とある宮殿の中を男は歩いていく、カツリカツリと皮で出来た靴で地面を叩くように歩きながら真っ直ぐ、迷いなく歩く
「貴様ッ!そこから動くなッ!!」
「邪魔だ」
剣を持ちこちらを見据えてくる兵士達を一瞬で殴り伏せていき更に進む。まるで目の前の兵士等眼中に無いかのように
そして男は一つの荘厳できらびやかな大扉の前に立つと腰にかけた剣で扉を切り伏せて中に入っていく。
「久しぶりね。孤独の英雄さん」
そうして目の前で玉座のような物に座っている小さな少女を見つけると顔をまるで悪鬼の様に変えていきながら少女の言葉に返事を返す。
「あぁ久しいな、友よお前と会うのはどれ程ぶりだ?10年か?100年か?それとも……もっともっと前だったか?」
「それは別にいいの。年月なんて私達には関係ない…必要なのは私達が今ここで再び相対してしまったこと、違うかしら?」
「違いない」
男と少女は二人して笑い始める。これまでの会話の中に何か面白いことでもあったのだろうか、二人は互いを見据えあい笑い続ける。
「ククッ…だが再び対峙したのだ決着はつけさせてもらうぞ?エルフの女王、パルナファシアン・リアン・アールヴよ」
「抜かしなさい、帝国第一将軍アンザルゥ。あの時の様に上手くいくとでも思ってるのかしら?貴方の引き連れてきた兵隊さんはみーんな生き絶えてまた貴方だけがこの場に残っていると言うのに」
そう彼はこの地を侵略しに来たのだが仲間を全て失い、それでも敵を倒し前進し続けてこの場所まで来たのだ。
例え、肉切れ骨折れようとも彼は前に進む。何故なら彼はそんな男だからだ
「互いの持てるすべての力をぶつけ合った結果なのだ。その結果は俺はそれを甘んじて受けよう、だからこそあの時の言葉をもう一度言わせて貰おうか。」
「お前の前にいる男をあまり舐めないほうがいいぞ?俺は諦めが悪い性分なのでな。窮鼠猫を噛む事くらいはさせて貰う」
そんな男の姿に微笑みながら少女は話始める。まるで愛おしい者を見るかのような眼差しで。
「この世からのお別れの挨拶にしては中々に面白い事を言う男じゃない、貴方。私貴方みたいな男は好きよ」
「諦めが悪くて、どんなときにも立ち上がり戦って勝利を掴むなんてまるで英雄譚に描かれる英雄その者じゃないの。あぁ……それは何て勇ましく、何と雄々しいのかしら。」
「もし貴方ともっともっと前に全てが始まる前に出会っていれば私は貴方に全てを捧げていても可笑しくはなかったわ。」
顔を朱色にしてアンザルゥを見つめる、その瞳の中に写るのは憧憬、欲情、そして
「だからさっさと死になさい。この意思の怪物が、貴方のような存在はいてはならないのよ。世界の毒にしかならない存在はここで消え去りなさい」
底冷えする殺意、先程とは打って変わって正反対の感情がアンザルゥを襲う。最早感情が形を持って遅いかかる感覚、これには歴戦の兵士も平常心を失い発狂し自ら死を選ぶだろう。
これはそういう物なのだ。王がそう言っているのだからお前達は従え、従えぬのなら諸とも死に絶えろ。と彼女の目が命令している
「クハッ…生憎だがそうする訳には行かんのだよ。俺は俺の願いの為にここまで来たのだ後少し…後少しで俺の悲願は達成するのだ。パルナファシアン、貴様をここで打ち倒し我が悲願である楽園計画の成就を成す…故に貴様が死に絶えろ、勝つのはこの俺だ」
「何故なら…何時だって…諦めなければ夢は必ず叶うと信じているから!!」
少女の命令を己が精神力だけではねのけ英雄は眼前の敵に向かって走り始める。その姿を見て少女は怒り狂う。ふざけるな私が言ったのだからさっさと死ね、それが世界にとって最も相応しい事なのだと。
「ほざけ怪物がァッ!さっさと死に絶えろォォッ!!」
少女の回りに幾重にも重なった魔方陣が展開されていく。それは重なりすぎてどれ程あるのかが理解できない、だが一つだけ言える事がある。それは…その一つ一つの魔方陣毎に魔術が込められていると言うこと。
即ち多重詠唱、それも一瞬で数が分からないくらい展開する技量を持っていのだ
元来魔術とは一つを詠唱するのが普通であり、同時に2つ、3つも出来るとなると凄まじい技量の持ち主と言われる。
だが少女は遥かに上回り、最早数を数えることが出来ない位まで展開している。
並みの魔術師が彼女を見ればこう言うだろう
「化け物」と
「クハッ…クハハハハハッ!!どうした!貴様はその程度ではあるまい!?全てを凍らす吹雪も!全てを燃やし尽くす炎も!星をも揺るがす一撃も出さないとは舐められたものだなぁ!?えぇ!パルナファシアン!!」
「お望みなら今すぐにでも見せてあげても良いのだけれどね!!」
魔方陣から次々に表れる攻撃、それは血の杭であったり、七色に光輝く光線であったり、全てを切り刻む鎌鼬であったりと数えることが出来ないほどの量の攻撃が男を襲うも男は笑いながらそれを切り伏せていく。
血の杭を切り伏せ、光線をたたっ切り、鎌鼬を同じく剣を凄まじい速度でふり同じように鎌鼬を作り相殺していく。
なんという技量のだろうか、正しく一騎当千の英雄のような戦いぶりこの姿を見れば、仲間はその背中を見て奮い立ち敵はその姿に恐怖を覚える。
その姿、正しく「英雄」
「此方は初めから全力で行かせて貰うぞ!!」
「此方もそろそろ全力でいかして貰おうかしら?」
男が剣を振りかざしながら世界へ己が願いを届かせるかの様に何かを唱えていく
対する少女はまるで大切な何かを称えるように歌う。
「創生せよ、天に描いた星辰を―――我らは煌く流れ星 」
男が声を発した瞬間先程までいた玉座の間とはうって変わり星々が光輝く宇宙へと姿を変えた。
「巨神が担う覇者の王冠。太古の秩序が暴虐ならば、その圧政を我らは認めず是正しよう」
男の後ろに現れたのは大きな太陽、それは全てを包み込み燃やし尽くす灼熱の光
「勝利の光で天地を照らせ。清浄たる王位と共に、新たな希望が訪れる 百の腕持つ番人よ、汝の鎖を解き放とう。鍛冶司る独眼めよ、我が手に炎を宿すがいい 大地を、宇宙を、混沌を――偉大な雷火で焼き尽くさん」
太陽の光が男の剣に集まっていく、その熱量に剣は溶けていき男の腕を蝕んでいく。男はそれを気にも返さぬ様に目の前の敵を見据えている。
「相変わらず貴方は自分が傷付く事を全く厭わない。貴方が見ているのは目の前にいる敵だけ、自分を見ること何てしやしない。貴方ほど自分をしっかり見つめ直すべき人間はそうはいないわね」
「すまんがこれは性分なのでなこればっかりは変えられん、変えられんよ」
「良いわ、責めて痛みを忘れて安らかに逝かせてあげる」
そういうと少女は歌い始める。その姿はまるで何かに捧げているかの様に
「宙に放浪せし母なる大地よ、今天をも越えて私を護りたまえ、敵に災いを与えたまえ」
すると少女の後ろにから巨大な隕石が姿を現していく、それは一つ一つと数を増やしていき気づけば彼らのいる辺り一面に膨大な量の隕石が現れた。
少女は更に歌を続けていく、今度は己を称える讃美歌を歌う様に
「何も持たざる汝が生まれたその時に私は既に万雷を持って全てを手に入れた、さぁ比類なきこの身を称えるといい」
「汝、苦しみたもうな。今その全てを死は包み込み、汝に永久の安らぎを与えるだろう。燃えよ、凍れ、切り裂け、打ち穿け、その先に永久の救いを汝に与えよう永久の救いのその先で」
すると隕石達は様々な色に変色し辺りを回り始める。鮮やかに光る隕石が描くその軌跡はまるで魔方陣の様で
「全てを始める権利を汝に渡そう!!」
「来いッ友よ!お前の全てを受け止めて見せよう!!」
その瞬間隕石達は唸りを挙げて更に速度を挙げて動き始める。その回転の力足るやまるで全てを飲み込まんとするかの様に、対して男の方はというとその後ろにあった太陽が爆発すると言わんばかりに発光を始め辺り一面に圧倒的な威圧感を出し始める。
「「超新星!!」」
「ガンマレイ、ケラウノス!!」
「アルファ、ビックバン!!」
その瞬間全てが光に包まれた。男が最早爛れて振ることの出来ない腕を無理やり振りかざしそこに集まっていたエネルギーを放ち太陽を爆散させ、少女が呼び出した隕石達が辺り一面の星々を巻き込みながら破裂していく。あまねく全ての星が壊れ、熱によって焼き消されていく。その様は正しく宇宙の終わりと言えるものであった。
「クハッ…ククッ…クハハハハハッ!」
「フフッ…フハハハハハハ!!」
「「勝つのは俺(私)だ!貴様が負けろ!!」」
互いの言葉に世界は更に光を強め始める。
正しくここが世界の終演。
これが本当の仲良死