場は圧倒されていた。
300人を超える団員達を1人で倒してしまったのだから。
そして強者は感じ取る。
今の戦いで人間は1度も魔力を使わなかった。
幾ら団員が柱将や柱爵に弱いとしても悪魔と人間では基礎能力が全く違う。
魔力を使用する事で契約者は悪魔と戦えていたのだ。
それを単純な肉体の能力で圧倒したのだ。
「これは、余興にもならなかったの」
団員が倒され、黙っていた中で焔王は口を開く。
「さて、とりあえず余興が終わったことじゃ。古市と余の約束について話すかの」
約束であった話をはなす。
聞きたかった話ではあるが団員は少し情けなさを感じてしまう。
聞きたいと言ったが余興の後というからには時間が経ってからという事であったのに300人という精鋭はものの数秒でかたがついてしまった。
戦闘集団の名折れともいう状況だった。
自身の班が倒されたことの不甲斐なさ、呆れ、様々な事を考えている中、焔王は語り出す。
「人間界でのゲームの前に個人的な賭けをしたのじゃ。余が勝てば人間界の宝を、古市が勝てば余の叶えられる範囲でなんでも叶えてやろうとな。
そこで古市は勝利し、願った。
余と契約を結びたいと」
「「「「「!?」」」」」
「ついでに余の配下であるお前たちとの契約じゃ」
焔王の言葉に悪魔たちは驚く。
この戦いと何が関係しているかはまだ分からないが、主君との契約とはかなりの大事だ。
遊びの賭けで契約者を決めてしまうとは。
焔王をまだガキと考えるジャヴァウォック等はため息をつく。
「しかし、流石に余が叶えられる事とはいえ、ゲームで勝った程度で契約はできん。それで古市は2つの条件を出した。その条件がクリアすれば正式に契約すると。そして余はそれを承諾した」
流石に何も考えていない訳では無かった。
勘のいい者や策士基質のものは気づき始める。
「一つは我が弟の契約者である男鹿辰巳が現ベヘモット34柱師団団長に勝利すること。これは既にクリアした」
その言葉を聞き、一部の者は反応する。
人間界での戦争前に演習場の中央にいるものは男鹿辰巳が勝つ事を分かっていたかのようなその物言いにジャヴァウォックは反応する。
「もう一つは自分1人でベヘモット34柱師団全軍を相手にし、全て打ち倒すこと」
その言葉に脳筋の者も気づく。
この演習場での戦いは
「そうすれば戦いの先を見る目と余と契約するに値する力を持つと証明できるとな。流石に他者からの魔力供給や魔術の使用は許可したがの。人間だし。実質1人で戦う事が条件じゃ」
この演習場での戦いは主君の契約者候補である古市の選定。
既に団員がやられ、次は柱将だろうと理解したのか柱将が観客席から降りてくる。
古市も流石に降りたそばから攻撃をしてくる事は無い。
流石に危険視しているのか。
「既に何人か降りとるが次は柱将じゃ。余としてはここは持ってもらいたいがの」
余りにも早く、団員が倒されてしまったせいか雑な物言いの焔王。
しかし、それを言い返すことはできない。
ならば、示すにはこの人間を倒すしかない。
「流石あの契約者の仲間だな。1人で全軍と戦うとは。勇気と無謀の違いを教えてやろう」
「あの契約者との戦いで油断を経験したはずでしたが……団員の選定も必要のようですね」
柱将24名が古市を取り囲む。
「第二ラウンド開始だ。次も同じ事が起こると思うな」
「ああ、俺としても頼む。肩慣らしにもならなかったからな」
「かかってこいよ」
その言葉を切っ掛けとして戦闘が始まった。