銀色の契約者   作:飛翔するシカバネ

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二十九将 友人が沈む

 

「どうしました?退学を気になさっているのであれば大丈夫です。それを逆手にとるつもりはございません」

 

ボクシング部新庄はそう言い、三木に目をやる。

というか、本当にあのアマチュア無線部はいないんだな。

代わりに新庄がかませ犬役を買ってでている。

 

「そうですね……もともと今日はそのつもりで呼んだんですよ。負けた時の言い訳が欲しいなら別ですけど………ねぇ男鹿くん」

 

「三木くん、因縁があるのはいいですが、今回はワタシに譲ってくれませんか?ワタシは少し不完全燃焼でして」

 

「構いませんよ。お先にどうぞ」

 

自分以外に男鹿が負けるとは思ってないのか三木は新庄に譲っている。

 

「では、行きますよ」

 

その言葉と共に新庄は軽やかなフットワークで近づいていく。

しかしその手が男鹿に届く事は無かった。

頭に蹴りがとんでくる。

 

蹴りを放ったのは夏目先輩だった。

 

「そう簡単に大将とやれるわけないでしょ……」

 

 

 

剣道部主将の榊光輝はこちらに向き、ため息を吐く。

 

「……萎え」

 

お目当ての相手である邦枝先輩がいないせいか明らかにテンションが下がっている

刀を構え、ゆっくりと近づいてくる。

その後ろから人知れず気配を消して近づいている者がいた。

その者は金属製のバトンを振りかぶり、殴りかかろうとする。

 

殺気に気づいたのか榊は距離をとり、殴りかかってきた者の顔を拝見する。

 

「あっれー?気づいちゃった?おしい、竹光じゃなけりや即死だったのによ」

 

「…………激萎え……」

 

姫川先輩が明らかに電撃が迸るバトンを構える。

 

 

 

 

「安心しました。ちゃんと戦ってくれるようですね」

 

三木は静かに声を発する。

姫川先輩よりも気配を断ち、同じ六騎聖にも気づかれないように近づいていた。

 

三木は技を放つ。

姫川先輩を狙ったそれは有効な打撃とならなかった。

振動を与えるその技は振動を伝える場所以外、今回は手首を抑える事で威力は消える。

 

 

「正義の集団が不意打ちとはやるじゃないか」

 

 

「古市君」

 

三木は俺の手から離れ、距離をとる。

 

「男鹿とやるんじゃなかったのか?俺みたいな雑魚を相手するのか?」

 

「いいや、戦おう。今ので確信したことだし。君はそれ程の力がありなら自分の保身の為に戦わないんだね。全力で潰して上げるよ」

 

「ダメです。いくら三木さんでも、この戦いは譲れません」

 

後ろから1人の女子生徒が話しかけてくる。

三木は肩をすくめ、男鹿の方に向かっていく。

 

すれ違いざま、

 

「いずれ、君とも決着をつけるよ」

 

そう言い残していった。

 

 

 

「決着って言っても俺とそんな因縁合ったっけ?」

 

男鹿の方は分かるけども俺と合ったっけ?

マジで思い出せん。

 

 

「さあ、決着をつけよう。男鹿」

 

「悪ーな、またベル坊預かって貰うぜ?こいつの相手は俺だ」

 

邦枝先輩ベル坊を預ける。

というかいつの間に邦枝先輩屋上に?

 

屋上の扉を見ると見事に壊されていた。

 

邦枝先輩だけ単純に器物破損で謹慎処分になりそうなんですけど。

 

「男鹿、気をつけて。流派までは分からないけどおそらく、発勁を使う大陸の武術を取得してる」

 

「はっ、俺が負けると思うか?」

 

 

 

「思わない」

 

邦枝先輩が笑みを浮かべながら答える。

 

三木が構える。

 

そして一瞬で男鹿に近づき、腹に一撃決める。

 

 

その衝撃に思わず男鹿は腹を抑え、膝をつく。

 

「男鹿!」

 

邦枝先輩が男鹿に近づく。

 

「やっぱり貴方……その技は…」

 

 

 

 

 

 

「どいてください。僕の力はこんなんじゃないですから」

 

 

 

そして、

 

「私は強くなりました。貴方を倒せるくらいに」

 

俺は俺で投げ飛ばされ、屋上に倒れていた。

 

こんな可愛い女の子に投げ飛ばされる位悪いこと俺したっけ?

というか何でこんな目がガチなの?

聞いても答えてくれなさそうだな。

 

 

ゆっくりと立ち上がり、アマチュア無線部の代わりに入っている屋上にいる中で最後の六騎聖に目を向ける。

何部の部長かは忘れたけど、それは仕方なかった。

名前にインパクトが強すぎた。

 

その名前は ()()

 

邦枝先輩の祖父の知り合いのお孫さんだ。

何故ここにいるかは不明だ。

 

因みに何故こんなに怒りを買っているのかも不明だ。

 


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