ロキファミリアの朝は早い。朝日が出てすぐ彼らの本拠地たる黄昏の舘はその活動を始める。
食堂に人が集まり皆思い思いの所に座り食事を取る。
其処には勿論ベート達幹部勢の姿もある。
「ねぇベート、そこのケチャップとって」
「ん…ほらよ」
「すまんが儂にも醤油を。」
「…ほらよ。」
「済まないが僕にもマヨネーズを。」
「ったく…ってフィンの方が近いだろ!?」
「ごめんごめん、つい」
ワイワイガヤガヤと皆で食事を取る。
ロキファミリアは彼らの信仰する神ロキの決めた「食事は皆でとろう!」を指針に掲げており、彼らは皆でとれる食事は最低限食堂に集まって食事をとるのだ。
「ねぇ…ベート?」
「んだよティオネ?まだ何か要るのか?」
「アイズ…今日見た?」
ティオネが少し悩んだ声色で話始める。食事中には相応しくない、
「アイズ…見てねえな…風邪か?」
「確かに珍しいな…アイズが食事の時間に遅れるなんぞあり得ん。…あとで見に行ってやるとするか。」
「実は…。」
ぽそりぽそりと話始める。その内容は彼を驚かすに十分な内容だった。
「はぁぁ!?昨日の夜から見てない!?どういうこったそりゃ!?」
ベートの声が食堂に響き渡り、そしてその内容は食堂にいる皆に知れ渡る。
食堂に動揺が走り皆口々にアイズの心配を始める。
「だって…だって、アイズがベートの所に行くって言ったから…あの時の事謝りに行くんだと…」
「…そうなのかい?ベート?」
いつ混乱状態になっても可笑しくないティオネをみかねてフィンが会話の続きを促す。
「いや…昨日の夜は誰も俺の部屋に来てなかった。」
ベートがそう返事を返すとティオネの顔が更に真っ青になっていく。
「どうしよう…もしアイズが変な人に…。」
そんな状態を見かねたガレスがフォローを発す。
「大丈夫大丈夫!アイズはこの街で名高いlevel5。暴漢一人何とかできるわ!安心しろ!どーせ腹減って今頃じゃが丸買いにでもいっとるだけじゃ!安心せい!」
そう言いながらティオネの頭をがしがし撫でる。
「うん…。」
そんな言葉も頭に入ってないのか、ティオネは顔を青くしながら生返事をするだけだ。
「…ねぇベート?」
「…んだよ?言っとくが本当に知らねぇからな?」
そんな二人を無視してフィンとベートが話始める。
「彼女はベートの所に行くと言っていたみたいだ。だが…君の所に来ていない。」
「あぁ…来てねぇ。」
「もしかしたら…。」
フィンはそう言葉を区切ると極めて冷静に振る舞おうとしながら言葉を続ける。
「アイズは君と同じlevelに行くと言外にティオネに伝え」
その言葉を聴くや否やベートは駆け出す。目指す場所は勿論ダンジョンしかない。
ベートは己の持てる全ての力を使いダンジョンにかけていく。
「(間に合ってくれ…ッ!)」
………。
ベートが向かっていったのを見ながらぼそりと呟く。…頼んだぞベート…お前さんに任せる。
「行ったか…。」
そう言うと団長様が此方を不思議そうに見て尋ねてくる。
「行かないのかい?てっきりガレスが行くと思ったよ。」
馬鹿言え…全く。
「儂が行かんでもベートが行く…それにそっちの方があの子も良いだろうさ。」
「成程…ベートの事を其処まで信頼しているんだね。団長としても嬉しい限りだよ。」
「信頼は人と人を繋ぐ架け橋だからな。」
「違いない。」
「「ハハハハハ!!」」
そう言いながら2人で笑いあう。
「………訳が分からない。何で笑ってるのよ…アイズが大変なのに。」
そんな儂等の姿を訝しげに見る。
大丈夫。アイズは無事に決まっとる。なんてったてアイツの子供だからな。
それに…ベートがアイズを守れない訳がないアイツなら出来る、なんてったって
「惚れた女を守れない玉無し野郎にベートを育ててはいないからな。」
「流石は皆のお父さんだよ。ガレス」
「誉めても何にも出んぞ団長。」
だから任せたベート、あの子に男魅せてこい。
…………。
「……。」
切る、目の前の敵をただ切る。もうどれ程切り伏せたか何て分からない。どれだけ奥に進んだかも分からない。
「ここ…何処だろう。」
思わず口に出してしまう。…どうやら必死になりすぎて深いところまで来すぎてしまった様だ。
そんな事を言っていると思わずお腹が鳴る。
「お腹すいた……。」
何か食べたい。温かいごはんを食べたい…皆で。
「…ッ!?」
思わずあの時の皆の顔を思い出して頭を振る。
狂った様に笑った顔。死んでいきながらも狂った笑みを浮かべた顔。
「させない…ッ!次は私が止めて見せる!」
だけど…その為には力が足らない。
「もっと…強くならなきゃ…もっと…もっと!!」
自らを鼓舞し更に奥へと進んでいく…体の疲れを押し殺しながら。
「もっと…力を!」
そうやってどんどんダンジョンの奥に進んでいくと体に違和感を感じてくる。
「(何だか体が動かしづらい…。)」
さっきまでちゃんと動いていた体は思った通りの動きをしてくれない。
「(こんな時に魔物に出会ったら…ッ!)」
…もう戻るしかない。これは駄目これ以上は戦う事も出来ない。
そう思い踵を返す。これ以上は危険と判断するしか…。
すると後ろからモンスターが誕生する音が聞こえてくる。
「こんな時に…ッ!?」
急いで後ろを振り替える。すると目の前に絶望が姿を現した。
「グルルルル……。」
巨大な体、それを支えることの出来る強靭な足。何者も食らい尽くせる巨大な顎、鋭く鋭利な牙。
「ドラ…ゴン。」
そう…その姿はまるで翼のない地上戦特化型のドラゴン。
「なっ…何でいきなり…普通なら幼生体で生まれてくるはず。」
そう、ドラゴンは普通なら幼生体で初めは生まれてくる。だがこいつは違う。
初めから大きく成長した姿で現れた。まるで何処かから莫大なエネルギーを貰って急成長をしたかの様に。
圧倒的な質量の威圧感の差がアイズを襲う。
本来のアイズならばこれに恐れなかったのだろうが、タイミングが悪すぎた。
アイズがじわりじわりと後ろに下がる。
「くっ……。」
今彼女は体が疲れはてマトモに戦闘することなど出来ない。
それにそのドラゴンの目にアイズは見覚えがあった。
そう…それはまるであの時の皆のしていた目と同じ様だと。
「あっ……。」
それに気づいた瞬間体が震える。あの時の皆の姿が脳裏にフラッシュバックする。
「グオオオオオッ!!」
ドラゴンが襲いかかってくるが目を離す事が出来ず体が動かない。
ドラゴンが近づいてくる姿が他人事の様に感じボンヤリと別の事を考え始める。
「(そう言えば昨日ベートに酷い事言っちゃた…。)」
ごめんなさい…違うの。別にベートが嫌いだからって訳だからあんな事言った訳じゃないの。
「(恥ずかしかったまだ弱い私が、ベートに気をつかわれる弱い私が。)」
だからもっと強くなってベートに追い付いてやるって。…なのにこれじゃあ謝れない。
「…ごめんなさい…ベート」
何で声に出してしまったのか分からない。だけど本当にごめんなさい。
そう思いながら更に近づいてくるドラゴンを見る。鋭利な牙が私を狙っているのが分かる。…あぁ私はこれに噛み砕かれて死んじゃうんだ。
すると目の前に何かが現れ疾風が走る。その現れた姿に思わず目を見張る。
「ベート…。」
「ったく…お前って奴は。」
ニヒルに笑いかける彼の姿を見てどうしようもなく安心感を覚えた私はプツリと意識を失った。
………。
「良かった…無事で。」
アイズを抱き締めながら目の前のトカゲ野郎を蹴り飛ばして一息つく。
「何がごめんなさいだ…ったく。今日一日は団長からの説教を覚悟しておけよ。」
眠っている顔を見ながら少し笑ってしまう。
「こんなにボロボロになるまで戦い続けやがって。…ったく畜生やっぱり可愛いじゃねぇか。」
そうやってアイズを身近で感じていると空気の読めないトカゲが此方に向かってくる。
……。そんなに死にてえなら一思いに殺してやるよ。
アイズを後ろに降ろして声を発す。こいつを守りたい、その為に誰よりも速くあれと願いながら言葉を発する。
さらばヴァルハラ 光輝に満ちた世界
Fahr' hin, Waihalls lenchtende Welt
聳え立つその城も 微塵となって砕けるがいい
Zarfall' in Staub deine stolze Burg
さらば 栄華を誇る神々の栄光
Leb' wohl, prangende Gotterpracht
神々の一族も 歓びのうちに滅ぶがいい
End' in Wonne, du ewig Geschlecht
死世界・凶獣変生
Niflheimr Fenriswolf
「いぃくぜええええええええっ!!」
漲る力を感じながらトカゲに向かって突っ込む。
今俺はこんな奴をぶっちぎって圧倒的に早い。
速ければ速いだけ俺の突進は貫通力をます。
「くたばりやがれ!トカゲ畜生がっ!!」
「グオオオオオッ!!」
奴と俺がぶつかりあい
「甘えんだよ…そんなもんで俺の愛に追い付けるわけねぇだろうが。」
その言葉を言い終わった瞬間、俺の体はそのまま奴の体をぶち抜いた。
………。
「うっ……うん?」
「目ぇ覚めたかアイズ?…体は大丈夫そうか?」
何か揺れる振動で目が覚めると私の目の前にはベートの背中があった。
「うん…大丈夫。」
「嘘をつくな嘘を。…まぁ帰るまでは背負っててやるからさっさと寝ろ。お前夜通しダンジョンに籠ってたみたいだからな。」
「うん。…ねぇベート?」
「どうした?」
「ベートって弱い奴が嫌いなんだよね。」
「当たり前だ。弱い奴は弱いってだけで回りの迷惑だし邪魔だ。」
私が聞くとベートは何を今更と言わんばかりにキッパリと言いきる。
その言葉に心が乱れて思わずベートの服を強くつかむ。
…分かってた事だけど心が痛む。やっぱり私…ベートにとって要らない子なのかな?
私何かが皆を守りたいなんておこがましいのかな?
「うん…ごめんなさい。迷惑だったでしょ?弱いくせにこんな事して…ごめんな」
私の言葉を遮りながらベートは言葉を発す
「だけどだ。」
「俺はこんなにボロボロになるまで戦う奴の事を弱いだなんて絶対に思わねぇ。こんな所まで一人で降りてきながら戦い続けたお前を誰が弱いなんて言えるか。」
「俺はお前を尊敬する。この世界で誰よりも。」
そう言い括るとベートは無言で歩き始める。
心なしかベートの顔が赤くなってる様に見えて、
「ありがとう…ベート。」
「…………。」
そんな彼の姿を見てどうしようもなく心が暖かくなった。
これで後暫く進めたらベート√とロキファミリア√両方出来るようになる…(白目)