捨てられた艦娘拾ってたら鎮守府並みになってた 作:杉山杉崎杉田
そんなわけで、滑ってからお昼タイム。ちょうどそのタイミングで、赤城も休憩をいただいた。
「と、いうわけで一航戦の赤城よ」
「よろしくお願いします、北本さん」
「ん、おお」
楽しみ過ぎて朝早起きした叢雲の弁当を食べながら北本はテキトーな返事を返した。
「で、なんで正規空母のあんたがここにいるのよ」
叢雲が聞くと、赤城は俯きながら答えた。
「それが……提督に捨てられてしまいまして……」
「提督に⁉︎あんた、第1艦隊だったじゃない!」
「……なんか、事情があるのか?」
北本が聞くと、赤城は深刻そうな顔になり、話そうとしなかった。
「大丈夫よ、赤城さん」
五十鈴がその赤城に声を掛けた。
「克己は私や叢雲のこと拾ってくれたの。一緒に住めるかはともかく、少しは力になってあげられると思うわ」
「……いいのですか?」
赤城に聞かれて、北本は小さく頷きながら、後頭部をガリガリと掻いた。赤城はようやく語り出した。
「その……夜中に資材をこっそり食べてたのが見つかってしまいまして……」
「自業自得じゃねぇか‼︎」
一転して怒鳴る北本。
「よーし、行くぞ五十鈴、叢雲」
「「はーい」」
「ま、待って下さい!助けてくれるんじゃなかったんですか⁉︎」
「はぁ?やむをえない事情があったとか、理不尽な理由で捨てられたならともかく、んな器の小せぇコソ泥働く奴を居候させる金はうちにはねぇよ」
「や、やむを得ない事情ならあります!」
「なんだよ」
「お腹が空いてたんです!」
「知るか」
「あ〜!待って下さいよ〜!」
涙目で脚に抱き着かれ、北本は喧しそうに下を見た。
「いい大人が何やってんだ。やめろ」
「今、私大変なんですよ!ここの店長のご好意で雇ってもらってはいるものの、住むところなんて海の近くのダンボールですよ⁉︎」
「ほんと、一航戦の誇りなんてあったものじゃないわね」
「この際、誇りなんてどうでもいいです!ティッシュに包んでゴミ箱にスリーポイントシュートです!助けて下さい!」
「今のこの姿を加賀さんが見たら本当にどう思うのかしら……」
「…………」
五十鈴と叢雲に「どうする?」みたいな視線を送る北本。二人とも「好きにすれば?」みたいな視線を返した。
「……はぁ、わーったよ。えーっと、赤城さんだっけ?」
「! はい!」
「一緒に住まわせてやる」
「本当ですか⁉︎」
「ああ、ただしちゃんと働くこと。それと来年は高校か大学生受験すること。それと、飯は一日三食お代わり無し。あと隠れてつまみ食いとかしたら速攻で追い出すからな」
「そんな⁉︎お代わり無し⁉︎」
「まだ来てもないのに出て行くかコノヤロウ」
「すみませんでした」
と、いうわけで、また居候が増えた。
*
数日後。今更だが今は六月、梅雨真っ盛りだ。五十鈴はバイト、赤城もプール。北本は学校で叢雲は一人で家にいた。家事を一通り終わらせ、する事もなくゴロゴロと漫画を読んでいた。
「………何よこいつ、ニートなの?屑ね」
漫画のキャラに思わずツッコミを入れてしまった。確かにそいつは屑だ。周りの弟は中卒で働いてるにも関わらず、そいつは大学まで出てニートだ。家でゴロゴロしてるだけ。家事は妹がやっていて、専業主婦ですらない。その癖、口調は上から目線だ。
だが、その時ふと思った。
今の自分も一緒じゃね?
と。
「………いやいやいや、違うわよ。私はちゃんと家事やってるもの。将来はちゃんと高校にも行くし。わたしは違う……大丈夫なハズ……」
ブツブツ呟き、言い訳を並べながらも内心は焦っていた。その時、ガチャッと玄関の開く音が聞こえた。
「⁉︎」
「たでーまー」
北本の声だ。一緒にいるのは隼人だった。
「うおお……さみぃいい……」
「叢雲!風呂沸かしてあるか?」
「って、何よ!ズブ濡れ⁉︎傘持って行かなかったの⁉︎」
「朝は小雨だったろうが!」
「降ってるなら持って行きなさいよ!」
言いながら慌ててタオルを二枚持って行った。北本と隼人はタオルで頭やら身体を拭き、叢雲は玄関から風呂までタオルを床に敷いていく。
「シャワーでいいなら今入れば?」
「隼人、どうする?」
「いいよ俺はシャワーで」
「じゃあそうさせてもらうわ」
二人して洗面所に向かい、床を拭きながらタオルを回収する叢雲。二人が脱衣中でないことを確認すると、洗面所に入って洗濯機の中にタオルを放り込んだ。
「ねぇ、二人とも。制服は洗っちゃっていいの⁉︎」
「あ、頼むわ」
とのことで、二人のワイシャツも洗濯機の中へ。
で、洗濯開始。今の時間だけで随分忙しくなった、と思いながら居間のソファーに座り込んだ。
「………ニートではないわね私」
どうでもいい確信を持てた。