正体不明の騎士 作:カラカラ
春麗らかな日。
破軍学園の制服を身に付けている少年がある建物の屋上で太陽を見上げて呟いた。
「あ、黒点発見。これで57個目。やっぱり太陽が氷河期に入り始めてるって本当なんかねぇ.....」
心地よい風が頬を撫で、より一層に春の気配を感じさせる。
癖のある金髪は炎のマークがついたヘッドホンで抑えてある。顔立ちは幼さを残しながらも所々に大人の男性を感じさせ、なかなかに鋭い目付きは初対面の人に恐怖心を与えるだろう。本人的には全く気にしていないが。
白と黒を基調にしたブレザータイプの制服は着崩されており、ネクタイは邪魔くさいとの事でしていない。
ここまでの説明でお分かり頂けるだろうが誰がどう見ても不良である。
「何か面白い事ないかなぁ.......」
その呟きはやけに周りに響き、余計に退屈さが増してきてしまった。
その後しばらくはまた太陽の黒点探しをしていたがそれにも飽きてただボーッと雲の流れを見ていた。
「.........そうだ」
少年は何かを思いついた様な顔をして立ち上がり、制服についた土埃を落とした後に宣言した。
「学園をぶっ壊そう!」
「何を馬鹿な事を言っているんだ」
スパーーンっと痛快な音が少年の頭から発せられた。普通の人間がくらえば確実に首が捥げる威力なのだが少年は少し頭を持っていかれるだけだ。
「何だよ理事長。別にいいじゃん。暇で暇で死にそうなんだよ」
「お前の暇潰しに学園を使うな」
スパーーーンっと先程より大きな音をたてて少年の頭を叩く。少年はポケットに手を突っ込みながらケラケラと笑っている。
理事長と呼ばれた人物は額に手を当て盛大に溜息を吐いた。黒髪を後ろでアップに留め、口には煙草を咥えた黒のパンツスーツを着た女性。彼女はこの破軍学園の理事長、神宮寺黒乃。
「んで、何の用ッスか?こんな幼気な一学生を捕まえて」
「お前が幼気なら全世界の学生はみんな赤ちゃんだよ」
不敵な笑みをしながら顔だけを理事長のほうに向けて悪態を吐くが、黒乃はいつもの事なので軽く受け流し煙を吐き出す。
「別に用があった訳じゃない。久し振りに弟子の顔でも見ようかと思っただけさ」
黒乃はそう言うと少年がした様な不敵な笑みを浮かべる。
「息子さんに『お母さんなんか大嫌いッ!』とでと言われたんスか?」
先程の笑みをより深くしてイジリにかかるが黒乃は無視を決め込んで又も煙草の煙を吐き出す。わざと煙をこちらに向けて吐いたのは先程の質問に対する報復だろう。
そんな事は気にする素振りもなく少年は笑みを消して怪訝そうな顔で黒乃に問いかける。
「んで、マジで何すか?別に世間話するの好きじゃないじゃん」
「まあそう苛立つな。偶にはゆっくり話すのも悪くない」
そう言って少年の隣に腰を下ろす。少年はチラっと横目で盗み見て黒乃の動く気の無さに諦めて溜息を吐いた後にその場に座った。
「調子はどうだ?」
「まあ前よりはマシになったと思うけど、退屈なのは変わんないッスわ」
「そうか。やはりこの間、学園の序列1位に勝った奴は言う事が違うな」
「ハッ!
本当につまらなさそうに吐き捨てると少年はそのまま口を閉じた。
黒乃は一瞬だけ少年の横顔を見てから空を見上げ黙り込む。
「........本当にその七星剣舞祭には俺より強い奴出てくるんすか?」
先に沈黙を破った少年は覇気の無い、そんな物はないんだと諦めたような表情。風の音で消えしまいそうな口調で呟く。
黒乃は短くなった煙草を捨て、最後に吸った煙をゆっくりとすべて吐き出してから答えた。
「ああ。今年の七星剣舞祭では必ずお前が望む相手が出場する」
「そっスか......」
またも沈黙。2人とも顔を前に向けておりお互いがどのような表情をしているかなんて分からない。だがどのような事を考えているかは分かる。それぐらいには2人が一緒にいた時間はあるのだ。
「ま、期待せずに待ってるとしますよ」
先程の表情から一転。ケラケラと笑いながら立ち上がるとそのまま何処かへ歩いて行った。
黒乃は新しい煙草をポケットから出して咥え火をつける。肺いっぱいに吸い込んだ煙をゆっくりと吐き出しながら黒乃は少年と出会った過去を振り返りながら優しげな表情で呟く。
「ああ、期待せずに待ってろ。
短いです。
次は簡単なプロフィール紹介