銀色の契約者   作:飛翔するシカバネ

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第六十七将 煙草鎮火

 

 

「アタシは烈怒帝瑠を辞める」

 

目の前に立つ女性はそう言い放った。

 

彼女の名は鳳城林檎。

 

烈怒帝瑠元2代目総長であり、魔女学組の頭。

 

邦枝葵が3代目を奪い取り、その座を追われた女性だ。

 

既に年齢は20歳を超えているためタバコを吸っているが、何回も留年しており、1年生だ。

 

「レディースは続けるけど、そろそろアタシも卒業しないといけないからね。それに2代目って呼ばれるより新しくチーム作った方がいいかと思ってね」

 

「それが真正烈怒帝瑠?そんなの…」

 

認められる訳ない、そう続けようとした。

 

「それはアタシんとこが勝手に言ってるだけ。アタシにそんな気は無いよ。それに……」

 

1度言葉を溜めて、放つ。

 

 

「烈怒帝瑠はふたつもいらない」

 

その顔は覚悟が決まった表情をしていた。

 

「そういう訳だから今はアンタらと争う気はないよ。新しいチームを作ったらその時は抗争があるかもしれない。それはその時でいい」

 

「卒業したら負けと言っていたのに…」

 

「そう思ってたけどね……変わった理由は葵、アンタと同じさ」

 

「同じ?」

 

「男だよ」

 

「…………………えっ!?」

 

冷静を保っていたクイーンの顔でなくなる。

 

「男鹿辰巳ねぇ〜いい男だったね…でも手こずるわよあの朴念仁みたいな男は…」

 

「べ、別にそんなんじゃ…」

 

「あの女王(クイーン)がなんて顔してるんだか…」

 

「ちっ違うわよ!」

 

「じゃあ、アタシがとっても言い訳ね」

 

「え?だ、ダメっーーー!!!」

 

「ハッハッハ!!冗談だよ!本当にあの女王(クイーン)がまるで生娘みたいな反応じゃないの!!」

 

今この空間に先程までのピリピリした空気は無い。

完全に崩壊し、ガールズトークのような会話になった。

 

周りの女生徒はどんな気分でこの話を聞いているんだろうか。

 

「大丈夫さ。アタシの好きな男は男鹿辰巳じゃないよ。アタシに好意を抱かれているのも気づいているさ。だけど競争率が高くてね……それに妻になるなら学校くらい卒業しとかないといけないと思ってね」

 

「変わった……わね」

 

「変わるさ……素敵な人に出会うと…」

 

 

1度静寂が訪れる。

 

 

「話を戻すよ。アタシに動く気は無い。けど、アタシの所が勝手に動いてアンタに怪我させた。それの責を果たす。本当はこれまでの狼藉を烈怒帝瑠除名で果たそうと思ったんだけどね……ケジメとして何をしたらいいかね?」

 

教室に後ろ手を縛られた女性生徒達が入ってくる。

 

「アンタを怪我させた奴らは捉えておいた。仕返しは自由にしていい。何だったらそいつらも除名処分したらいい。それでも気に食わないならアタシら全員土下座するのも……」

 

「いらないわ。それよりは折角仲良くなったんだからチームに残ってもいいんだけどね」

 

 

「それはできない……それにしてもお咎めなしとは随分甘くなったもんだね」

 

「私は元から石矢魔の女生徒を守りたかっただけよ」

 

「そうだったね……じゃあ、さよなら。大森によろしく言っときな」

 

「はい、ありがとうございました。2代目」

 

 

「少し待ってください」

 

それを止めたのは周りにいた数名の女性生徒。

 

「アタシらも烈怒帝瑠を止めます。それで林檎さんのチームに入ります。どうか許してください」

 

「いいわよ」

 

「どうかっ!……え?そんな簡単に」

 

「2代目がいなくなって素直に貴女達が従うか少し心配はあったのよ。それに貴女達は林檎のチームでしょ」

 

 

「アタシもいいよ。どうせ1人でチームは作れないんだ。アンタ達がいいならそれでいいわ」

 

「それで何時でも最強のレディースチームの座を奪いに来なさいよ。その時は寧々達が相手をするわよ」

 

「その時は正々堂々やろうか」

 

「2代目貴女……正々堂々が似合わないわね」

 

「安心しなさい!正々堂々アタシらしさ全開で行ってあげるわよ」

 

「魔女ね」

 

「魔女さ」

 

 

烈怒帝瑠の内部抗争は簡単に終わった。

 

 

しかし、烈怒帝瑠と新チームは近い未来確実に争う時が来る。

その時こそ真に内部抗争が始まるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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