やっーと出会ったよ…ベル君。…正直この話は早足で進みましたね。
ヘファイストス・ファミリア。世界最高峰の鍛冶ファミリアであり、彼等らの工房は日夜休むことなく稼働し続けている。
そんな様々な音が鳴り響く工房の中に異質な二人が言い争いをしている。
「だーかーらー!!僕はチビッ子じゃなくてヘスティアって大切な名前があるんだ!!」
体をブンブンと上下に揺すり、精一杯怒りの感情を表し自らのトレードマークであるツインテールを振り回す神様の姿と
「おお!!そうかそうか!!すまんなチビッ子!!」
「うぅ……ヘファイストスー!!」
「カッカッカッカッ!面白い奴やのぅ!!なぁ神様?このチビッ子、気に入ったわ!!」
腕にトランプの絵札の刺青を入れ飄々とした胡散臭い笑みを張り付けた男の姿があった。
「何やってるのよ…貴方達。」
いやどうしてこうなった。抱きついてくるヘスティアの頭を撫でながら場違いな事を考える。
「(やっぱり…この馬鹿に任せるべきではなかったわね。)」
ちらりと二人を見比べると、ヘスティアは私にしがみつきながら目の前の男を威嚇して、男の方は何時も通りの笑みを浮かべ私達を見る。
「(家のファミリア最高戦力であり、オラリオに3人しかいないlevel7の一人だからこの子に何かあった時に対処が出来ると踏んでたんだけど……。)」
やっぱり無理があったか?
部屋で暫く話した私達は部屋を出て皆が集まる工房にヘスティアを案内しようと廊下を進んでいた。
「ねっ…ねぇ!?じゃあここが下界って所なの?」
「ええ、ここは私のファミリアの本拠地、ヘファイストス・ファミリア。私の子ども達がここで生活をしているわ。」
「本拠地って事は…じゃあここ以外にも色んな場所があるの!?」
「えぇ勿論。後で案内してあげるわ。」
「本当!?」
喜びを全身で現すヘスティアの姿を見て思わず微笑む。まるで初めて降りてきた私を見ているみたいだ。
「勿論。…だけどその前に皆に貴女の自己紹介をしなくちゃね。」
「自己紹介?」
そう言うとヘスティアは不思議そうに頭を傾げる。
「そ、自己紹介。何時までここにいるのか分からないけど其までは貴女もここで暮らす一人なんだから。」
「いつか一緒に入れなくなるの…?」
「(やだ…分かってたけど家の子可愛い。)」
表情を曇らせ服の裾を掴む姿を見てそんな事を考える。
歩む足をとめヘスティアと向き合う。
「貴女がファミリアを作って自分の子どもを見つけるまではここに居てもらうわ。」
「どういう事?」
「そうねぇ……つまり貴女がずっと一緒に居ても良いって思える人を見つけるまでかしらね?」
「ヘファイストスじゃ駄目なの?」
その言葉に思わず苦笑する。…私で良ければ何時までも一緒に居てあげたいんだけど。
「それじゃあ駄目なの…私は神様、自分を信仰する人達を導く義務がある。勿論…貴女にも。昔教えたでしょう?」
「うん…わかってる。…神は常に自らを信じる人の導べとなり導く義務がある。」
「そういう事。だから…これからはずっと一緒にって訳にはいかない。」
「だから貴女に相応しい眷属が出来るまでは貴女と一緒に……って…大丈夫よ。」
泣きそうな顔になっている顔に手を添えながら言葉を続ける。
「一緒に居れなくなったからって離れ離れになった訳じゃないわ。分かってるでしょ?」
「寂しくなったら会いに来たらいいわ。それくらいなら問題は無い筈よ。」
「うん…大丈夫。」
そう言いながらヘスティアはブローチを固く握りしめる。
「……よっし、じゃあまずは家の子ども達を貴女に紹介するわ!!行きましょう。大丈夫、貴女なら上手くやれるわ。」
「うん!!」
思った通り、あの子は皆に紹介すると直ぐに馴染んだ。彼女の裏表無い純粋な性格が良かったんでしょうね。毎日の様にファミリアの皆の仕事を見学したり手伝ったり、外に遊びに行ったりと毎日が楽しそうだったわ。
暫くそんな生活を続けていると私宛にフレイヤから久しぶりに会おうという誘いの手紙が届く。
「困ったわね……。」
手紙を見ながら少しボヤく、その日はヘスティアと町を見に行く約束をしているのだけど…。
しかし久しぶりに会いたいのもある。
「うーむ…。何処かに暇な奴でヘスティアの安全を確保出来る奴は………」
悩んでいると部屋の扉が開く。
「よぉ神様!!久しぶりやのぉそんな怖い顔ばしてどうしたい?なんかあったんか?」
いた。暇であの子の安全を確保出来る存在。
そういう訳であの子の事を馬鹿に頼むと意気揚々と頼まれてくれた。
「というわけなんだが頼まれてくれるか?」
「おう!このダイス様に任せとけい。」
で任せた結果があの体たらくである。
「ヘスティア?さっきもいったけど急用が入ったから一緒に行けないの。分かってくれる?」
「うん…でも流石にアレは」
ヘスティアが目の前でヘラヘラ笑っている男を指差す。
「まぁええわ…取り合えずこのダイス様が町を案内しちゃる。感謝せいチビッ子。」
「はっ離して!!」
「カッカッカッカッ!!」
そう言いながらダイスはヘスティアを私からひっぺがすとそのまま町へ繰り出して行った
遠くから聞こえてくる二人の声を聞きながら
「まぁ…なんとかなるでしょ。うん」
そう結論づけてフレイヤと会う為に身支度を始めた。
「おっ下ろして!!」
「カーカッカッカッカッ!!まぁ待てや。」
なんでこの男は僕の話を聞いてくれないんだ!!
ジタバタと体を揺らしても直ぐに支えられるし、大声を出しても回りの皆が見向きもしない。
この男は飄々と何処かに歩いているだけ…
「ねぇ…?」
「どうした?便所か?」
「違う。…今何処に向かってるの?」
「何処って町案内じゃが?」
「えっ?」
この男は何も言わず只担ぎながら歩くのを案内と言うのか。
思わず顔を睨むも。
「どうした?そんな顔してなんやええことでもあったんか?」
全く取り合ってくれない。
諦めて暫くそのままにされていると急に足が地面に着く。
「良っしじゃあなチビッ子。また後で迎えに来ちゃるからな。其までは好きにしろや。」
そう言いながら何処に歩き去っていく姿を見ながら悪態を付く。
「ここどこか分かんないよ!バカー!!」
訳の分からない場所で放り捨てられてここがどこなのかも分からず
「もう……最悪だよ。」
取り合えず何処かに向かおうと歩き始めた時
「どうしたんだ嬢ちゃん?大声なんか出してなんか困ってんのか?」
あの部屋で見た赤く、先が細い大剣を背負った、白髪の少年が此方を見ていた。
そしてその姿に僕はどうしても親近感を拭えなかった。
まるで無くなってた体の一部が元に戻った様に。
眼下にオラリオが見渡せる場所。フレイヤ・ファミリア、ここで今とある神々が相対している。
「久しぶりね、ヘファイストス。元気だったかしら?」
「久しぶり、フレイヤ。そうね…ここに来るくらいには元気はあるわ。」
挨拶もそこそこにヘファイストスが話題を切り出す。
「それで?今日はなんの用なの?」
「…見つけたわ。あの方の残していったもう一人を」
一瞬空気が止まった様に感じる。体が歓喜に震える。ついに…見つかったのか。
「ほ…本当か?で、何処にいるんだ?」
思わず声がうわずる。やっと…やっと見つかったのか。
フレイヤが眼下を見て少し驚いた顔をすると申し訳ないような顔をして此方を見る。
「ゴメンなさい。今あの子と既に接触したみたい。」
「はっ?」
「あっあと、彼にこれから試練を与えるつもりで魔物を準備してたんだけど……。」
「……頼む、少しだけ待ってくれ。」
正直次の言葉が予想出来る。だからその申し訳なさそうな顔を止めてくれ涙が出そうだ。
「見たところ盲打ちが勝手に魔物を解き放って…今あの子達の所に……。」
「ダイスゥッ!!やってくれたな貴様ァッ!!」
思わず叫び声をあげる。やってくれたなあの馬鹿ッ!!
「おっ押さえなさいオッタル!!、ヘファイストス。逆に考えて!これはチャンスよ!!」
「了解しました。……すみませんが少し拘束させて頂きます。お許しを」
放してくれッ!!あの子を助けた後あの馬鹿を叱らなきゃ気がすまない!!
「カッカッカッカッ!!よいよどうなる事やら分からんのぅ!!」
檻から放した魔物が一直線に向かって行く姿を見ながら笑いに耽る。
「はなから考えて動くなんぞしょうに合わん、これがダイス様のやり方よ。」
神様が何か言ってた気もせんこともないが事、俺の知ったことちゃうわ。
「考えんで行動しても、ピタリと嵌まる、これが一流の博打打ちよぉ!!」
男は後先の事など考えない。男にとって考えず動いた全ての行動は後で全て己の為になった。
故にこれから何が起ころうとも全ては己の為になる、この男はそう考える。
天狗道に見えてそうではない、この男は自愛もなく己すらも見ていない。条件反射で動くだけの獣と同じだ。
悪質な事にこの男が行った全ての行動はこの男にとって良い方向に行く。
故に盲打ちは何者にも神にすら囚われない。
「例え神じゃ仏じゃろうが、このダイス様の裏を取る事だけは絶対に出来ん!!」
故に盲打ち。この男は例え神ですらその手の中に収まる器ではない。
「カーカッカッカッカッカッ!!んじゃあ仕上げと参ろうかぁ!!」
パンッ手を大きく叩く。
「 三国相伝陰陽輨轄簠簋内伝」
「軍法持用・金運玉兎釈迦ノ掌」
その言葉が言い終わると同時に周囲一帯の空気の流れが変わる、今周囲一帯全ては彼の支配化に置かれた。
これこそがオラリオに3人しか居ないlevel7の一人ダイスが使う術であり彼の奥義、今この空間は彼によって支配されている。
今この空間は完全に外界と遮断されており例え神ですらこの空間に侵入することは出来ない。
「お膳立ては揃ったで…坊主、ちったぁ男見せてみい。」
試練として用意されていたミノタウロスが彼らを襲う。
全ては盲打ちの掌の中。
因みにベル君メッチャピンチ。
ファッキュー盲打ち。