コンバーター 〜 魂換師 〜   作:かねつぐ

3 / 4
3話 崩壊~前編~

「ねえねえ真くん、龍牙くん一緒に弁当食べよ!」

 

 四時間目の終了のチャイムが鳴り響き生徒たちは各々の友達同士と昼食を食べようとしている中で水月の明るい声が響く。

 

真、龍牙、水月の三人はこの学校で唯一ソウル☆アーツ兵科学校を目指している事や昨年の試験で見事三人とも落ちた事も有り、一緒にいることが多い。

 

水月は魂魄科を目指して、真と龍牙は普通科を目指しているのだ。

 

「で、龍牙くんはしっかり勉強してるの?去年は筆記がネックだったよね」

 

「ほれはまにへんきょうなど……(ゴクン!)必要ではない!なぜなら無敵☆最強だからな!」

口いっぱいに頬張っていた。弁当を飲み込み龍牙は胸を張って自慢げに言い放つ。それに対し真も呼吸をするようにツッコミを入れる。

 

「寝言は寝て言え馬鹿。だから、去年の筆記全科目十点以下なんだよ!」

 

馬鹿にされた龍牙はすかさず真に言い返した。

 

「そんな事言ったら真、お前鬼術暴発させて試験会場半壊させて何人病院送りにした?今でも道場で訓練しては爆発させてんじゃねーか!!」

 

今にも喧嘩しそうになる二人にまたかと溜息をつき呆れる水月、そんな水月にクラスメイトは同情の眼差しを向けていた。

 

 口論がヒートアップしていく中で水月は胸の前に手を合わせ祈りを捧げるようなポーズをとり詠節を紡ぐ。

 

《清涼なる霊気達よ 彼の者たちを静め賜え》

『鬼術第五十一式 冷鉄(れいてつ)

 

 真と龍牙は共に頭に昇っていた血が引いて、思考がクリアになるのが感じる。龍牙はうおっ、と驚きの声を上げており、真は思案顔で水月の使った鬼術の解析をしている。

真は自分におこった事を理解するやいなや興奮するように言った。

 

「スゲーじゃねぇか水月!!今のは五十番台の三詠節破棄か?治癒系鬼術ってめちゃくちゃ貴重な術じゃん!」

「そ、そんなことないよ……えへへ」

照れながら満更でも無い顔をする水月。真は更に続ける。

「しかも、三詠節破棄でしっかり発動している分かなり訓練したな?」

 

「うん、龍牙くんに霊気コントロール見てもらったから、ねっ龍牙くん!」

「うむ!水月は真とは違って物覚えも良いし、それに五十番台の才能もあったからな!」

「何様だよお前……」

龍牙のあからさまな師匠風の話し方に苦笑する真。

真のそんな表情に不思議と笑い出す水月。釣られるように龍牙も笑いだし、受験の話で鬱蒼としていた空気が明るくなる。いつの間にか三人は楽しそうに談笑していたのだった。

 

 

 「でね、そのカメラ今日届くんだよ!サーモグラフィカメラ!絶対このカメラで幽霊映してやるんだから!」

「へぇ、サーモグラフィとかで幽霊の存在って解るものなのか……」

真は興味深そうに相づちを打ち、龍牙はウンウンと唸りながら話を理解しうようとしている。

「幽霊が居るところは基本的に気温が下がるのが特徴よ、真くん」

「俺様には幽霊ってもんは見えねえから解らねえな……真は見えるっぽいが」

難しい話を聞いた龍牙は、机に身を身を任せながらグダーっとした姿勢のまま目を細めて真を疑うように言った。

 

「私も見てみたい生の魂魄!今教室とかにいないの?」

「居るわけねえだろ。学校には対狂魔用の結界張られてんだからよ」

「じゃあさ、じゃあさ、守護霊とかいないの?ほらっ心霊小説の定番のあれ!」

目を子供の様に輝かせて真に尋ねる水月。

「悪いが水月、生まれてこの方一度も見たこと無いなそういう善性の幽霊は……てゆうか守護霊事態いないと思うね」

真の言葉に水月は固まり夢がなーーーーーい、と叫び出す。

 

「おい、真。じゃあ幽霊はどんな奴なんだよ」

龍牙はそんな水月を無視して、無い頭脳をフル回転させ質問した。彼のキャパシティはそろそろ限界のようだが龍牙は食らいつくようにこれまでの小難しい水月の心霊話に着いてきたのだ。

 

「あいつらは基本て……「おい、お前たちもう五分前だぞ。問題が当たっている生徒はすぐに板書しなさい。」」

丁度良いところで次の授業の先生が入り真たちはそれぞれの席に着席する。

真は一番前列の廊下側、龍牙は教室の中央にそして水月は一番後ろの窓際の列に座る。

クラスメイトが板書してい間に先生は予習の確認の見回りをする。いつも通り龍牙は予習をしておらず。先生に注意されたりそのほかの生徒も予習チェックに捕まり怒られる。

いつも通りの光景だ。もちろん真は予習はしっかりしている。

先生が一回り下頃には板書も終わり授業が始まる。

 

「起立、気をつけ、礼」

「「お願いします」」

 

 真は、着席するとき不意に廊下側からは見えにくい外を見る、真夏の外はえらく暑そうに揺らめいていた。入道雲はモクモクと昇っており窓枠から見切れている。ガラス越しに見える風景はいつもとなんら変わらないものなのだが何やら胸騒ぎがするのだった。

 

 授業が始まり二十分くらいだろうか、真は先生の授業をガン無視して受験勉強をしていた。今日は真夏日なのでクーラーがきいている。そのせいか龍牙はいつもよりも気持ち良さそうに(いびき)をかきながら眠っているた。

 先生もこの様子に慣れたのか注意することもない。

そんなとき、外が夜を思わせる程に暗くなったのだ。

 

「雨か……」

にわか雨が校舎をたたき付けるように降りつける。雷鳴が轟き胸と鼓膜を奮わせる。先生の声は五月蝿いと言っても良いくらいに大きいのだが、そんな先生の声が聞こえにくくなるほどに雨は激しく吹き荒れていた。

 

 そんな中、二階の一年生のクラスから何やら声が小さく聞こえる。

雷や雨音のせいで微かにしか聞こえないが真の耳では確かに階下からは叫び声と断末魔のような声が小さくだが響いて来る。真は思わず先生に問いかけた。

 

「先生!何か下の階から叫び声みたいのが聞こえるんですけど」

「九十九くん、こんな雨の中でそんな声は聞こえる訳が無いだろう!第一にここは結界で守られている、不審者など侵入のしようが無いだろう」

先生は真に疑いの目で見ながら言う。

 先生の言うことはもっともである。学校敷地の外周には結界が張られており、悪意があるものが一度結界に触れれば弾き飛ばされる。その上校舎に警報がなるおまけ付きだ。

 

 だが、真もそんなことは勿論知っている。問題なのは声が聞こえたという事実だ。真は核心を持ったような顔で先生に言う。

 

「いえ、俺は確かに聞こえました。下から人の叫び声が響くのを!」

真の必死な弁明に先生はたじろぎ渋々ながら、生徒たちに静かになるように促す。

 

クラスは授業と同等いや、それ以上に静かになる。聞こえるのは雷鳴と雨音だけである。真の必死な弁明も有り先生は不安げに廊下に出て耳を澄ませるも聞こえる音は変わらなかった。

 

 教室に戻って来た先生の顔は勝ち誇っているような笑顔を浮かべていた。

先生は、笑いながら真に言い放つ

 

「九十九くんの聞き間違いじゃないのか?夢だったとかじゃあ無いよな!」

先生は更に笑いながら真に言った。多分悪意は無いだろう、そういう先生なのだと理解している真だが、クラスのメンバーも笑っているせいか恥ずかしさで顔が林檎になっている。

 少しすると、授業が再開され生徒たちはさっきまでの事は無かったかの様に黒板のメモに意識を移す。

 

 そんな中真は、もう一度耳をかたむけてみるが声は聞こえなかった。気のせいと真も結論づけて自分の勉強に集中する。

 

 その矢先だった。

 

 隣のクラスから男か女かも解らない金切り声のような叫び声が響いたのは……

 

 真のクラスはどよめく。先生は、落ち着くように生徒たちに促し

「君達は静かにここで待機しなさい、先生は少し様子を見に行きます。」

と言って教室を後にした。隣の教室の扉がガラリ、と開けられる音が真の鼓膜を微かに奮わせる。

 

すると、先生のうわっ、という声の後に物凄い勢いで扉が閉められたのだ。爆発を思わせるような音を立てて隣のクラスの隣が閉められる。

 それと同時に扉の強化ガラスが割れるような音がこだまするのだった。クラスは急な出来事に静まり返る。中には驚きのあまり鯉の様に口をぱくぱくとさせている者もいる。

 それから三分と経っても先生は戻って来ない。隣のクラスは、あの声から静寂を続けている。

 先生の声も聞こえない、空間は雨音に制圧された。

 

(ちっ!!圏外かよ)

その頃、真は警察に連絡をいつでも入れられるように準備したが圏外で使えない。

 

 真は、立ち上がりクラスメイトに言い放つ。

「みんな今、多分隣には何か得体の知れないモノが居る。できる限だけ龍牙の所に集まってくれないか?死にたく無かったらできる限り静かに……ねっ?」

 

 真のゲスびた笑顔ではない、真剣な表情出る殺気に似た鋭い気迫に先程までどよめいていたクラスも静まりかえる。真は集まったのを確認すると龍牙に聞いた。

「龍牙、物理結界の鬼術使えるか?」

真の質問に龍牙はこんな緊迫した状況だと言うのに嬉しそうに返事を返した。

「ふっ!愚問だな。使えるに決まって居るだろう!」

「悪いな……今の状況はかなりヤバいと思う……」

反面、真は余裕のなさ気に額に汗を浮かべながら龍牙に返事を返す。

 

「なーはっはっはっはー!!情けないぞ真!こんな絶体絶命でお前がそれでどうする?見よ、俺様の鬼術を!!」

龍牙は高笑いをあげてる。両手を胸の前で合掌させ、詠唱する。

 

《我、龍牙の名において命ずる。我が霊気を糧にケを打ち払う壁を築かん!》『鬼術 第六十三式 籠城』

 

 紅い霊気が教室を覆い外界から隔離される。

水月は、結界の完成と同時にいつもの声の大きさで話す。

「真くん、一体何が起きてるの?」

「そうだぞ真。一体何がヤバいんだ?お前が動揺するほどの事なのか?どうせ不審者なら俺達で制圧できるだろ」

 

 真はそうじゃないんだ、と焦った表情で言う。真に落ち着くようにと水月は促し大きく息を吸った。クラスメイトは不安と好奇心を孕んだ眼で真を見つめる。

 真はまだ余裕の無い表情でクラスメイトに乱暴な口調で言い放った。

 

「時間が無い、少し適当になるが良いか?」

真は廊下に意識を向けたまま生徒たちに問いかける。

 生徒たちは往々にして頷き自らの意思を表す。中には泣き出すのを必死に堪えて居る女子もいた。

 

 真は顔を引き締め生徒たちに言った。

今隣のクラスには普通ではない狂魔がいる。そしてそいつは複数体いる、と。




五十番代鬼術……主に自分や仲間の治癒を目的とした鬼術。非常に高度な霊気コントロールが必要。

第五十一式 冷鉄……対象者を落ち着かせる鬼術。発動には術者が冷静な状態でないといけない。五十番台鬼術の基礎。

第六十三式 籠城 四角い結界で空間を断絶する鬼術。常に術者の霊気を消費する代わりにとても堅牢。物理耐性が高いのが特徴。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。