……暫し待ってくれ、頼む。
「全くベル君は…昨日もあんなに怒ったのに懲りてないんだから…。」
自分以外誰も居なくなった部屋で一人嘆息する。
「物事には順序が有るってあれだけ言ってるのに……全く。」
始めてあった時から変わらず、僕の事を傷つけないよう嘘をつくあの子。
「ベル君は…神様に嘘をつけないって事を分かってるのかな?」
きっと…分かってはいるんだろうな…あの子の事だから、男ならばどんな時でも格好つけるって思っているんだろうし。
そんな君にだからこそ僕はあの時あの子に惹かれたんだ。まるでかけたピースが揃うように。
「まぁ…そんなベル君だから僕は惹かれていったのかもね。」
ふと思い出す。僕とベル君の初めて出会った時を。
昔の僕はヘファイストスと一緒に生活をしていた。何時からか分からないけど、とにかく一緒に生活していた。
何も知らなかった僕にヘファイストスは色んな事を教えてくれた。僕にとってヘファイストスは今も昔も大切な家族だ。
何時だったか忘れたけど、一緒に食事を取っているとヘファイストスがこんな事を言い出したのが始まりだった。
「ねぇヘスティア、貴方も一緒に下界に下りて見ない?」
「どうしたの藪から棒に?まぁいいけど。」
ある日僕にヘファイストスは僕にそんな事を言ってきた。
その時の僕は下界の事なんて何一つ知らなかったからヘファイストスが何を言ってるのか理解できず首を傾げる事しか出来なくて、だから少し何処かに行くのだろうくらいに思って返事をした。
「よし!じゃあ決まりね!!」
「うっ…うん。ところで下界って……。」
「じゃあ私降りる準備してくるから、貴女も早く荷物を早く纏めなさいね?」
そう言うとヘファイストスは浮き足だって自分の部屋に戻っていく。
それを見つめた後、僕も言われた通り荷物を纏める為に準備をするために部屋に戻った。
「何を持っていけばいいんだろ?」
部屋に戻って荷物を纏めながら悩んでいるとヘファイストスが慌てた様に部屋に入ってくる。
「ヘスティアッ!!!急ぐよ!!」
そう言うとヘファイストスは僕の手を引きながら部屋を飛び出す。
「えっ。まだ準備が」
「大丈夫!向こうで買い揃えれば良い!!」
「どっ…どういうこと?」
「話は後ッ!!!」
ヘファイストスは焦った声で僕にそう返事をする。
僕は頭が混乱して何をどうしたらいいのか分からず、ただヘファイストスの手を強く握っていた。
暫く二人で走っていると其処には沢山の神々が集まっており喧騒に溢れていた。
「まだなの!!まだ開かないの!?」
「ここももう駄目だ!奴の理がもうここまで来ている!!」
「おぉ…我が主よ…今貴方の元に参ります」
「諦めるなッ!!!諦めてしまえば私達の子ども達はどうなるかわかっているだろう!!」
「ねっねぇヘファイストス。これは」
「…ここは駄目ッ!!!行くわよ!!」
そう言いながらまた走り出す。そうして暫く走ると、頭の中から声が聞こえてくる。
「(ある日、気がついた時から不快だった。)」
思わず足を止める。頭の中で更に声が響く。
「(誰かが俺を触っている)」
「不快?何が?誰が触っているの?」
「ヘスティアッ!!しっかりしなさい!!」
ヘファイストスが僕の体を揺する。だけど
更に頭の中で声は響く。立つことも覚束無くなる。なんだか自分が無くなる様に感じ体が震える。
「怖い…助けて。」
「………ッ!!まさかもうここまで来ているのか!!■■ッ!!」
そう言うとヘファイストスは僕の体を背負い走り出す。
「怖い…怖いよ…。ヘファイストス。」
「…大丈夫。何があっても私が守るから……だから少し寝ててなさい。起きた時には下界についてるから。」
ヘファイストスの言葉になんだか安心して緊張が切れ眠りにつく。
起きた時にはこんな訳の分からない事が終わってる事を願って。
「良かった…。寝てるだけね。」
走りながら確認をとる。さっきまで震えていた体は眠ったことにより震えてはいない。
「貴女は私達の最後の希望。決して無くならせてなんてさせない。」
貴女はあのお方が残していった唯一の希望。
決して失ってたまるものか。
走りながら見える景色が変化していく。空の色が黄金の光から漆黒の闇へと変化していく。
「空の色が……変わっていく。」
あの方の統治していた名残が消えていく。光輝く黄金の空は全てを否定し消していく漆黒の闇へ。
許さない……ッ!!!決してさせるものか、■■いくら貴様が強く強大であろうと我らは必ず貴様を倒す。…必ず貴様を玉座から引き摺り降ろしてくれる。
「そしてこの子を必ずしや次の玉座へ…ッ!!!」
背中に感じる暖かさを感じながら誓う。必ず■■を倒しあの時の様な平和な世界を。
「……ストス…こっちや、こっちにこい!!」
下界へ向かう道へ走っていると前から声が聞こえてくる。
「……ロキかッ!!」
「せやからはよこいッ!!!下界への道は開けとる……やから振り向かず走ってこい!!」
前に見えてくる旧友の姿に安堵を覚え疲れはてた体に鞭を振るい更に速度を上げる。
「ロキッ!!」
「任せやッ!!!」
そしてロキの元にたどりついた瞬間。先程まで見ていた景色が変わり何処かの部屋に変化した。
「ロキ…ありがとう、助かった…ここは?」
「どういたしまして…はー…あぶなかったわほんまって…ここか?ここは私のファミリアの本拠地や。」
「そうか…このソファー借りるぞ。」
そう断りを入れて近くにあったソファーにヘスティアを寝かす。
その寝顔から安らかに眠っているのが分かり一安心する。
「良かった…。」
「ほーんあの時のドチビか…大きくなったのう……大きすぎちゃうか?いや可笑しいやろこれは……。」
横からロキがヘスティアを覗き見てそんな事を言う。
「あぁ…大きくなったよ。この子は…本当に大きくなった。」
そう言いながらヘスティアの頭を撫でる。…本当に良かった。この子が無事で。
「……本当にこのドチビが好きなんやな。ヘファイストス。」
「あぁ…私の宝物だよ。」
「まるで子どもを見守るお母さんやな。」
「つまり今のお前と一緒だな。子沢山なお母さん?」
「「…プッ」」
この会話がなんだか可笑しく感じて
「「ハーハッハッハッハッハッ!!」」
二人で暫く笑いあった。
笑いあって暫く談笑しているとロキがこんな事を聞いてくる。
「そういやお前さんファミリアはどないするんや?」
「ん?私か?私になら既にファミリアは」
「違う、そこのドチビのや」
私の言葉に被せながらロキは返答をする。
「ええか?神界では神が一緒に暮らしとっても問題はないが下界は違う。下界では神々は対等でありどちらかが誰かの下につくなんてご法度なんや。」
「えぇか?いくらお前さんがドチビが大切であろうともお前さんには既にファミリアの子どもがおるんやろ?お前さんはファミリアの子どもを最優先に」
「……そんな事があってたまるかッ!!断固拒否するッ!!!」
「…いや拒否も糞もあるかッ!!これがルールやッ!!!」
「それくらい何とかしろ!!」
「喧しいアホんだらッ!!ちったぁ子離れしろッ!!!」
「む・り・だッ!!!」
そうやって暫く言い争いをしているとロキが疲れた顔で返事をする。
「……はぁ分かった。じゃあ条件付きで言わんとったる。」
「本当か!?」
「あぁ……ドチビが眷属を一人でも集めるまでや。…それでええやろ?」
「でっでも…もしもそいつが塵芥以下の畜生野郎だったら……。」
「あーもう!!そんな事ならお前さんが連れてきた奴を判断すりゃええやろうがッ!!!」
思わず天啓が走る。そうか…私が認めなければ良いのか。
「分かった…それでいい。」
「おぉ…やーっと分かってくれたか…。」
話が終わり席を立つ。
「取り合えずは私のファミリアに行く。この恩は必ず返す。」
「期待せんで待っとるわ。」
その言葉に苦笑しながらヘスティアを背負い部屋を出る。
「……絶対に認めんな…ありゃ。」
正門から出ていく親バカを自室の窓から見下ろしながら苦笑する。
「さてはて…どうなる事やら。」
神界は奴によって滅んだ。今はあいつらが押さえているがそれも時間の問題。
「厄介な奴やでほんま。」
まぁええ…最後に笑うんわ此方側やで。神界のトリックスター、舐めんなよ■■。
……まぁ取り合えず、
「仕事疲れには酒やな!高いの出そ!!」
これくらいはええやろ?
過労死筆頭候補 ロキ
親バカ筆頭候補 ヘファイストス
……うん…言いたい事は分かる。だけど…すまない、許してくれ。(土下座)