……しかし戦闘シーンを練るのは楽しいんだけど難しい。
「来いよ!ツンデレ狼!」
ベルの放った言葉に反射的に対応したのか、ベートの体がベルに向かって行く。
「黙りやがれぇ!」
狼と人の獣人である彼は他の種族と比べて圧倒的な速さを持つ。
狼とは自然界で獲物を狩る存在つまりは強者、彼にも狼としての血が流れている以上それは絶対に変わらない。
普通の人には見えない程の速度でベルに近づき拳を降り下ろす。
その戦い方はまるで一匹で敵を狩る狼と言えば良いだろうか。
正しく凶狼、彼の二つ名に相応しいと言えるだろう。だがベルも負けてはいない、
「甘いんだよ!」
彼の拳を捻るようにして避けその遠心力と合わせて裏拳を放つ。
高速での戦いの中で放たれた遠心力を合わせての裏拳。その速度は辺り一面に突風を巻き起こす。
これにモロに当たれば例え前線で戦う猛者であるベートですら只ではすまない。
グングンとベルの拳がベートに向かって走る。
「てめぇがなぁ!」
しかし…その裏拳をベートはひらりと躱しそのまま反撃に移る。
其を避け攻撃してくるベルを見ながらダンダンとクリアになっていく頭で思考する。
「(てめぇの動き何ぞ分かりきってるんだよエモノを持たないてめえ何ぞ怖くねぇ!!)」
主に拳を使い戦うベートだからこそ出来る芸当。瞬間的に無手での戦い方を知り尽くす彼だからこそベルの次の手をその次の手を読み戦う。その証拠に。
「ちっ…ちょこまかとっ!」
「はっ!兎がなんかほざいてらぁ!!」
ベルを翻弄し攻撃を仕掛ける。
更に攻撃を放つベルを嘲笑うかの様に戦う。
「…やっぱやるじゃねえか!」
「てめえが雑魚なんだよっ!」
そう言い切りベルの腹を蹴り飛ばす。
「…とっとと剣を抜け…てめぇの本領はそっちだろうが…何時までも俺の土俵でいれると思うな。」
だから…お前も本気を出せ。出し惜しみ何ぞしてんじゃねぇぞ。
蹴り飛ばした方向に向けてそう吐き捨てる。
彼は狼と人の獣人。故に狼の速さと人の思考する力を合わせもった強者。
その姿正しく飢えた狼、強き者との戦いを望み弱き者を認めぬと言わんばかりの眼光。
強者の誇りを誰よりも信仰している凶狼の姿がそこにはあった。
「ほぉ…なかなかに。」
その姿を見ていたオーリは構えを解きながら其を見て熟考する。
ベート…確かにlevel6として相応しいと言える戦い方をする…があやつは何を考えている?
今其奴に剣を抜かせればお主の優位は消え苦戦を強いられる事は間違いない。
攻めるならば今だろう?
「何故だ…?」
確かにあの少年は先程までベートに良いようにされていた。
だが…決してあの少年が未熟という訳ではない。間違いなくあの少年の本領は彼の持つ変形刀を使ってこそ。
故に今までのはどちらかと言うと少年がベートの土俵に立っていたからあの様な体たらくを見せたのだ。故に初めから己が獲物を使ってれば良かったのに。
一人思考に埋没する。何の為に?どうして?
この者達の考える事が理解できぬ。
他者との戦いに喜び等感じず、他者との卓越した才能の持ち主故に全てが己の掌の中で跳ね回る猿程度にしか感じなかったオーリには理解できない。他者と正々堂々対等に戦いたいという男の欲求が。
「まぁ…良い。」
今はそのような事に頭を働かす時ではない。
「さぁ……見せてくれ。貴様の実力という物を。…この程度ではあるまい?ベル・クラネルよ」
見事ベートを己が実力で破ってみせよ。その姿は良き見世物になる。
「…っぱし無理かぁ……。」
蹴り飛ばされた先で一人苦笑する。やっぱり相手が素手でやり合うならこっちもって訳にはいかねぇな……。
「ベートとやり合うんなら…いっちょ本気でいかねぇとな!」
背中に掛けていた相棒を引き抜きながらベートの方に向かって踏み出す。
「すまねえな!ベート!お陰で目覚めたわ!礼にちょっと一発入れてやるよ!」
ベルが踏み込んだ場所が少し崩れると、先程とは打って変わって積極的な攻めに入る。
「はっ兎がペラペラとっ!大人しく狼に狩られやがれっ!!」
ベートもベルに向かって駆け出す。
両者の距離が目の前に近づいた瞬間、ベルが自らの獲物をベートに向かって降り下ろす。
其をベートは持ち前の身体能力を生かし避けベルに一撃を放つ。
「オラァ!」
「食らうかっ!」
其をベルが自らの獲物で防ぐ。…両者の拮抗、音をあげたのはベルの方だ。
「げっ!?」
剣がその拳に押しきられて拳がベルの目の前にまで近づく。
「…決まった。」
「…よく見よ…リヴェリア。まだ終わってなどいない。これからが本番だ。」
拳がベルの体にグングンと近づいていく、そしてその拳が当たる瞬間
「なっ……糞がっ!」
ベートの体にを解したベルの剣が鞭の様になり体を拘束した。
ベルが持ち手の所だけになった剣を見せながら苦笑する。持ち手から二本の糸が分解された二十の刃を通して繋がっており、まるで蛇の様にベートの体に絡みついている。
「おいおいベート。…前にお前と戦った時に見せただろうが。…まぁよく引っ掛かってくれたよ。……ありがとさんっ!!」
拘束したベートの体を引き寄せ目の前で解き放ちながらお返しにベートの腹に蹴りを入れる。
「ガッ……!!」
先程ベルが飛ばされた反対方向にベートが飛ばされる。
飛ばされる刹那ベルに心のなかで称賛を送る。
「(やるじゃねえか…ベル!…やっぱりてめえと戦っていると心が滾りやがる!!)」
空中で体制を整え地面に着いた瞬間全力でベルに向かって疾走する。
「いくぜぇっ!!」
「応!かかってきな!!」
其を向かい打つかのようにベルも先程の様に剣を鞭の様にしならせて絶対領域を作り出す
ベートの拳が鞭をいなし、はじき、そして拳でいなす事もはじく事も出来ない時は己のスピード、並びに瞬発力をもって避ける。
両者一歩も譲らない状態で拳と剣の神楽は続く。…この状態を壊すのは第三者の介入しかどちらかが息切れをするしかない。
「もっとだ!もっとやり合おうぜ!!てめえだってまだまだこれからだろ?ベル!」
「応よ!もっと来いやベート!」
彼らが己が全てをぶつけ合う、この拮抗した状態の瓦解するその時を待ちながら。
「やるな…あのベートと張り合うとは。」
「然り。この戦い方こそあの少年の本領と言うわけだ。」
二人の戦いを見ている二人はそう判断する。先程までとは打って変わって今この戦況はベルに傾いている。
ベルの戦い方、それは最大で二十の刃に分裂し蛇腹の様に伸縮する剣を使い相手を翻弄する戦い方。
「ふむ…こうなると。」
「戦いは拮抗に入る。」
ベートの実力も負けてはいないが彼はヒットアンドウェイを主としたスピード重視の拳士だ。彼の必殺の射程範囲は拳故に短い…だがベルは違う。
「糞がっ!相変わらずウゼえ動きをしやがる剣だ!!近寄れねぇじゃねえかっ!!」
「お前に言われたくはないわ!さっきからちょこまかとっ!!」
ベルはその剣を鞭の様に振るい牽制出来る。…勿論その刃に当たれば隙が出来るのは必須、故にベートは無理矢理突撃する事が出来ない。
そしてベルも気を抜けば間違いなくベートに距離を詰められ、必殺の一撃を貰う事になる
勝負は近づきたいベートと突き放して戦いたい俺の間で間合いの取り扱いとなっている。
「…戦いってのはこうじゃなきゃな。」
柄を背に回し、手元を見えない様にして振るった剣は部屋の四隅を伝いながら一撃を放つ
だがそれすらもベートは躱す。
「ちっ……。」
そのまま自分の回りに再び剣を鞭の様に振るいベートを牽制する。
「見切ったぜ!兎野郎がっ!!」
するとベートは俺に近づき展開していた刃の一つに攻撃を入れる。そこはこの剣を鞭の様にしならす為の芯となる部分だ。
「……ッ!!」
先程まであった繊細な動きが一気に拙くなる。そしてその好機を逃すベートでもない。
「くらいなぁ!!」
そのまま俺に拳を入れようとする。
……かかったな!!
「俺は兎じゃねぇ…龍だ!!そこのところ間違えるなよ?」
制御を失った刃がうねりまるで龍の顎の様な形に変化する。基本は大剣で、距離を離した時は刃鞭、そして超近距離はこの大鋏だ。
こちとらオールマイティーに対応出来るんだよ。
「なっ…っ!?」
「いらっしゃーい、お馬鹿さん?」
俺の掌で踊った気分はどうだ?てめぇが余りにも攻めてこれねぇから態々餌ちらつかせて 待ってたんだぜ?
「楽しんでいこうや?互いにそっちの方が良いだろ?」
硬直状態なんぞやってても退屈なだけだろ?
「上等だゴラァ!あとで泣いても知らねえぞ!!」
「かかってきやがれ!!」
目の前から打ち込んでくる拳を見ながら俺もベートに向かって一撃を放つ。
「「食らえやぁ!!」」
互いの一撃がもろに入る。轟音ならしながら互いの一撃は館を震撼させた。
「ふむ…引き分けか。」
まぁ良き見せ物であった。オーリは笑いながら倒れ伏す二人を見る。
「しかし…これはこれは…大変な事になっているな。」
回りを見渡すと我の部屋は見る影を無くす程ボロボロになっていた。
「まぁ……面白い物を見せてもらった。…この程度の事なら必要経費であろう。」
…ふむ…リヴェリアよ?何を謝ってきておる?
ん?我ではなくアーリマン・ファミリアに対して?…尚更気にするな。今日は我以外出払っておる。この程度の損害どうとでもなろう。
……取り合えず我らの実力は分かった。…2日後、遠征に出る。其までに準備をしておけ
もうすぐ序章も終わり物語が加速し始める…。
そして作者の土下座も加速する……(土下座)