「早く上に向かいましょ!」
ラミアに声をかけられるが、俺はヨルダの集中が乱された事による次元の解放により、マンションの廊下にでる。
そして隣の部屋の扉を開ける。
「おう、古市じゃねーか。遅かったな」
「どこ行ってたんすかー?」
「姫ちゃんも不貞腐れて無いで元気だしなよ。ご飯係が帰ってきたよ」
扉を開けると先輩達が各々の反応を見せる。
このゲーム対決中のご飯係は俺が担当していた。
「敵の本拠地が割れました。向かいましょう」
「本当か、古市!」
廊下で寝ていた城山先輩が跳ね起きる。
「はい、隣です」
「ああ、電波は確かに隣だ。だが奴らはいねぇ。古市達が帰る前に確認したからな」
奥から姫川先輩もやってくる。
「それはおかしいです。俺とラミアは今、隣の敵に捕まっていたんですから」
「なんだと!?」
「来てください」
隣の部屋は開きっぱなし。
そこには侍女悪魔達がいた。
「やっぱ、隣にいたのかよ」
「だが、何故?さっきは空き部屋だったはずだ」
「先輩達は暗示にかかっていたんです。この部屋を開けたつもりが、逆隣の部屋を開けていた。脳による勘違いです。俺とラミアは先にそれが解けてしまった。それにより捕まっていました」
「そんなことが…」
「どうやって逃げてきた」
「男鹿です」
「何!?帰ってきたのか!」
「男鹿は主戦力と戦っています。なので俺とラミアは男鹿が戦っている屋上に向かいます。先輩方は敵を逃さないようにお願いします!」
そう言い残し、ラミアを抱えて屋上へと向かう。
少しタイムロスしたが、俺のロリコン回避の為に必要なこと。
上から凄まじい魔力を感じる。
これはナーガとか言ったか?
屋上へ着くと男鹿は哺乳瓶を頬に当てていた。
「嫌!何してのお前!?」
「おう、古市か。スーパーミルクタイムだ」
「意味分からんし、というか邦枝先輩はどうしたんだよ」
「先にアランドロンで帰ってきた」
「おい、まだか!」
「まだだ!やけどしたらどーすんだ!!」
なんだこれ。
「乗せられるな、グラフェル。貴様の悪い癖だ。この男の全力を叩き潰せばいい。それに王族の食事を邪魔するものでない」
「へっ、悪いな。そろそろいい感じだぜ」
そう言って男鹿は哺乳瓶を口にくわえ、ミルクを飲み出した。
「お前が飲むのかよ!!」
「アーダ!アーダ!アーダ!」
「不味っ…ベル坊君もう無理だ!これ以上は勘弁してください!」
なんだこれ。
会社の先輩に無理やり、酒飲まされてるみたいだ。
「うーし、きたきた」
男鹿の魔力の絶対量が上がっていく。
無理矢理リミッターを解除して同調していく。
「タップリ吐かせてやるよ!」
グラフェルの攻撃を片手でいなす。
そして自由奔放に縦横無尽に攻撃を加える。
そこに技など無い。
喧嘩ともいえない。
ただの赤ん坊のじゃれつきだ。
グラフェルはほぼ戦闘不能。
ナーガも傷を負った。
ミルクは本来混じらない水と油を混ぜる力がある。
そして現在、男鹿とベル坊の境界を曖昧にしている。
今の男鹿は無尽蔵に溢れ出すベル坊の魔力をそのまま引き出せる。
まさに
だが、これはより悪魔へと進行を早める。
元来、悪魔に魂を売るというのはそういう意味だ。
男鹿は更にミルクをあおる。
肌は浅黒く、紋章は全身に周り、蝿王の翼がはえる。
あれは既に男鹿の意識は無いだろう。
男鹿の姿を借りたベル坊だ。
「アウッ!アーイ!アーダ!!!」
完全にベル坊だ。
そしてまじまじとズボンを見るとやぶこうとする。
「ズボンを破こうとしている!邪魔なんだ!」
「いけません!坊っちゃまああああああああぁぁぁ!!」
「危ない!止めて!」
「なんというまるだしへのこだわり」
アランドロンいたんだ。
そこに魔力弾が飛来する。
それを、回避するために破こうとするのは止める。
魔力弾を放ったのは最初に倒れていたヘカドスだった。
「ナイス!」
「うむっ!!」
「まだ生きてたのね!」
男鹿が攻撃されたのにこの反応である。
「止めを刺さなかったのは間違いだったな!」
グラフェルが後ろからベル坊……いや、男鹿坊を羽交い締めする。
「俺ごとやれ!ナーガ!人間の肉体を壊せばベルゼ様は外に出られるはずだ!」
「よくやった2人とも。これで終わらせる」
「馬鹿野郎!グラフェル、てめぇも死ぬぞ!」
「へっ…こいつをやれるなら本望さ。あとの事は…」
そこまでグラフェルが言葉を紡ぐと気づく。
男鹿坊から紋章が連続で出ている。
そしてナーガを包み込み、空をも塗り立てる。
「まさか!これは…早く飛べ!!」
ラミアを抱えて飛ぶ!
「ナーガッ!!!」
マンションを破壊する。
これで小規模爆発らしい。
大魔王の連鎖大爆殺だ。
上の階層ごと吹き飛ばす。
この事件はこの町の不思議に加えられることだろう。
爆発を受ける中、 ラミアは見た。
自身を守るように障壁が貼られている事に。
そこには剣を持つ赤髪の青年。
錫杖を持った青髪の美女。
黄色髪の男が盾を構える。
そして銀色の髪をし、私を抱える男に緑髪の少女が寄り添っていた。
爆発は収まる。
いつの間にやら階層は姫川先輩の部屋まで落ちていた。
よく死ななかったな。
俺は護衛がいるけど他のみんな。
瓦礫に魔力攻撃がいったから良いけど、無かったら生き埋めだぞ。
砂より霧散する大量殺戮爆殺。
敵にしたくねー。
「古市…」
「焔王……様?」
後ろから焔王に話しかけられる。
怒気を含む声から思わず、様呼びしてしまう。
「貴様は戦友じゃ……しかし、余の嫁をお、お姫様抱っこなぞ……」
「全面戦争じゃ!!!必ず殺す!!」
おかしいな。
ロリコン回避+焔王友人関係で逸らしたはずが命狙われてますわー。
「全面戦争か……おもしれぇ」
「その喧嘩買ってやるよ」
気絶したグラフェルを焔王の方に投げ飛ばす。
「てめぇらが悪魔野学園か……人の家をなんだと思ってんだ」
「正直、侮ってたぜ。まさか爆弾まで使って宣戦布告してくるとはよ……上等だ」
「「その勝負……受けて立つぜっっっ!!!」」
凄い倒した感出てますけど、倒したの男鹿です。
あと爆発したのも男鹿です。
「えぇい!一旦帰るぞヨルダ!」
「離せ!1人で歩ける!」
一足先に目を覚ましたナーガが焔王に跪く。
「申し訳ありません、焔王様。この不甲斐なき結果の責任は……」
「良い、ナーガ。そんなことより全面戦争じゃ、余のために力を貸してくれるな」
「はっ!もちろんでございます!!」
「うむ……よいか古市!!近いうちに必ず全軍率いてくるからの!!それまでラミアを預かってて貰うぞ」
それだけ言い残し、空中へと飛ぶ。
やはり、避けられない道だったか。
指紋を気にして全員軍手着用してくる。
略して全軍。
とかかな?
ハハッ
その後1度解散となった。
男鹿を背負い、男鹿の家に向かう。
男鹿の、家族に出迎えられいつものように料理を始める。
どうせ、起きるまで時間あるしな。
「ヒルダ姉様!!ベルゼ様が目を覚ましました………覚ましたんですが……」
少し言い淀む、ラミア。
説明は見ればわかるという事で部屋へと行く。
男鹿は寝ているがベル坊は起きていた。
しかし、そのベル坊が発せられる言葉は赤ちゃん言葉ではなく。
「おう、ヒルダか。えーとあんまし、記憶ないけどアイツら倒せたんだっけ?えらい寝ちまったみてーだけど」
………
「ん?あれ寝てるの俺?」