坊の足が止まら

 

「って無理かぁああああ!!!」

 

なかった。

 

 

ズズゥウン

 

 

衝撃が伝わり、砂煙が舞う。

 

「情けないな……貴様、それでも契約者か?王族の契約者がどんなものかと思えば……期待はずれだな」

 

そこにはベル坊の足を片手で支えるアスランが立っていた。

 

一応助かったから有難うなんだが、かなり険悪なムードだな。

それにしても周りにバレない程度の魔力でこの巨体を片手で支えるなんてな。

想像よりもかなり強いな。

 

「呪文は?」

 

「あん?」

 

「この赤子を止める呪文だ。契約者にしか知らん独自の呪文があるばすだ。………まさか、そんな事も知らんのか…?」

 

 

「面倒だな……殺すか」

 

その言葉の後すぐさまアスランは行動を開始した。

片手を振るい、その衝撃でベル坊は宙を舞う。

 

そしてそのまま落下してくるベル坊を待ち構えるようにアスランは腰にある剣に手をかけた。

 

 

「ごはんですよーっ!!」

 

「ダッ」

 

男鹿が叫ぶとベル坊が反応し、空から姿を消した。

そしてアスランの後ろ、男鹿の前方にベル坊が元のサイズになり、そこに座っていた。

犬か。

 

「ったく、面倒かけやがって……」

 

「命びろいしたな、蝿の王……いずれまた、お目にかかるとしよう」

 

その言葉の後またもや転移玉を使い、アスランは姿を消してしまった。

残念だな。

 

何が残念ってこいつこの後最終回間近まで出番が消えるんだよな。

割と強キャラだったのに本当に残念だ。

 

 

その後これまでの騒動がなんだったのかって位スムーズに進んだ。

 

盗賊団は頭を失った事により散り散りに逃げて、誰もいなくなった盗賊団のアジトに幽閉されていた魔獣達も逃がした。

ベル坊に倒されたヴラドの主も起き上がりまた、騒動になるかと思えばアンジェリカさんが説得して魔境に帰っていった。

 

そして帰りの時がやってきた。

 

また、ラミアと男鹿が人悶着やっている。

そんな中に1人の悪魔がやって来ていた。

 

「では、参りましょうか」

 

そこにはヒゲ面のオッサンが立っていた。

 

「みなさんご無事のようで何よりですな」

 

「アランドロン!!生きてたの!!?」

 

「ハッハッハッあれしきの事で死にませんよ。それではカモーン」

 

なんだか、反射的に逃げてしまった。

しかし転送悪魔からは逃げられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達はまた、あの蒸し暑い河川敷にいた。

 

「とりあえずこう言っておこう。お帰りなさいませ」

 

「たっ……ただいま」

 

こうして初めての魔界旅行は終わりを告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても不思議な方でした」

 

アンジェリカは転移して無事に自分の家に帰ってきていた。

 

「さてと、掃除しなくちゃ」

 

自分が連れ去られる時に部屋は大分壊されてしまった。

せめて寝床だけでも直して置かなければ今日はぐっすりとは眠れない。

 

「ただいま、我が家……!?」

 

アンジェリカが家に入るとそこは荒れ果てていた廃墟の様な我が家ではなく、盗賊に襲われる前。

つまり、自分が生活していた時に戻っていた。

 

そして中の椅子には1人の男が座っていた。

 

「なにもせず帰るわけには行かないのでね。家の方は直しておきました。アンジェリカさんには少しお願いがありましてね」

 

その男の髪は銀色に輝いていた。

 

 


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