私の性癖的にntrはあんまり好きじゃないので、書くつもりは無かったんですが、なんか筆が乗ったので書いてみました。
あくまで相手は虎ですが、子どものときなら問題無いでしょ。
「虎!また無茶して!」
「静…問題ねえだろ、勝ったんだから」
七海静と東条英虎は幼馴染みだった。
現在、海でバイト中に暴走族に絡まれ、返り討ちにしたその後、普通に帰宅した後に怒られている。
「それで油断してる時にバイクで突っ込まれて怪我したんでしょ」
「違う、突っ込まれたからそのまま殴り飛ばしただけだ」
「それで拳を怪我しちゃ意味無いでしょ」
「次は大丈夫だ」
「次なんてしないでよ!」
東条英虎は黙り、傷の手当を受ける。
「骨は異常ないのよね。全く子供のときから頑丈なんだから……」
「お前の方こそ、怪我してないのか?」
「あら、心配してくれるの」
「そりゃ、心配するさ」
「そ、そう…」
「そういえば子どもの時にも怪我したよな……あの時も心配したさ」
「子どもの時でしょ……って私が?」
「そうだ。森で追いかけっこした時に…」
「森でなんていつでもしてたでしょ」
「あー……そうだ、お前が弓道場で怒られたって泣いてた時だ」
「虎!待ってよ」
幼少期、私たちはいつものように近くの山で遊んでいた。
私は女の子だったけど、虎や薫達と遊んでいた。
お母さんは新しくできた弟が独占している。
家でおままごとしている私を虎達は誘いに来る。
男の子に混ざって遊ぶと学校のみんなは少しおかしな目で見てくる。
けど、虎達とも遊ぶし、みんなとも遊ぶ。
そのうちみんなのアイドルの様な存在になっていた。
そんな時、いつものように森の中で遊んでいた。
今日は追いかけっこ。
虎が鬼で、みんなが逃げた。
普通の追いかけっこと違うのは虎が逃げる人を全員捕まえるということ。
虎は強い、喧嘩だけでなく、速くもある。
今回みたいにみんな対虎の時もある。
けど、いじめじゃなくてみんなが楽しくやってる。
虎もみんなを捕まえるって意気込み、捕まえる。
今日は私も男の子達に混ざって逃げていく。
昨日は弓の稽古で叱られた。
集中が無いと怒られた。
集中はしてなかったけど、そんなに怒ることも無いと思った。
お母さんは構ってくれないし、虎は喧嘩したり近所の不良に殴られたりするし。
だから少し今日は羽目を外して、不満を解消したかった。
ムキになって逃げるのに必死で足元が崩れそうになってるなんて知らなかった。
足を取られ、山の穴に落ちる。
穴は深くて広かった。
「あれ、静のやつ、こっちに逃げたと思ったんだけどな」
虎の声が聞こえた。
助けて、穴に落ちたと伝えたかった。
けど、落ちた拍子に足を怪我した。
痛みに気が向いているうちに虎は離れていってしまった。
穴は高くて自分一人じゃ上がれない。
そもそも足が痛くて動けない。
このまま1人で誰にも気づかれなかったら。
そう考えると悲しくて寂しくて涙が出そうで顔を伏せた。
「そんなこともあったわね…」
「で、結局どうやって帰ってきたんだ?」
「覚えてないの?」
「静から聞いただけだからな。俺が覚えているのはいつの間にかいつもの集合場所にいた静を見つけておぶって帰ったくらいだ」
心細くて泣きそうなその時、声をかけられる。
「大丈夫?」
顔を上げるとそこには1人の少年がいた。
少年の髪は銀色で、口元だけ露出している白い狐のお面をつけていた。
「足怪我してる!薬があるから傷見せて!」
いきなりの事で驚いて声が出せない私に彼は優しく治療してくれた。
「もしかしてあそこの穴から落ちちゃったの?」
私は無言で頷く。
「気づかなかったな…後で塞いで置かなくちゃ。じゃあ、よいしょっと」
そう言って少年は私をおぶった。
「足怪我してるでしょ。大人が来るには時間がかかるからね」
自分より背の低い彼は私を背負い歩き出す。
「大丈夫!安心してちゃんと安全に帰れるから」
私は何も言わずに彼の背中に身体を預ける。
彼の背中は小さいのにすごく安心した。
気づくと穴から出て、森の中を歩いていた。
そして直ぐにいつものみんなの集合場所に来ていた。
そこにみんなはいないけど、多分自分を探しているのだろう。
「直にみんなが君を見つけるよ。安心してここで休んでいなよ。足の怪我は治しとくから、明日からも元気に遊べるよ」
私はゆっくり、降ろされる。
「次はあんまり奥に入っちゃダメだよ」
お面越しにニコリと微笑みかける。
そんな少年に少しドキりとした。
「あのっ!…」
助けてくれてありがとう。
そんな言葉をかけようとした。
「静!みーつけたっ!」
後ろから声がかけられる。
そこには虎とみんながいた。
「心配した…」
「ありがとう薫…」
「虎はもっと心配してた。森だけじゃなくて街も走り回ってた…」
「言うなよ!薫!」
「ありがとう、虎」
「へへっ……あ!静、足包帯巻いてる!足怪我したのか!」
言われて気づく。
足に痛みが無いことを。
少年が言った通り、足に痛みは無かった。
「大丈夫。手当てしてもらったから」
「誰に?」
「そこの……あれ?」
そこに彼はいなかった。
夕暮れの風景にはいつもの集合場所。
狐のお面を被った銀髪の少年の姿はどこにもなかった。
「そうだったな」
「そうだったってやっぱり私話してたじゃない」
「けど、その後探しても何も無かったじゃねえか。静が落ちたっていう穴も狐の子どもも」
「それから色々噂になったわよね。裏山に住む狐さんって……神社がある訳でも無いから勝手に神社作ったりね」
「懐かしーな。また薫達誘って山行くか!」
「楽しそうね。弟達も虎と遊びたがってたわ。一緒に行きましょう」
彼らは再開する。
会った時は気づかないが、いずれ事実に気づく。
そしてそれは1つの契約となる。
あいたいものは誰であろうか。