機動戦士ガンダム 流星のフェアレーター   作:ケンヤ

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第2話 「目覚め」

 火星にてオセアニア連邦大統領がテロで殺されたと言うのは地球圏においても大事件となった。

 後にテロリストはギャラルホルンの手により壊滅させられたと言う報道により、事件は人々の中から薄れつつあった。

 それから5年が経ち、世界は変わらず平和が続いていた。

 コロニー「リーア」

 地球圏のコロニーの一つでリゾート系のコロニーだ。

 リゾート系のコロニーではあるが、上流階級向けではなく、一般階級をメインに据えたコロニーだ。

 

「ここが地球圏……火星圏とは大違いだな」

 

 リーアの宇宙港でシャトルから降りたレオは宇宙港を見渡す。

 聞いた話しによればこのコロニーはリゾート系のコロニーでもランクは高くないらしいが、宇宙港を見渡すだけでも火星圏の低軌道ステーションよりも上等だった。

 尤も、レオ自身リゾートコロニーとは無縁である為、他のリゾートコロニーと比較のしようがない。

 

「レーオー! 何やってんのー!」

 

 遠くからレオを呼ぶ声がする。

 レオは軽く手を上げて聞こえていると言う事を示して荷物を持つ。

 レオを呼んだのはセレナ・ミラード。

 行き場を無くしたレオが行き倒れになっていたところにミラード商会の会長に拾われた。

 セレナはその会長の娘に当たる。

 そして、現在はいずれはミラード商会を継ぐセレナの護衛兼遊び相手として雇われている。

 雇われていると言っても、実質的には息子のように可愛がられており、ミラードの姓を名乗る事も許されている。

 今回は娘のセレナの旅行に護衛も兼ねて付き合わされている。

 ヒューマンデブリとして武装組織に属していた事も、武装組織が火星独立運動の過激派だったと言う事もミラード会長は知っても尚、レオをセレナの護衛として雇っている。

 セレナはレオと同じ16歳で年頃の娘と護衛としてだけではなく、遊び相手でもあったレオを二人で地球圏まで送り出した事は少々不用心に思えたが、それもレオに対する信頼の表れだと思うと悪い気はしなかった。

 

「今行く」

 

 レオは護衛としての役目を全うする為に、周囲を警戒しながらセレナの元に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 コロニー「レーア」から遠く離れた宙域でギャラルホルンの特務艦「アールヴァク」が航行していた。

 アールヴァクはギャラルホルンが近年開発した戦艦で高い機動力と航行距離を誇り地球圏のみならず火星圏や木星圏での活動も視野に入れている。

 現在は地球圏での運用テスト中であった。

 そして、アールヴァクのブリーフィングルームでは作戦会議が行われていた。

 その中にはフィーア・ランスターとユーマ・ムラサメの姿もあった。

 5年前のテロによりフィーアは婚約者を失いユーマは父と弟を失った。

 それがきっかけでフィーアはギャラルホルンの志願した。

 ユーマもそれに付き合って現在ではアールヴァクのMSパイロットだ。

 

「これが本部から送られて来た映像データだ」

 

 アールヴァクの艦長エドガー・クラウゼンがモニターに画像を出す。

 画像には1隻の戦艦が映し出された。

 巨大な砲門をいくつも持ち見るからに高い火力を持っている事が分かる。

 

「君たちも噂は聞いた事があるだろう。火星解放戦線の幹部の一人、カムイ・レェリィクの事は」

 

 その名が出るとブリーフィングルームの中がざわめく。

 『火星解放戦線』

 ギャラルホルンに属しているなら誰もが知っている組織の事だ。

 火星の独立運動が激しくなる中、いくつもの過激派グループが集まって組織されたのが火星解放戦線だ。

 近年では独自にMSの開発にも成功したらしく勢力を拡大している。

 活動は火星圏に限定されるが、ギャラルホルンにとっては現在のところ最も警戒している組織だ。

 そして、カムイ・レェリィクは火星解放戦線の中でも重要人物の一人だ。

 ギャラルホルンでもカムイに関するデータは殆ど無いが、彼の指揮する部隊は火星圏でも猛威を振るっている。

 そんなカムイの指揮している戦艦が堂々と地球圏に来ている。

 

「総司令部より我が艦にはカムイ・レェリィクを討伐するように指令が来ている。第一小隊は出撃し向こうの出方を見る」

「了解した」

 

 第一小隊の隊長であるフレディ・ベックマンが頷く。

 フレディは艦長のエドガー同様に実戦経験が豊富な老兵で、相手の出方を見る為にはうってつけだ。

 その後、細かい打ち合わせが終わってフリーフィングは終わった。

 

「フィー!」

「何?」

 

 ブリーフィングが終り、ユーマはフィーアを呼び止める。 

 対するフィーアは冷たく答える。

 5年前のような活発さは無く、どこか思い詰めた表情をする事が多くなったフィーアの事をユーマは気にかけている。

 

「えっと……」

「用がないなら行くわ。出撃の用意もあるから」

 

 フィーアはフレディの第一小隊の所属だ。

 様子見で仕掛ける為、すぐに出撃をしなければならない。

 ユーマもだから声をかけたが、何を話すかまでは考えていなかった。

 言葉を詰まらせたユーマを見て、フィーアはさっさとブリーフィングルームから出て行きユーマは一人取り残されていた。

 アールヴァクには9機のMSが搭載されている。

 ギャラルホルンがロールアウトした新型MSグレイズの高機動型だ。

 グレイズは汎用性を重視しており、様々なバリエーションが考えられている。

 その中の一つが高機動型グレイズだ。

 グレイズは地上と宇宙ではメインスラスターの位置が違うが、高機動型は背部と腰に2基つづのメインスラスターを搭載する事で従来よりも高い機動力を持つ。

 

「第一小隊。出るぞ」

 

 フレディの高機動型グレイズは指揮官仕様となっている。

 指揮官仕様は装備が異なり、ショートバレルと一体化となったランスユニットにナノラミネートアーマー製耐熱シールドを装備し対MS戦用を意識している。

 そして、フレディ機は黒く塗装されている。

 一般機の装備はバトルアックスとライフルとグレイズと共通しているが、フィーア機は独自の改造がされている。

 右肩には小型のレドームユニット、左肩にはにナノラミネートアーマー製耐熱シールドが追加され、両腕にはワイヤーで射出出来るクローアンカー、火器に長距離砲撃用の滑空砲が装備されている。

 

「了解」

「了解っと」

 

 フレディの高機動型グレイズが出撃し、続いてフィーアの高機動型グレイズと第一小隊の最後の一人であるキース・マッケンジーの高機動型グレイズも出撃し、第一小隊は火星解放戦線の戦艦へと向かって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カムイ・レェリィクが率いる強襲装甲艦『ヘッジホッグ』は最新鋭艦のアールヴァクとは違い厄際戦時に製造された戦艦である。

 全身に多数の砲門を持ち、全方位に砲撃する様から針鼠と命名されている。

 尤も最大の特徴は重力下での運用も可能と言う点だ。

 

「MSが出て来たのか?」

「捕捉できるエイハブウェーブの数は3機です。大佐」

 

 ヘッジホッグの司令官、カムイ・レェリィクはブリッジに上がると艦長席に座る。

 ギャラルホルンに仕掛けられたが、カムイは動じた様子はない。

 尤も、カムイは白銀の仮面で素顔を隠し、口元しか見えない為、表情を読む事は出来ないが、ブリッジクルーはこの程度でカムイが動じる事は無いと分かっている。

 

「かなり足の速いタイプのMSのようです。如何なさいます?」

 

 艦長席に座るカムイの横に立ち、副官のエリザが落ち着いた口調で指示を仰ぐ。

 

「ラウラを出せ」

「アスモデウスをですか?」

「ギャラルホルンがMS3機で終わる訳もない。そして、我らの目的は奴らをじゃれ合う事ではないだろう。ならば、こちらも1機で十分だ」

 

 確認している敵の数は3機。

 地球圏のギャラルホルンは火星圏のギャラルホルンとは違って練度も指揮も違うと聞いている。

 カムイが出撃させるように指示を出したラウラはヘッジホッグのエースだが、3対1で戦うと言うのは不安が残る。

 しかし、カムイが言うようにわざわざ火星圏から地球圏まで出て来たのはギャラルホルンとやり合う為ではない。

 

「了解しました。出撃の準備をさせます」

 

 不安要素はあるが、エリザは即座に答える。

 ヘッジホッグにおいてカムイの決定は絶対だと言うのは暗黙の了解で、エリザ自身もカムイの決定は間違いではないと心の底から思っている。

 そこに不安要素を持つと言う事は自分がカムイの真意を読み切れていないと言う事だからだ。

 

「アスモデウスを? 1機で? 大佐がそう言ったのかい?」

「その通りよ。 すぐに出して」

 

 カムイの指示を受けたエリザが格納庫に指示の内容を伝える。

 それを受けたカミラは難色を示していた。

 カミラはヘッジホックのメカニックをまとめている恰幅の良い女性だ。

 カムイとも親子程年がは難れている為、指揮官として信用はしているが、同時に言いたい事ははっきりと言っている。

 地球圏に来てから戦闘はしていない為、MSの整備は万全だが、単独で出撃させる事は余りしたくはないようだ。

 

「大丈夫」

 

 そんなカミラの後ろを出撃命令を受けたラウラが通り過ぎる。

 カミラがラウラを単独で出撃させる事に難色を示しているのは実力の問題ではない。

 実力で言えばラウラがエースである事は誰も疑ってはいない。

 だが、ラウラはまだ12歳の少女だ。

 カムイから見ればパイロットの年齢等関係なく、使えるかどうかでしかない為、単機で出撃させると言う事は単機で十分だと言う判断をしたのだろう。

 そして、ラウラもエリザ同様にカムイの指示に対して一切の疑いを持たずカムイの指示ならどんなことだろうと平気で実行する。

 

「アンタ達! ウチの姫様が出るよ! しっかり送り出しな!」

 

 どの道、カムイの指示を覆す事は出来ない為、ラウラを単機で送り出すしかない。

 メカニックであるカミラ達に出来る事は少しでも生きて戻って来れるように万全の状態で送り出す事だけだ。

 

 

 

 

 そんなカミラの心中はどうでも良いラウラは自らのMSに乗り込む。

 ラウラの機体は火星解放戦線で開発された物ではない。

 かつての厄際戦時に開発されたガンダムフレームを搭載したMSの1機だ。

 フレームのコードは『アスモデウス』と呼ばれている。

 アスモデウスは全体的に華奢な外見を持ち、火器も胸部に小型のバルカンのみだ。

 頭部には一本の角とモノアイを持つ。

 ラウラは乗るとパイロットスーツの背中のプラグとコックピットの座席の背のプラグを接続する。

 アスモデウスは厄際戦時に開発されている為、阿頼耶識システムが搭載されている。

 阿頼耶識システムがある為、ラウラでもアスモデウスを扱う事が出来る。

 

「システムは問題なし」

 

 阿頼耶識システムにより機体と接続する事で機体の情報が網膜投影される。

 ラウラが機体の状況を把握している間にアスモデウスはヘッジホッグのカタパルトに移動させられていた。

 そして、2つの実体剣を連結させてアスモデウスの身丈以上の長さを誇る薙刀を持つ。

 

「アスモデウス。ラウラ・ハーケン。行きます」

 

 アスモデウスはヘッジホッグから射出されると、反転して接近しているギャラルホルンの方へと向かって行く。

 

「居た」

 

 出撃し暫くすると3機の高機動型グレイズを補足した。

 それはギャラルホルンの側も同じだ。

 

「1機? 俺達舐められたってます?」

「油断するなよ。キース。フィーア。援護しろ。俺とキースで仕掛ける」

「了解」

 

 相手が1機しか出て来ていない事でキースは舐められていると油断するが、フレディが窘める。

 過去の戦闘記録からもカムイを侮れば痛い目を見る事になる。

 フィーア機は減速し、滑空砲を放つ。

 それをアスモデウスはかわす。

 だが、その間にフレディ機とキース機が距離を詰めて左右から挟み込む。

 2機の高機動グレイズはライフルでアスモデウスを狙う。

 アスモデウスは胸部のバルカンで応戦するが何発は被弾する。

 被弾したアスモデウスだが、その装甲には傷一つついていない。

 MSの装甲にはナノラミネートアーマーと呼ばれる特殊な塗料で塗装されている。

 その塗料はMSの動力であるエイハブリアクターから発生しているエイハブウェーブに反応する事で強度が格段に上がる。

 それによって重火器はMSに対して決定打とはなり得ない。

 当然、その事はギャラルホルンも承知の上だ。

 キース機がライフルを連射し、フレディ機はランスユニットのライフルを撃ちながら接近してランスユニットを突き出す。

 MSに対しては近接戦闘で直接殴る事が最も有効な手段だからだ。

 

「邪魔」

 

 アスモデウスはランスユニットを薙刀で受け止めるとフレディ機を蹴り飛ばす。

 

「何だこのパワーは」

「おいおい。冗談だろ」

「あのMS……まさかガンダムフレームを搭載しているの?」

 

 見た目からは想像できないパワーを見せつけられた事でフレディ達第一小隊は気を引き締めて対処に当たる。

 

 

 

 

 

 

 ラウラが足止めをしている頃、ヘッジホッグはコロニー「レーア」を黙認出来る距離まで来ていた。

 彼らが地球圏まで来たのはレーアに来る為だ。

 当然、レーアでバカンスではない。

 

「大佐。どうしますか?」

「休暇でバカンスを楽しんでいる地球の皆に火星流のあいさつをして差し上げろ」

「了解でさ!」

 

 カムイの言葉にブリッジの砲撃手が返事をする。

 

「狙うは居住ブロックだ。港には当てるなよ。砲撃後、MSを出撃させろ。結月とハンスはコロニーへ向かいターゲットの位置を捜索。ザックはヘッジホッグの護衛だ。念の為に私の機体も用意させておくんだ」

 

 カムイは矢継ぎ早に指示を出す。

 ブリッジクルーたちはすぐさま指示通りに動き出す。

 カムイの指示を受けて、先に出撃したアスモデウスの他の搭載機であるデモスの出撃準備に入っていた。

 デモスは近年、火星解放戦線が独自に開発に成功したMSだ。

 頭部はアスモデウス同様にモノアイでエイハブウェーブ下での通信状況を安定させる為にトサカ状のアンテナが付いている。

 全体的にがっしりした体形で薄い紫と黒で塗装されている。

 装備は腰にサムライソード型の実体剣に左腕には高硬度レアアロイ製のシールドが共通で装備されている他、火器として一般に流通しているマシンガンが装備されている。

 バックパックには2機の大型スラスター搭載し、基本的な技術力でギャラルホルンに劣る為、デモスには阿頼耶識システムが採用されている。

 

「アタシとハンスはコロニー内だってさ」

「二人でリーゾトコロニーを楽しんで来るからザックは一人留守番でもしてるんだな。戻って来た時には俺らは昇進してるだろうさ」

 

 出撃の間、3機のデモスの中でパイロット同士が話している。

 彼らはラウラも含めてヒューマンデブリと呼ばれている者達だ。

 それぞれが阿頼耶識システムの施術を受けている。

 それ故にカムイの元でパイロットを任されている。

 

「油断はするな。ここは火星圏ではないんだからな」

「分かってるって事なところで死ぬ気はないって」

「まっ、情報だとこのコロニーにMSはいないって話しなんだろ。なら楽勝楽勝」

 

 コロニー「レーア」には警備用のMWは配備されているが、MSは配備されていない。

 MWの火力ではナノラミネートアーマーを持つMSでは太刀打ちは出来ない。

 地球圏とはいえ、ハンスは今回の作戦は楽だと思っている。

 彼らはヒューマンデブリではあるが、カムイは結果を出せば結果相応の扱いは約束している。

 事実、彼らは火星解放戦線において下士官の地位を与えられている。

 尤も、同時に結果を出せなければ鉄クズの価値すら無いと見なされ容赦なく切り捨てられる。

 

「そんじゃ言って来るか」

 

 準備が整い3機のデモスが出撃する。

 結月機とハンス機は対MW戦を想定してマシンガン装備で、ザック機は母艦の護衛の為、対MS戦も想定したバズーカを装備している。

 ザックがヘッジホッグから離れずに止まり、結月機とハンス機はレーアへちと向かう。

 

「さっそくおいで擦ったぜ!」

 

 ヘッジホックの接近とMSの出撃を補足したレーアから多数のMWが出て来る。

 MWの攻撃が始まるが、その火力ではデモスの装甲には効かない。

 逆にデモスのマシンガンで次々とMWが破壊されて行く。

 戦闘が始まるとヘッジホッグの主砲が放たれてレーアの居住ブロックに直撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コロニーの外の状況を知らずにバカンスを楽しんでいたセレナとレオだが突如、コロニー全体が揺れた。

 地球や火星とは違いコロニーが大きく揺れると言う事は通常はあり得ない。

 つまりは何かが起きたと言う事だ。

 

「外からの攻撃か?」

 

 レオはすぐに状況を把握しようとする。

 コロニーの揺れる程の衝撃と言う事はコロニー内で爆発が起きた訳ではなく、外側から攻撃を受けた可能性が高い。

 それも戦艦の主砲クラスの攻撃でなければここまで揺れる事もない。

 

「セレナ。逃げるぞ」

「え? レオ!」

 

 レオはすぐさま宇宙港の方に向かう。

 外から戦艦クラスの攻撃をして来た以上、攻撃して来た相手はコロニーを完全に破壊しても構わないつもりでいるかも知れない。

 幸いにも今の一撃ではコロニーの外壁に穴が開く事は無かったが、穴が開いてしまえば宇宙に投げ出されてしまう。

 その前にコロニーのシェルターに避難するか、コロニーから逃げるしかない。

 シェルターは居住区にも備え付けられているが、外の状況を少しでも把握する為に宇宙港を目指した。

 

「アレは……MS! どこの機体だ」

 

 宇宙港を目指す中、コロニーの中に2機のデモスが入り込んで来るのが見えた。

 流石に見た目ではレオもどこの所属のMSなのかは分からない。

 2機のデモスはコロニー内で迎撃しているMWを次々とマシンガンで破壊して行く。

 

「町への被害はお構いなしか」

「レオ! どうする気!」

「安全なところを探す」

 

 そうは言う物の、レオもコロニーの構造を完全に把握している訳ではない。

 宇宙港に到着すると、宇宙港に停泊しているシャトルには避難して来た住民やリゾートの客達がひしめき合っている。

 

「ここは駄目だ」

 

 誰もが我先にとシャトルに乗り込もうとしている為、下手に乗ろうとするとかえって危険だとレオは判断した。

 レオはセレナを連れて宇宙港のバックヤードを目指す。

 普段なら客は入れないが、コロニー全体が混乱している為、咎められる事は無く入る事が出来た。

 

「せめてMWでもあれば……」

 

 一般人が出入り出来ない区画であれば、作業用のMW等が見つかりコロニーから逃げる事も出来そうだが、そう都合よく見つかる事は無い。

 セレナを連れたレオはいつの間にかバックヤードからも外れた区画に入り込んでいたようだ。

 辺りには見取り図も無く完全に自分達の居場所が分からない。

 今更後悔してもどうにもならないが、幸いにもコロニー内の戦闘音や衝撃が殆どない事からすぐに危険な状態にはなりそうにはない。

 とは言っても、戦闘中である為、気が抜けない。

 

「レオ……」

「大丈夫だ。俺が守る。そうでないと会長に合わせる顔がない」

 

 火星圏で生活していると言っても、セレナはこんな状況に居合わせる事などは無い為不安な表情をしているが、レオが励ます。

 レオにとってセレナやミラード会長は人並の生活を与えてくれた恩人だ。

 何としても守り抜かなければならなかった。

 迷っているうちにレオとセレナは格納庫と思われる空間に出る。

 周囲を見渡すがシャトルやMWの類の物は何一つない。

 

「ねぇ、レオ……アレ」

「これは……MS」

 

 格納庫にはたった1機のMSしか残されてはいなかった。

 青と白のMSはレオも見た事は無いタイプの機体だ。

 一般的なMSとは違いそのMSは二つの目に頭部にはV字のアンテナが付いている。

 背部から下に向かった刃のようなスタビライザーがあり、まともな武装はないがレオはそのMSから力強さを感じた。

 

「やってみる価値はあるな」

 

 レオはMSが使えるかどうかに賭ける事にした。

 もしも、MSが使えるのであれば状況を打開する事も出来るかも知れない。

 幸いにもコックピットのハッチは間状態となっており、中に入る事が出来た。

 

「これを動かすの?」

「やって見ないと分からないが……」

 

 レオはコックピット内を物色する。

 するとコックピット内である物を見つけた。

 

「これは……行けるかも知れない」

「ちょっ! レオ!」

 

 レオはそう言うと上半身の服を脱ぎだす。

 突然、脱ぎだした事でセレナは顔を赤くして目を逸らす。

 

「セレナ、こいつを付けてくれ」

 

 レオが差し出したのはピアスと呼ばれる機器でパイロット側の端末と座席の端末を繋げる物で、MSのコックピット内に備え付けてあった。

 座席にも阿頼耶識の端末が付いている為、これがあればレオはこのMSを動かす事が出来るかも知れない。

 

「これ……レオ。貴方」

「今はこれしかない」

 

 セレナもそれをレオに付ける意味は分かった。

 

「……分かった」

 

 セレナはレオの覚悟を受けてピアスを受け取るとレオの背中に付けた。

 その後、レオは座席の端末と接続すると機体を起動させた。

 

「うっ……がっ!」

 

 阿頼耶識システムにより機体とリンクをした事で機体からの情報がレオの中に流れ込んで来る。

 MWと比べてMSから送られて来る情報は膨大でレオに多大な負担を掛ける。

 

「レオ!」

「がぁぁ! ガンダム……フレーム。エリ、ゴール……ハアハァ……それがお前か」

 

 機体の情報を読み取ったレオは息を整える。

 エリゴールと言うのがこの機体の名称らしい。

 

「行くぞ。エリゴール」

 

 機体の正常稼働を確認したレオはゆっくりと機体を歩き出させる。

 

 

 

 

 

 

 コロニー内に入り込んだ結月機とハンス機は迎撃して来るMWを破壊して行く。

 すでにかなりの数を破壊している為、迎撃の手も殆どない。

 

「やっぱ楽勝だな」

「けど、目当ての奴を見つけないと、MWの撃墜数を稼いでも意味ないぞ」

 

 カムイから与えられた指示はターゲットの位置を捜索する事。

 MWを幾ら破壊してもカムイは評価しないだろう。

 

「分かってるよ!」

 

 ハンス機はMWを踏みつけるようにコロニーに降りる。

 マシンガンを連射して町への被害はお構いなしにMWを破壊する。

 

「ハンス! 何か来るぞ。エイハブウェーブの反応もしやがる!」

 

 戦闘をしているとコロニー内の宇宙港から物資搬入用のエレベーターから1機のMSが出て来る。

 それはコロニーの地下でレオが起動させたガンダムフレームを搭載したMS、エリゴールだった。

 

「地上に出たのか」

「レオ! アレ!」

 

 モニターには2機のデモスが映されている。

 

「アレがターゲットか!」

「ハンス。ヘッジホッグの戻るぞ」

「馬鹿を言うなよ! 目の前に居るんだ。持ち帰れば!」

 

 ハンス機はマシンガンを撃ちながらエリゴールに突撃して行く。

 

「あの馬鹿! 欲出しやがって!」

 

 カムイの指示はあくまでもターゲットの意志を捜索であって回収ではない。

 しかし、ハンスは結果を出して地位を得る為の欲を出したようだ。

 ハンス機のマシンガンはエリゴールの装甲に阻まれる。

 攻撃を受けてセレナは悲鳴を上げるが、レオはすぐに反撃を試みる。

 

「武器は……」

 

 機体のデータから武器を検索する。

 エリゴールの火器は頭部のバルカンと左腕の小型マシンガンだが、どちらも弾は装填されていない。

 近接戦闘用に武器は2機のスタビライザーが実体剣として使える。

 他には右腕にクローが付いているだけだ。

 

「銃が効かないってのか分かってんだよ!」

 

 ハンス機はサムライブレードを抜いてエリゴールに切りかかる。

 レオはとっさに機体を動かして左腕でハンス機のサムライブレードを持つ腕を掴んで止めた。

 

「何ぃ!」

「こんなところで!」

 

 この距離ではブレードを使う事は出来ない為、エリゴールは右腕のクローを展開する。

 

「死なせて堪るか!」

「は?」

 

 エリゴールは展開したブレードをハンス機の胴体に付き出す。

 クローはハンス機の胴体を貫き潰した。

 

「ハンス!」

 

 ハンス機は爆発を起こし、爆風からエリゴールの姿が見える。

 この日、新たに悪魔の名を冠したモビルスーツが目を覚ました。

 

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