超克騎士の前日譚<プリクォール>   作:放浪人

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 今回は想定より早く仕上げることが出来ました。やはりヒロインって大事ですよね。どっちのとは言わないけれど(満面の笑み

 ただしその分内容(シーン)が短く文字数が少なめ、話も4部作となる予定です。
 まあ仕方ないですよね、ヒロイン出てるんだから。どっちのとは(ry
 というのは半分冗談で、投稿期間を短縮しようということで区切りがいいようなら分割投稿してみようという試みです。

 なお今更ですが前話からタイトルの表記を変えてみました。それぞれの(はなし)が何を指すのかは……まあ、あからさまですかね;


 それではどうぞ。


朱羅篇 Ⅰ:紅蓮の姉妹

 欧州の一角、北海に面した湾岸沿いの地に一つの小さな国がある。

 国の名を、ヴァーミリオン皇国と言う。

 その国名から察せられる通り、第二次世界大戦以降は民主化が国政の主体となった現代において、今なお絶対君主制を布いている数少ない国の一つである。

 

 

 そのヴァーミリオン皇国には、二つの英雄譚が存在する。

 

 一つは数百年前。当時の支配国であったクレーデルラント王国の圧制に対し独立を掲げ、建国者であるヴァーミリオン公爵が家族の犠牲を突きつけられてもなお民のために戦い続けた、初代ヴァーミリオン皇帝による献身の建国譚。

 

 もう一つは約半世紀前、人類史上最大規模の闘争となった第二次世界大戦中のこと。

 大戦の元凶たるナチスドイツの皇国占領と弾圧に際して、祖国奪還のためにその身に宿した竜の異能を振るって義勇軍として戦い祖国解放を成し遂げた“陽光の聖竜姫”セレスティア・ヴァーミリオンの救国譚である。

 

 

 そして現代――彼の皇国には、それらに続き第三の英雄譚を紡ぐのではと目される人物がいる。

 “紅蓮の荒獅子”の異名でも知られる現皇帝シリウス・ヴァーミリオンと、その妻アストレア・ヴァーミリオンの間に生まれた第一皇女にして、第二皇女ルナアイズ・ヴァーミリオンの双子の姉。

 “紅焔の戦姫”の二つ名を与えられ、齢僅か15歳にしてAランクでも上位にその名を連ねる、英雄の資質を持つ者の一人。

 

 

 これは、そんな彼女が辿る運命への前日譚。

 

 彼女と、彼女の(ヒカリ)に憧れその背を追う、未だ目覚めざる竜の姫の物語。

 

 

 

 ――さあ、前日譚(プリクォール)を廻そう。

 

 

 

 

 

                  †   †   †

 

 

 

 

 

 ヴァーミリオン皇国最大の都市でもある皇都フレアヴェルグ。

 その要所に建造された皇宮の一角――そこは皇宮を守護する衛兵達の訓練施設であり、当然そこで行われるのは兵士達の鍛錬に他ならない。

 

 しかし常識に照らせば本来は『あり得ない存在』が、その場所で切磋琢磨の汗を流していた。

 そしてそのあり得ない存在――赤と朱を象徴とする二人は、そんな彼女達を取り巻く兵士達の視線の中心にあった。

 

 

「はひ、はひ、はひぃっ……!」

「…………」

 

 

 片や幼い少女。手足を地につけて四つん這いになり、口から吐き出す呼吸はぜえぜえと息も絶え絶えだ。

 豊かに伸ばされた朱色の鮮やかな美髪は大量の汗を吸い、重く地面に向けて垂れ下がっている。

 

 少女の名はステラ・ヴァーミリオン。この国の末の皇女であり、普通に考えればこんな場所で汗だくになっているはずのない存在だ。

 

 

「も、もう、ムリ……少し、休み……これいじょうやったら……死んじゃう……!」

「そうか」

 

 

 そしてそんなステラをすぐ傍で見下ろす、赤い髪を結い上げた軍装の少女。

 眼前で這い蹲っている幼い皇女に向ける視線と言葉は冷徹極まりなく、皇族たる彼女への敬意はそこに欠片も伺えない。

 しかしそれは当然のことだった。何故なら、彼女はそのステラ・ヴァーミリオンよりも色んな意味で()の立場にあるのだから。

 

 少女の名を、ソルレイア・ヴァーミリオン。

 ヴァーミリオン皇国の第一皇女。皇族の末姫であるステラの姉に他ならない。

 

 そんな彼女が己の妹を見下ろし、一拍間を置いてから、

 

 

「なら死ね」

「うわひゃあぁ~~~~っ!?」

 

 

 ゴゥッ、という爆音を轟かせながらステラ目掛けて襲い掛かる紅蓮の炎。とても幼い子供に向けるものとは思えないソルレイアの罵倒の後、それが彼女の手によって発現される。

 

 それは常人には決して成し得ない、異能の具現たる魔力の炎――伐刀者としての力の発露。

 しかしそれをもたらした彼女にとっては何ら特別なことではなく、事実、この国における『現最強の伐刀者』たるソルレイアにとっては、呼吸をするにも等しいものだった。

 

 突然の脅威にステラは奇声を上げながらもギリギリでそれを避け、しかし無理矢理の体勢で身体を動かしたが故にそのまま地面に全身を打ち付けることとなった。

 

 

「ぐぇっ……(いつ)ぅ……!」

「ス、ステラ様――」

「黙れ馬鹿共、一々喚くな」

 

 

 子供一人分の身体が地面に投げ打たれる音とそれに伴うステラの苦悶の声、二人の皇女を取り巻いていた兵士達の動揺と喧騒が起こる。

 さらに兵士の何人かはステラの身を案じて声を上げるが、直後にはステラを見下ろすソルレイアの冷厳な声による叱咤が、駆けつけようとする彼らの行動ごとそれらを抑え込んだ。

 

 

「し、死ぬかとおもったぁっ……ソラ姉! なにす――」

「あ゙あ゙?」

「ヒィッ!? ごめんなさいなんでもありませんですソルレイアお姉さま!!」

 

 

 あまりの暴挙にソルレイアを睨んで抗議を口にする――しようとしたステラだが、直後には姉の恐ろしい顔とドスの利いた声に威圧されてしまう。

 結果、敢え無く反り立たせた尻尾を下げることとなった。

 

 

「その巫山戯た呼び方は止めろと何度言わせる気だ、馬鹿娘が。学習能力を親の(はら)の中にでも零してきたのか貴様は」

「そ、そこまで言わなくてもいいでしょ!?

 それに、こっち(ソラ姉)の方がぜったいかわいいもん!」

「くだらん。そんな軟弱な事柄に現を抜かすからそのザマなのだ。余計なことを考える暇があれば身体を鍛えることに集中しろ。

 そら。いつまで休んでいるつもりだ、とっとと立て。それともケツに火を点けるなりしなければ出来んか?」

「ヒィッ!?」

 

 

 そう言うやソルレイアの右手に(とも)された紅蓮の炎は、ステラにしてみれば調教師が調教対象に対して振るう鞭も同然な代物。ヘタレていた身体が否応なく立ち上がり、背筋をピンと伸ばしてしまう。

 そんな彼女の反応に「フン」と鼻を鳴らしつつも、ちゃんと立ってみせたステラの様子に一応は満足したらしく、炎を収めた。

 

 

「鍛えてくれと言ったのは貴様だ。貴様は自分から言い出したことも出来んような愚図なのか?」

「そ、そんなことない! ちゃんとできるもん!」

 

 

 試すように問う姉の言葉に、勢いよく頭を左右に振ってステラは否定の意を示す。

 

 世間一般の認識からすれば衛兵の訓練所などに、その衛兵が守るべき対象である皇族がいることなど普通は思いも寄らない。良くて訓練の様子見か何かだろう。

 しかし、そんな場所に皇族の姫君二人がいる理由はそんなものではなく、歴とした施設本来の役割に則ったもの――要は訓練のためだった。

 そしてステラが、5歳という歳相応の運動ではまず掻かないような量の汗で全身を濡らしているのは、姉から地獄のような『シゴキ』を受けていたからである。

 

 それはソルレイアも口にした通り、他ならないステラ自身が申し出たものだった。

 

 

「ならさっさと続けろ。出来ないならこれ以上は時間の無駄と判断して金輪際打ち切る」

「できる! できます! ちゃんとできるから!」

 

 

 姉の打ち切り宣言が余程効いたのか、よろけていた体勢をビシッとしてみせる。

 そんな妹の『強がり』を、しかしソルレイアも一応は『合格』と見做したらしく「ふん……」と鼻をまた一度鳴らすだけで、それ以上の詰りは口にしなかった。

 

 そして、そのままステラに次の指示を下そうと口を開きかけ、

 

 

「あの、ソルレイア殿下」

「何か」

 

 

 背後から自分の名を呼んだ者へと意識を移した。

 

 振り向くと、そこにいるのは兵士ではなくソルレイアよりもいくつか年上と思しい女性。その格好は皇宮に仕える女性従者の制式な衣装として設えられたであり、それを身に纏う彼女はその一員である侍従だった。

 

 

「こ、皇帝陛下がお呼びです」

「……そうか。場所は食堂か?」

「は、はいぃっ」

 

 

 仕える存在の一人である年下の少女の鋭い眼と、その雰囲気に気圧されてしまい声を震わせつつも、侍従の女性は託されていた用件を伝える。

 それに対し「分かった」と了承の返事を告げると、ソルレイアは視線を侍従からステラへと戻した。

 

 

「私は少し席を外す。戻るまでに残りのメニューを済ませておけ。

 私が戻る前に終わったら残った時間は休んでいていい」

「わ、分かりましたぁっ!」

「貴様らもくだらん同情心など湧かせてこいつの手助けなどするなよ。

 余計なことをした奴は飯抜きで終日走らせてやる。分かったな」

「「「「「は、ははっ!!!」」」」」

 

 

 ステラや周りの衛兵達にそう言い渡すと軍靴に包まれた踵を返し、皇宮に直結する訓練室の入り口の一つに向けてソルレイアは歩き去っていく。

 高身長の彼女は足も長く、またその足取りは軍隊然としたしっかりとしたものであるため、彼女の迎え役も任されていた侍従は瞬く間に置き去りにされる形となり、あわあわと早足でその後ろを追従することとなった。

 

 その後姿を、ステラと衛兵達はそれぞれの心持で見送った。

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

 

 ソルレイアが訓練所の門を通って完全に姿が見えなくなってから、ステラの口から吐息とも溜息ともつかない深い息が吐き出された。

 

 

「はふぅ…………よしっ」

 

 

 それからしばらく項垂れるようにしていて周りの兵士達に図らずも不安を抱かせたステラだが、その後は勢いよく顔を上げるとパンパン!と音を鳴らして己の頬を叩き、自分に気合を入れた。

 ……叩く勢いが強すぎて頬に軽い痕ができ、涙目になってしまったのは余談である。

 

 それはさておき、自身を鼓舞し終えるとステラは姉に言い渡されたことを果たすべく、再び身体を動かし始めた。

 疲れのせいか動きこそ緩慢だが、それでもスデラは少しずつ訓練内容をこなしていく。

 

 すると程なくして、そんな彼女に周りに留まっていた若い衛兵が声を掛けた。

 

 

 

「あの、ステラ様」

「? なぁに?」

「その、少しお休みになられた方がよろしいのでは? 姫様のお歳であまり無茶をされると御身体に障ります。

 大丈夫です、ソルレイア様がお戻りになられたら我々がお知らせしますので」

 

 

 その衛兵がそう提案すると、他の兵士達も「そうですよ」「どうかお休みになってください」と勧めてくる。

 ――中には「生ステラたんハアハア……!」「ステラたんのトレーニング姿、ステラたんの汗……!!」とか、ドサクサに紛れて息を荒くして呟いている衛兵がいるが、とりあえず後で(ソルレイア)に言っておくことにした。

 

 ……まあそれはさておき。

 

 前述のソルレイアの言いつけに反することを口にする衛兵達だが、別に彼らのソルレイアへの忠誠心や人望が薄いという訳ではない。

 ただ、それ以上に幼いステラの身を案ずるが故の言葉だった。実際、今さっきまでステラがこなしていた訓練は彼らからして5歳の子供にやらせるような代物ではなかったのだから。

 

 ――しかし、

 

 

「……いらない」

「え?」

 

 

 ぷいっと顔を背けて、拗ねたような声色でステラは衛兵達の提案を跳ね除ける。

 そんな予想外の反応に、衛兵達は戸惑いを浮かべるしかない。

 

 

「いらないもん」

「いやしかし……」

「どうかご無理をなさらず」

「無理じゃないもん! これくらい全然へっちゃらなんだからっ!」

 

 

 幼い少女特有の愛らしい声でそう一喝すると、衛兵達に背を向けたスデラはそれまでよりもペースを上げて訓練に取り組んでいく。

 すっかり意固地になっているその姿に、幼いながらに勝気で負けず嫌いなステラの性格を刺激してしまったかと衛兵達は困り顔になるが、しかしそれ以上ステラに何かを語りかけることはなく、ただ見守るのみだった。

 

 そんな彼らを他所に、幼いステラ・ヴァーミリオンは只管に訓練を続ける。

 

 

(絶対、ぜぇーったい、ソラ姉みたいになるんだから!!)

 

 

 その熱く猛る情熱を、胸に灯しながら。

 

 

 

 

 

 そんなステラを衛兵達は遠巻きに見ている。

 図らずも自分達が炊きつけてしまったような状況であるため下手に止めることはできず、さりとて無責任に放置することもできず、その場で固まっているしかなかった。

 

 

「くぉらぁぁぁぁ!! 貴様ら何を油を売っている! 少しはステラ様を見習わんかぁっ!!!」

「「「「!? も、申し訳ありません!!」」」」

 

 

 そんな彼らの停滞を吹き飛ばしたのは、その背後から突然として放たれた怒号だった。

 予想など全くしていなかった聴覚への刺激に飛び上がり振り返ると、怒号を放った人物は彼らの属する隊の隊長だった。

 壮年で如何にも厳格を体現しているかのような隊長の強面と鋭い双眸が、若い部下達を射抜く。

 

 

「そんなに暇があるのなら身体を動かしこい! 基本メニュー10セット、さっさと行かんかぁっ!」

「「「「は、はいぃぃぃぃぃーーーーっ!!!」」」」

 

 

 再び轟く怒声に衛兵達は竦み上がり、言い渡された訓練をこなすべくその場から走り去っていった。

 

 その後姿を見届けながら「まったく、最近の若造共は……」と隊長が愚痴を零していると、そんな彼に一人の衛兵が歩み寄る。

 

 

「少し険しすぎませんか? フォルク隊長」

「アランか。なに、あの程度もできんようでは、この城と陛下達をお守りする者としてソルレイア殿下に申し訳が立たんよ」

「第一皇女殿下を引き合いに出すのは色々と酷だとも思いますけどね」

 

 

 隊長――フォルクに、アランと呼ばれた青年が苦笑交じりに物申す。

 衛兵の上級仕官服を纏うフォルクに対し、アランが身に纏うのはその更に上に当て嵌まる親衛隊の装束。それが彼らの所属を現していた。

 

 

「しかしどうした? ルナアイズ様の護衛があるだろう」

 

 

 目の前にいるアランがこの国の第二皇女ルナアイズ・ヴァーミリオンの親衛隊員であると知るフォルクはその疑問を向けるが、それに対しアランは肩を竦めながら何事もなく答える。

 

 

「交代時間ですよ。それに今は食堂で『家族会議』があるでしょうから」

「ああ、それでか」

 

 

 今さっきソルレイアが呼ばれた理由を察し、フォルクが頷いた。

 そうした言葉を交わした後、ふと両者の視線が鍛錬に励んでいるステラに向けられた。

 

 

「頑張っておられますね、ステラ様」

「うむ。流石というか何というか、ウチの若造共に見習わせたいくらいだ」

「ハハ……ただああいう(負けず嫌いな)ご性分ですから、陛下などは甚く気を揉まれているとか。

 今日の家族会議も大方それだろうと、ルナアイズ様も零されてましたよ」

「まあ、陛下だからな……」

 

 

 苦笑混じりのアランの話に、さもあらんとフォルクも苦笑で応じた。

 

 

 建国に際して初代ヴァーミリオン皇帝の身に降りかかった、愛する家族を敵に切り刻まれるという悲劇。それが根源となっているのか、ヴァーミリオン皇族は家族愛が非常に強く、またそうあるよう育てられる。

 それこそ、初代皇帝への悲劇をもたらしたかつての敵国クレーデルラントを初めとした、世界のどの王政国家よりも強い絆を誇っている。

 対外的には『皇族と臣民の絆』の方が大きく取り沙汰されているが、同じ皇族同士の絆はそれ以上のものだ。

 

 今代の皇帝であるシリウス・ヴァーミリオンは殊更にそれが強いことで評判だ。

 そしてそれは、紛れもない事実である……というか、むしろそれすら控えめな表現だ。

 

 最愛の妻アストレアに対しては夫婦生活数十年であるにも関わらず未だに『バカップル』呼ばわりされている程であり、それに加えてソルレイアたち娘姉妹が生まれてからは極度の子煩悩まで発症するに到った。

 それ自体は別にいいのだが、娘がちょっとぶつかっただけでも未曾有の大惨事であるかのごとく騒ぎ、娘のことになると他国に戦争をふっかけることも辞さない親馬鹿なのだから、流石に親愛と忠誠を誓っている身としても呆れてしまうというもの。

 

 一例を語るなら、数年前にお隣のクレーデルラントからソルレイアに婚約の申し込みが来た時など、数百年の共存をぶっ壊して『本当の戦争』まで仕掛けようとしたのだから、その溺愛具合は推して知るにも及ばず、である。

 

 救いは暴走の原因である家族がストッパーの役割も兼ねていて、特にソルレイアは父親が馬鹿をやらかそうとする度に容赦のない粛正(仕置き)を下して止めてくれることだろう。

 それ以前は、妻のアストレアが止めてくれるならまだしも彼女が不在の時となれば、ロートル一歩手前とはいえCランク伐刀者であり“紅蓮の荒獅子”の称号を持つシリウスだ。その暴走鎮圧など衛兵の精鋭達と親衛隊が死屍累々を積み重ねた挙句、彼の戦友でもある皇室剣術指南役のダンダリオンが乗り出してようやくという有様だったのだから、そういう意味でも(・・・・・・・・)ソルレイアは衛兵達にとっての救世主であったりする。

 

 もっとも、そんな衛兵達の有様に「この惰弱者共が!」と罵られ、それはそれは厳しい訓練を施されたので、今や彼女が救世主であると同時に畏怖の対象とされてもいるのは、何とも言えない話である。

 

 

 ――閑話休題(まあ、それはさておき)

 

 

「……しっかし頑張るもんだな、ステラ様も。正直俺は一週間も保つまいと思ったんだが」

 

 

 そう、呆れとも感嘆とも取れる、あるいはその両方を込めた感想をフォルクが漏らした。

 

 

「私もですよ。ステラ様の性格は知っていましたが、まさかここまでとは。

 まあ、ステラ様を案じられた陛下がわざわざ水使いの伐刀者にアフターケアやら何やら命じていたとルナアイズ様が仰っていたので、それもあるのでしょうが」

「……陛下(親馬鹿)だからな」

 

 

 そう語る二人の視線の先では、ステラがちょうど一区切りを終え、次の訓練に取り組んでいた。

 

 

「もう一ヶ月か……軍やウチ(衛兵隊)の連中も悲鳴を上げるような殿下のシゴキに耐えるとは、ステラ様もステラ様で将来が頼もしいというか、末恐ろしいというか」

「流石に不敬ですよ?……まあ『予兆』もありましたし、もうそろそろ魔力が発現するのではないかとのことなので、もしかしたらそれも理由なのかも知れませんね。

 一番の理由はソルレイア殿下だと思いますが」

 

 

 推測を語るアランが微笑ましいものを見るようにステラの姿を眺め、フォルクはそれを傍から見て苦笑を浮かべた。

 

 

「ウチや巷にも殿下に憧れる奴は多いが……あそこまで純粋に慕うまず人間はおらんわな」

「殿下の親衛隊もいるでしょう」

「殺伐過ぎんだろあいつらを引き合いに出すのは……」

 

 

 若くして皇族としてのみならず、伐刀者として、そしてヴァーミリオン皇国の軍人としての務めを果たしているソルレイアに憧れを抱く人間は少なくない、というか多い。

 

 血筋によるものか秀麗な容姿が多いヴァーミリオン皇族の例に漏れず、ソルレイアもまた大多数の人間が賞賛する美貌の持ち主だ。

 加えて、彼女は厳格な雰囲気や軍人指向の男性的言動が強いため、その外見と合わさった結果として中性的な人物――所謂『男装の麗人』として見做されることもあり、男女両方からの人気が拮抗している。

 

 しかしそれは言ってしまえば、遠目から見た偶像(アイドル)に対するミーハーなものであり、面として向かい合えばそんな空ろな憧憬など、当人によって徹底的に叩き壊されるだろう。

 

 現にそういった輩は衛兵隊や軍にもいたが、今では地獄のシゴキを受けてそんな甘い感情など抱けないようになってしまっているのは別の話。

 

 そうした結果として、ソルレイアには畏怖とある種の尊敬のみを向けられるようになった。

 例外があるとすれば、両親のシリウスとアストレア、そして双子の妹として唯一ソルレイアと対等に接することができるルナアイズくらいなものであった。

 

 そこに例外が現れたのが、数年前。

 目障りなものは尽く焼き払うと言わんばかりのソルレイアの威圧にも耐え、そんな彼女を何度邪険にあしらわれようと、尻尾を振り回す子犬の如くその後ろをついて歩く例外。

 

 それが、ソルレイアの末の妹ステラ・ヴァーミリオンだった。

 

 

「合うものがあるのかね。殿下方だけに分かるような何かが」

「かも知れませんね。少なくとも、どちらも手が付けられないほど頑固一徹なのだそうなので」

「……それ、誰が言ったんだ?」

「ルナアイズ様ですよ」

 

 

 臆面もなく言ってのける後続(アラン)に、フォルクの頬がヒクついた。

 

 

「……時々思うんだが、実はルナアイズ様が一番凄いんじゃないか? 殿下相手にそこまで言えるなんぞ、あの方くらいだろう」

「付き合ってきた年季が違う、だそうです」

「……違いないな」

 

 

 この場にいない第二皇女の貫禄に純粋な敬服を覚えながらフォルクが呟く。

 

 ちょうど、訓練中のステラが足をもつらせて転んでいた。

 




 そういう訳で新たなオリキャラ、原作ヒロインの姉枠で登場したソルレイア・ヴァーミリオンさんでした。
 今回は序盤に当たる話なので本人は少しだけで退場、彼女の基本的なことや周りについて先に触れました……構成力が欲しい(切実
 ……ええ、まあ、モチーフはあの人ですよ? という訳で↓


■キャラクター解説:ソルレイア・ヴァーミリオン(Ⅰ)
▼オリジナルキャラクター。ステラの姉で、最新刊に登場したばかりのルナアイズの双子の姉。つまりはこの世界では彼女が第一皇女であり、ルナアイズ達は一つずつズレている。
 平和…?なヴァーミリオン皇国に生まれてしまった、生まれながらの軍人気質な、鋼鉄処女ならぬ鋼鉄皇女(爆)。
▼現時点ではステラがまだ魔力を発現できていないので彼女がヴァーミリオン最強の伐刀者に君臨している。また欧州でも最強クラスに名を連ねている。
 ランクは原作時点でのステラと同じAランク。総魔力量こそ一歩劣る平均の20~25倍であるものの、その代わり「魔力制御」と「身体能力」がB+だったステラに対して(原作一巻参照)、ソルレイアはこの二つがAでも上位であるという、総合的に見ればステラ以上の怪物。
 能力は炎の創造と制御。具体的な性能は今後描いて行きます。
▼言うまでも無くモチーフはDies iraeの鋼鉄処女ことエレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルク=ザミエル・ツェンタウア。言い訳をするなら桃歌が刀自殿、こっちが少佐殿ということ。
 原典の少佐よりまだ若かったり世界観だったり色々あって大分マイルド、現時点では黎明期のような感じ。今後どうなるかはお楽しみに。
▼外見はルナアイズの赤髪ポニーテール版。双子なので容姿はルナアイズ基準、ただし表情は少佐準拠。今の時点では火傷は無い。
 なお、双子の妹が残念なのに対しこっちは豊満。すくなくとも原作のステラ以上。
 は? そんなの少佐じゃない? 片方がデカくないとエルボーできないだろうが!!!!(怒
▼表向きは学生だが、あまりに優秀なものだから特例として既に軍務に携わっており、実績により高い地位にある。
▼名前の由来はステラが「星」、ルナアイズが「月」なので順当に「太陽(ソル)」から。「レイア」の部分には特に意味は無く語呂合わせ、強いて言うならモンハンのリオレイアから。
▼二つ名は”紅焔の戦姫”。ステラ達とは差別を図る意味で「紅蓮」ではなく「紅焔」。なお、その実績・所業から他にも色々な異名を持つが……
▼ステラには「ソラ姉」という愛称で呼ばれるが本人は嫌っており、呼ぼうものなら灼熱を叩き込まれる(今回は回避?)。
▼対親馬鹿皇帝用粛正マッスィーン。燃やす、以上。

■言及用語:セレスティア・ヴァーミリオン
▼オリジナルキャラクターその2で故人。ステラ達の曾祖母……のお姉さん。曾祖叔母?
 一応、全体的な物語には関わる存在。龍馬達と同世代であり……
▼”陽光の聖竜姫”の異名を持っていた伐刀者。最新刊で言及された「ナチスドイツによる皇国の占領」に際してレジスタンスに身を投じて戦い、祖国を解放に導いた女傑。
 なお、この世界では占領の話もオリジナル化している。詳細は今後。
▼モチーフはDies iraeの香澄と女神マリィ(7:3?)+α。
▼名前はステラ一家が全員天体に関する名前なので、ヴァーミリオン皇族は代々そうなのかなと、「天体」の英語である「Celestial」から。

■言及用語:『予兆』
▼本作オリジナルの概念。まだ魔力に目覚めていない伐刀者が、発現の時が近づくに連れて現すとされるもの。
 ただし絶対ではなく、予兆がなかったからといって魔力を持たないとは限らない。統真がこれに当て嵌まる。
▼予兆を感じ取れるのは同じように魔力を持つ伐刀者だけであり、常人には分からない。謂わば、眠っている魔力の一部が漏れ出たようなもの。
▼なんだか途中から忘れられそうな設定(ヲイ

■原作キャラ:ステラ・ヴァーミリオン
 わんこ。お姉ちゃん大好きわんこ。わんわんおー。ヴァーミリオンの馬鹿娘(ソルレイア命名)。怒られても燃やされかけても常に後ろに尻尾振り回しながらついて歩く不屈のワンコ。ドラゴンだけどワンコ。ワンコドラゴン(ぇ

■キャラクター解説:フォルク / アラン
▼ぽっと出のオリキャラ。話を廻すためだけの舞台装置(ヲイ
▼フォルクは衛兵の一部隊を束ねる隊長であり非伐刀者、強面で仕事では険しいけれど実は気さくなおっさん。声のイメージはてらそままさき氏。
▼アランはルナアイズの警護を務める親衛隊の一人で伐刀者。年齢は二十歳前後。なお、ルナアイズの親衛隊は原作最新刊の変態共と違ってちゃんとしている。
 追記すると、原作のとあるキャラとは血縁。



 四部作なのでソルレイアに関しては今後も解説を加えていく予定ですので、今回はこれだけ。
 次回もヴァーミリオン皇国。今度は子煩悩とロリママがご登場。はたして我らが鋼鉄皇女は……


 本編には関係ない話ですが、この作品のお気に入りが1305件、UAが77000以上、感想もちょうど100件いただけ評価も上々という嬉しいことに。
 遅々として進まない作品で一体いつ本編書く気だと作者自身も日々思うところですが、これからも暖かく御見守りいただければ幸いです。
 ご感想・ご批評のいずれも常にお待ちしております。ガラスのハートなので取り扱いは注意ですが。(笑)

 それではお読み頂きありがとうございました。また次回にお会いしましょう。
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