想像以上にオルフェンズにはまりBFTが終わらないまま書いてしまいました。
誤字脱字やご意見、お要望がありましたらドシドシお願いします。
その日、一つの戦争が終りを迎えた。
地球圏の全体を巻き込んだ戦争は血で血を洗う凄惨な物となり、やがては地球圏全土に多大な被害を与えた。
それでも戦争が終結し、人々は平和への希望を持って新たな一歩を踏み出そうとしていた。
しかし、地球のとある島国では未だに戦争が続いているかのようだった。
戦闘こそ終わったが、町は火の海となりところどころにはモビルスーツの残骸が転がっている。
そんな町の片隅の研究所と思われる建物も戦闘の流れ弾にでも当たったのか半壊し、火が上がっている。
「何で……何でなんだよ」
燃え盛る炎の中、少年は瓦礫をどかしていた。
見た目は10歳程度の子供だが、自分よりも大きな瓦礫をどかしている。
瓦礫をどかしていると少年は瓦礫に埋もれた女を見つけ出す。
「……どうしてここに……」
女は少年の姿を確認すると驚いた表情を浮かべる。
一方の少年は瓦礫をどかそうとするが、少年の力でも動かす事が出来ない程の瓦礫が女の上にのしかかっている。
「何でこんなことになってんだよ。戦争は終わったんだ!」
「これは報いよ。戦争を終わらせる為……そんな詭弁で命を弄び人が踏み入れてはいけない神の領域に足を踏み入れた私達への」
「知った事かよ! 俺はアンタ達に言われた通りに戦った! それで戦争は終わったんだよ!」
少年の言葉に女は笑みを浮かべていた。
少年からは瓦礫で死角となり見えないが、女の出血は多く自らも医学に精通している為、すでに自分が助からないと言う事を女は分かっていた。
自分の死よりも戦争が終わった事で、少年が解放された事の方が女にとっては重要で喜ばしい事だった。
「そう……終わったのね。なら、もう貴方はガンダムで戦わないで良いのよ。これからの人生は自分の為に生きなさい」
それはまるで別れの言葉だと少年は漠然と感じていた。
「戦争が終われば俺を色んなところに連れて行ってくれるんじゃなかったのかよ!」
それはいつしか少年に言った事だ。
ただ、少年をその気にさせるだけの方便として女は少年にそう言った。
どの道、戦争が終わる前にどこかの戦場で使い潰されると思い、罪悪感からかいつしか忘れていた。
「大丈夫。貴方は誰よりも強いわ。私が居なくても自分で歩いて行くことが出来る」
「俺には……そんな事、出来ないよ」
少年は震えながら手を伸ばす。
今まではただ命令に従って戦えば良かった。
戦闘に必要なスキルは持っていた。
だが、これからは誰に命令される訳でも無く、戦いもない。
「生きて……」
少年は最後までその言葉を聞く事が出来なかった。
瓦礫が崩れ砂煙が少年を襲う。
砂煙が収まるとそこには崩れて来た瓦礫の山がそびえていた。
「何で……戦争は終わったのに」
少年は茫然となりながら、ゆっくりと歩くが歩みを止めて膝をつく。
手を付いた際に何かヌメッとした感覚がしてふと自分の手を見る。
そこには赤黒い液体が付着している。
それは幾度も戦場で少年が流して来た血だ。
「何でなんだよ!」
少年は悲痛な叫びをあげる。
この日、戦争は終結した。
しかし、少年の世界は終りを迎えた。
地球全土を巻き込む戦争が『厄祭戦』と呼ばれるようになり、終戦から約300年程経ったP.D.315年。
人類は地球圏のみならず火星圏や木星圏にまで生活の範囲を広げていた。
テラフォーミングにより地球に近い生活環境を火星に再現し、戦後地球を統治している4つの経済圏により地球からの統治を受けていた。
遠く離れた地球からの統治は火星に住む人々の生活を圧迫し、次第に地球に対しする不満を持つようになりいつしか地球からの独立を訴えるようになっている。
その中でもモビルワーカー等の兵器を使って過激な独立運動を行う団体も存在し、火星全土での問題となっている。
「くそ! 聞いてないぞ!」
今日もまた火星にて独立運動の過激派が地球政府の施設をモビルワーカーで襲撃していた。
今回の襲撃は今まで以上の戦力を集めての襲撃だったが、彼らにとって予想外の出来事が起きていた。
政府の要人が施設に滞在していると言う情報からある程度は警備のモビルワーカーが配備されていると言う事は予想が出来た。
その為に今回は今まで以上の戦力で襲撃したが、警備の戦力にはギャラルホルンの最新鋭のモビルワーカーが配備されていた。
地球の経済圏の総意で動いている治安維持組織ギャラルホルンのモビルワーカーの性能は過激派のモビルワーカーよりも格段に高く、数の上でも多い。
更には今まで彼らが交戦したギャラルホルンの部隊とは連携の練度も格段に違っていた。
あらゆる方面で劣る彼らはすぐに劣勢となり、次々とモビルワーカーが破壊されて行く。
そんなモビルワーカー部隊の中にレオは攻撃をかわしながら反撃していた。
レオはまだ12歳だが、モビルワーカーを手足のように自在に操っていた。
襲撃部隊の中には何機もそうやって動いているモビルワーカーが存在している。
厄祭戦に開発された有機デバイスシステム『阿頼耶識システム』を使っているからだ。
脊髄に埋め込まれた端子を機体を繋ぐ事で機体を手足の延長上として扱う事が出来る。
レオ達は皆、ヒューマンデブリと呼ばれていた。
屑鉄同然の値段で取引されている事からそう呼ばれている。
レオは物心ついた時からヒューマンデブリである為、親の事は何も知らず興味もない。
ただ、大人たちに言われるままに戦うだけだ。
「どうするんだよ!」
「どうするも何も逃げるしかないだろ。こいつら相手に勝ち目はないからな」
ヒューマンデブリとして人ではなく物として扱われているレオ達だが勝ち目のない戦いで死ぬ気は無い。
すでに勝負が見えている為、戦闘は撤退戦となり向こうも殲滅戦に入っている。
「とにかく撃ち待って逃げ回るしかない。でないと死ぬだけだ」
レオは機体を交代させながら撃ち続けた。
ギャラルホルンのモビルワーカーの装甲を簡単に撃ち抜けるだけの装備ではないが、それでも撃ち続ければ相手も深追いは出来ない。
だが、レオの奮戦も空しく友軍機の数は減る一方で相手の数は殆ど減っていない。
「レオ! 結月の機体が!」
友軍機の1機が被弾し、足をやられたのか動きが止まっている。
これが見ず知らずの相手なら気にすることもなかったが、間が悪い事に動きの止まったモビルワーカーに乗っているのは自分と同じヒューマンデブリの仲間だった。
それに気を取られた事でレオは自分のモビルワーカーの操作が疎かになり被弾してしまう。
「しまっ!」
被弾の衝撃は凄まじく多少の衝撃なら慣れていたレオは意識が朦朧となる。
戦場で意識を失えば後に待っているのは死だ。
レオは薄れ行く意識の中で自らの死を確信していた。
「っ……生きているのか?」
どれほど意識を失っていたのか、レオはモビルワーカーの中で意識を取り戻した。
「機体は完全に駄目だ。戦況はどうなった」
体中が痛むが幸いにも出血は大したことはない。
レオの機体はモニターは完全にいかれており、阿頼耶識システムで得られる機体の情報からも完全に使い物にならない。
レオは何とか機体のハッチをこじ開けて外に出る。
どういう訳か自分はまだ生きている。
このまま壊れたモビルワーカーの中に居ても外の情報は何もつかめない。
「これは一体何が……」
モビルワーカーから降りたレオはただ茫然とした。
周囲にはモビルワーカーの残骸が広がっていた。
それは自分達の物だけではなくギャラルホルンのモビルワーカーも無残に破壊されている。
自軍だけならともかく、ギャラルホルンのモビルワーカーもここまでやられているのはおかしい。
それだけではなく、自分達の攻撃目標である施設もまた破壊されていた。
「はは……」
何があったのか理解できず、レオは自分のモビルワーカーの残骸に座り込む。
自分が気を失っている間に何が起きたのかは分からなかったが、今までのレオの世界が終りを迎えたと言う事実だけが残されていた。
厄祭戦により地球の統治機構は崩壊したが4つの経済圏により地球圏は戦争の爪痕を残しつつも平和を築いていた。
一時は戦争が終わっても尚、世界は混迷していたが、今ではそれも遠い昔の事だ。
「フィーアお嬢様。ユーマ様がお見えです」
オセアニア連邦領内のとある豪邸でフィーア・ランスターはメイドからそう言われていた。
ギャラルホルンとも強い繋がりを持つランスターカンパニーの一人娘だ。
腰まで伸びたウェーブのかかった髪に仕立ての良いドレスはいかにも社長令嬢を絵に描いたような少女だ。
「通して貰える」
「畏まりました」
メイドがそう言い少しすると、フィーアの部屋に一人の少年が入って来る。
ユーマ・ムラサメ、オセアニア連邦大統領の二男坊でフィーアの幼馴染である。
「聞いたよ。フィー。アキとやり合ったんだって?」
ユーマがそう言うと、フィーアはあからさまに不機嫌になる。
アキとはアキト・ムラサメの事でユーマの同い年の弟にしてフィーアの婚約者でもある。
今回、ユーマがフィーアを訪ねて来たのは少し前にアキトと大ゲンカした事が理由らしい。
アキトとユーマは同い年と言う事もあり良く行動を共にしている。
「今回もあの馬鹿が悪いのよ」
「はいはい」
フィーアはあくまでも喧嘩はアキトが悪いと主張しているが、ユーマは軽く流す。
アキトとフィーアは婚約関係にあるが、顔を合わせる度に喧嘩をしている。
正確には喧嘩と言うよりも、ぶっきらぼうで口の悪いアキトに対して売り言葉に買い言葉でフィーアが喧嘩腰になるのが毎回の流れだ。
「で、今回はどうしたの?」
「……馬鹿アキがグレイズなんて大したことはないって言ったのよ」
フィーアはその時の事を思い出すと怒りが再燃するのか更に機嫌が悪くなる。
「グレイズ……確かギャラルホルンの次期主力機だったよね? フィーアのお父さんの会社も開発に関わってたっけ」
フィーアの言う『グレイズ』とはギャラルホルンが開発中の新型MSの事だ。
ランスターカンパニーはその開発に深くかかわっている。
ユーマも母や姉がギャラルホルンの人間である為、噂くらいは耳にしたことはある。
「グレイズは最高のMSよ! 多彩な装備で高い汎用性を持ち、生産性も整備性も高く、操作性だって良いし、基本性能だって既存のMSよりも格段に良くなってんだから。それなのにあの馬鹿はそんなのよりもガンダムの方が強いって言ったのよ!」
「ガンダム? 聞いた事もないけど? どこの奴?」
フィーアはグレイズの事を語りながら詰め寄るがユーマはフィーアがMSの事を語りだすといつもの事だから気にした様子はない。
ランスターカンパニーが昔からMS開発に力を注いでいる事からフィーアはMSに目がない。
そして、喧嘩の理由はフィーアが現在熱を上げているグレイズよりもガンダムと言うMSの方が強いと言った事が原因らしい。
「厄際戦末期に開発された古い奴。ユーマが知らなくても無理はないわ。当時はフレームが72機生産されただけで今では20機程度しかまともに稼働してないって話し。確かにガンダムフレームのダブルリアクターは今じゃ作れないけどさ。幾ら出力がダンチでもそんな古いMSに何が出来るのよ」
フィーアは少しむくれながらそう言う。
ガンダムと呼ばれているMSに採用されているガンダムフレームはMS開発の最先端を言っているギャラルホルンでも再現は不可能とされている。
MSの動力に使われているエイハブリアクターを2基搭載し、並列稼動させる事で圧倒的な機体出力を誇り、単純な性能ではグレイズが実戦に投入されても対等とは言えないが、それだけがMSの強さではないとフィーアは強く主張する。
「フィーアの言い分は分かったけど、流石に二度と顔を見せるなは言い過ぎ。一応は婚約者なんだからそんな事が出来ないのは分かってるでしょ?」
「……分かってるわよ」
元々、アキトとフィーアの婚約は二人が好き合って結ばれた物ではない。
何かと口論の絶えない二人だが、少なくともフィーアはアキトとの婚約に付いては必要な事だと理解はしている。
「だったら、ちゃんと謝りなよ」
「今は火星だったわよね」
アキトが父親に付いて火星に居る事はフィーアも知っている。
だからこそ、カッとなってアキトに二度と顔を見せるなと言っている。
流石にフィーアも冷静になって見ると言い過ぎたと反省した。
「グレイズがガンダムに劣るってのは納得いかないけど、アキが帰って来たら謝るわよ」
「その時はまた喧嘩にならないように僕も同席させて貰うから」
「……お願い」
顔を合わせる度に口論になるが、大抵ユーマが間に入る。
謝る際にアキトの言葉でまた口論になる可能性は高い。
そこはフィーアも自覚しており、素直にユーマが同席する事は認めた。
しかし、それから数日後、アキトが滞在していた火星の政府関連施設が武装集団の襲撃を受け、ユーマ達の父であるオセアニア連邦大統領を初めとして大勢の犠牲者が出たと地球で報道された。
その犠牲者の中にはアキト・ムラサメの名もあり、フィーアがアキトと最後に会った時に投げ捨てた言葉通りとなった。
その報道があった日を境にフィーアにとって当たり前の世界が終りを迎えた。