オラリオの大通りのとある喫茶店、カップル等に人気の店な一人の男が入ってきた。
サングラスの奥から鋭く光る眼光、鍛えられた四肢に似合うスーツを纏っておりまるで何処かの危ない仕事をしてらっしゃる人にしか見えないその姿は店内の人全員の目を釘付けにした。
「いらっしゃいませ!一名様でしょうか?」
「後で連れが来る」
そう店員に一言だけつげサッサと空いているテーブル席に座ってく男の姿を見て店内の空気は下がり始める。今まで愛を語り合っていたカップル達は男が来たことにより話すのを止め静かに飲み物を飲む。そんな空気の中で男が舌打ちをする。
「……チッ」
と水とおしぼりを持っていこうとした定員が男の醸し出すオーラに押されて動きを止めてしまう。
冗談抜きに人でも殺してそうな風格、溢れ出る強者のオーラに店が飲み込まれていく。
「(やっべぇ…腹痛くなってきた……緊張する。死ぬ、まじでこれはキツい…)」
そんな皆の注目の的になっている男の精神状態はそれどころでは無かったのだが
男の名前はベートローガ、念願の恋が叶って初めてのデートで緊張してガッチガチの少年だ。
「(別々に出てここに集合なんて言わなきゃ良かった…何かすげぇ緊張する。早くアイズと一緒に……お腹痛い)」
「(しかも何か周りが俺を見てるしよぉ…こっち見んじゃねえよ)」
皆が今恐れている男が一番心の中でキョドりながらお腹を痛めているという神の視点から見れば中々に面白い状態が暫く続く。
後で来る連れって一体どんな奴だよと周りが震えていると少しタイミングを遅らせて新たな客が店に入ってくる。
「いらっしゃいませ!何名様でしょうか?」
「あの…先にお店に来ている筈なんですが……」
小鳥のような美しい声が静まり返った店内に響く。その声に店の中にいた人達は彼女の方を向く。
そして見た人達はその姿に驚愕した。黄金に輝く長い金髪に驚くほど整った容姿
来ている服はどれもオラリオの流行最先端の服であり、彼女はそれらを綺麗に着こなしている。そしてその名はオラリオで男女問わず人気の第一級冒険者であるかの有名な
「「(剣姫…じゃねーか!)」」
皆が驚きの有名人を見てショートしているとあの男から声があがる。
「こっちだアイズ、さっさと来い」
「うん、今いく。」
男の姿を確認すると剣姫は男の元に駆け寄っていく。その姿を見て周りの人達は心の中で悲鳴をあげる、何であんな変な人と、何か騙されているのではないかと
「ベート、どうしてスーツを何て来てるの?後そのサングラス怖いよ?」
「あぁ…そうか今除けるから安心しろ」
そう言いながらサングラスを除け二人して仲良く話始める姿を見て店内に動揺が走る。あの男がオラリオ第一級の冒険者の一人ベートローガであることにもだが、あの剣姫の恋人がベートローガであることにである。
「「(えっ…えええぇぇぇっ!?相手はあの凶狼ォォ!?)」」
「ごめん遅くなっちゃって……待ってなかった?」
「いんや、俺も今来た所だ。気にするな」
何て言う事でしょう。あの人を殺してそうな男の顔が少女と話してしているだけで柔らかみを得たではありませんか。
そして話している事はリア充御用達のあの聞くだけで歯が浮きそうにあるアレである。そしてそのまま彼等は話始める…
「いやー…しっかし、今日は良い天気だな?」
「うん。訓練には最適な日だよね」
「おう、確かにこんな日の訓練は汗を気持ちよく流せそうだな」
「「…………」」
「「…あっ……あの!」」
そしてそのまま沈黙、あまりにも純情過ぎる彼等にカップル達は先程とは別な意味で心の中で悲鳴をあげる
「「(気まずいぃぃ!もどかしいにもほどがあるわ!もっと頑張れよ男の子ォォ!?)」 」
だが、それも仕方のない話で彼等がカップル達が恋と言う魔物と戦っている中で彼等はダンジョンで魔物と命を賭けて戦ってきた。
勿論恋愛にかまけている余裕なんて無かった。つまりこの二人は恋についてはlevel1の純情カップルという事である。
歴戦の勇者であるカップル達にとったらもどかしいにもほどが有るだろうが彼等にとってはこれが精一杯である。
「あー…何か頼むか?」
「うっ…うん」
「「(ここでその手札を切るつもりか?何も話せなくなる可能性がある、早まるな!」」
だが、そんな勇者達の心の声は届かずささっと注文を頼むベート。そしてまた始まる沈黙、それらは店内全ての人達に苦痛を与える。
チラリと勇者達がアイコンタクトを取り始める。
「(おい!何か話題を提供しろ!何か話すんだよ!そしたらそのネタを拾って話し始めれるから!)」
「(お前がやれ!お前が!)」
「(バッカお前!そんな事をこの空気の中で出来るとか空気詠み人知らずかお前は!)」
「(俺だって無理にきまってんだろうが!お前が言い始めたんだからお前がやれ!)」
そんな視線が店内を行き交う。そしてそんな視線は定員にまで行き交い始め最終的には2人を除けた皆が共有し始めた。
そんな中ベートが話始める。
「あー…何か今日は何時と違うな。何か香水でもつけてんのか?良い香りがする」
「うっ…うん。リヴェリアに今日の事を話したらくれたんだ」
「へぇ…あいつも良い仕事するじゃねえか。お前に合ってるぞ、それ」
「ほっほんと!」
「あぁ…本当だ。良く似合ってる」
「あとね服も皆が見繕ってくれたんだよ。」
「へぇ…どうりで何時もの服装と違うわけだ」
そしてそのまま話を続けていく彼等にエールを送りながら見守り続ける店内の集団、お前らは何しにこの店に来たのだと聞きたくなる状態である。
「「(よーし!そうだその調子だ!そのまま話題を繋げていけ!決して相手にリードしてもらおうなんて考えるな!自分でリードしろ!)」」
「それで今日の事なんだけどな」
「うん。どうするの?」
「取りあえず…二人でダンジョンにでも行かないか?」
「「(いや…可笑しいだろ!!)」」
ベートの言葉に思わず突っ込みを入れたくなる。どうしてこの流れからそうなるのか?頭の中には筋肉しかないのかと問い詰めたくなるような言葉であり剣姫の返事が恐ろしくなっていると
「うん!一緒に行こう!!」
「「(えっ!?)」」
満面の笑みを浮かべながらそう返事をする剣姫に周りは衝撃を受ける。
「いやーやっぱこんな所に来るよりも俺達の場所はあそこしかないよな」
「私は好きだけど…でも私達はやっぱりダンジョンが一番かな?」
思わず勇者達が驚くこの言いよう、そしてそのまま勘定を払い二人して店を出ていく。そうして出ていって暫くの間沈黙が彼等を包み込んだかと思えば彼等の中の心が一つになりある言葉を一斉に叫ぶ
「「はぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」
その日彼等は一つの真理にたどり着いた。冒険者共は頭まで筋肉で出来ているという一つの真理に。
ーーーー
「ベート!後ろッ!」
「ハッ!俺に当てれるとでも思ってんのかこの雑魚共がよォ!」
「ギャァァァッ!」
ダンジョンの中にアイズの声が響くとベートが笑いながら後ろにいた敵を殴り飛ばす。
そしてそのまま目の前に現れた敵を見据えて攻撃を仕掛ける。
殴る、ただ殴る。ベートの戦闘スタイルは超近接形故に敵に突撃を仕掛けなければならない。
「後ろは任せてッ!」
「任せたぜアイズッ!」
そして彼の背中を守るようにアイズが少し離れながら敵を切り裂いていく。
前をベートが叩き後ろをアイズが切り裂く、熟練された冒険者だから出来る阿吽の呼吸と言うべきであろうか。
彼等にとってはこれが日常であり出来て当たり前の範疇である。
「ぶっ飛びな、蜥蜴ヤロウ!」
「グォォォッ!」
現れたドラゴンをベートが殴り抜く。頑丈な鱗に拳が突き刺さりメキメキと音をたてながらドラゴンの肉体を壊しながらそのまま吹き飛ばす。
自分よりも大きいドラゴンを一撃で殴り飛ばす事は普通ならば不可能だろう。だが神から受けた恩恵がそれを可能にしている。
アルナカム…神の力と呼ばれるそれは冒険者になるために神から貰い受けるものであり、冒険者はダンジョンで戦い魔物を倒し己の器を磨き経験値と呼ばれるものでその器を満たして強くなっていく。
level6やlevel5とまできたらそれは生半可な器ではない、神には遠く及ばないが恩恵を受けていない者と比べる事が出来るのならばその差は歴然、例えるならば、コーヒースプーンに入る水の量が恩恵を受けていない者だとするならばlevel5を越えている者は浴槽と言える程大きい。
この器が大きければ大きい程人の理を越えた力を持っているのである。
ベートが片腕でドラゴンを吹き飛ばせれたのならばアイズはどうなのだろうか
「クッ!はぁぁぁッ!」
「グォォォッ!」
アイズの剣彩が閃きドラゴンを切り裂かんとするが、その攻撃は硬い鱗によって弾かれていく。全く傷がつかない訳では無く、少し鱗に傷がついているのは分かるがそれだけである。
片腕でドラゴンを殴り飛ばし絶命させたベートと剣を使い切り裂かんと攻撃をするも弾かれていくアイズ。差は歴然としている。
level6とlevel5の圧倒的な壁と言えるものがそこに現れていた。
「負けられないッ!」
更に攻撃の手を緩めず苛烈に攻め続けるも鱗を傷付けるだけで意味を成さない。
「退けアイズ!」
その声を聞きながら瞬時にその場を離れる、するとベートの拳がドラゴンの鱗を砕いたかと思うとそのままドラゴンを壁まで吹き飛ばし叩きつける。
完全な実力差がそこにはあった。苦労して鱗に傷しかつけれられない己と平然と殴り飛ばすだけで終わるベート。
level5とlevel6、たった一つしかlevelは変わらないのにその一つの壁が酷く大きい
「大丈夫かアイズ?俺だってあの蜥蜴にはlevel5の時には手を焼いたんだそう気にすんな」
「うん、大丈夫だから。ね?」
「そうか?んじゃさっさと次に行くとするか!」
そう言いながら彼等はまた先へ先へと進み始める。それが彼等のあるべき姿なのだから
ーーーー
辺り一面桃色の煙に包まれた世界の中で一人の男の声がする。その声はとても大きく聞こえるようで小さくも聞こえ、高いようで低くも聞こえる。
「愛い…愛い。なんと愛いのだおまえたちは……そうだ、おまえたちは救われて良いのだ。あのような苦界の中で生きなくても良いのだ。」
「そこがおまえたちの桃源郷なのだから、好きに夢を見よ。おまえたちの為ならば俺はいくらでも用立ててやる」
理解できないのだがそう言うしかないような理解の出来ない声、そしてその声を聞いていると何故だか全てを委ねて眠りにつきたくなる、そんな声なのだ。
「忘れるな、俺はおまえたちの幸せを常に願っている」
煙は更に濃くなっていき男の姿すら見えなくしていく。先程まで見えていたまるで薬物中毒者のような呆けた姿を。
「愛い、愛い」
あー万仙陣に嵌まりたいんじゃー^