迷宮の街オラリオ。そこには人が溢れ冒険者達が己の未来に夢を見て日々を過ごす云わば冒険者の楽園。
第一級の冒険者になって酒や女を自由にしたい刹那的な快楽を望んでいる者や己の強さをこの街で証明したい求道的な者様々な人がこの街にはいる。そんな街だからこそこの街は昼も夜も変わらず何処が動いている。人が多ければ多いほど街という生物は動きが活発化する。
「よいよ可笑しな事になってきたでほんま」
「ダイスに言われるとはな…お前が言うな、と取りあえず言っておこうか」
物音せぬ場所を三人の男達が歩いていく。彼等はオラリオで最強と謳われるlevel7である猛者、盲打ち、勇者と言えば知らぬものなど居ないそんな存在だ。
「しかし…これは可笑しい。このオラリオがこんな静かなんて何が起こってるんだ?」
「ハッ!んなもんお前も見とるやろうが、ファミリアの奴等が等しく化けもん見たいになっていく様をよ」
勇者の言葉を盲打ちは切って捨てる。お前は何を言ってるんだと、お前もアレを見ただろと。
「そう…冒険者で化け物にならなかったのは今の所我等のみ。他は神々しか残っておらぬ」
「そういうこった。困ったのう…神様からこれをどうにかしろと言われたがこれはどうしようもないわ」
「君がそう言うなんて事は本当に急を要するみたいだ」
オラリオ一の空間使いの諦めの入ったため息に勇者が目を丸くする。この男は盲打ちだがそれを差し引いても異常なまでに空間制御の才能を有している。その男が諦める。それはこの事態が己の専門分野であるが自分ではどうすることも出来ないという事である。
「ええか?この街…オラリオは今ある場所を中心点として対象者を怪物にしとる、この霧はその効果範囲の場所のみに発生すると言ったところかの」
そう言いながらその霧を掴むように手を動かしながら話を続ける。その言葉に猛者が待ったをかける
「ならばその中心点を叩けば良い、案内しろダイス」
そう中心点を叩くそれが早い。今この場所にはオラリオ最高戦力が集まっている。今彼等の前に勝てる存在などそうは居ない。世界でも指折りの存在である彼等ならば何とか出来るそう考えるのが当たり前だろう。
「だからそれが出来んと言っとるやろうが、確かに中心点は何処かにある。それが俺でも分からん。さっぱり分からん例えるならば中心点が霞のように広がっとる。いざ突こうにもゆらりと消える、まるで蜃気楼みたいにの」
そう彼は今まで飄々としながらもずっと中心点を探っていたのだ。霞のように広がり突くに突けない中心点を探す。それは例えるならば砂漠の中でお目当ての一粒の砂を掴みあげるに等しい作業、例えダイスであろうとも容易に出来ることではない。ましてや神にも出来るかは分からないその領域なのだ
「それに…ほれまーたおいでなすった」
ダイスが話を止めて指を向ける方向をみるとそこには黒い影のような存在が霧の中から生まれ始めている。
それをみた瞬間に彼等は臨戦態勢をとると猛者と勇者が切りかかっていく
オラリオ一の強者達の一撃になすすべもなく切り裂かれていく黒い影のような存在、だがいくら切り裂いてもワラワラと霧の中から増えていく。
「ちっ!何度も何度も鬱陶しい奴等だ」
「経験値稼ぎにもならない…ねっ!」
だが切っても切っても彼等はその数を減らす事はない。それどころか数を更に増やしていく。ドワーフのような影にミノタウロウスのような影、冒険者や魔物様々な影が彼等に牙を向く。劣勢ではないがまるでスライムを永遠とプチプチと叩くような状況、確かに勇者が言うように経験値稼ぎにもならないだろう。
そんな中盲打ちは何時もと変わらずニヤリと笑いながら己の術を練り上げていく。
「しょうがないのう。そいじゃあおまんらもうちぃっとだけ耐えや」
その言葉に二人は頷きを返し影を切り裂いていく、その刹那盲打ちの術が発動する。
「三国相伝陰陽輨轄簠簋内伝」
「軍法持用・金烏玉兎釈迦ノ掌」
その瞬間辺りに結界が貼られ影の増大が無くなりすさまじい速度で二人に狩られていく。勇者が敵を切り裂いていくいき猛者が圧倒的な力を持って辺りの敵を纏めて消し飛ばしていく。
そうして辺り全ての敵が刈り取られた後
盲打ちの諦めに似た声が二人の鼓膜を叩く
「こりゃあかん壊れるわ」
その言葉と同時に何かが割れた音がして霧が彼らの周りを包み始める。先程と同じ様な存在が一体、また一体と増え始めていく
「やったね!ボーナスチャンスだ!」
「気をしっかり持て、またやり直せば良いだけだ」
「いやぁすまんすまん!無理やったわ」
白目を向き始める勇者に肩を叩きながら慰める猛者、それを見て笑いながら言葉を発す盲打ち。三人が影を殲滅しかかるも影の増殖量には一歩及ばず影はどんどんと増え続ける。そんな膠着状態が続く中突如盲打ちが座り込む、まるでやってられんと言ったばかりに
「やめじゃやめじゃ一抜けた。やってられんわこんなん」
「「真面目にやれ!」」
盲打ちが戦闘を止めた分のフォローを二人はしなくてはならなくなり更に状況は悪化していく。そんな中盲打ちが心底疲れたように声をあげる。
「お前らもやめちまえこりゃ殴っても意味ないぞ?」
「私達が戦わなければ皆を救うこと等出来やしないのだ!」
盲打ちの言葉を蹴り飛ばし勇者は更に苛烈になってきた攻撃を剣で弾きながら影を斬り倒していく。そう…勇者の周りの敵が苛烈に攻撃を始めているのだ。勇者の周りだけ霧が深くなっていき盲打ちの周りには影が一匹たりともいない、それを第三者の目で見れた猛者は武器を卸し声を張り上げる。
「成る程…おい!俺はもう戦う気持ちはない!やる気もない!分かったなら帰るが良い!」
「君まで何を言っているんだ!私達がやらなければ誰が戦うと……」
刹那、勇者を完全に霧が包み込むと勇者の声が何一つ聞こえなくなりその場に盲打ちと猛者だけが残る。
「だーから言ったやろうが大人しく亀になっちょれば勝手に消える」
「つまりは…私達が戦おうとすればするほどあいつらは数を増やしたと言う事か?」
その言葉に盲打ちは一笑いすると事の真相を伝える。余りにもやってられない馬鹿げたオチを
「ようやっと分かった、あいつらはな起こされたくないんよ。気持ちがえい夢ば見とるから起こしにくんな、お前らは起きてるなら勝手に起きてろ。こっちに来んなと言った具合にな」
「良く分からんが…つまり此方がやる気を失えばあっちも消えていくと言うことか?」
「そういうこった。つまりじゃ俺等はこれを止めたい、だがあいつらは止めて欲しくない。ここで協力が出来てしもうた」
「協力っちゅうのは複数の者が同時に唱える際に必要なもんでな?互いが互いの条件を満たした時大魔術が使えるんよ」
「これは要するに俺等がこれを何とかしたいと思えば思うほど敵がワンサカと出てくる、そんであんのアホみたいに霧に飲み込まれるっちゅーこった」
「ではあやつは一体どうなったのだ?」
その言葉に死んではいないと前提を起きながら続きを話始める。この魔術の余りにも卑劣な所を
「斬り倒し、斬り倒しそのままよこれを何とかするかあのアホが気づくかせんとあれよあれよと霧の中…俺でもどうしようもない所に落ちていくだけ、それだけよ」
「上手い事出来とるわほんま、名付けるなら…霞蟻地獄と言った所か?」
蟻地獄の中に落ちてしまった蟻のようにもがきもがくも最終的にはそのまま霞のように離散するか、これに気付きそのまま落ちていく事で危険を回避するか
本来下にいる蟻地獄の主はおらず下に落ちればそのまま脱出。なんとも厭らしい魔術だろうか。
「全く…これからどうする?」
「決まっとる。ちと休憩…頭使い過ぎて疲れたわほんま、ちと休ませてくれぃ」
そのまま地面に寝っころがり熟睡し始める盲打ちを呆れた目で見ながら溜息をついてドッカリと地面に座り込む。
「まぁ…何とかなるだろう。この阿呆はどうしようもない阿呆だが最終的にはコイツの良い結果になった。こいつがどう思ってるか知らないが…まぁ何とかなるさ」
それで良いのか猛者と何処かで神々が嘆く声が聞こえるがそれはそれ。彼も彼でこの男との付き合い方を分かっているのだから。
「何をしようが結果ピタリと嵌まるか…其処だけは信用しているぞ親友よ」
オリジナル魔術 霞蟻地獄
内容 気付かないとそのままスヤァ…orバラバラ