「はい、……クリスマス会敗退残念会始めまーす。先程の事は水に流して楽しみましょう。では!いただきます!」
「「「「「「いただきます!!!」」」」」」
聖石矢魔学園から場所を写し、ここは邦枝神社。
残念会を開くということで広い場所が欲しいということで邦枝先輩が申し出てくれた。
俺が料理担当を申し出ると、自分たちも行きたいと騒ぎ出す不良たちに囲まれ、移動をしたのだった。
そういう訳で神社はクリスマス1色となっていた。
神社だけども……
そこは気にせず(邦枝先輩の祖父も快く許可してくれた)、今はみんな料理にがっついている。
量的にな3日分くらい姫川先輩が用意してくれたが、一瞬で無くなりそうだ。
ぶっちゃけ、東条先輩が手伝ってくれなきゃ速攻で無くなっていた事だろう。
現在ここにいるメンバーはクリスマス会に来ていたモブ不良たち、石矢魔参加メンバー&聖石矢魔の猛者たちだ。
逆にいないのは先生ペアとやられ役で消えてった聖石矢魔生徒たちくらいでワイワイしている。
「それにしても東条先輩助かります。1人でやってたら手が足りなくなってましたよ…」
グラタンの処理が終わり、オーブンに入れる。
(機材類と食材は姫川先輩が用意してくれました)
「ああ、アイツらも参加させてもらってるしな。今日はバイトもねーし、飯がタダになるならありがたいもんだ」
アイツらとは元六騎生の七海先輩の弟たちだ。
今はチキン片手に神社内を駆け回っている。
オータムの弟たちとも仲良くなったみたいで、そこから繋がるようにベル坊や二葉ちゃんとも仲良くなって遊んでいる。
「もう少しやったら食材が底をつくんでそこからこっちも食べたりしましょう」
「こっちの分終わった。そっち手伝うか?」
「はっや!いや、大丈夫です。それより七海先輩と一緒に食べてきたらどうですか?」
「そうか…じゃ!頑張れよ!フルイチ!」
そう言って東条先輩は両手に料理を持って出馬先輩に話しかけられている七海先輩の元へ向かった。
頑張ってください。
誰とは言わないが…
グラタンも焼き上がり、後はスープ類が殆ど。
これで終わりだな。
エプロンを取り、厨房から出る。
「ネーヴェ」
そこにはオータムの姿があった。
神社の裏手。
そこには俺とオータムだけ。
表の喧騒がこっちまで聞こえてくる。
「どうした?こんな所に連れてきて…」
「あの時…どうして負けを認めたんですか?」
「あの時って…クリスマス会の。アレはあの時も言った通り目的は叶ったし時間もかかってたから」
「なら、どうして戦おうと思ったんですか!」
普段からはあまり想像のつかない強い気迫で詰められる。
「あの時は目的は達成出来てなかったし…」
「それでも早くに決着が着いてしまう可能性があった……私が弱いから…。もしも目的が達成してなかったら、早目に負けてしまったら、そうしてたらどうしてたんですか?」
「………」
「貴方はなんのために参加したんですか?」
「……」
「弟たちのためって言ってましたけど、それは取ってつけた理由ですよね。他に理由は無かったんですか?」
「………確かに弟たちへのって理由は外聞的な理由だった。みんなが参加するなら誰か誘って遊びたいなって考えていた……」
「それなら私じゃなくてもよかった。他にも寧々さんや六騎生のあの子だって……」
「もうひとつ理由があった」
「それは……なんですか?」
「君だよ…谷村さん」
「私?……私が何か…」
「悩んでた。現状に。このままでいいのか、と」
「!?それは…」
「幸い参加者に強者達がいた。抗争みたいな過激なものじゃないけど、何か掴めるんじゃ無いかと思った」
「そんな……勝手に…」
「勝手にした。君は余り感情を出さない。寧々さんやパー澤さんみたいに積極的とは言い難い。それも美点ではあるが現状は苦しませるだけ。気づかない振りをして苦しむだけ。悪魔野学園の時に修行して強くなった。けど、それでも寧々さん達と比べると実力差がある」
「私は……私の力じゃ…烈怒帝瑠は…」
「……今回のことで少しは前向きになれたかな?」
「……」
「大丈夫。今回で新たな戦い方を見つけた。まだ先の事は分からないけど、一歩前進したんだ」
「私は……大丈夫でしょうか?」
「分からない。けど、俺も谷村さんもまだ高校1年だ。とりあえずは3年近くにいる。一緒に頑張っていこうよ」
「………はい」
「俺も男鹿に着いて行くのに精一杯だからな〜」
「千秋」
「へ?」
「私も寧々さんのように名前呼びでいいです。同じ1年なんですから名前で呼んでください」
「……そうだな。いつまでも苗字やアカウント名で呼ぶのもな。俺の事も貴之って呼んでくれよ」
「そう、ですね……古市……貴之」
「そういえば出会いが唐突だったし、改めて自己紹介でもするか!」
「今更ですね」
「今更だなぁ」
「「…………フフっ」」
「改めてよろしく、千秋」
「こちらこそよろしくお願いします、貴之」
互いに手を差し伸べ、握手する。
その光景が可笑しくてつい、笑いだしてしまう。
「神社の裏手で何やってるんだろうな!」
「おかしいですね?こんなはずでは…」
「どうしてこうなった!?」
「「アハハハハハハっ!!!」」
「見ようによっては告白シーンだよな」
「そうですね。結果は挨拶で終わりましたけど…」
「パー澤さん達に見られてたら面白いなー絶対学校でイジられるからな」
「こういう時は胸が熱くなるんでしょうか?」
「ある意味告白なら熱くなってもいいんじゃない」
「胸も確かに暑いですが、更に暑いのは太ももですね」
「なんで太もも!?……それじゃまるで……え?」
「ほら、見てください」
千秋は少しスカートを捲る。
「クリスマス会の途中から熱くてアザみたいになっているんです。それにこのアザ…数字の6みたいで…」
そこには彼女の言う通り、6の跡。
そして数字を取り囲むように存在する紋章。
茨の棘と十時をイメージしたかのようなその紋章が刻まれ、光輝いていた。
「貴之?どうしました?」
「そうか……そう、なってしまったか……」
驚き、真面目な顔をする。
さっきまで笑いながら喋っていたのが嘘のようだ。
「千秋。君には俺の秘密を打ち明ける。これは男鹿にも喋っていないことだ」
「え?」
「今日は遅いからまた後日改めて話す。他のメンバーにも伝える。その痣の事は誰にも話さないで欲しい。もちろん邦枝先輩にもだ」
「それは…」
「………そろそろ表に戻ろう。流石に怪しんで絡んで来そうだからね」
表に戻るとみんな笑い、笑顔だった。
勿論呼びに行った千秋の帰りが遅かったのと一緒に帰ってきたことでいじられた。
その後サンタクロースに扮した石動会長が現れ、ベル坊にプレゼントを渡していた。
それを見て顔を知っている人は笑い、モブ不良たちはプレゼントをカツアゲするべく襲いかかり、文字通り吹っ飛ばされていた。
その日はお開きになり、お試し保育や年越しに神社にまた集まったりした。
新年が開ければ石矢魔が直る。
ようやく、最後の戦いが始まるのだろう。
もしくは最初の戦いか。
ようやく俺たちも動ける。
決着をつける。
年越し会は後で書きます。
お試し保育は書きません。
あと夏祭りが途中保存してあるので書き終わったら出します。
この作品は最終巻にあった空白の1年の話もやれたら書こうと思っています。
次回もよろしくお願いします。