俺と男鹿は屋上で休憩を取っている。
「一応聞いとくけど、大丈夫か?」
「大丈夫に見えるか?今日だけでもう6回だ」
目の前には黒焦げになって男鹿が転がっている。
つーか男鹿じゃなかったら確実に死んでるだろこれ。
「やべぇぞ古市…このままじゃまじであの夢のようになる…死ぬ、確実に死ぬっつ。何とかしなければ」
「夢?」
「ああ、恐ろしい悪夢だ」
その夢ではべる坊が魔王になり癇癪も大きくなり、泣いて街1つが電撃で消し飛ぶという事だった。
「フーン、そりゃあまた…何一つ否定出来ない所が恐ろしいな…」
「だろ?」
「それ、俺も死ぬよな」
「うむ、バッチリ死ぬ」
まあ、こんな見た目は赤ん坊でも大魔王の子どもの魔王だもんな。
「つーか改めて考えてみると…もしかして、人類の未来ってお前の肩にかかってる?」
「「………」」
「ハハハ」「アハハハ」
「「「あーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは
って!誰だーっ!!!」」
俺らと一緒に巨大なおっさんが大笑いしていた。
ビックリした。
能力的には珍しい、唯の変態アランドロンだ。
「そうです!次元転送悪魔、アランドロンです」
「大きなおっさん」
「あの二つに割れたやつか!デカっ!」
男鹿がオッサンの頭に掴みかかり頭を潰そうとする。
まあ、今までの恨みつらみがこもってるからな。
ひとまず手を離して説明してもらうことになった。
「坊っちゃまは魔王ですから強いものにしか惹かれません」
「いや、ま……ね」
あ、喜んでる。
男鹿は何気に率直に褒めると照れるからな。
「そして更に凶悪で残忍で傍若無人で人を人と思わぬクソヤローであればサイコーです」
「おまえじゃん」
上げて落としたな。
一応こいつも悪魔ということか。
「ええ、私も川で薄れゆく意識の中、貴方が大勢の人間を土下座させ、高笑いをしているのを見て確信しました」
「あぁ、この男なら坊っちゃまを任せられると。力を使い果たしてその後、寝ちゃったんですのねー」
男鹿が頭を抱え込み項垂れる。
なるべくしてなったわけだな。
しかし男鹿が項垂れていると何かを思いつく。
「もしかして、俺より強くて凶悪なクソヤローがいればそいつが親に選ばれるって事か?」
「そりゃあ、そんな人間がいればそーなりますかね」
男鹿が満面の笑みを浮かべる。
だが、男鹿よ。
「いねーよ。そんな奴。鏡見てみろ」
お前の今の顔は悪魔そのものだぞ。
「馬鹿め古市、忘れたのか?」
「あ?」
「ここは天下の不良校石矢魔高校だぞ?」
俺はその言葉に押し黙る。
確かにな。
候補はいっぱいだろう。
お前を超えるとは思えないが。
「神崎くんいるぅーー?」
男鹿が3年の教室のドアを開ける。
おお…見事に悪そうな奴ばっか。
ところ変わってここは3年生の教室。
こういう時の男鹿の行動力は凄まじいものだな。
「神崎さんだ。一年坊」
本当に押し付けにいったぞアイツ。
本当にあいつの精神どうなってんだ。
俺は観戦してるよ。
頑張って面白くしてくれ。
(古市~どうしよう)
こっちみんな。
もう、ギブアップか。
本当に頭弱いな男鹿の野郎。
しょうがないな。
「俺達実は東邦神姫最強の男である神崎さんの下につきたくて来たんです」
「こいつ喧嘩は強いですけど口ベタな奴でして…」
「あ″あ!?」
「口裏合わせろ。まずは下手に出ねーと話にならねー」
「下につきたい?」
「あ、ああっそーなんだよ!!」
「敬語」
「でがすよっ!!」
でがすよ?
勢力争いばっかしてるこの学校だ。
1人で2年幹部全員の力が集約したようなやつだ。
戦力にはなるし、他の勢力にとられるのも嫌なはずだ。
これは甘い餌だろう。
「ククッおもしれーじゃねーか。強いやつは大歓迎だ」
「ま、まって下さいっ!!こんな奴ら信用しては……」
「だったら証明してみろよ、城山。テメーに負けるようなやつはいらねぇ」
男鹿と城山が向き合う。
いい流れだ。
これであのデカイの倒せば下での地位が確立される。
男鹿の事だから容赦なく一撃で倒すだろう。
そんな事を考える間に予想通りに終わった。
顎に1発。
脳震盪起こしたな。
あれは立ち上がれない。
「待ってください…まだ、やれます」
おおっ!
常人なら絶対無理だぞ。
すごくタフだなあいつ。
それを神崎が蹴る。
男鹿が笑ってる。
この状況で笑えるとかお前、本当に人間味どこに捨ててきた、おまえ。
それでも神崎に忠誠を誓ってる。
凄いな。
更に立ち上がったぞ。
『私も主様のためならあれくらい』
ルビにまずあんな事しない。
その時点であの神崎ってヤローは失格だな。
悪ではあるが家臣を使い捨てる時点で王にも親にもなれる筈が無い。
「そこから飛び降りろ。はーい全員拍手ー!!」
「というわけだ。みんな期待してるぞ、側近気取りの城山くん」
いくらなんでも男鹿でも無理だなこれ。
「おまえが飛んでけ」
神崎を殴り、窓から吹っ飛んでいく。
他の人は呆然としている。
そりゃそうか。
そんな中魔王の雄叫びが春の空に高く、高く響いたという。
まあ、こうなると思ってたけど。
「よし、男鹿逃げるぞ!」
そういって俺は教室から出ていく。
男鹿を置いて。
「あ、まて。古市!」
遠くの教室から友人の声と人がめり込む音が聞こえる。
達者で帰れよ男鹿。
俺は男鹿を置いて帰宅した。