冒険者は冒険をしてはならない。この言葉を皆が言われそれを心に刻み付け日夜ダンジョンへ潜っていく。
勿論それは第一級の冒険者となれば分かっていなければならず、彼等がそれを出来ていなければ他の冒険者に示しがつかないのだ。
「で…何か言う事はあるかい?アイズ?」
「…ごめんなさい。」
「いいかい?君は今まで勝手に先行したこともあった、だけどそれはそこに味方がいたから何とかなったんだ。今回の様に一人でダンジョンの奥まで潜りに行って、しかも朝までぶっとうしで戦い続けた?冒険者は冒険してはならない。あれだけ教えただろう。君は第一級の冒険者でありそこには他の冒険者の手本となる義務があるんだ。それなのに」
「………グスッ。」
「泣いても今日は止めないよ。全く君と言う子は……」
そう…それはフィンがアイズを正座させて一時間ぶっとうしで叱る程には。
「なぁ…フィンもうそのくらいにしてやらねぇか?アイズも反省しているみてえだしよ。」
「黙っていてくれ。今は大事な話をしているからね?ツンデレ狼。分かったら少し空気を読んでくれ今は説教中なんだ。いいね?」
「…何で…お前まで人の事を…。」
泣きそうになっているアイズを不憫に思いベートが思わず助け船を出すも敢えなく轟沈
むしろ彼に精神的ダメージが入り思わずその場を立ち去る。
後ろから感じるアイズの助けてオーラに後ろ髪を引っ張られつつその場をあとにした。
「少し良いかベート?」
「あぁ?どうしたんだよリヴェリア。」
遠征の為の荷物を取りに自室に向かっているとリヴェリアから声をかけられる。
「今日遠征に向かうと言われているのに今日あいつから何一つ連絡がないのだがオーリから何かを言われていないか?」
「いや…そういや連絡一つ来てねぇな…どういうこった?あいつなら使い魔の一つくらい送って来るだろうに。」
「やはりベートにも来ていないか…。」
そう言いながら二人で一体どうしたものかと頭を捻っていると二人を呼ぶ声が聞こえてくる。
「リヴェリアさーん!ベートさーん!オーリさん達が来てますよー!」
その言葉にリヴェリアは悪寒が走る。
「あいつ…さてはまた私の弟子に何かしているのかッ!?」
「いやぁ…流石にそれは…って待て!服を引っ張るな!」
その声を聞いて二人急いでその声がする方へ向かうと。
「ハッハッハッハッ!まぁゆるりと待つとしようか。」
「流石に酒呑みながら待つのは人としてどうかと思うけどな。」
「気にするな、ベルよ。ふむ…ルーンよ戯れ程度に一つ我が術を教えてやろう。」
「はいっ!ありがとうございます!」
「ではこれより意中の者を惚れさせる精神支配の術を教える。まず己の最も愛する者の姿、名を」
「止めんかこの阿呆!!」
ベルと最愛の弟子に訳の分からん術を教える馬鹿の姿がそこにはあった。
弟子を自室に戻しホッとため息をついているとオーリが口火をきる。
「ふむ…これで皆が集まったか。…では、これより遠征へと向かおう。何…我等に敗北などあり得んよ。」
「よっしゃ!じゃあ行くとするかッ!」
「そういや…さっきまでダンジョンに行ってたな…出戻りか。」
「手早く済ませたいものだな。」
皆が思い思いの事を言いながら動き始める。
そしてついに彼らは遠征へと向かい始めた。
これから彼等の運命が始まると言っても過言ではない。
新たな世界を新生せし者、己が求道を貫き通す者、己が生まれた意味を知る者、世界に亀裂を生みし者
一人一人が自らの宿命に立ち向かって行くのだ。
これより物語の幕が上がる…しかしここ未だ語られていない者達がいる。
それは世界の理に抗い続けた者達の始まりの狼煙。強大で強力な存在に立ち向かい続けた益荒男達の誰にも語られることのない始まりの物語。
それを彼等の物語が始まる前に知っていて欲しい。決して彼等は全てを諦め責任をただ押し付けた訳ではないのだと。
彼等は最後まで戦い続けた英雄なのだと。
…………。
神界、それは神々が住まいし楽園。空は光輝く黄金の光に照らされ神々は下界に住まう人々を見守っていた。
そんな楽園に聞こえる声が一つ
「あー暇や。皆してぼーっとしとるばっかの暇神ばっか、なんか面白い事はないんか?」
この者の名前はロキ、一昔前にあまりの世界の退屈さに世界を滅ぼそうとしたお茶目な神である。
だが世界を滅ぼすのも結局未遂で終わり彼女は暇で暇で堪らない一日をどうしようかベットの上で考えていた。
「くっそー…こうなったらヘファイストスの所に乗り込んで驚いた顔の一つ見せて貰おうかな!」
そう決めるが否や直ぐに行動を始める。ベットから飛び起き支度を済ませ自宅を
「おっと、すまんすまん相棒を忘れるなんてパートナー失格や。」
そう言いながら赤く光輝く剣を背負い自宅を出た。
「で?私の家に来たのは良いけど私が仕事疲れで眠っていると知らずに私を無理矢理起こしたと……弁明はあるか?この大馬鹿者が」
「…ちゃうねん。出来心やったねん。」
「ほう…。それがお前の最後の言葉か。」
「堪忍してぇやヘファイストス。」
「許せると思うか?」
今彼女は寒いフローリングの床に正座しながら言い訳になっていない事を目の前のいかにも私怒ってますよオーラを出す女性を見る。
「全く…事前に言ってくれればこんなに言わないのだがお前はどうにもお茶目が過ぎる大体お前は何時もそうだ。もうちょっと節度を覚えるべき」
「しゃーないやん。だって此れが私なんやもん。」
「はぁ…全く…お前は。」
私がそう言うとヘファイストスは呆れた顔をしながらこちらを見てくる。
「まぁいい…で?暇だと言ってここに来たのだ。何かしたいことは有るのか?」
そう言われると少し悩む。うーむどうしたもんか、正直驚く顔見たさに来ただけだったからなぁ…。
「うーん…。そうやっ!」
「何か思い付いたか馬鹿?」
「シヴァの大将に暇潰し方法を聞けばええんや!あいつ物知りやし。」
するとヘファイストスは更に呆れた顔をする
「いやシヴァ様はあの方の守護に忙しいからな?」
「しっかしそれ以外の方法なんて思い浮かばんで?」
「…ちょっと待ってろ今フレイヤでも呼んでやるから。」
するとヘファイストスは文を書きそれに力を込めてフレイヤの所へ飛ばす。
「そーいや最近フレイヤにあってなかったわ楽しみやな。」
「会ってなかったのか?」
「だって…あいつ何時も男喰っとるしそれ以外ヤルことないんか?あのアバズレは」
「誰がアバズレよ。悔しければ貴女も男の一人釣ってみる事ね?」
「おおぅっ!ビックリしたわ…。」
「フフッ…中々面白い反応を見せてくれたわ」
暫くそんな馬鹿話をしていると後ろからニュッとフレイヤが現れる。
「久しいなフレイヤ。」
「つい最近会ったでしょ?ヘファイストス」
「まぁ…ただのご挨拶だ」
「そう…でロキが暇だから呼ばれて私は一体何をすれば良いのかしら?何か踊りでも見せたら良いの?」
「えっ別に見せて貰わんでエエけど…。」
「フフッ…冗談よ。冗談」
そう言いながらクスクスと面白そうに笑い始める。
三人になって馬鹿話を更にしているとフレイヤがそういえば…といいながら別の事を話始める。
「貴女達最近生まれた神格持ちの子どもの事を知ってるかしら?」
「いや知らん。ヘファイストスは知っとるか?」
「いや…知らないな。しかし…神格持ちとは珍しいな何年ぶりだ?」
「そうね…あの方がそうだったと聞いているから…かれこれ億は下らないんじゃない?」
ときおり人が住む世界に神格を持った子どもが生まれる。その子どもは強大な力を持っている故に下界に混乱を満たす可能性があるとして神界に連れていかれるのだが。
「その子…親に捨てられてしまったらしいの。」
「はっ…捨てられたんか?」
「それは…。」
「えぇ…神界に引き取りに行ったら既にその子は居なかったらしいの。」
思わず部屋に沈黙が訪れる。人を愛する神々にとって人の…しかも子どもが捨てられるなんて考えるだけで胸が痛む。
「その子…どうなったんや?」
ポツリとロキが言葉を発する。
「確か…その子の担当の神が探して発見したのは良いのだけど…。」
「見つかったのだな…良かった。」
ヘファイストスが胸を下ろす。
「だけど…見つかった時には既に事切れていたらしいの。」
「なんやそれ…」
「なんと言う事だ…それでは余りにその子が不幸ではないか…。親に捨てられて最後は一人きりなんて。」
「こんな事下界では良くあることの一つらしいわ…悲しいわね。」
その日はそれっきりあまり喋らず御開きとなった。皆の心にしこりを残して。
「ある日気がついた時から不快だった」
( ∴)〈俺の願いは極めて細やかな物だと思うがどう思う?