「ていうか、なーんで少年兵ともいえる自分がさ、一番危険な目にあわなきゃいけないんだ」
がたがた、と車が音を流す中、勁はぶーたらと文句を出していた。ただ、相手が悪いといわざる終えない。まず、責任の所在という点からみて、凱の立てた作戦は特にミスと言える物はなく、唯、敵の知能指数を高めに設定しすぎていただけだ。この場合においてはミスしたと言えるのは敵しかなく、敵の行動に対して文句を言うのは滑稽に過ぎる。
だから、不利になっても助けに入ってくれなかった終に文句を言うしかないのだが、作戦という観点から見て、勁の文句は的外れというほかない。
「かかか、元気がいいのう勁坊。なんじゃ、好みの女子でもおったのか」
勁を笑うのは師の終だ。笑うだけならともかく、終は更に日本について嘘を吹き込んだ。
「そういえばのぉ、女子といえば、知っておるか?日本では中学校で皆、忍術を習うんじゃ。その時に女子はハニートラップのやり方を習うんじゃよ。故に、日本の女子は皆、床上手なのじゃ」
「へぇー」
勁はまんまと終の嘘に騙され、文句を垂れ流していたのも忘れて感心する。
確かに14歳から手管を覚えれば、ちょうど男性に好まれる20前後の年齢のときにはなかなかのものになるだろう。機会があれば体験してみたいと未だ8歳の少年が考える。それを終は見透かしているが訂正はしなかった。なぜなら、そちらのほうが面白そうだからである。
基地についた勁は報告を終に任せてシャワーを浴びに行く。シャワーを浴びてから自販機のジュースを飲むのはいつもどおりだが、ふと気になることができた。
この自販機、だれが追加してんだ?
周りには当然都市はないし、物資搬入で来るのは武器などがメインだ。当然食料も補給するが、飲み物の類は食堂にあるし、何より自販機を設置する理由も思い当たらない。風呂の近くにはただで水が飲める機械はあるわけだし、何より、円で金を取る人間が思い浮かばないのである。
そんなことを考えながらジュースを飲んでいると懐かしい顔が風呂前にやってきた。
「勁?」
懐かしさの余り誰か分からなかった勁に声を掛けたことで、勁もまた、相手を思い出す。
「佐人?佐人さんじゃないか?お久しぶりですね。どこに行ってったんですか?」
「日本だ。まあ、手紙を届けていたようなものだ。とは言っても他にも調整とか仕事があったからな。帰るのは遅くなったが」
「日本?じゃあ、東京タワーが歩くところも見たんですか!?」
勁は終たちから聞いた話を平然と話す。佐人はまたか。とは思うが訂正しないように頼まれているので、話をそらすことにした。
「見なかったな。それよりも、舞妓にあったぞ。真っ白だった」
「そうなんですか?」
「ああ、おしろい、と言ってな。専用の化粧品があるんだ。機会があれば一度見に行くといい。同一人物でも印象が随分変わる」
「へぇ。日本か~、楽しみが増えますね~」
そうだな。と佐人は話を切って風呂場に入る。凱と終に騙される彼が哀れで見ていられなかったのだ。
楽しみが増えたと喜び部屋へと戻る最中。凱と合う。
「勁。出るぞ。俺の古い戦友に合わせてやる」
はい?と首を傾げる勁を凱は力任せに持ち上げる。そのまま抵抗する勁を俵よろしく運ぶと、車で基地から出て行くのだった。