私は正直いって、成績がいい方でも、悪い方でもない。
小学生の頃からずっと平凡を貫いてきた私は、新しく始まった高校生活でも平凡な成績だった。
・・・のだが。
「月森」
先日のテストのテスト返し。
クラスの皆はわいわい言い合って、点数見せ合ったりしてる。
私の出席番号は少し後のほうなので、比較的呼ばれるまで時間があった。
「はい」と言って返事をすると、私は紫雨先生のいる教卓まで歩いて行く。
そして紫雨先生の前に立つと、テストを手渡しされた。
私はそれをすぐに見ずに、自分の席に帰ってから見る。
椅子に座って、深呼吸をする。・・・やはり、テストの点数を見るときはそれなりに準備が必要である。
ごくり・・・と息を呑んでテストの用紙の表を見る。
「・・・・・」
うそでしょ。良くもなく、悪くもない道を歩いてきた私が、こんな、今までで最も低い点数をとるなんて。
よりにもよって、苦手だから頑張って勉強した数学の点数が、
54点だなんてっっっ!!
放課後練習
今、私のテンションはだだ下がりである。
体はカチコチに固まってシャープペンを動かす手もどこかぎこちない。
「ほら、月森。またそこ間違えてる。」
私の真ん前にいる人物は、誰でしょうか?皆さん当ててみて。
何故か私のことを毛嫌いしているハゲ先生(アダ名)?それとも、やたらとうんちくばかり自慢してくるツルピカ先生(アダ名)?(どちらも高校にいる先生の、私の脳内でのあだ名である。)
いいえ、どれも違います。
最近赴任してきた、紫雨恭弥先生です。
今、私と紫雨先生の距離は1メートルとないだろう。・・・いや、明らかに30センチ位の感じで、私と先生は近づいている。
なぜかというと、この前のテストで、私があまりにも普段から点数が下がったので、紫雨先生に付き合ってもらって、放課後に補修をすることになったのだ。
恐怖の代名詞とまで言われている紫雨先生に教えてもらうなんて、私はもう体がガッチガチです。
「ねえ君、聞いてるの?」
「あ、はひっ!すみません、聞いてませんでしたっ」
「・・・。はあ、まあいいよ。」
どうやらまだ見逃してくれたようだ。危なかった。
「・・・で、ここはこうなって・・・この公式を当てはめると、こうなるんだ。」
「・・・!そっか・・・。ありがとうございます、先生!」
何故だろう。この紫雨先生、そんなに怖くない気がする。
むしろ・・・やさしい?
「・・・今日の補修は終わりだね」
「はい」
そう言って、先生は荷物を持って職員室に行こうとしたが、足を止めた。
私は不思議に思って、文房具を片付ける手を止め、先生のほうを振り返る。
「どうしたんですか、先生?」
少し間があって、こちらに背を向けていた紫雨先生が、私の目を真っ直ぐ見る。
「・・・ねえ、月森は僕の授業、つまらないかい?」
「・・・へ?え、いえ・・・。わたしは、やさしいなーと感じます。」
「優しい・・・?」
さっきまで無表情だった紫雨先生が、不思議そうな顔をする。
「はい。さっきの補修も、普段の授業も、わかりやすいですし。そこから、生徒を思ってくれている優しさを、感じます。」
「・・・」
「あ、・・・・っ、ごめんなさい急にこんなこと言って。わたし、もう帰りますっ」
そう言って私は廊下を駆け足でサッて言ってしまったため、先生が私を引き止める声は聞こえなかった。